ニュースリリース
2017年3月15日
国立大学法人東京大学
株式会社リコー
ブルーイノベーション株式会社
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻の鈴木真二教授、土屋武司教授、ラビ クリストファートーマス助教らの研究グループは、事務機器・光学機器メーカーの株式会社リコーと、ドローン・サービスプロバイダであるブルーイノベーション株式会社と共同で、非GPS環境下でも安定して自動飛行するとともに、経路上の障害物を自動で回避できるドローンシステムを共同開発し、飛行試験に成功しました。
これにより、施設内・倉庫内の警備ならびに危険作業を伴う橋の下およびトンネルの中の点検などの、GPS信号の受信が不安定または受信ができない環境下で自律飛行するドローンの安全性が高まり、危険作業や目視が難しい場所での作業に大きく貢献することが期待されます。
本研究成果として共同開発したシステムによるデモ飛行を、2017年3月23日~25日幕張メッセで開催されるジャパン・ドローン2017*1にて予定しています。
研究の背景・課題
ドローンは、安定した姿勢制御、自動飛行という機能を活かして、構造物点検、警備・監視、測量、物流など、さまざまな業種のサービスに幅広く活用され始めています。
このドローンが自動飛行するためには、以下の手順が必要です。
・ユーザーが飛行経路を事前に設定する
・ドローンは自身の位置(自己位置)を把握し、飛行経路に沿うように自動飛行制御を行う
自己位置の把握には通常、GPSを利用しますが、橋の下やトンネルの構造物の点検、また屋内や建物付近での警備や物流といった用途にドローンを活用する場合、以下のような課題があるため、自動飛行はできず、目視内での手動操縦に頼らざるを得ません。
・GPS信号の受信が不安定、または測位の誤差が大きいため、正確な飛行ができず、墜落の危険性がある
・経路上に予期せぬ障害物がある場合、避けることができない
研究の内容
本研究グループは2016年3月16日に、IMUセンサー(注1)と3Dビジョンシステム(注2)を融合することにより、非GPS環境下において自己位置推定を行い、自動飛行が可能なドローンの飛行試験に成功したことを発表しました。これは、東京大学が開発した安定した姿勢制御が可能なドローンシステム*2に、リコーが開発した3Dビジョンシステムを搭載したもので、移動推定をすることにより自己位置推定が可能な超広角ステレオカメラによって、非GPS環境下でも安定した自動飛行が可能なドローンシステム*3です。
今回、この超広角ステレオカメラが移動推定に加えて、飛行している経路の3次元地図の生成を、同時に行います。これにより、予定していた飛行経路に出現した障害物を検出し、ドローンが障害物を回避するという自動制御をすることにより、障害物の自動回避と自動飛行に成功しました。
リコーは産業用ステレオカメラ(注3)などの3Dビジョンセンサーを商品化しており、その技術を本システムへ応用しました。
社会的意義・今後の予定
近年、ドローンの活用は極めて重要であり、さまざまな取り組みが行われています。本システムの開発は、ドローンを有効利用する上で、学術的、工学的にも極めて重要であると考えられます。今後は、さらなる性能・信頼性向上のために現場での実証試験を行うことが必須です。
危険を伴う高所、橋の下、トンネルの中の点検などにおいて、障害物を自動回避しながら自動飛行できるドローンを用いることで、高所・危険作業現場での安全な精密点検が可能になり、ドローンの社会的有効利用に拍車がかかることが期待されます。
研究に関すること
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻 鈴木・土屋研究室
URL:http://www.flight.t.u-tokyo.ac.jp/
株式会社リコー 広報室
Tel:03-6278-5228
E-mail:koho@ricoh.co.jp
ブルーイノベーション株式会社 ドローンソリューション部
Tel:03-3293-8801
E-mail:sky@blue-i.co.jp
報道に関すること
東京大学大学院工学系研究科広報室
E-mail:kouhou@pr.t.u-tokyo.ac.jp
注1 IMUセンサー
加速度計、ジャイロなどにより移動体の3次元空間での移動を計測するセンサー装置。
注2 3Dビジョンシステム
複数のレンズを使用してステレオ画像処理を行うカメラ。今回使用したのは超広角レンズを使用して広範な領域を処理する超広角ステレオカメラ。
注3 3Dビジョンセンサー 産業用ステレオカメラ
本研究では「RICOH SV-M-S1」の技術を応用した超広角ステレオカメラを使用している。
図1. 3Dビジョンシステムによるドローンの障害物自動回避のイメージ