近年の日本では、労働人口の減少に加え、労働意欲の低下が深刻な問題となっています。Gallup社の国際比較調査[1]によると、日本の「熱意あふれる社員(Engaged)」の割合はわずか5%でした。これは世界平均(23%)を大幅に下回り、調査国の中でも最低水準となっています。また、日本の一人当たり労働生産性はOECD主要先進7カ国の中で長年下位に低迷しており[2]、人口減少社会において持続的な経済成長を実現するためには、社員の仕事への意欲を高めることが不可欠です。
こうした背景から、企業では人手不足を補うために、貴重な人材を早期かつ着実に育成することが重要な経営課題となっています。特に、組織リーダーによる1on1※の重要性が高まっており、信頼関係の構築や成長支援を通じてメンバーの仕事への意欲を高めることが期待されています。しかし、日本の人事部 人事白書2020[3]によると、1on1の課題は「上司の対話スキル不足」にあるとされており、傾聴力・承認力・質問力の不足が信頼関係構築や部下の自律的成長を阻害していると考えられます。
一方で、育成課題はリーダー層だけに限りません。営業・販売・接客など顧客対応職種では、顧客との信頼構築、課題のヒアリング力や提案力を高める対話スキルが求められています。また、新入社員については、報連相(報告・連絡・相談)、挨拶、敬語などの基本的なコミュニケーションスキルの習得が不可欠です。これらのスキル不足は、現場の生産性や顧客満足度に直結するため、早期育成が企業競争力の鍵となります。
しかしながら、従来の研修では座学や集合型トレーニングが中心であり、個別最適化や即時フィードバックが難しく、現場での実践力向上に時間がかかるという問題がありました。
出典:
AIアバターとの対話を通じて、ビジネスシーンでの対話スキルを向上させるAIトレーニングシステムを開発しました。
このAIトレーニングシステムは、AIアバターとの対話シミュレーションを行っている間の利用者の発話内容を取得し、言語データを解析します。トレーニング終了後に、この解析データをもとに、利用者自身が対話分析結果を振り返り、改善に取り組むことで、ビジネスシーンで重要な対話スキルを向上させることができます。
リコーのAIトレーニングの特徴は以下の通りです。
従来の対話スキル研修では、研修時間や実施回数に制約があり、十分なロールプレイ体験を積むことが難しいという課題がありました。また、講師や周囲の参加者からフィードバックを受ける機会も限られていました。
リコーのAIトレーニングシステムは、AIを活用した対話型のロールプレイにより、人手をかけることなく、いつでも・どこでもトレーニングを実施することが可能です。実践的な対話シーンを繰り返し体験することで、ビジネスシーンに必要な対話スキルを効率的に習得できます。
リコーのAIトレーニングシステムは、AIアバターとの対話内容をリアルタイムで解析し、あらかじめ設定した評価軸に基づいて対話スキルの達成度を数値化します。
評価軸は自由に設定できるため、傾聴力・承認力・質問力など、目的に応じたスキル評価が可能です。
さらに、実際の発話内容をもとに、AIが具体的な改善点や改善例をフィードバックします。単なる結果提示にとどまらず、「どこをどう改善すればよいのか」が明確になるため、実践的かつ継続的なスキル向上につなげることができます。
リコーのAIトレーニングシステムは、専門知識がなくてもロールプレイを作成できる「カンタンロールプレイ作成機能」を搭載しています。ガイドに沿ってシーンや目的を入力するだけで、トレーニング用の対話シナリオを簡単に作成できます。
また、AIチャットボットと対話しながらロールプレイ内容を作成することも可能です。現場の課題や育成目的に応じたオリジナルのトレーニングを短時間で柔軟に設計できます。
本システムは、ロールプレイの作成から実施後の評価までをオールインワンで成立させるデータフローと、大規模言語モデル(LLM)を中心に複数のAIエージェントを統合管理し、より高度なタスクを実行するLLMオーケストレーションを特徴としています。
利用者の要望に応じて、ロールプレイに必要な情報(目的・状況・登場人物・難易度・評価観点など)を対話的に収集します。不足情報があれば追加質問を行い、曖昧な表現は前提や判断基準として明文化することで、ロールプレイ作成経験の有無によらず、良質なトレーニングを作成できます。
対話で簡単にトレーニングを作成
作成したトレーニングのロールプレイ条件に従い、会話の展開・出題・反応の粒度を制御しながらロールプレイを提供します。進行中は状態(会話の目的達成度、制約条件、経過など)を踏まえてシナリオを継続し、終了条件も自動で判定します。また、PCだけではなくスマートフォンでも利用できるUIを提供し、場所を問わず体験できます。
音声対話とテキスト入力の両方に対応 モバイルブラウザの利用もサポート
ロールプレイの対話結果を評価条件に照らして解析し、改善に直結するフィードバックレポートを生成します。レポートは、「総評」「チェックリストの達成状況」「各対話のアドバイス」で構成され、大局的評価と局所的アドバイスの両方を含みます。レポートは、局所的要素から大局的要素の順で生成され、先に生成した要素を入力として活用することで要素間の整合性を保ったレポートの生成を可能としています。
フィードバックレポート
私たちが開発したAIトレーニングは、リコーの使命と目指す姿「“はたらく”に歓びを」を起点に、人中心のソリューションを追求し、世の中の働き方を変革したいという想いから生まれました。私たちは人々がより充実した働き方を実現し、個人や組織の成果を最大化するお手伝いができるよう、このシステムを通じて、想いを形にしていきます。
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