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ニュースリリース

肺がんの遺伝子検査用DNA標準プレート「RICOH Standard DNA Series EGFR mutation Type001」を発売

~血液を用いた高感度遺伝子検査の精度向上に貢献~

2020年8月20日
株式会社リコー
株式会社DNAチップ研究所

株式会社リコー(社長執行役員:山下 良則)と株式会社DNAチップ研究所(代表取締役社長:的場 亮)は共同で、血液を用いた肺がんの遺伝子検査の精度管理に用いることができる標準物質*1として、DNA標準プレート*2「RICOH Standard DNA Series EGFR mutation Type001」を開発し、本日発売します。肺がん患者の血液の中に含まれるごく少量のがん細胞由来のDNA分子を検出する高感度な遺伝子検査の精度を確認することが可能となり、検査の精度向上に貢献します。

  • 製品情報
  • 肺がん患者の血液中に存在する遊離DNAの模式図
  • 製品写真:RICOH Standard DNA Series EGFR mutation Type001

がんの発見や治療のために、患者のがん組織の遺伝子を検査し、治療薬の効果を予測する精密医療(プレシジョン・メディシン)による個別化医療が広がり始めています。遺伝子検査では、がん化やがんに対する治療薬の効果に関連する遺伝子の変異を調べます。肺がんの遺伝子検査は、遺伝子の変化(変異)とそれに応じて用いる治療薬(分子標的薬*3)の組み合わせが多数開発され、早期に実用化されています。

肺がん関連の遺伝子検査のなかでEGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子*4の検査は代表的な手法の1つです。肺がんの薬物療法を考慮している患者に対して、投与する治療薬を決めるためにEGFR活性化変異の有無を検査します。また治療薬投与後にも薬剤耐性の出現を調べるためにEGFR耐性変異を検査します。これらの遺伝子検査にはPCR法*5、NGS(次世代シークエンス)法*6などの手法が用いられています。

また、肺がんの遺伝子検査に用いる検体には、手術で切除した組織や気管支鏡を用いて採取した組織(バイオプシー:生体検査)が用いられていましたが、採取時の侵襲性が高く、患者の身体への負担が大きいことが課題でした。近年では患者への負担を抑えるために、低侵襲で採取可能な血液を用いるリキッドバイオプシー*7が注目されています。

DNAチップ研究所が開発したEGFRリキッド検査*8は、低侵襲で採取可能な血液を利用した検査手法であり、NGS法を用いて高感度の遺伝子検査を実現しています。採取された血液の中には、さまざまな細胞から放出された遊離DNA(cfDNA:cell-free DNA)が存在しますが、そのほとんどは正常な細胞に由来するものであり、その中にわずかに存在するがん細胞由来の遊離DNA(ctDNA:circulating tumor DNA)におけるEGFR活性化変異やさらに少ない耐性変異の検出を行っています。

「RICOH Standard DNA Series」は、DNA標準プレートの技術を用いた製品群であり、リコー独自のバイオプリンティング技術によりDNA分子数を1分子単位で規定して遺伝子検査用の容器に注入したもので、手作業で希釈するとばらつきが生じやすい100分子以下の低濃度領域においても、遺伝子検査用装置、遺伝子検査手法、試薬の精度管理や品質管理を厳密に行うことが可能となります。

リコーは、肺がん患者の血液中に存在する遊離DNAのモデルとして、遺伝子検査の精度を確認する標準物質「RICOH Standard DNA Series EGFR mutation Type001」を開発しました。血液中に存在するがん細胞由来の遊離DNAの数には患者により個人差がありますが、半数以上の患者では1回に検査する血液中にEGFR活性化変異が100分子以下、耐性変異はそれよりさらに少ない数しか存在しません(DNAチップ研究所調べ)。「RICOH Standard DNA Series EGFR mutation Type001」はそれを模して、10,000個の正常なDNAに対して10~100個のがん細胞由来のDNA(EGFR活性化変異と耐性変異の両方の遺伝子配列を含む)を8連チューブの各ウェルに分注したもので、0.1%~1%の変異アレル頻度*9の標準物質として、肺がんの検査を実施する医療機関、検査センター、研究機関で検査系の評価に用いられることを見込んでいます。本製品を用いて事前に検査の精度を確認することで、精密医療がより正確に行われ、肺がん治療の効果が向上することへの貢献を目指します。

本製品は研究用試薬です。
*1 標準物質
成分の含有量が明確にされた測定の基準となる物質のこと。
*2 DNA標準プレート
DNA標準プレートは、リコーと国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、理事長:久間 和生)、日本製粉グループの株式会社ファスマック(代表取締役社長:布藤 聡)の3者の共同研究の成果により、実現したものです。
https://jp.ricoh.com/release/2018/0604_1
*3 分子標的薬
がん細胞に特有な特定の分子を標的にして攻撃することにより効果を発揮する治療薬。
*4 EGFR(上皮成長因子受容体;Epidermal Growth Factor Receptor)遺伝子
EGFR遺伝子の変異は肺がんの約30%の患者で見つかっており、肺がん患者で見つかる変異としては最も数が多く、年間数万検体の検査が行われている。
*5 PCR法
ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)を利用してDNAを増幅する手法。
*6 NGS(次世代シークエンス)法
Next Generation Sequencingの略。多数のDNA配列を同時に読み取ることのできる手法。
*7 リキッドバイオプシー
主にがんの診断や治療のために行う血液などの体液を使った検査。
*8 DNAチップ研究所が開発したEGFRリキッド検査
正式名称:EGFR リキッド遺伝子解析ソフトウェア
低侵襲にEGFR遺伝子検査を行うことを目指して開発されたリキッドバイオプシーに用いることができる検査(組織と血液の両方に対応)です。がん関連遺伝子の変異には、活性化変異と呼ばれる、いわゆるがん化に働く変異があります。EGFR遺伝子にもこの活性化変異があり、EGFRリキッド検査では、2種類の活性化変異(エクソン19欠失とL858R)を検査することができます。EGFRリキッド検査はコンパニオン診断を行う検査で、昨年7月に厚生労働省へ製造販売承認を申請し、2020年7月31日に薬事承認されています。
疾病診断用プログラム「EGFRリキッド遺伝子解析ソフトウェア」の高度管理医療機器製造販売承認のお知らせ
*9 アレル頻度
変異の無いDNAに対する変異DNAの割合

報道関係のお問い合わせ先

株式会社リコー 広報室
050-3814-2806(代表)
koho@ricoh.co.jp
株式会社DNAチップ研究所
03-5777-1700(代表)
FAX:03-5777-1702
dnachip-support@dna-chip.co.jp

一般のお客様のお問い合わせ先

HC事業本部 バイオメディカル事業センター 診断薬事業室
standard_dna_series@jp.ricoh.com

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創業以来80年以上にわたり、高い技術力、際立った顧客サービスの提供と、持続可能な社会の実現にむけて積極的な取り組みを行っています。
EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES - 人々の“はたらく”をよりスマートに。リコーグループは、さまざまなワークプレイスの変革をテクノロジーとサービスのイノベーションでお客様とともに実現します。
詳しい情報は、こちらをご覧ください。
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