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RICOHが提供しているクラウドストレージサービスであるクオンプにおいて、従来利用していたエンタープライズストレージの問題(IO性能/スケーラビリティ/コスト)を解決する必要があった。このために、スケーラブルな分散ストレージシステムCastoroをスクリプト言語Rubyで設計開発した。
サービス特性やサービスで扱うファイルオブジェクトの特性、ファイルオブジェクトに対するアクセス特性を考慮して設計することが重要であった。全体を統括するコンポーネントを設けず、IPマルチキャストを利用してスケールアウト可能なアーキテクチャを採用した。
結果として利用していたエンタープライズストレージに比べて、4倍のIO性能を持つストレージシステムを単位容量あたり1/10のコストで実現することができた。また、ストレージノードの障害復旧や追加交換も、システム停止無しに実施可能となった。
中心軸距離値分析に基づく手の形状の認識手法を開発した。中心軸とその対応する距離値がすべての形状情報を含んでいることから着想したものである。実際、手は3種類の重要な点、すなわち、指先、指の付け根、手のひらの中心、で表現できる。これらの点は中心軸上で急な距離値勾配変化を持つ特別な点となっている。手の形状のそのような点は指や手のロバストな検知に使えることが実験で示されており、さらに、手のジェスチャーの理解にも役立つと期待される。
大量のウェブデータは個人利用にも企業利用にも価値のある情報源を提供する。ウェブページから情報を自動的に抽出することで、情報検索、意見マイニング、データ統計やトレンド分析などのいくつかのアプリケーションを大いに容易にすることができる。本稿では、単一ないし複数のオブジェクトについて説明するウェブページからオブジェクト関連の情報を抽出、統合するための方法を提案する。オブジェクトカテゴリ、オブジェクト識別子および属性値情報の3種類の情報が抽出される。エンティティ解決テクニックと属性名マッチングと値の正規化手法により、異なったウェブページからの同じオブジェクトは統合される。さまざまなウェブサイトからのウェブページにおける実験により我々の方法が有効であることを示した。抽出、統合の結果に基づくオブジェクト指向サーチエンジンを構築した。与えられたキーワードに対して、関連カテゴリ、オブジェクト、属性名および属性値を返すものである。表現形式として、単一オブジェクト、カテゴリ木または比較表が選択できる。初期の使用フィードバックによりサーチエンジンの有用性を確認した。
酸化物半導体MgIn2O4を活性層に用いた新規な電界効果型トランジスタを作製した。更に、活性層に対する置換ドーピングの効果を検証し、活性層中のMgをAlで置換することによってキャリアの生成を効果的に制御できることを見出した。活性層にAlをドープしたTFTでは、ノーマリーオフの特性と高い移動度が両立する。また、従来の酸化物半導体TFTでは、半導体成膜時の酸素量に依存してTFT特性が敏感に変化することが問題となっているが、ドーピングによるキャリア制御を行うことで酸素量依存性が緩和され、広いプロセスマージンで高性能なTFTの作製が可能となることを示した。
デジタルカメラで各社10倍以上の高倍率ズーム化が進む中で、特に望遠領域において従来のコントラスト方式ではAF時間が遅いことが問題となっている。そこで、全ズーム領域に対応して、かつ、動いている被写体に対しても高速にAFするために二次元のエリアセンサーを用いた測距ユニットを、レーザー溶着による自動組み立て装置とともに開発した。この測距ユニットを2011年2月発売のデジタルカメラCX5に搭載し、AF時間は前機種CX4に比べ最大1/2の短縮を実現したので報告する。
リコーGELJETプリンタはビジネスユースプリンタとして高性能、高生産性を特徴としているが、コントローラにおいては、高性能エンジンに追随するため、高速なカラー描画処理が必要であり、そのため非常に高性能のCPUが必要となる。一方、環境意識の高まりから低消費電力化の対応も同時に必要であり、特に、スタンバイ電力の低減は最重要技術課題であった。省エネ対応マルチコアSoC:FIGOは、高性能、低消費電力を両立し、かつ低コストを実現するために開発したSoC(System-on-a-chip)である。ここでは、SoC:FIGOのアーキテクチャと省エネ技術の詳細について報告する。
当社のインクジェットプリンターにおける従来のインク供給方式では、ヘッドタンク内のインクを所定量消費すると印刷動作を中断し、ヘッドタンク内インク量及び負圧を検知するためのフィラーを、本体側に設置した本体側センサによって位置検知し、インク供給動作を行ってから印刷動作を再開する「間欠供給方式」となっている。
オンキャリッジフィラーセンサ(OCFS)方式インク供給システムでは、従来のフィラー付ヘッドタンクを用い、本体側センサに加え、キャリッジ上にフィラー位置を検知するセンサを追加し、相方のフィラー位置検知結果からインク供給上限値とインク消費下限値を算出、制御管理することが可能となり、印刷中のインク供給を行う「常時供給方式」を実現した。
フルオラン化合物をロイコ染料として用いたサーマルリライタブルメディアにおいて、エチレンビニルアルコール樹脂と粘土鉱物をハイブリッド分散させた複合体を酸素遮断層として設置し、ロイコ染料の酸化劣化を大きく改善した耐光性リライタブル表示メディアを開発した。 この高耐光リライタブル表示メディアは、直接太陽光(300万Lux・h)に直接晒されても、従来の表示メディアに比較して、画像残存率で4倍、非画像部の白色度で3倍、画像消去性で20倍改良されていることを確認している。
更に、新規開発した粘土鉱物をハイブリッド分散した高耐光リライタブル表示メディアは、従来の水素結合型ガスバリア樹脂に代表されるポリビニルアルコールコーティング層の最大の欠点である高湿度下での機能低下を大きく改善しており、これまでに適用が困難であった、屋外使用に期待がもたれる。
本論文ではプリンタの書き込み光源として開発した780nm帯40チャンネル面発光型半導体レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)アレイについて報告する。本VCSELアレイは、信頼性に有利な、Alを含まない圧縮歪GaInPAs量子井戸活性層と傾斜基板と異方性高次モードフィルタにより、偏光単一方向制御と大きなシングルモード出力を達成した。また、多層膜反射鏡の一部に設けた放熱構造によって、発熱による特性劣化を大幅に改善し、高出力での安定動作を実現した。以上から、長期信頼性に優れた、高密度で高速書き込みが可能なVCSELアレイを実現した。
プロダクション・プリンティングにおける高画質化に向けて、光源に40チャンネルのVCSELアレイを搭載した書き込み光学系を開発した。高画質化にはドットの位置制御や細線再現性の確保が必要であり、本書き込み光学系では、走査線のボウ・スキュー補正、表裏倍率補正といった補正技術により実現している。
これらの補正技術が有効に機能するには、40チャンネルのビームの光量安定化と、それらが形成する走査線のピッチ安定化が求められ、その技術も併せて開発した。本VCSELアレイ技術は、高速・高密度が求められるリコーのデジタルカラー複合機に広く展開していく予定である。
電子写真作像プロセスにおける液体冷却技術を世界で最初に開発し、その実用性を確認した。
本技術は、現像ユニットに装着するための液体冷却ジャケットを有し、超高速なコピー/プリンタの現像ユニットにおける温度上昇を回避する。このジャケットは、アルミプレートと銅パイプにより構成され、液体が循環する。液体の温度は室温とほぼ同じため、現像ユニットよりその温度上昇を低くおさえながら、省スペースで受熱する。また、現像ユニットと液体冷却ジャケットの間には、熱伝導シートとポリエチレンテレフタレートフィルムが配され、液体冷却の高い冷却特性を維持しながら、現像ユニットの装着・分離を可能にしている。本技術により、75PPM、幅1,320mmの試作機における現像ユニットの温度上昇は、トナー固着温度以下におさえられた。
LPやMFPに搭載されている半導体デバイスが故障した場合、ユーザー側で故障原因を特定する事は非常に困難であり、半導体デバイスメーカーに頼らざるを得ない問題がある。しかし、半導体メモリデバイスの故障解析は、ロジック製品とは異なりメモリデバイス用のテスターなどで故障症状を再現できれば、あるbit範囲で故障箇所を特定できる。そこで、今回、新たにSRAM専用の故障解析用テスターを開発し、LPに搭載されている1Mbit-SRAMの特定rowアドレス不良に対してその故障原因を調査した。この不良は特定rowの複数アドレスにて「0」書き込み時のみデータが反転する。開発した専用テスターにて故障アドレスにアクセスし、Pull-down NMOSトランジスタのVth特性がホットキャリアにより変動している事が確認され、構造解析からトランジスタのゲート長が通常の製品に比べ、小さくなっている事が分かった。
プリンタおよび複写機の開発では開発期間の短縮やコストの削減が重要な課題の一つであり、解析技術の導入などで開発の効率化が進められている。しかし、搬送時の紙の挙動は影響因子の多さなどから解析が難しいものが多く、開発期間短縮の妨げになっている。そこで、効率的な製品開発環境を構築するため、定着機通紙時の用紙“しわ”発生現象のメカニズム解明と事前評価手法の開発に取組んでいる。本研究では、用紙しわの発生過程の観察に基づいて用紙の波打ち形状を幾何学的にモデル化し、波打ちのニップ部への噛み込みモデルと組み合わせてしわの発生限界と支配因子の関係を定式化、しわ発生の代用特性として“波打ち角度”を導出した。さらに、用紙しわの発生過程を定量的に評価するため、用紙の搬送速度偏差と波打ち形状の可視化装置を開発し、上記代用特性を用いることでしわ発生の余裕度を評価できる目処を得た。
一成分接触現像ニップにおける電荷移動現象について調査した結果、感光体表面に形成された静電潜像の電位が、現像ニップ通過の前後で変化していることが確認された。これは、現像ローラに印加された現像バイアスが、トナー層を伝って感光体表面に充電される現象であり、このときのトナー層内を流れる電流量は、感光体と現像ローラの速度差に依存することがわかった。そこで、現像ニップ中のトナー層の動的抵抗を想定した感光体表面の充電モデルを作成し、注目すべき制御因子や、誤差因子への影響に関する考察を行った。
多重極展開の方法と境界要素法による静電場解析を用いて2つの球形トナー間に働く静電的付着力を計算した。その結果、同極性トナー間でも表面電荷分布がより局在している場合は間隙が小さいところで引力になることがわかった。この力はトナー表面上の局所電荷が他方のトナーの樹脂の部分を誘電分極させて、その分極電荷との間に働く引力である。このような力により感光体上ではトナーが凝集し、保持されていると考えられる。
リコー ユニファイド コミュニケーション システムは、人と人とが映像/音声を中心とした多様な情報(ドキュメント,テキスト,手書き入力等)を統合(Unified)して、自由に共有/コミュニケーションする環境/機器を提供するクラウドサービスである。サービスの一つであるビデオ会議システムは、専用端末を起動するだけで簡単に遠隔地とビデオ会議を行なうことができる。ユーザは特別な設備投資は要らず、インターネット環境が有りさえすれば、リコー ユニファイド コミュニケーション システムを介して「いつでも・どこでも・だれでも・だれとでもコミュニケーション」することが可能となる。
imagio MP C5001/3301シリーズはMP C4500/C3000シリーズ以来の高画質、高信頼性、優れた使いやすさという特徴は継承しつつ、新規技術の搭載により高い省エネルギー性能を達成している。また、ウォームアップ時間の短縮/新規周辺機の採用/封筒対応力向上など、広範にわたりお客様の使いやすさを追求した中高速カラー複合機となっている。主な特徴は以下である。
1) TEC値で約25~50%削減した省エネルギー性能(前進機比)
2) ウォームアップタイム、スリープ復帰時間の短縮
3) 新開発1パス両面ADF搭載によるスキャナ生産性の向上
4) 小サイズ用紙対応給紙トレイ、サイドトレイの採用
imagio MP C2201シリーズは前身機のimagio MP C2200シリーズのコストパフォーマンスとコンパクトデザインという優れた基本コンセプトは継承しつつ、独自の省エネ技術の採用により消費電力の大幅な削減を実現している。また、スリープモードからの復帰時間短縮、用紙対応力の強化も実現しており、お客様のコスト削減と業務効率向上に大きく貢献したデジタルカラー複合機である。主な特徴は以下のとおりである。
1) 新開発のカラーQSU定着装置によるTEC値1.07kWh/スリープ復帰10 secの省エネ性能
2) 高画質&省エネ性能向上に貢献するPxPトナーの採用
3) 新規コントローラ搭載によるスリープ電力0.97Wの実現
4) 小サイズ対応トレイ標準搭載による封筒対応力強化
PP事業分野の製品に対する顧客要求としては、オフセット印刷物と同等の画像品質や、連続稼動を含む高い生産性などがある。カラープロダクションプリンタ RICOH Pro C751EX/C651EXは、それらの要求に答えるため多くの新規技術を搭載し、より高い製品仕様を達成した製品である。主な新規搭載技術は以下の通り。
・VCSELアレイ光学系
・現像冷却液冷システム
・ActiveTonerDensityControl
・狭ギャップDC現像
・循環型TCRU対応設計
・ノンストップ廃トナー交換
2011年12月1日発行
発行 | 株式会社リコー 研究開発本部 〒224-0035 神奈川県横浜市都筑区新栄町16-1 TEL. 045-593-3411(代) |
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発行責任者 | 野中 照元 |
事務局 | 進藤 由貴 |