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ガス・においセンシング

気体成分の情報を利用したデジタル変革

背景

視覚と聴覚の情報がカメラとマイクによってデジタル化されることで大きな価値が生み出されてきました。一方で、嗅覚の情報をデジタル化する技術は確立されておらず、「なんとなくいつもと違うニオイがする」を見える化するのは困難です。

こんなことを解決

暮らしや働く現場の空気の異常を検知して損失や事故を防ぎたい、香気成分の変化を捉えて商品開発や検査に活用したい、体臭/口臭/便臭と体調の関係を研究したい、このような課題にはいろいろな種類のガスやにおい(複合ガス)を一度に計測する技術が必要です。「なんとなくいつもと違うニオイがする」場合のにおいの数値化を簡便に行えるよう、リコーはさまざまな現場環境でリアルタイムに複合ガスを計測できる技術を開発しました。

ガス・におい計測装置の試作機

技術の特徴

イオン化したガス・におい分子の種類を特殊な交流電界でふるい分けたあと電流として検出するField Asymmetric Ion Mobility Spectrometry(FAIMS)という技術を採用しています。FAIMSは特殊な環境下でしか使えない化学分析用の技術ですが、リコーは一般的な環境でも使えるようにFAIMSのコア部分を独自開発し、改良を行いました。ポンプで吸引した気体をリアルタイムに連続計測することで、気体の組成の変化をとらえることができます。試作機は高さ120mm、幅220mm、奥行160mmで、持ち運びとバッテリー駆動に対応します。

  • 気体成分の分子構造のわずかな違いを分別
  • 空気の分子数に対してppbオーダー(10億分の1程度)の極めて薄い濃度の変化を検出
  • 嗅覚とは異なり、においに慣れることなくずっとリアルタイムに計測

従来技術では困難な酸性・アルカリ性を含む混合ガスを分離検出した事例

(腸内環境の可視化に向けた便臭成分の定量計測の事例)

混合ガスの組成の移ろいを連続的に計測した事例

(従来のニオイセンサでは難しかったリアルタイムのロギングが可能に)

リコーの想い

長年取り組んできたインクジェットヘッド開発で培ったMEMS技術を活用したイオン制御機構と、電源回路で培ったエレキ技術を活用した駆動回路が本技術を可能にしました。今後は、多様な現場の課題に応えられるように、リアルタイムでガス・においをデータ化し、活用するデジタルサービスの構築を目指します。そしてリコーの360°画像や音声認識技術との連携で、現場の五感をまるごとデジタル化することで、暮らしの中やはたらく現場における新たな価値を提供していきます。

本技術の分類:分野別「分析・シミュレーション」