ニュースリリース
株式会社リコー(社長執行役員:山下 良則)は、PCR検査*1の基準となる遺伝子検査用の標準物質*2として、DNA標準プレート「RICOH Standard DNA Series」を開発し、販売を開始します。
「RICOH Standard DNA Series」は、リコー独自のバイオプリンティング技術により、DNA分子数を1分子単位で規定して遺伝子検査用の容器に注入したもので、100分子以下の低濃度領域においてもPCR検査の検出性能を正確に測定することができます。これまでノロウイルス用のDNA標準プレートを個別に提供してきましたが、今後はその対象を広げ、世界的に感染が広がっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)用をはじめ、さまざまな種類のウイルスに対応するDNA標準プレートを個々に開発して提供します。現在は日本国内のみの提供ですが、順次海外でも提供できるようにします。
PCR検査は原理的にはDNAを1分子レベルから増幅して検出することができると言われている高性能な遺伝子検査手法ですが、実際には装置の精度管理が不充分であったり、試薬の性能や品質が完全ではないために、ごく微量のDNAを検出できないことが起こります。そのため、ウイルス性疾患の診断に用いる際、感染していてもウイルスが検出できない「偽陰性」が発生し、正確な診断を行う際の課題となっています。
PCR検査の精度を規定するのが、感度と特異度です。感度とは、ウイルスに感染している人(真陽性)を正しく「陽性」と判別できた割合のことをいい、特異度とはウイルスに感染していない人(真陰性)を正しく「陰性」と判別できた割合のことをいいます。正確な検出ができない原因としては、PCR検査の感度と特異度が充分に検証されていないことが考えられます。また、PCR検査には検出限界があり、検出限界以下の微量なウイルスを検出することはできません。検査時点で検出限界以下のウイルスしか検体採取できなかった場合、検体中にウイルスが含まれていたとしてもPCR検査の結果は「陰性」となってしまうため、結果的に「偽陰性」ということになってしまいます。「偽陰性」の患者が感染に気付かないまま行動することは新たな感染につながるおそれがあるため、「偽陰性」を減らすことは感染拡大のリスク低減に貢献します。
PCR検査の検出限界や感度を検証したり、検査装置や試薬の性能や品質を正確に測定して管理するためには、DNA分子の数が正確に規定され、検査の基準となる標準物質が必要です。遺伝子検査用の標準物質はすでにいくつかの企業や研究機関から提供されていますが、それらはDNA分子数がモル(1モルあたりの分子数は6.02×1023個に相当)で規定された高濃度なものです。この標準物質を希釈してさまざまなDNA分子数の基準を作製する場合、高濃度領域では問題ありませんが、100分子以下の低濃度領域ではDNAの分子数にばらつきが発生してしまうため、正確に測定できているかを判断することは困難でした。
「RICOH DNA Standard Series」は、PCR検査のこの困りごとを解決するものです。独自のインクジェット方式を用いたバイオプリンティング技術を活用し、DNA分子を1分子単位で規定して遺伝子検査用のプレートやチューブのウェルに分注できるため、低濃度領域でもDNA分子数のばらつきが発生することがなく、遺伝子検査の手法や検査装置、試薬などの精度管理や品質管理を厳密に行うことが可能となります。注入するウェルごとにDNA分子の数に勾配を付けることも可能です。
今後リコーは「RICOH Standard DNA Series」を遺伝子検査における遺伝子検査手法や試薬の精度管理などの用途にも拡大し、未知の感染症への対応や、再生医療製品やバイオ医薬品製造等におけるウイルス否定試験(ウイルスが存在しないことを証明する試験)などにも貢献してまいります。
リコーグループは、オフィス向け画像機器を中心とした製品とサービス・ソリューション、プロダクションプリンティング、産業用製品、デジタルカメラなどを世界約200の国と地域で提供しています(2019年3月期リコーグループ連結売上は2兆132億円)。
創業以来80年以上にわたり、高い技術力、際立った顧客サービスの提供と、持続可能な社会の実現にむけて積極的な取り組みを行っています。
EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES - 人々の"はたらく"をよりスマートに。リコーグループは、さまざまなワークプレイスの変革をテクノロジーとサービスのイノベーションでお客様とともに実現します。
詳しい情報は、こちらをご覧ください。
https://jp.ricoh.com/
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