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製品・取り組み

環境発電デバイスで、社会問題の解決に寄与。リコーが実現する「充電のない世界」とは

目次

IoTやデジタルデバイスが普及する中で、人々を悩ませているのが「充電」の問題だ。携帯電話やノートパソコン、EV自動車などの連続稼働には電気が欠かせないが、場所やタイミングによって電源が確保できず、困ったことがある人も多いのではないだろうか。

そこでニーズが高まっているのが、電源につなぐことなくデバイスが自ら発電を行う「自立型電源」の技術だ。リコーは2013年からそのひとつのソリューションである次世代太陽電池の開発を行っている。このプロジェクトを主導するRICOH Futures BU Energy Harvesting事業センターの田中哲也所長に、リコーの次世代太陽電池技術の特徴や、この新規事業で実現したい未来について聞いた。

太陽光発電技術で目指す「充電のない世界」

リコーが新規事業として取り組んでいる「エネルギーハーベスティング技術」。これは、光や熱、振動などからエネルギーを集めて、電力に変える技術の総称だ。リコーは、SDGs事業の一環として、IoT社会に不可欠な電源確保の課題を、室内光を利用した発電技術で解決するプロジェクトをスタートした。

EUの法改正で将来的な使い捨て電池の段階的廃止が議論されるなど、電源の課題は世界でも注目される社会問題だ。田中哲也所長は、「近い将来、使い捨て電池が世界からなくなる流れの中で、自立型電源の技術は欠かせないものになる」と予想する。

さらに、リコーの次世代太陽電池は、環境問題の解決だけでなく、リコーが目指す世界を実現する技術でもある。それは「充電のない世界」だ。

リモコンなどのポータブル機器は電池が切れると使えなくなり、替えの電池の補充や交換には手間がかかる。今や生活に欠かせないスマホも定期的な充電が必要で、電池がなくなれば、街中で充電スポットを探す必要がある。リコーが抱く未来の姿である「充電のない世界」では、ポータブル機器が、家やオフィスなどの室内光で自動で充電されるため、手作業による充電が不要だ。

「リコーはこれまでも、人々の生活をよりよくすることを目指してきた会社です。次世代太陽光発電の技術でわずらわしい充電をこの世からなくして、人々にとってより便利な世の中を実現することが、私たちの最大のゴールです」(田中所長)

なぜ、リコーが次世代太陽電池を開発するのか

リコーが開発する次世代太陽光発電のソリューションは、大きく3つに分けられる。それは、「色素増感太陽電池(DSSC)」「有機薄膜太陽電池(OPV)」、そして「ペロブスカイト太陽電池(PSC)」だ。

色素増感太陽電池(DSSC)は、室内の微弱な光で発電ができる太陽電池。オフィスの壁際、倉庫、工場など、暗い室内光でも発電が可能だ。そして、有機薄膜太陽電池(OPV)は、室内光から半屋外で発電できるフィルム形状のデバイス。高性能・軽量のペロブスカイト太陽電池は、宇宙船探査機などへの搭載を目指し、現在、JAXAや桐蔭横浜大学との共同研究を進めている。

微弱な光による効率的な発電を実現したのは、リコーが培ってきた有機感光体の技術だ。印刷機の中では、画像に光を当てて読み取り、電気の力でトナーを紙にプリントする技術が使われている。これを応用して生まれたのが、リコーの次世代太陽電池の技術だ。

「光によって電気を発生させて電気を動かす有機感光体の機能が、実は太陽光発電の機能と似ています。私たちの調査では、今、世界でLEDによる発電効率がもっとも高いのがこの技術です。有機感光体の材料開発から生産までを一貫して行ってきたからこそ、リコーがこの事業を手がける意義があると思っています」(田中所長)。

発電効率が高くフレキシブルな太陽電池が広げる可能性

この中でも、人々の生活に影響が大きいのが、有機薄膜太陽電池(OPV)だ。OPVの特徴は、屋内のような低照度(約200lx)から屋外の日陰などの中照度(約10,000lx)まで、さまざまな環境下で高効率な発電を実現すること。加えて、フィルム型で曲げることができるため、多様な形状の端末から建設物の壁面まで幅広く活用できる。すでに、DSSCを搭載した電池交換不要のマウスなどが商品化されているが、「2022年度中に、OPVを使った新商品も皆さんにご提供できる見込みです」と田中所長は言う。

透明性を高めたDSSCを使った試作品の開発も進んでいる。たとえば、感染対策の飛沫防止パネルの全面にDSSCを採用することで、USBでつないだアルコールディスペンサーを動かす電気を発電できる。透明性が高いDSSCを使っているため、パネル間の人と人とのコミュニケーションも妨げず、スペースを発電に活用できる試作品だ。

リコーはこの技術を発展させて、スマホのディスプレイで充電ができる未来を目指す。「ディスプレイに透明性が高い次世代太陽電池を埋め込み、そこに室内光があたると自動で充電する仕組みです。OPVは曲げることもできるので、海外で製品化されている曲がるディスプレイにも応用できるでしょう」と田中所長は言う。「次世代太陽電池の発電量は面積の大きさに比例するため、現時点では、ディスプレイほどのサイズの次世代太陽電池でスマホをストレスなく使えるほどの電力は充電できません。ただ、直近の10年で、ある半導体の消費電力は100分の1まで下がったと言われています。今後も各社さんの技術革新で消費電力はもっと下がるはずです。たとえば、10年後にそういった技術と我々の次世代太陽電池の技術革新が出会えば、スマホの自動充電も夢ではないと思っています」

トナー開発から新規事業まで。入社当初から一貫する社会貢献に対する思い

田中所長はリコーに入社して約20年、プリンターのトナーの生産効率に関する技術開発に携わってきた。「トナーの仕事をしているときは、将来、太陽電池や宇宙関連技術に関わるとは夢にも思わなかった」と田中所長は笑うが、それでも、当時と今では、基本的な思いは変わっていないという。

RICOH Futures BU Energy Harvesting事業センター 田中哲也 所長

「トナーの開発の仕事では、オフィスで働く人の仕事が便利になることを目指していましたし、今も、充電の手間をなくして人々の生活を便利にしたいと思っています。入社当初から、技術開発で世の中に貢献したいという思いをずっと持っています」(田中所長)

その気持ちは、2036年の創業100周年に向けてリコーが掲げる「“はたらく”に歓びを」というビジョンにも通じる。田中所長は、リコーの提供する価値で人々が快適に働ける環境を実現したいという思いに加えて、共に働くメンバーに対するこんな思いも抱いている。「社員が生き生きと働いていないと、よいサービスは提供できません。このプロジェクトのメンバーは、自分が手がけた商品で人々を笑顔にしたいという願いを持っています。それを実現してもらうために、社員が楽しく働きながら世の中の人たちに喜びを与えることができる、そんな働く環境作りを目指しています」(田中所長)

「儲ける経営より儲かる経営」を体現する太陽電池のプロジェクト

使い捨て電池に代わる電源として次世代太陽電池の普及を進める上での課題が、耐久性とコストだ。商品化に向けて強化してきた発電デバイスの耐久性をさらに上げること。そして、材料や生産工程の最適化によるコストダウンを実現し、顧客が手に取りやすいリーズナブルな価格を実現していく見込みだ。

リコーは、次世代太陽電池が再生エネルギーの未来にも大きく寄与すると見込んでいる。現在、太陽光発電は主に、屋根の上や山の法面などに設置したパネルが使われているが、自然を切り崩してパネルを置く方法が問題視されている。しかし、軽量または、フィルム状の次世代太陽電池を活用すれば、都市部での大規模な太陽光発電が可能になる。

「今の一般的な重い太陽光パネルに比べて軽い次世代太陽電池なら、ビルの壁や窓ガラスに貼れます。すると、多くの面積を確保できてまとまった電力が発電できます。個人が使うデバイスだけでなく、大規模な太陽光発電への活用という点でも、フィルム型の次世代太陽電池の需要は高まると見込んでいます」(田中所長)。

リコーの創業者・市村清氏が伝えたことの中に「儲ける経営より、儲かる経営」という言葉がある。儲けようとするのではなく、世の中に求められる事業を行えば、自然に収益は上がるという教えだ。リコーの次世代太陽電池プロジェクトは、この創業者の考え方を象徴している。

田中所長は、次世代太陽電池の事業に携わってから今に至るまで、この言葉を信念にしている。「社会貢献をしていくためには、今の事業規模で満足していてはいけないと思っています。世の中のためになることを追求すれば、自然とビジネスも広がっていくはずです。私たちはリコーの新規事業を進める部署として、そういう思いを持って仕事に取り組んでいます」。

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