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お役立ちコラム

再生プラスチックって何?身近なところから環境問題を考える

「再生プラスチック」は、環境問題の改善を考える上で極めて重要な素材です。私たちの生活でも、飲食店やコンビニで提供されるストローがプラスチックから紙に変更されたり、レジ袋が有料化されたりしており、環境問題を考えるための「きっかけ」は身近なところにいくつもあります。

しかし再生プラスチックの存在自体は知っていても、「何からできているの?」「何に使われているの?」など詳しくは知らないという方は少なくないかもしれません。この記事では、再生プラスチックの種類や用途といった基礎知識についてご紹介します。

目次

再生プラスチックとは?

衣料品、カーペット、ペットボトル、カトラリー、食品容器、洗剤容器、パイプ、ビニール袋などの身近なものからパイプ、建築資材、公園のベンチまで、再生プラスチックは私たちの周囲にたくさん存在しています。しかし、その成分や製造工程、環境問題にどのように貢献しているのかなどを知る機会はあまりないかもしれません。

まずは、そんな再生プラスチックの概要について確認しておきましょう。

天然資源の枯渇リスクと環境負荷を低減するもの

再生プラスチックとはその名の通り、「再生されたプラスチック」のこと。一度使用して廃棄されたプラスチックを原料の一部として、新たに作られたプラスチックです。天然資源の消費を抑え、廃棄物を減らし、海洋汚染などを防ぐことに貢献しています。

プラスチックは、原料のほとんどが石油です。天然資源を大量に使用する上に、その製造過程で多くのCO2を排出します。資源エネルギー庁が発表したデータ(2019年)によれば、日本ではプラスチックを含む基礎化学品の製造により年間で約3,100万トンのCO2が排出されました。

再生プラスチックの製造では、「マテリアルリサイクル」や「ケミカルリサイクル」といった手法が採用されます。これらの技術をさらに広く活用していくことで、天然資源の枯渇リスクと環境負荷を低減できると考えられます。

  • マテリアルリサイクル:廃プラスチックを原料として、新たな樹脂製品を作る手法。高温でプラスチックを溶かして原料に戻し、別のプラスチック製品を製造する場合に用いられる
  • ケミカルリサイクル:廃プラスチックを化学的に分解・再生し、利用する手法。プラスチックを分解して石油やガスに戻したり、家畜の糞尿をバイオガス化したりする取り組みなどがある

再生プラスチックが求められる背景

軽量で耐久性があり、形を加工しやすいプラスチックは、私たちの生活に欠かせないものです。包装材料、ペットボトル、買い物袋、医療器具、自動車の部品など、挙げればキリがないほど無数の製品に利用されています。だからこそ、プラスチックの大量生産・大量廃棄は環境に深刻な問題を引き起こしており、特に海洋汚染やCO2排出の増加は国際的な課題となっているのです。

日本では、「2050年までにカーボンニュートラルを実現すること」を目指しています。カーボンニュートラルとは、CO2などの温室効果ガスの排出をゼロにするための取り組みこと。排出量をゼロにすることは現実的に不可能なので、排出量を減らしつつ、森林などによる吸収量を増やすことで「実質的な排出量をゼロにする」という考え方です。

カーボンニュートラルに向けた取り組みの中で、再生プラスチック活用の重要性は高いと言えます。生活やビジネスのあらゆる場面で使われているプラスチックが再生プラスチックに置き換わることで天然資源の消費が減り、CO2排出量を抑えることができれば、大きなインパクトをもたらすでしょう。

再生プラスチックの現状

再生プラスチックが活用されているシーンは、まだまだ多くないのが現状です。一般社団法人プラスチック循環利用協会の報告によれば、2021年の廃プラスチック総排出量は約824万トン。そのうち、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルの手法で再生利用されたものは約25%にとどまっています。

熱利用されている廃プラスチックも62%ありますが、これは「再生プラスチック」ではありません。カーボンニュートラルの実現に向けて、今後はより多くの再生プラスチック活用が求められていくでしょう。

日本では2023年に、「新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針」が発表されました。この中で、「環境への負荷や廃棄物の発生量、脱炭素への貢献といった観点から、ライフサイクル全体で徹底的な資源循環を考慮すべき」もののひとつとしてプラスチックが挙げられ、「プラスチック資源の回収量倍増」と具体的に言及されています。それだけ、国(政府)にとっても重要度が高い取り組みなのです。
出典:環境省「新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針

再生プラスチックの種類とそれぞれの用途

再生プラスチックにはさまざまな種類があります。プラスチック製容器包装の「プラマーク」「ボトル:PET」「キャップ:PE」といった表示を見たことがあるかもしれません。それぞれの概要や用途について確認しておきましょう。

PET

「PET」はペットボトルにも使われている身近なプラスチックです。ポリエチレンテレフタレート(POLY ETHYLENE TEREPHTHALATE)の頭文字から、「PET」と名付けられています。ポリエチレンテレフタレートは、ポリエステルとも呼ばれます。ワイシャツなどの繊維、食品包装フィルムと同じ素材です。

PETを用いているペットボトルは、「カスケードリサイクル」と「水平リサイクル」の手法でリサイクルされます。

  • カスケードリサイクル:マテリアルリサイクルのひとつ。ペットボトルを細かく砕いてフレーク状にし、その原料からペットボトルとは異なる用途の製品をつくる方法
  • 水平リサイクル:回収したペットボトルをケミカルリサイクルなどの工程により原料にもどし、再びペットボトルをつくる方法

PE

「PE」とは、水素と炭素から構成される合成樹脂、ポリエチレン(POLY ETHYLENE)のことです。2022年のデータでは、プラスチックの中で最も多く生産されているのがこのPEでした。ポリ袋や食品の保存容器、食品用ラップ、人工芝などにPEが使用されています。

PP

「PP」は、ポリプロピレン(POLYPROPYLENE)のこと。PEと同じく水素と炭素から構成される合成樹脂で、熱を与えることでさまざまな形状に加工しやすいのが特徴です。PEの次に多く生産されており、容器、バケツなどの安価なプラスチック製品に多く使用されています。3Dプリンターの印刷フィラメントにも、PEは利用されています。

PEやPPは、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの手法でリサイクルすることが可能です。

再生プラスチックを有効活用するために

プラスチックは、私たちの生活に欠かせない便利な素材です。しかし、大量の天然資源を消費し、製造過程で多くのCO2を排出してしまうという、地球環境にとっては大きなデメリットもあります。再生プラスチックに注目し、現状は25%程度にとどまっている再生利用の割合を増やすことが、カーボンニュートラルの実現のためにも重要になるでしょう。

リコーは1994年に循環型社会を実現するためのコンセプト「コメットサークル」を制定し、1998年には「環境経営」を提唱するなど、長年にわたって循環型社会の実現に向けた取り組みを行ってきました。1990年代から、再生プラスチックの使用を推進。2016年からは、市販回収材(プラスチック製包装容器や家電製品のプラスチックなど)を原材料に、繰り返し使える再生プラスチックを内装および外装用再生材として開発し、複合機へ搭載しています。

再生プラスチック(写真左)を80%使用したリコーA3カラー複合機の前面パネルのプラスチック(写真右)

再生材使用率が50%を超えるA3カラー複合機の開発秘話が気になる方は、以下の記事をご覧ください。

プロフェッショナルの力を集結した「再生材使用率50%」のチャレンジ。最先端環境性能を搭載したA3カラー複合機が生まれるまで

監修者

木村 麻紀(きむら・まき)

ジャーナリスト、「Circular Economy Hub」編集パートナー、SDGs.tv公認ラーニングコーチ。通信社記者を経てフリーに。環境と健康を重視したライフスタイルを指す「LOHAS(ロハス)」について、2000年代前半にジャーナリストとして初めて日本の媒体で本格的に取り上げる。以来、地球環境の持続可能性を重視したビジネスやライフスタイルを分野横断的に取材し続けている。

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