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AIコンペティション表彰実績

リコーの貞末多聞等が投稿した高速・低消費電力なAIモデル学習回路アーキテクチャの論文が情報処理学会T‐SLDM Volume 14のTSLDM Best Paper Awardを受賞

2021年9月1日

株式会社リコーの研究者である貞末 多聞、田中 拓哉、笠原 亮介等が投稿した、高速・低消費電力なAIモデル学習回路アーキテクチャについての論文「Scalable Hardware Architecture for fast Gradient Boosted Tree Training」が、情報処理学会(Information Processing Society of Japan、以下IPSJ)のオンラインジャーナル「IPSJ Transactions on System LSI Design Methodology」Volume 14において最優秀論文と認められ、「TSLDM Best Paper Award」を受賞しました。

GBDTモデルの学習が可能な回路アーキテクチャを開発

この論文は人工知能(AI)の機械学習において、データベースなどで構造化された大量データの学習に高い性能を発揮するGradient Boosting Decision Tree(GBDT:勾配ブースティング決定木)モデルの学習を、FPGA(Field-Programmable Gate Array:設計者がプログラムによって設定を変更できる集積回路)を用いて行うもので、最先端のGPU(Graphics Processing Unit)による学習と比較して11~33倍の性能と300倍以上の電力効率を達成したものです。

FPGAはハードウェアアーキテクチャのため、ソフトウェアアーキテクチャよりも低消費電力で処理速度が速いという利点がありますが、書き込んだプログラムによりデータや回路が固定され、また、メモリやロジックに容量の制約があるため、汎用性に欠けるという問題がありました。この論文では、データやパラメーターを与えることでFPGAに書き込むプログラムを自動生成する手法をデザインし、さまざまな学習に柔軟に対応できるようになりました。さらに、外部からのデータ入力へ対応し、大量のデータを使った学習も可能にしました。これらにより、さまざまなユースケースへの柔軟な対応と、学習の高速化・低消費電力化を実現しました。

この技術の応用先として、オンライン広告のリアルタイムビディング(Real-Time Bidding)、Eコマースでのリコメンデーションなどのweb分野、コンピューターによる株式の高頻度取引(High Frequency Trading)などの金融分野、サイバー攻撃の検出などのセキュリティ分野、ロボティクスなどに今後貢献するものと見込まれます。また、近年注目を浴びているIoT(Internet of Things)デバイスを始めとする各種エッジデバイスにおいても、その高い電力効率を活かして、高度なモデルの学習が可能となります。

リコーは、「OAメーカーからの脱皮」と「デジタルサービスの会社への転換」という方針を掲げ、今後の成長に向けてAIを5Gと並んで最も重要な技術と位置付けています。2017年に「AI応用研究センター」を設立して、製品へのAIの搭載や、社内業務改革への適用などに取り組んでいます。リコーはお客様に質の高いデジタルサービスを届けるため、今後もAI技術への取り組みを進めてまいります。