円城塔×WORK PLACE
対談2/3
テクノロジーが人間を強化し、身体機能が外部化していく未来:円城塔
March 17, 2015
芥川賞受賞作家の円城塔さんと、リコーの研究者 吉川博美による、未来の働き方についての対談(2/3)。前記事(1/3)の「人間の感覚とテクノロジーの関係」に続き、今回はインターネット時代の先にある「人間の機能とテクノロジーの未来」について、2人のイマジネーションが膨らみます。
身体機能の外部化と、モノの境界の崩壊
-
円城:
今後、人間は自分の機能をどんどん外部に出していくようになるかもしれません。吉川さんが開発している360°カメラ「RICOH THETA」のように、「眼球が外に出ていく」みたいな感じで。便利な機能を、どんどん外部に求めていく。
-
吉川:
おっしゃる通りだと思います。たとえば、「THETA」を使えば、クルマやバイクに乗ったときに前後左右の死角がなくなります。ほかにセキュリティなどの面でも 、“視覚機能”としてとても有効かなと思っています。
-
円城:
身体機能の外部化でいうと、僕の場合、人と専門的な話をしていると単語を思い出せないことが最近増えてきて(笑)。それで、スマートフォンで検索するんですが、インターフェイスがどんどん洗練されてきているので、無意識に操作しているんですね。「無意識に脳を操作している」のと同じくらい“無意識の動作”で、これも記憶の外部化と言ってよいはずです。
-
吉川:
たしかに、私たちは無意識のうちに身体機能の外部化を行っているのかもしれませんね。
-
円城:
いま思えば、2000年頃って、インターネットやパソコンに対する期待ってすごく大きかったと思うんです。「すべてパソコンでできる!」みたいな感じで(笑)
-
吉川:
そうでしたね。私は、そのパソコンの延長線上に、いまのスマートフォンがあるのかなと感じています。スマートフォンに関しては、パソコンに加えて、カメラと携帯電話も一緒になってしまっていますからね。
-
円城:
そんなふうに、モノの境界がガンガン組み替わってきていたんですね。でも、パソコンに何でもいっぱい入りすぎたので、「やっぱり、コンピューターだけだと使いづらい」という感じになって、また機能がバラバラになってきていますよね。これからも、さらに別々のデバイスに分ける方向にいくんだろうなという気がしています。
左:株式会社リコー フォトニクス研究センター 製品開発室 映像モジュール開発グループ 吉川博美、右:作家 円城塔
オールドメディア=人間の機能を強化する、テクノロジーの進化
-
円城:
テクノロジーは、“オールドメディア”である人間の機能を強めて、助けるものでもありますよね。
-
吉川:
私もそう思います。モノをつくるうえで、「いかに人間が使いやすくできるか」を考えるには、まず人間についてよく知らないといけないなと思っています。モノをつくる人間にとって、「いかに使いやすいか」という部分はとても重要。
-
円城:
未来の技術は、人間の機能を「補う」というよりも、「強化」するという側面が大きいのかなとも感じます。人間をエンハンス(強化、向上)しようとするのは、自然な発想だと僕は思っています。
-
吉川:
機械でしかできない“人間の感覚”が生まれることがあるかもしれないですね。
-
円城:
たとえば、義手であれば、すごく強い力が出せたり、かなり細かいものをつかめたり。人間の神経を通じてコントロールするので開発は大変だと思いますが、「補う」のではなく「強化」する方向に進めばいいのかなと思っています。
-
吉川:
視覚に関して言えば、周囲360°を見渡せる「THETA」は、従来のカメラにはなかった「『見る』だけじゃない新体験」を提案するものでもあります。
-
円城:
「自分の目よりも、『THETA』のほうがいい!」となる可能性はありますよね。「自分の肉眼が捉える解像度の低い情報は、イヤだ」ということは、あり得るわけで(笑)。さらに、「『THETA』で撮ったクリアな映像が自分の周囲に映されているほうが安心する」ということも、ままあり得る。それがメガネに取って代わることもあるかもしれない。
-
吉川:
おもしろいですね。私も、そういう進化を実現させていきたいです。
-
円城:
視覚の「補助」から「補強」へという概念は、「無いと聞こえないから使う」という点で補聴器と一緒ですよね。でもその一方で、音情報をほかの形で受けれることができれば、それでも良いですよね。聴覚でなくて、視覚でも、同等の情報が得られる。そんなふうになればおもしろいなと思います。
-
円城:
テクノロジーは、“オールドメディア”である人間の機能を強めて、助けるものでもありますよね。
-
吉川:
私もそう思います。モノをつくるうえで、「いかに人間が使いやすくできるか」を考えるには、まず人間についてよく知らないといけないなと思っています。モノをつくる人間にとって、「いかに使いやすいか」という部分はとても重要。
-
円城:
未来の技術は、人間の機能を「補う」というよりも、「強化」するという側面が大きいのかなとも感じます。人間をエンハンス(強化、向上)しようとするのは、自然な発想だと僕は思っています。
-
吉川:
機械でしかできない“人間の感覚”が生まれることがあるかもしれないですね。
-
円城:
たとえば、義手であれば、すごく強い力が出せたり、かなり細かいものをつかめたり。人間の神経を通じてコントロールするので開発は大変だと思いますが、「補う」のではなく「強化」する方向に進めばいいのかなと思っています。
-
吉川:
視覚に関して言えば、周囲360°を見渡せる「THETA」は、従来のカメラにはなかった「『見る』だけじゃない新体験」を提案するものでもあります。
-
円城:
「自分の目よりも、『THETA』のほうがいい!」となる可能性はありますよね。「自分の肉眼が捉える解像度の低い情報は、イヤだ」ということは、あり得るわけで(笑)。さらに、「『THETA』で撮ったクリアな映像が自分の周囲に映されているほうが安心する」ということも、ままあり得る。それがメガネに取って代わることもあるかもしれない。
-
吉川:
おもしろいですね。私も、そういう進化を実現させていきたいです。
-
円城:
視覚の「補助」から「補強」へという概念は、「無いと聞こえないから使う」という点で補聴器と一緒ですよね。でもその一方で、音情報をほかの形で受けれることができれば、それでも良いですよね。聴覚でなくて、視覚でも、同等の情報が得られる。そんなふうになればおもしろいなと思います。