磯光雄×OFFICE DEVICE
ストーリー1/3
さまざまなデータにアバターを着せて語らせる「ゆるキャラアバター会議」:磯光雄
November 18, 2014
アニメーター/脚本家の磯光雄さんによる「西暦2036年を想像してみた」、エッセイの本編【第1回】。「人格アバター」を使った、新たな会議スタイルを想像してもらいました。
情報に魂を与えて「人格アバター」をつくりだす
近年の「Siri」(iPhoneの音声アシスタント)や「Pepper」(ソフトバンクの製品ロボット)を見ていると、すでにAIっぽいものが実現してるのかもという気もしますが、2036年ともなればもっとSF状態になっていて欲しいですね。
たとえば「人工人格」。コンピュータ上で言語的な人格を再現する技術、もしくは人間の人格の一部をプログラムとして抽出して仕事させたりできてたらいいなと。ただ従来のAIとちょっと違うのは、「機械学習」を利用している点です。
従来のAIは、親が用意したベビーベッドの中で計算通りに動かそうとしている赤ん坊のようなものでしたが、今回の想定は「機械学習」と「統計学的機械翻訳」を組み合わせた技術。という設定まで考えましたが、説明だけで終わってしまいそうなので省略しまして(笑)。
この機械学習がおもしろいのは、放任主義で育てられた子どものような点で、親=人間が過保護にせず自力で育てる。これって「情報」をひとり歩きさせて、人格というかキャラクターに育てる作業なんじゃないか。
たとえば2036年、この技術を使った「人格アバター」なるサービスがはじまっているとします。ビッグデータ的なものから意味を抽出するエンジンと、それを表現する言語能力を装備しており、これをかぶせるとデータ自身が雄弁に語りだすという夢技術。外見も中身のデータに関連ある「ゆるキャラ」的なもの(笑)を自動生成。
たとえば、データの塊に人格アバターをかぶせて会議に参加させたりできるかもしれない。会議でおもしろい発言をしている人物の素性を調べたら、ビッグデータさんでした、なんてことも可能かも。
会議の参加メンバーは「子ども」と「猫」と「ビックデータ」
また、専門知識や事前情報も人格情報として盛り込めるといいですね。データとして扱えば人間にもかぶせられます。専門知識をインストールした人格アバターを子どもに着せて、突飛な発想力だけをリソースとして活用できる。
ほかにも、あとで述べる言語化できない自分自身、つまり自分の無意識にアバターをかぶせて語らせてみたら、言語に縛られない自由なイメージを表現してくれるかもしれない。あるいは、若いころの自分自身を保存しておいて議論できたとしたらおもしろい体験です。
自由参加のアバター会議のメンバーを調べたら、子どもと、ビッグデータと、若いころの自分と、猫でしたとか(笑)。人間以外の知性が参加する会議なんて、見てみたいと思いませんか。
不思議なことに、モノやデータをキャラクター化して会話できる、となると急に理解が進む気がします。日本人はもともと何かをキャラクターにするのが得意な民族で、近年のゆるキャラは言うまでもなく、古来からある「物の怪」や「妖怪」も擬人化そのものです。
2036年の仕事場では、「擬人化」=キャラクター化という日本人の感性がイノベーションをひき起こしているかもしれません。