生物多様性依存とインパクト評価

LEAPアプローチに沿った自然関連の課題特定と評価

TNFDから提供されているLEAPアプローチに沿って、自然関連の依存とインパクトを診断しました。

自然との接点の発見

リコーグループの企業活動の内、複合機、トナーをはじめとした画像機器とその消耗品の製造、およびサーマルペーパーの製造を自然関連の依存とインパクトが大きいと推定して評価を行いました。さらに、これらの活動に共通する重要材料として、用紙の製造についても評価を行いました。 自然との接点の発見には「ENCORE*1」を活用しました。評価結果を表1に示します。 テキスト ボックス次いで、得られた結果をもとに、画像機器・サーマルペーパー製造拠点の位置と、水資源および生物多様性の状況についてマッピングを行い、優先地域の特定を行いました。水資源については「Aqueduct*2」、生物多様性については「IBAT*3」を活用しました。

表1リコーグループの主要事業における自然との接点の抽出

操業内容 依存 インパクト
地下水 表層水 バイオマス 水循環 植生による洪水や暴風雨からの保護 水の使用 水質汚染 土壌汚染 廃棄物 大気汚染 GHG排出 騒音光害
画像機器の製造 M M H H M M
画像機器消耗品の製造 M H H M H
サーマルペーパーの製造 VH H H M
印刷用紙
サーマルペーパー原紙の製造
(バリューチェーン上流)
VH VH M M VH H H M

凡例:低→影響度→高

M H VH

*1国連環境計画 世界自然保全モニタリングセンターなどが中心となって開発された、自然関連リスクの特定ツール

*2世界資源研究所により開発された、水リスクに関する評価ツール

*3国連環境計画 世界自然保全モニタリングセンターなどが中心となって開発された、生物多様性リスクに関する評価ツール

依存とインパクトの診断

自然との接点として抽出された依存・インパクトの一部、および生物多様性へのインパクトについて、バリューチェーンを通じた影響の深刻さを把握するために、日本で使用される画像機器・サーマルペーパーの代表的な製品についてライフサイクルアセスメント(LCA)を行い、ライフサイクル影響評価手法LIME*1による評価を行いました。
画像機器については、印刷用紙に起因する負荷が60%以上を占めるという結果(図1)のため、印刷用紙の影響を除いた上で、生物多様性に対する評価が行える影響領域別の評価結果と、バリューチェーン別の評価結果を示します(表3)。気候変動に対する影響が大きく、特に原材料調達段階の影響が大きいことが分かりました。また、生物多様性に対する評価が行えない水や土壌・大気汚染への影響領域についても、主に原材料調達段階の影響が大きいことが分かりました。
同様の評価をサーマルペーパーについて行った結果(表4)、気候変動と森林資源消費の影響が大きく、バリューチェーン別では特に原材料調達段階による影響が大きいことが分かりました。これらは主に基材と剥離紙の原材料である紙材に起因しているものです。

図1 画像機器のバリューチェーンを通した生物多様性への影響

印刷用紙の使用量は、評価対象とした製品の標準的な生涯使用量をベースに、裏表印刷や複数ページを1枚の用紙にまとめる印刷を考慮して推定

image:Product Safety Organization Chart

表3 画像機器(印刷用紙除く)のバリューチェーン段階ごとの環境影響

影響領域 LIMEにおける生物多様性の評価対象
気候変動 土地利用 化石燃料消費 鉱物資源消費 森林資源消費 廃棄物
ENCOREによる抽出結果*4 関連する自然資本

重要度
GHG排出 バイオマス 廃棄物
H M
LIMEによる生物多様性影響評価結果 原材料調達 VH M L L M L
生産 M L L L L L
流通 H L L L L L
使用・維持管理 H L L L L L
廃棄・リサイクル M L L L L L

凡例

L
<1%
M
≧1%
H
≧5%
VH
≧30%

数値はLIMEにより算出される生物多様性に対する寄与の割合

影響領域 その他影響領域
取水(淡水) 生態毒性(水域) 生態毒性(陸域) 大気汚染 騒音
ENCOREによる抽出結果*4 関連する自然資本

重要度
地下水表層水 水質汚染 土壌汚染 大気汚染 騒音や光害
M H H M M
LIMEによる生物多様性影響評価結果 原材料調達
生産
流通
使用・維持管理
廃棄・リサイクル

凡例

<1%
≧1%

≧5%

≧30%

数値は個々の影響領域における寄与の割合

表4 サーマルペーパーのバリューチェーン段階ごとの環境影響

影響領域 LIMEにおける生物多様性の評価対象
気候変動 土地利用 化石燃料消費 鉱物資源消費 森林資源消費 廃棄物
ENCOREによる抽出結果*4 関連する自然資本

重要度
GHG排出 バイオマス 廃棄物
M
LIMEによる生物多様性影響評価結果 原材料調達 VH H L L VH L
生産 H L L L L L
流通 M L L L L L
使用・維持管理 M L L L L L
廃棄・リサイクル H L L L L L

凡例

L
<1%
M
≧1%
H
≧5%
VH
≧30%

数値はLIMEにより算出される生物多様性に対する寄与の割合

影響領域 その他影響領域
取水(淡水) 生態毒性(水域) 生態毒性(陸域) 大気汚染
ENCOREによる抽出結果*4 関連する自然資本

重要度
地下水表層水 水質汚染 土壌汚染 大気汚染
VH H H M
LIMEによる生物多様性影響評価結果 原材料調達
生産
流通
使用・維持管理
廃棄・リサイクル

凡例

<1%
≧1%

≧5%

≧30%

数値は個々の影響領域における寄与の割合

*4 ENCOREを用いた評価で依存やインパクトとして抽出されなかったもの、もしくは依存やインパクトの影響度が低いものは”―”で表記
影響度については、表3は「画像機器の製造」「画像機器消耗品の製造」の内、高いほうを選択、表4は「サーマルペーパーの製造」「サーマルペーパー原紙の製造」の内、高いほうを選択
インベントリデータベースとして、産総研 AIST-IDEA Ver.3.4を使用

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