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ニュースリリース

室内光に適した高性能の完全固体型色素増感太陽電池の開発に成功

~ 安全性・耐久性の確保と、従来比2倍以上の発電能力を実現~

2014年6月11日
株式会社リコー

株式会社リコー(社長執行役員:三浦善司)は、このほど、室内の微弱な光源における発電性能を大幅に向上させた色素増感太陽電池の電解質を固体材料のみで構成することに成功しました。それにより、安全性および耐久性の面で大幅な優位性を確保しています。さらに、現在市場において高性能と評価されているアモルファスシリコン太陽電池(*1)に対して2倍以上の高出力を達成しました。高い発電効率と安全性・耐久性の確保で、今後ますます需要が高まると予想されるセンシング用途などの自立型電源(外部電源を必要とせずに発電可能)として実用化が期待されます。

色素増感太陽電池は、散乱光や屋内照明等の微弱光でも効率よく発電できる次世代型太陽電池として注目されています。色素の可視光吸収を利用して発電するもので、表面に有機色素を吸着したナノ(10億分の1)メートルサイズの酸化チタン粒子からなる多孔質の膜を形成した透明導電性基板と、金属薄膜を形成したガラス基板の間にヨウ素系電解液を封入したものが一般的です。さらなる発電効率の向上に加えて、液体の電解質を用いているため安全性(ヨウ素や有機溶媒の揮発や電解液漏れ)や耐久性(電解液による酸化チタンに吸着した有機色素剥がれ)に課題があり、実用化が困難とされてきました。

リコーは、これらの課題を材料、構造、製造方法における独自技術の開発で克服しました。本デバイスの構造は、複合機に用いられている有機感光体と類似しており、リコーが保有する材料技術やデバイス作製技術が活かされています。

デバイス構造を表す図


リコーが開発に成功した完全固体型色素増感太陽電池のデバイス構造

■安全性の確保

リコーが開発した色素増感太陽電池は、有機P型半導体(*2)と固体添加剤で構成されたホール輸送性材料を用いていることが特長です。これらの材料を利用する際、リコー独自の製膜技術(超臨界流体二酸化炭素:SCF-CO2(*3)下での製膜)により、従来では困難であったナノレベルの酸化チタン粒子の多孔質膜内部に上記ホール輸送性材料を高密度に充填することに成功しました。これにより、液漏れやヨウ素による腐食や人的有害性のリスクがなくなり、一般的な液体型の色素増感太陽電池のもつ技術課題を解決しました。

従来工法とリコーの新工法の違いを表すデバイス断面の電子顕微鏡写真


従来工法に比べてはるかに高密度に固体電解質の充填を可能にした超臨界充填法(電子顕微鏡写真)
※電子顕微鏡写真は、デバイス構造の模式図を反時計回りに90度回転させた向きになっています。

■発電効率の向上

電解質を固体材料のみで構成するにあたって、固体添加剤とデバイス構造を最適化することで、発電効率も大幅に向上させています。さらに室内光源波長に適した有機色素を設計することで、室内光における高い発電性能を得ることに成功しました。標準的な白色LED(200ルクス)において、市場でトップレベルの性能とされているアモルファスシリコン太陽電池(6.5μW/cm2)と比べ、新開発の固体型色素増感太陽電池は、13.6μW/cm2と2倍以上、またこれまでに発表されているもっとも高性能な電解液型色素増感太陽電池(8.4μW/cm2)と比べても1.6倍以上の優れた発電性能を確認しました。

■耐久性の確保

すでにさまざまな耐久性試験も実施しており、85℃の環境下で2,000時間後においても最大出力値の低下はありません。

私たちは、期待が高まるモノのインターネット(Internet of Things:IoT)社会(*4)に向けて、自然環境から発電する自立型電源(環境発電素子)の実現が非常に重要になってくると考えています。センシングするものの数が膨大に増え、あるいは通常の方法では電源確保が難しい場所においては、環境から電源を得る手段が必須となります。リコーは環境発電(エネルギーハーベスト)用光環境発電素子として固体型色素増感太陽電池の応用を積極的に目指します。

本件技術の詳細は、「Imaging Conference Japan 2014」(日本画像学会年次大会: 6月11日~13日)で発表いたします。また、本技術を利用した固体型色素増感太陽電池直列モジュールを設計・製造ソリューション展(6月25日~27日、東京ビッグサイト)のリコーブースにおいて展示予定です。

(*1) アモルファスシリコン太陽電池
シランガスを基板上に化学気相成長させた非晶質(アモルファス)で薄いシリコン層を有する太陽電池。アモルファスシリコン太陽電池は約1.8eVのエネルギーギャップを有し、700nm以下の短波長光を吸収して発電する。結晶シリコン太陽電池に比較して微弱光における出力が高いため、室内光で利用する太陽電池にはアモルファスシリコンが主に使用されている。
(*2) 有機P型半導体
広いπ共役(分子内の隣り合った原子同士の電子軌道の重なり)結合を有し、電子軌道上をホール(プラス電荷)が動いていくことで、電気を流すことができる有機材料。
(*3) 超臨界流体二酸化炭素
二酸化炭素が超臨界流体(臨界点以上の温度・圧力下における物質の状態であり、気体の拡散性と液体の溶解性の両方の性質を有する)状態であること。臨界温度は、31.1℃、臨界圧力は、7.37MPa。
(*4) IoT社会
あらゆるものにセンサーと通信機能が装備され、センサーが発する大量情報をビッグデータ解析し利用する近未来社会。

※なお、本研究の一部は、 (独)日本学術振興会・最先端研究開発支援プログラム(FIRST)「低炭素社会における有機系太陽電池の開発」(プロジェクトリーダー:東京大学先端科学技術研究所・瀬川浩司教授)の支援を受けて、実施されました。


| リコーグループについて |

リコーグループは、オフィス向け画像機器、プロダクションプリントソリューションズ、ドキュメントマネジメントシステム、ITサービスなどを世界約200の国と地域で提供するグローバル企業です(2014年3月期リコーグループ連結売上は2兆1,956億円・国際会計基準)。
人と情報のかかわりの中で新しい価値を生む製品、ソリューション、サービスを中心に、デジタルカメラや産業用の製品など、幅広い分野で事業を展開しています。高い技術力に加え、際立った顧客サービスや持続可能社会の実現への積極的な取り組みが、お客様から高い評価をいただいています。
想像力の結集で、変革を生み出す。リコーグループは、これからも「imagine. change.」でお客様に新しい価値を提供していきます。
より詳しい情報は、下記をご覧ください。
http://jp.ricoh.com/

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