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製品・取り組み

プロフェッショナルの力を集結した「再生材使用率50%」のチャレンジ。
最先端環境性能を搭載したA3カラー複合機が生まれるまで

目次

OAメーカーからデジタルサービスの会社への変革を宣言したリコーグループ。全社の最先端の技術を集結させ、お客様の業務のDXを推進し、業務効率化を支援するエッジデバイスとなるA3カラー複合機「RICOH IM C6010/C5510/C4510/C3510/C3010/C2510/C2010」を開発した。

デザインも一新されたRICOH IM C3510

本製品が提供するもうひとつの大きな価値が、環境課題の解決だ。その特徴や開発に込めた思いを、再生樹脂開発グループの秋葉康グループリーダー(以下GL)、材料調達を手がけた原材料購買グループの酒井祐樹氏、部品成型を担当したメカ部品技術室の⼩林孝次氏、OC事業センターの吉川政昭グループリーダー(以下GL)、包装設計の末廣真也氏、そしてマーケティングの佐藤雄介氏、新井由美氏に聞いた。

業界に先駆けて取り組んできたリコーの環境経営

脱炭素社会や循環型社会の実現を全社の重要課題と位置づけ、先進的な環境対応型製品や、スマートエネルギー事業などの環境ソリューションを提供してきたリコーグループ。その主力商品であるデジタルカラー複合機のジャンルで、業務効率化の支援と高い環境性能を実現する最新機種「RICOH IM C6010/C5510/C4510/C3510/C3010/C2510/C2010」を発表した。

リコーの環境ソリューションのベースにあるのが、創業者の市村清が掲げた「三愛精神」だ。オフィスプリンティング商品の環境性能のマーケティングを手がける新井由美氏は、「リコーグループは、『人を愛し、国を愛し、勤めを愛す』という三愛精神に基づいて、地球環境にも高い関心を持ち、1994年には循環型社会実現のためのコンセプト「コメットサークル」を制定、1998年には「環境経営」を提唱するなど、業界でも先駆けて環境保全と事業成長の同時実現に取り組んできました。」と語る。

リコージャパン ICT事業本部 オフィスプリンティング事業センター 商品計画室 新井 由美氏

その取り組みのひとつが、複合機への再生材の活用だ。製品向けの再生樹脂開発を主導してきた秋葉康GLは、「これまで複合機への再生プラスチック使用率として目指してきたのは、北米のEPEATやドイツのブルーエンジェルといった環境ラベルが定めた『再生材5%』という基準でした。ただ、今回の新機種で掲げた目標は使用率50%。高い目標を実現するためプロジェクトチームを立ち上げたのが、2020年1月でした」。

高い環境性能を追求したA3カラー複合機の誕生

本製品の最大の特徴は、50%という再生プラスチック使用率や、高い省エネ性能が実現する環境負荷の軽減。そのレベルを示す数値が、CFP(カーボンフットプリント)だ。

「カーボンフットプリントは、原材料調達、生産、輸送、使用・維持管理、廃棄・リサイクルに至るまでの商品のライフサイクルにおいて発生する環境負荷を測定し、CO2の量として見える化した数値です。本製品はこのCFPを、前身機と比べて約27%低減しています」(新井氏)。

マーケティングを手がける佐藤雄介氏によると、本製品のCFPを大幅に低減させる要因は主にふたつ。「熱で溶かして印字するトナーの融点を12℃下げるなど、消費電力を前身機の約50%に抑えています。本製品は主に、再生材の活用と、こうしたユーザーの使用中の省エネによって環境負荷を低減しています。また、石油由来プラスチックの削減は、本体だけではなく、トナーなどの消耗品や、輸送時の包装材でも積極的に取り組んでいます」。

リコージャパン ICT事業本部 オフィスプリンティング事業センター 商品計画室 佐藤 雄介氏

包装材の設計・開発を担当した末廣真也氏は、その特徴をこう語る。

「複合機の包装はこれまで石油由来のプラスチックを主に使っていましたが、本製品では紙製包装材への切り替えに踏み切り、使い捨てのプラスチックの使用量を54%削減しています。具体的には、従来の樹脂製発泡ポリスチレン緩衝材を、古紙を原材料として金型で成型するパルプモールドに切り替えております。紙製パレット(物流時に複合機を載せる台)も含め、包装材全体における紙製割合は97%にも上ります。リコーでデジタルA3カラー複合機の普及機種向けのパルプモールド主体包装は初めて。*1国内外で賞*2もいただいています」(末廣氏)

*1「業界内でも前例を見ません。」という記述をしておりましたが、誤解を招く表現だったため2023/6/19に削除しております。訂正してお詫び申し上げます。

*2 公益社団法人 日本包装技術協会主催の「日本パッケージングコンテスト2022」で「大型・重量物包装部門賞」を、アジア包装連盟主催の「AsiaStar 2022 Awards」で「Eco-Package(Environmentally Sustainable Package)」部門賞を受賞

リコーデジタルプロダクツBU OC事業センター 第三画像技術開発室 末廣 真也氏

オールリコーで取り組んだ前代未聞のチャレンジ

再生プラスチック使用率50%という高い目標に対する最初の印象について、「今だからこそ言えますが、相当な高いハードルに感じました」と秋葉GLは打ち明ける。「A3複合機のジャンルで、使用率50%という機器は過去にはないと思います。世界初のレベルですから、これまでと違う開発手法が必要でした」(秋葉GL)。

※2023年1月25日時点 北米EPEAT登録情報より リコー調べ

リコーデジタルプロダクツBU CMC事業本部 キーパーツ事業センター 再生樹脂開発グループ 秋葉 康GL

秋葉GLは、設計、再生樹脂開発、購買、部品成型など、リコーグループ内の各部門を横断したチームを発足。複合機などの設計のマネジメントをしてきた吉川政昭GLが、本製品のプロジェクトマネージャーを担った。部門をまたぐこのプロジェクトを進める上での最大の課題は何だったのだろうか。

「品質目標やコスト目標、目指す発売時期がありながら、前例のない開発をルールや基準値を作りながら進めていくことが一番難しかったです。それに、これまでの製品への再生材の使用は、完成した材料を製品に載せる方法で行っていましたが、今回は、材料開発と商品開発を高い品質を実現しながら同時に進める必要がありました。しかも複合機はリコーの主力製品ですから、失敗は許されません。数十人のプロジェクトチームを機能的に動かすために、製品開発で用いられているマネジメントシステムを再生材開発にも流用しました。オールリコーで新体制を確立して取り組みましたね」(吉川GL)。

リコーデジタルプロダクツBU OC事業センター 第二画像技術開発室 開発1グループ 吉川 政昭GL

再生プラスチック使用率50%を実現するには、回収材使用率が高い再生樹脂材料の供給体制の確立が不可欠だ。材料調達を担当した原材料購買グループの酒井祐樹氏は、「樹脂材料メーカーには当初、我々が目指す使用率の樹脂材料がありませんでした」と振り返る。

「我々が目指す環境製品について理解してくれた複数社の樹脂材料メーカーと、再生樹脂材料の開発を始めるところからスタートしました。高い回収材使用率を目指し、ゼロから情報を集めて開発するのは苦労しましたね。それに、使用率がクリアできても、部品に使う上では十分な品質が確保できないことも。開発した再生樹脂材料を部品技術や設計部門に評価してもらいながら、安定供給を目指して樹脂材料メーカーと調整を重ねました」(酒井氏)。

リコーデジタルプロダクツBU 生産購買本部 資材統括センター メカ部品・原材料統括室 原材料購買グループ
酒井 祐樹氏

各部門のプロフェッショナルの連携で再生材50%を実現

部品開発を担当したのは、部品技術の⼩林孝次氏だ。「材料開発をしながらの部品開発という初の試みだったため、この材料で部品の品質を保てるかという基準を新たに作りながら開発を進める必要がありました。各部門に確認しながらひとつひとつの部品に関して判断をしていく、地道な活動がありましたね」(小林氏)。

リコーデジタルプロダクツBU OC生産センター メカ部品技術室 MO工程設計グループ 小林 孝次氏

金型に流れる材料の流動性も、部品の品質を左右する。流動性が高ければ加工がしやすいが、強度は落ちる。さらに、流動性にばらつきがある材料を使うと、部品品質のばらつきも大きくなる。「新たな取り組みとして、材料メーカーと連携し、流動性の品質管理の取り決めを実施しました」と、小林氏は振り返る。

再生材使用率は、部品ごとに目標値が細かく定められた。「再生プラスチック使用率50%というのは全体の平均値。たとえば、外装カバーのプラスチック重量は製品の約30%と多くを占めますから、外装カバーで50%では全体の目標に届きません。外装カバーでは、最低でも80%を狙いました」(秋葉GL)。平均50%達成のため、内装部品も含め、従来品より再生材を使用する部品の数も大幅に広げた。

異物が入りやすいのも、再生材の特徴だ。異物は外装カバーなどの外観に黒点として現れる。「メンバーで話し合い、コンタミ(コンタミネーション、「混入」の意味)に関する基準を定め、材料メーカーに回収材の原料や製造工程について細かく調査して、品質確認を行いました」と小林氏。

再生プラスチック(左)を80%使用した、製品前面パネルのプラスチック(右)

包装材をリサイクル紙製に切り替えるのも、大きなチャレンジだった。A3カラー複合機はサイズと重量が大きく、輸送中の衝撃から受ける影響が大きい。発泡樹脂緩衝材に比べて硬い紙で、複合機の輸送に適合する十分な衝撃緩衝機能を確保するのが最大の課題だった。

紙製包装材(一部)を装着した、RICOH IM C3510

「プラスチック製包装の分野では衝撃緩衝設計技法が普及しているのですが、紙製では論理的にその手法が確立されていません。そこで活用したのが、車の衝突シミュレーションでも使われている動的な衝撃解析技術です。紙製の包装材が衝撃に対してどう挙動するのかコンピューター上で可視化し、品質工学の部署とも連携し、効率的に構成や形状を絞り込むこともできました。結果として、プラスチック製包装材と同等の緩衝性能を実現できました」(末廣氏)。

リコーグループの2030年、2050年の環境目標達成へ

リコーが2030年に向けて掲げている環境目標のひとつが「製品の新規資源使用率60%以下」。本製品は、この目標達成にも大きく貢献する見込みだ。そしてプロジェクトメンバーたちは、2050年の「新規資源使用率12%以下」という次の目標を見据えている。

2050年の目標達成には、リコー内での材料開発の推進も欠かせない。「新しい材料の調達、再生材活用部品の増加などの取り組みに加えて、代替素材の開発も我々の課題。再生樹脂に加え、枯渇資源である石油由来の原料に代わるバイオプラスチックの開発などにも引き続き注力しながら、樹脂のラインナップ増加にも取り組んでいきます」(秋葉GL)。

調達部門も、再生材に関する新しい取り組みを進めている。「RICOH IM C6010は、リコーの環境目標達成に向けたスタートの機種。今後、業界全体でも再生プラスチックの活用が進む中で、再生材の不足や調達リスクも見込まれます。安定供給のためにも、材料の改良に加えて、ケミカルリサイクルなどの新しい施策も取り入れていきたいです」(酒井氏)。

入社以来、部品技術に携わってきた小林氏にとって、材料の評価から携わるのは初めての経験。「個人的にも、今後のキャリアにつながる貴重な経験でした。搭載率50%を標準化できた今、これからさらに再生材使用率の高い材料を部品に採用できるよう、品質評価方法の確立やコストダウンを進めたいです」(小林氏)。

紙製の包装材も、後継機での展開が予定されている。入社以来、包装設計一筋という末廣氏は、本製品ではモジュールリーダーとして包装の構想から設計までを手がけた。「紙製包装を複合機や精密ユニットに用いる上での、衝撃緩衝機能の理論化に向けた開発は、環境課題がより重視される将来を見越して、2016年から取り組んできた課題。その成果が花開いたという意味で、本製品は、個人的にも思い入れが強いです。今後も、製品を無事お客様のもとへ届けられる機能を確保しながら、環境性能も、経済性も高めていきたいです」(末廣氏)。

地球の未来に向けて続くリコーのチャレンジ

本製品は、環境問題に関心を持つ企業のニーズも満たす製品だ。「複合機の環境負荷や、印刷時の電力に関心を持つお客様が増えています。本製品を通じて脱炭素社会や循環型社会に貢献し、お客様、リコー、地球環境が“Win-Win-Win”な『三方よし』を叶えていきたいと考えています」(新井氏)。

プロジェクトを率いた吉川GLは、「オールリコーで再生材50%の複合機を作ることができましたが、ここで終わるわけにはいきません。今回、材料調達や部品開発などの下地を作れましたので、このレベルを標準にして、後継機種でもより高い再生材使用率を目指していきます」と意気込む。

「我々マーケティング部門としても、ただ、『環境性能が非常に高い複合機です』と打ち出すだけとは考えていません」と佐藤氏も言う。「地球全体の課題である環境問題に関する訴求を行いながら、市場全体に、環境を考えた製品を当たり前に選ぶという土壌を作っていきたいです」。

リコーグループの力を集結して、業界で類を見ない製品を生んだプロジェクトチーム。環境課題の解決を大きく前進させるチャレンジを成功させた今、すでにその視線は未来に向いている。

リリース

業種業務ごとの課題解決に貢献し、DXを支援するフルカラー複合機
「RICOH IM C6010/C5510/C4510/C3510/C3010/C2510/C2010」を発売 ~ソリューション連携と業界最高の環境性能でお客様へ価値を提供~

お知らせ

資源循環技術・システム表彰で奨励賞およびコラボレーション賞を受賞

商品情報

RICOH IM C6010/C5510/C4510/C3510/C3010/C2510

RICOH IM C2010

関連情報

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