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AIコンペティション表彰実績

リコーの佐々木史紘が投稿した模倣学習についての論文が世界的なAIの国際会議「The International Conference on Learning Representations」のSpotlightに採択

2021年2月18日

株式会社リコーの研究者であるイノベーション本部 ICT基盤技術研究センターの佐々木 史紘が投稿した、ロボット自律動作技術の「模倣学習」に関する論文「Behavioral Cloning from Noisy Demonstrations」が、2021年1月13日、AI(人工知能)の国際会議「Nineth International Conference on Learning Representations」において、投稿論文の上位のみに与えられるSpotlightと呼ばれる口頭発表に採択されました。口頭発表は5月3日から5月7日までオンラインで開催される国際会議で行われる予定です。

「The International Conference on Learning Representations(以下、ICLR)」は表現学習(一般的には深層学習:ディープラーニング)と呼ばれる人工知能の分野についての国際会議です。AI、統計、データサイエンスの分野で使用される深層学習のすべての領域と、マシンビジョン、計算生物学、音声認識、テキスト解析、ゲーム、ロボティクスなどの重要なアプリケーション分野に関する最先端の研究を発表および公開しています。採択された論文は、査読の結果により上位からOral、Spotlight、Posterの判断がなされ、Oral、Spotlightに採択された論文のみが国際会議で口頭発表を行うことができます。

佐々木は遠隔操作ロボットの開発に従事しており、ロボットに模倣学習による自律移動機能を組み込んでユーザービリティーを高め、新しいロボットUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供することを目指しています。佐々木の今回の論文は、そのロボットの動作のキーとなる「ロボット自律動作模倣学習アルゴリズム」の開発成果をまとめたものです。模倣学習とは動的な動作の学習を行うために用いられるAIの一手法であり、今回の論文では、遠隔操作ロボットの自律動作ルールを獲得するために、人間のロボット操作を真似て学習させています。佐々木は開発を通じ、従来の模倣学習技術では、人間のロボット操作時に誤りが含まれる場合にその誤りも真似てしまい、良い自律動作ルールが獲得できないという課題を発見しました。この課題を解決するため、従来技術で自律動作ルールを獲得できない原因を数学的に解析し、その結果に基づいてより望ましい自律動作ルールを獲得できるアルゴリズムを開発しました。この手法は、査読者からも「独創的でシンプルかつスマートなアイデアである」、「提案の核となる革新性は興味深く、経験的にも合理的に機能している」、と高い評価を受けました。

佐々木は2019年に行われた「Seventh International Conference on Learning Representations」でも、徒弟学習と呼ばれる模倣学習の学習速度向上についての論文“Sample Efficient Imitation Learning for Continuous Control”がPosterに採択されており、ICLRでの論文採択および発表は2回目になります。

リコーは、「OAメーカーからの脱皮」と「デジタルサービスの会社への転換」という方針を掲げ、今後の成長に向けてAIを5Gと並んで最も重要な技術と位置付けています。2017年に「AI応用研究センター」を設立して、製品へのAIの搭載や、社内業務改革への適用などに取り組んでいます。リコーはお客様に質の高いデジタルサービスを届けるため、今後もAI技術への取り組みを進めてまいります。

佐々木 史紘
佐々木 史紘