主な質疑応答の要旨を記載しています。
株主還元をどのような考え方で実施しているか。
大山 代表取締役
株主還元方針については、配当と自己株式取得を合わせた還元性向である総還元性向を50%とする方針を堅持していく。その上で、配当利回りを意識し、利益拡大に沿った継続的な増配を目指しており、2025年度の配当見通しについては、1株当たり2円増配し、年間40円を予定している。
さらに、自己株式取得などの追加還元策は、経営環境や成長投資の進捗を踏まえながら、最適資本構成の考え方に基づき、機動的かつ適切なタイミングで実施し、株主総利回りの向上を実現していく。
少子化、人口減少により社員採用は困難になると考えるが、定年延長制などのシニア活用はどう計画しているのか。
長久 コーポレート執行役員
採用については、少子化が進み難しくなっている。広報活動などにより認知度向上や、将来性、強み、働きやすさ、成長できる環境を訴求することで就職ブランドを高めている。新入社員の採用は、ジョブマッチングなど、学生に職務がわかりやすい形で行っている。定年後の雇用延長は、世の中の動向、事業環境を踏まえ継続的に検討する。
大山 代表取締役
人的資本の強化は、企業価値向上において重要。取り組みを強化し、良い人材を呼び込みたい。
世間一般にSDGsが注目されている。一例として女性の管理職比率を教えてほしい。
また、政府では2050年までに実質CO2ゼロの方針を出しており、工場で再生可能エネルギーを使用した電力を使うなどの具体的な事例があれば教えてほしい。
長久 コーポレート執行役員
2024年度の当社の管理職のうち女性の占める比率はリコー単体では8.7%、国内のリコーグループでは8.4%、グローバル全体では17.2%。
鈴木 コーポレート執行役員
再生可能エネルギーの導入は積極的に進めている。脱炭素の取り組みについては、スコープ1、2は2050年に実質ゼロ、スコープ3についても同様。再生可能エネルギーについては2040年にRE100の達成を目標としている。現在、生産拠点のうち特に主要な複合機の組み立てをしている拠点については再生可能エネルギーで100%の電力を賄っている。今後も積極的に、経済合理性を考えながら進めていきたい。
大山 代表取締役
当社ではSDGsについては非常に重要な目標と認識し、ESG経営に邁進している。
米国の関税政策について、リコーはどの程度まで準備、対応を検討しているのか教えてほしい。
川口 取締役
米国関税については、政策が出る前から諸々の対策を講じてきた。メインの米国向け製品にA3複合機があるが、こちらについてはタイの工場で作っている。従って中国からの輸出に伴う関税については、全てではないが回避できており、甚大な影響はないと考えている。2025年5月14日の2024年度通期決算発表において、中国30%、その他の国10%という追加関税の前提を想定し、年間で130億円の影響とお示しした。この数字は直接の関税影響の他、お客様に対する価格転嫁、コストダウン、経費削減などさまざまな施策を考慮した数字である。今後も動向によって数字は変化しうるが、引き続き、気を引き締めてサプライチェーンの改善に努力していく。
大山 代表取締役
当社は地政学リスクを含めたリスクについては、専門委員会を設けて迅速に対応する体制を構築している。また、コロナ禍に想定外のことが相次いで発生し、それらに迅速かつ機動的に対応してきたことで対応力がついてきている。今回も影響を最小化できるように取り組む。
エトリアは設立されて約1年が経過したと思うが、リコーと東芝テックとの間で技術基盤や部品の共通化など当初経営陣が狙ったとおり進んでいるのか。
また、リコーと東芝テックの工場の重複が起こりうるのか、工場の統合・再編を今後どう考えているのか。
中田 コーポレート専務執行役員
エトリアは2024年7月1日に設立されてまだ1年たっていないが、技術、やりたいこと、成果については期待通りに数字に表れてきている。技術に関しては東芝テック、リコーで同じようなモノの作り方をしてきているが、これに関しては新しいスタンダード作りを進めている。また、共通エンジンの構想をスタートしているができる限り今ある資産を有効に使って利益を上げたいとも考えているので、部品の共通化など、まだまだ深堀はできる。工場の重複については、OEM*ビジネスが増える計画のため、それぞれの工場をこの製品、このカテゴリーという形で専門化させる方向で進めている。
複合機、プリンター、FAXなどの依存度合いが高いと思われるが、商材ごとの売上構成が分からない。また、その事業も縮小傾向ということで株価の期待ができない。他社のように新たな分野に進出していくことが必要ではないか。
川口 取締役
商材ごとの売上構成については現在開示していない。オフィスプリンティング事業については、当社に限らず業界で年々縮小している。それを乗り越えていく上で、オフィスサービスに注力している。オフィスプリンティング事業の落ち込みをオフィスサービス事業で乗り越え、企業価値を向上させていきたい。
大山 代表取締役
当社として目指す領域は、強みを活用できる領域で大きく2つと考えている。顧客網・顧客接点を活用した新たなサービス事業、また、当社の光学・画像・印刷技術などを活用した商用・産業印刷事業の2つを拡大させていく。
取締役全員が再任となるが、経営陣刷新の検討、新任候補者の検討はしたのか。
今回全員再任とした理由を具体的に教えてほしい。
山下 取締役
毎年、取締役会の構成については議論を進めて、今の経営を監督・サポートするのに最適なスキルマトリックスを整えている。具体的な名前は申し上げられないが、議論の俎上に挙げて具体的に検討を進めている。
大山 代表取締役
当社としては、スキルマトリックスという考え方を非常に重視している。その上で、時代の変化・事業環境の変化に応じて必要な取締役のスキルが変わることに応じて、取締役会の構成も変えるべく、毎年見直しをしている。今年はその見直しを行なった結果、このような形で全員再選ということでお願い申し上げている。
エトリアに沖電気が参画することになったが、株主としては、さらなる成長を期待している。
大山 代表取締役
協業の仕方としては、東芝テックや沖電気のように資本参加するという形のほか、エトリアで開発した性能の高い、コスト競争力のあるエンジンを使いたいというプレーヤーにも対応したいと考えている。現時点で公表できるものはないが、多くのプレーヤーにパートナーになっていただきたいと考えている。
第5号議案の監査役の報酬額改定について見直しの必要性は理解するが、今回の改定は月額換算で約4割増とかなり大きく、株主としてこの妥当性の判断が難しいと感じている。他社との比較、報酬委員会での審議の経緯など教えてほしい。先月公開されたコーポレート・ガバナンスに関する報告書を見ているが、本件の記載がなかった。審議されているなら開示されるべきではないか。
大山 代表取締役
監査役の報酬が改定された理由としては、監査役に対する要請が大きくなっており、外部の方に来ていただくために適切な報酬を設定した。他社とのベンチマークを活用して、当社の報酬体系が妥当であるかどうかは確認している。具体的に、どういうベンチマークであるのかの詳細はお答えできない。
デジタルサービスは他社の製品を組み合わせているだけで独自性がないように思われる。リコーの強みは何か。
入佐 コーポレート上席執行役員
当社の強みは、現場力。グローバル140万社のお客様にサービスを提供していること。製品・サービスの競争力はまず初めにネットワーク、セキュリティを、お客様のニーズに合わせてさまざまな他社製品を組み合わせた上でITサービスとして提供し、その上にプロセスオートメーションとしてDocuWareなど自社商材に代表される収益性の高い製品・サービスも提供している。さらに今後3~5年で楽しみなのがAI。この分野には30年以上技術投資をしており、経済産業省とAIで日本企業を元気にすべく取り組みを進めている。競争力のある、知的財産(IP)として保有するソフトウェアの提供を含め、デジタルサービスをより価値あるものに高めたい。
大山 代表取締役
当社の強みである自社IPは、お客様とともに作り上げたもので自社の資産として活きている。他社製品を組み合わせることで、付加価値をつくることも当社の価値のひとつ。知的財産をもって、自社製品・ソフトウェアをますます強化していく。
社内取締役にデジタルサービスなどの開発設計の専門人材がいないように見受けられた。技術革新やサービスの高度化が進む中で、今後、開発設計の専門性を持つ人材の登用をどう考えているのか。また、その必要性についてどのように認識しているのか。
大山 代表取締役
取締役会の構成については、スキルマトリックスを重視し、現在の事業環境および事業戦略に必要な人材を社内取締役として毎年見直しをしている。
野水 コーポレート上席執行役員
社内の人材育成に関しては、デジタルアカデミーという教育プログラムを持っている。その中に技術分野も入っており、それで社員の能力向上を図っている。
今までは開発は自前で取り組んできた。これからは世の中のスピードについていくためにエコシステムを作る形で他社と協力をするなど、先端技術を常に目利きしていく。そういう部隊を設け、常に最新技術を取り込み、その知見を通してお客様に価値を届けていくという体制をとっている。これらの取り組みの中で、技術人材を育成している。
大山社長が考える「我が社にふさわしいビジネスパーソン像」について教えてほしい。
大山 代表取締役
自律的に考え行動できる人材が我々のデジタルサービスの会社として進む方向にまさに必要な人材である。また、AIを活用して事業を展開していく上で、ビジネス人材として必要なのは、AIを活用して深掘りした点と点を結びつける人材。抽象的に物事を考え、新たなことをつくりあげることができる人材も必要だと考えている。
リソース再配置について教えてほしい。
大山 代表取締役
リソース配置の大原則は、成長領域により多くの人を移し、人的資本へ投資していくこと。成熟領域については、より効率的に、そして少ない人数で回し、収益を生み出していく。その生み出したキャッシュを使いながら、成長領域に人的資本を投資し、さらに成長させていく。それによって会社がしっかりと利益を出しながら成長していく。
近年、IT・デジタルサービス業界では、人材獲得競争が激化し、専門性の高い人材の流出防止において、昇給率が大きく注目されている。2025年度の昇給率、また福利厚生の他社との優劣、改善ポイントを教えてほしい。
長久 コーポレート執行役員
2025年4月の昇給率はベースアップ含め4.6%である。社員代表の会議体で審議され、経営において決定している。福利厚生の詳細はお伝えできないが、カフェテリア方式で社員が自由に選べる形となっている。今後は、世の中の流れ、社員のニーズなどを踏まえ考えていきたい。
人材採用、育成も重要な課題だと捉えていると思うが、若い人材が中途で退職することに対してどのように取り組んでいるのか。
長久 コーポレート執行役員
若手の人材流出防止に関して、リコーにおいて離職率は高くない水準で動いている。ただし、若手の人材流出には常に注意を払っている。日々の業務において、上司と部下の1on1ミーティングを月1回のペースでの実施を奨励しており、上司に関しては、しっかり対応できるよう研修などでサポートしている。その他、半年に一度、評価面談を実施。一方、2022年4月に導入したリコー式ジョブ型人事制度において、30代の管理職登用数も増えている。これは適所適材を趣旨としているので、若手でもやる気があり実力のある社員については積極的に登用している。導入当時2.5%だった30代の管理職比率が今11.4%まで上昇している。
南海トラフ地震への対応について教えてほしい。
鈴木 コーポレート執行役員
当社では、南海トラフ地震を含めオールハザード型のBCP策定を行っている。地震に限らず水害や感染症など特定の事象にこだわらないオールハザード型のBCP対策を進めている。自治体のハザードマップも参考にしながら、毎年アップデートして危機の大きさを測定し、対応している。大きな被害が起こった場合も想定し、オールハザード型をベースにして訓練を行っているほか、昨年のような南海トラフ地震臨時情報が発せられた場合にも備えられるような対応訓練も進めている。社員の安全と事業継続に必要な対応をしていく。
ラグビー事業について事業として成り立つことが不可欠だと思う。事業化はまだ先と昨年の株主総会にて回答したが、今年はどうか。収益の柱となるホストゲームの入場者数をどう評価しているのか。ホスト会場に苦労した昨シーズンは観客収容数が少ない中でやらざるを得ないことがあったが、今シーズンは集客しやすい会場確保ができているのか。
大山 代表取締役
ラグビーについては、72年の歴史を持つ日本一にもなったこともある伝統的なクラブである。プロ化し収入面も多角化しているが、現時点では事業化については決定している事実はない。ゲームの入場者数は、まだまだ改善の余地のある状況で引き続き努力していきたい。また、その一因として会場確保に苦労したというご指摘もあるが、会場確保についてもさらなる努力を重ねていきたい。
大山社長の座右の銘と好きな本を教えてほしい。
大山 代表取締役
座右の銘は、「事の外に立ちて、事の内に屈せず」。社内事情に流されず、大局観をもって経営することを意識している。好きな本については、経営学に関する書籍は新しい考え方のものも出版されるが、哲学系では非常に初歩的なものだが、「ソフィーの世界」を読み返したりしている。