Skip to main content Skip to first level navigation
Breadcrumbs
Main content

40チャンネル面発光型半導体レーザーアレイ素子(VCSEL)

リコーは、同時に40本のレーザー光を出射し、高画質で高速なプリンティング品質を実現する、独自のVCSEL素子を開発しました。

本VCSEL技術についての論文(Low Thermal Resistance 780nm GaInPAs/GaInP 40ch VCSEL Array for Laser Printers)が、MOC2011(17th MicroOptics Conference)で論文賞を受賞しました。また、本技術の開発者2名が平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞(開発部門)」を、4名が第31回櫻井健二郎氏記念賞を、本技術が第9回レーザー学会産業賞「優秀賞」を受賞しました。

商業印刷の分野で求められる高画質と高速性を同時実現

従来、商業印刷などの一括・大量印刷分野は、オフセット印刷が主流でした。しかし、近年では小部数、短納期、可変情報追加(パーソナライズ化)、電子情報原稿との連携等が求められるようになり、商業印刷の分野でもデジタル化が進んできています。リコーは、これらのニーズに応えるべく、プロダクションプリンターや高速複写機などの商業印刷の分野で求められる高画質と高速性を同時に実現させる40チャンネル面発光型半導体レーザーアレイ素子(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を開発しました(図1)。

図1:1mm2以下の面積に40の光源を配置したリコーの40チャンネルVCSEL

リコーは、プロダクションプリンターや高速複写機の光書き込み装置の光源として、40本のレーザービームを同時発光できるVCSELを用い、高画素密度(1,200dpi×4,800dpi)を可能にしました。これにより、極めて高い画質と、高い生産性を生み出す高速性を実現しました。文字や細線をより鮮明に、画像をよりリアルに再現することができます。

VCSELとは

従来の端面発光型半導体レーザー素子に対して、VCSELは基板面に垂直方向にビームを出射させることができる半導体レーザー素子です。端面発光型半導体レーザーでは、アレイ素子としては一次元(直線配列)の配列になるため、サイズが大きくなってしまうなど、高密度化には限界がありました。これに対し、VCSELでは二次元的に配列することが可能であるため、従来と比較して格段にレーザービームの高密度化を図ることが可能となります。

4800dpiを可能にしたリコーのVCSEL

リコーのVCSELは世界で初めて40本という多ビームによるレーザー書き込みを成功させ、高画素密度(4800dpi)を可能にしました。

図2は、実験室で40本のビームをすべて発光させた様子を撮影したものです。40本の赤いレーザー光が出射されているのが分かります。この40本の光の一本ごとに異なる画像情報を乗せて40本同時に書き込むため、高出力で高生産性を実現することができます。

*白いもやは、レーザー光を見やすくするためのものです。図2:実験室での40チャンネルVCSELの発光実験

高画質、高速化、信頼性への挑戦

リコーでは、プロダクションプリンターや高速複写機用として必要とされる高画質・高速化のために、VCSEL光源のレーザービームの高密度化、高出力化を図りました。さらに、安定した画像品質を得るための信頼性を追求しました。これらの要求を実現するために、リコーの40チャンネルVCSELでは以下のように技術課題を解決しました。

(1) 画質向上のための画素の高密度化

40ビームVCSEL光源を1mm2以下の面積に高密度に配列し、さらにこの40ビームの高速変調を可能とする独自のVCSELドライバを開発することで、4800dpiという高画素密度でのレーザー書込を可能としました。また、光出力の応答性を大幅に向上することで、特に斜め細線や孤立ドット再現性が優れた画像が提供できます。

(2) 高速化のための高出力化

発光効率が高い独自活性層の採用と、低い熱抵抗のデバイス設計による放熱性の向上、および不要な高次モードを除去するリコー独自の新規フィルターを採用したVCSEL構造を開発し、業界での世界最高となる高出力を達成しました。これにより、高画質を維持しながら高速化を実現します。

(3) 商業印刷用途として安定した画像品質を得るための高信頼性

レーザービームの特性のばらつきは画像濃度のムラなどの不具合につながる恐れがあります。リコーのVCSELは新規開発のプロセス技術と放熱構造により、素子の特性均一化・長寿命化・信頼性の向上を実現しています。

これらにより、リコーは従来にない高速、かつ高品質の画像形成を実現しました。

VCSELの実用化

高画素密度(1,200dpi×4,800dpi)を実現するリコーの40チャンネルVCSELは、

カラープロダクションプリンター
RICOH Pro C9110/C9100」、
RICOH Pro C7110S/C7110/C7100S」、
RICOH Pro C751EX/C651EX」、
RICOH Pro C5210S/C5200S」、
RICOH Pro C5100S/C5110S」、
モノクロプロダクションプリンター
RICOH Pro 8220S/8210S/8200S」、
RICOH Pro 8120S/8110S/8100S」、
ならびに、高速デジタルフルカラー複合機
RICOH MP C8002 SP/C6502 SP」に搭載されています。

VCSELの応用開発

さらにリコーは、VCSEL素子の発光効率向上と発光チャンネルの大規模集積化により、アレイの大幅な高出力化を実現した「ハイパワーVCSELモジュール」を開発しました。本モジュールには「高い出力性能」、「コンパクト性」、「温度変化に対する波長安定性」の3つの技術優位性を持つがあります。リコーは今後、レーザー加工機、レーザーパターニングなどの表面加工、非加熱加工、センシングといった用途への展開も見据え、さらなるアプリケーション開発を進めていきます。