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柴田勝家×EDUCATION

対談3/3

人間の“生きている瞬間”を捉える未来のガジェット:柴田勝家

November 5, 2015

新進気鋭のSF作家であり、現役大学院生でもある柴田勝家さんと、リコーの研究者・山内拓也による、未来の技術や教育についての対談(3/3)。最終回となる本記事では、写真に対する2人の想いや、「こんなカメラがあったら」というガジェットとしてのカメラの未来予想図が描かれていきます。

想いをダイレクトに届け、人生のキーになるカメラを

  • 山内

    ストーリーでは、女子高生が自らの体験を通して変わっていく姿が描かれていますが、柴田さんご自身が何かを体験して変わったという経験はありますか?

  • 柴田

    ワシは、作家として“アウトプット”できる立場になって、人とのつながりができる機会が非常に増えました。

  • 山内

    私は今までアウトプットすることがあまりなくて、最近になってアウトプットの大切さを感じています。また、自分から発信する最初の一歩が大事だと思うので、未来の世代のために発信の場をつくりたいなと考えています。

  • 柴田

    アウトプットできる場が増えるのは、とてもいいことだと思います。ところで、山内さんはこれからご自身でつくりたいカメラってありますか?

  • 山内

    私は、写真を撮る目的は「写真を誰かに見せて、想いを伝えたい」ということだと思っています。ですから、ダイレクトに想いを届けられるガジェットをつくりたいですね。

  • 柴田

    想いの見えるカメラ! 撮る人の気持ちが写るカメラって、いいですね。その人が「楽しそう!」とか「ちょっと悲しそうだな」とか、オーラのように見えたりする。そして、それが撮った人の記憶として写真に残る。

  • 山内

    そういった感情みたいなものが技術に付加されていくと、人にものを伝えるという大切な部分がより深まるのかなと思っています。

  • 柴田

    記憶が残るという点では、“人生”という自分の物語のカギとして機能するカメラもおもしろいですね。今でもフォトアルバムを開けば個人的な記憶は思い出せますが、それはあくまでも撮影した人だけがわかる記憶で、ほかの人には伝わらない。同じアルバムを開いても、見る人によって、見える風景って違うと思うんです。

  • 山内

    たしかに、写真一枚一枚に感じる心象風景は、人それぞれ違いますね。

  • 柴田

    ですから、これまでは写真を撮影した人しか“見る”ことができなかった風景を、誰もが同じように“見える”形で撮影できる。そんなカメラが欲しいです。

  • 山内

    人生のキーになるカメラですね。ちなみに、柴田さんは、静止画と動画の違いをどう考えますか?

  • 柴田

    静止画の場合、撮る人によっても、見る人によっても、心象風景が異なります。一方で動画は、誰にとっても“均質”に見えるように感じるんですね。静止画は“記憶”するもの、動画は“記録”するものという違いがあるのかなと。もちろん記録も大事ですが、個人的には、静止画は「記憶に訴えかけるもの」であってほしいなと思っています。

左:株式会社リコー ICT研究所 システム研究センター イメージ&インテリジェンス開発室 イノベーティブイメージング開発グループ 山内拓也、右:作家 柴田勝家

左:株式会社リコー ICT研究所 システム研究センター イメージ&インテリジェンス開発室 イノベーティブイメージング開発グループ 山内拓也、右:作家 柴田勝家

カメラのソーシャル化や“最高の瞬間”の記憶が、新たな表現技術を生む

  • 山内

    さまざまなバリエーションで心象風景を記憶するために、撮影中にいろいろな人の意見を聞けるとおもしろそうですね。ファインダーを覗いていると、誰かが同じ風景を別角度から撮った写真が現れる。そこで「こんな撮り方があったのか」と感じることで、より豊かな写真表現が生まれるかもしれません。

  • 柴田

    なるほど、カメラのソーシャル化ですね。カメラ自体に入ってくる外部情報を元に、自分が写したい写真が撮れる、と。そんなふうに、個人の体験につながる形で技術が進歩すればいいなと、ワシも思います。

  • 山内

    自分が写したい心象風景を撮影できる技術ができれば、本当の意味で「想いをダイレクトに伝えられる」ツールになると思うんです。カメラメーカーでもある当社の役割としても、それは実現したいと考えています。

  • 柴田

    それは、本当に楽しみですね。ワシもカメラは使うんですが、撮るタイミングが悪くて、下手で……。おまけに、人と一緒に写ると、ワシの顔だけ写りが悪い(笑)

  • 山内

    私も、写りが悪いんです(笑)

  • 柴田

    ならば、写りの悪さを解消してくれるカメラが欲しいですね。最高の瞬間だけ、シャッターが撮ってくれるという。

  • 山内

    カメラ自体が、一番盛り上がった瞬間を撮ってくれる。

  • 柴田

    そうです。素人が撮ると、撮られる側がどうしても構えちゃうじゃないですか。それを避けるために、誰が撮っても“場”の臨場感を写せるとうれしいですね。たとえば、その空間の状態すべてを記憶できるカメラ――。

  • 山内

    そうなると、今のカメラのような形状じゃなくなるかもしれませんね。

  • 柴田

    そうですね。存在を意識させないために、すべてが透明になったり。

  • 山内

    もしくは、コンタクトレンズみたいな形もあり得ますね。あとは、どういった瞬間や状態を記憶させるか。今はまだ誰も認識していないような“新しいシャッターチャンス”が生まれるかもしれません。

  • 柴田

    人間がもっとも“生きている瞬間”を捉えるガジェットですね。

  • 山内

    そういった技術をつくることができれば、私たち技術者にとっても、人間の未来にとっても、大きな価値が生まれると思います。

PROFILE

  • 柴田勝家

    柴田勝家(シバタカツイエ)作家

    1987年、東京都生まれ。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻に所属し、外来の民間信仰の伝播と信仰の変容を研究する。2014年、『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞し、27歳で作家デビュー。戦国武将の柴田勝家を敬愛し、一人称は「ワシ」。和装に髭といういでたちでも注目を集める、SF界期待の気鋭作家。

  • 山内拓也

    山内拓也(ヤマウチタクヤ)株式会社リコー ICT研究所 システム研究センター イメージ&インテリジェンス開発室 イノベーティブイメージング開発グループ

    1988年、千葉県生まれ。2013年、千葉大学大学院を修了後、リコーに入社。学生時代に専攻した色彩工学(人間の視覚特性を利用した画像処理、感性評価)の知見を生かし、デジタルカメラ・プロダクションプリンタ向け高画質化技術の研究開発や「人間が何を好み、何に訴求されるのか」という嗜好理解の研究に従事する。趣味は写真。

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