お役立ちコラム
2024.5.10
近年、環境問題への取り組みが語られる場面では、「循環型社会」という言葉を見たり聞いたりする機会が増えています。よりよい地球環境のため、またそれを持続可能(サステナブル)な状態にしていくためには、循環型社会という考え方や注目されている背景を正しく理解しておかなければなりません。
企業としても個人としても、循環型社会の実現のために「できること」があります。この記事では、循環型社会という言葉の意味や考え方、今日からできる取り組みについてわかりやすく解説します。
はじめに、循環型社会の定義や注目されるようになった背景、そして環境問題・廃棄物問題の現状などについて押さえておきましょう。
環境省では、循環型社会を以下のように定義しています。
「循環型社会」とは、[1]廃棄物等の発生抑制、[2]循環資源の循環的な利用及び[3]適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会。
出典:環境省「循環型社会形成推進基本法の概要」
私たちが使える資源は有限であり、使い続ければやがて枯渇してしまいます。そんな限りある資源を効率的に活用し、再利用などを含めて循環させながら上手に利用していくというのが「循環型社会」の概念です。
では、なぜ今、「循環型社会」に向けた取り組みを行う必要があるのでしょうか。
現在の経済活動のスタイルは「大量生産・大量消費・大量廃棄」がベースとなっており、私たちの暮らしは地球上のさまざまな資源を利用することで成り立っています。しかし、地球上の資源は無限に存在するわけではありません。急激な経済成長を遂げてきた近代・現代において、私たち人類は世界規模で大量の資源を消費してきました。
石油、天然ガス、石炭といった化石燃料は、数百万年の長い年月をかけて形成されたもの。一度使い切ってしまえば元に戻ることはなく、これらの資源を現在のペースで際限なく消費し続ければ、将来的に枯渇することは避けられません。太陽光や風力といった資源は理論上「無限」と考えることもできますが、それらを集めて利用可能に変換するための土地や資源にはやはり限りがあります。
18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命以降、「大量生産・大量消費・大量廃棄」のサイクルが経済を大きく発展させてきた一方で、地球環境には大きな負荷をかけてきました。こうした経済活動は急激な資源の枯渇を招くだけにとどまらず、環境汚染、生物多様性の減少など、さまざまな問題・リスクを引き起こしています。
世界で発生する廃棄物は、2000年には約127億トンと推定されていましたが、2025年には190億トン、2050年には約270億トンにまで増加すると予想されています。この先25年間で、約2️.2倍もの増加が見込まれているのです。
日本では2011年から人口の減少が始まりました。しかし、世界を見渡せば引き続き人口の増加が見込まれています。大幅な経済成長のトレンドも続いており、その影響で廃棄物の発生量も大幅に増加すると考えられています。
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)では、17の目標のひとつに「つくる責任、つかう責任」(目標12)が定められています。今、私たちが循環型社会やサステナビリティ(持続可能性)について考え、行動を起こさなければ、廃棄物は増え続け、地球の資源は枯渇してしまうのです。
日本では、2000年に「循環型社会形成推進基本法」が公布されました。時代はちょうど、リサイクルを促進しなければ各地の廃棄物処理施設がひっ迫し、新たな処理施設の建設も困難という状況に直面し始めた頃です。
このため、大量生産・大量消費・大量廃棄型経済からの脱却、そして生産から流通、消費、廃棄に至る過程における資源の効率的活用や再利用の推進を目指して、この法律は作られました。
そして2023年には、「新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針」が示されました。ここでは、「循環経済への移行による持続可能な地域と社会づくり」について以下のように記載しており、政府を挙げてこの取り組みを戦略的に進める必要があるとまとめています。
資源投入量・消費量を抑えつつ、製品等をリペア・メンテナンスなどにより長く利用し、循環資源をリサイクルする3Rの取組を進め、再生可能な資源の利用を促進し、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて資源・製品の価値を回復、維持又は付加することによる価値の最大化を目指す循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行は、循環型社会のドライビングフォースともいえるものであり、資源消費を最小化し、廃棄物の発生抑制や環境負荷の低減等につながるものである。
出典:環境省「新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針」
先ほどの「新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針」にも出てきた、循環型社会を考える上で重要なキーワードとなるのが「3R」です。最近では、「3R」を発展させたものとして「5R」も注目されています。
「3R」とは循環型社会を実現するためのキーワードで、具体的には「Reduce(リデュース/廃棄物の発生抑制)」「Reuse(リユース/再使用)」「Recycle(リサイクル/再資源化)」という3つの取り組みを指します。
リデュース(Reduce)とは「減らす」という意味で、廃棄物の発生を抑える取り組みや考え方を指します。簡単に言えば、「製品をつくる際に使う資源の量を少なくすることや、廃棄物の発生を少なくすること」です。耐久性の高い製品の提供、製品寿命を延長させるメンテナンス体制の工夫なども、リデュースの取り組みに含まれます。
リユースとは、「再使用」を意味する言葉です。「使用済みの製品やその部品などを繰り返し使用すること」が該当し、具体的には修理・診断技術の開発、リマニュファクチャリング(廃棄された製品を回収・分解して再生処理を施し、品質を高めて再出荷すること)なども、リユースの取り組みとして考えられます。
リサイクルは「再資源化」を意味する言葉で、「廃棄物などを原材料やエネルギー源として再び有効利用すること」を指します。使用済み製品の回収、リサイクル技術・装置の開発などが、リサイクルの代表例です。リサイクルでは廃棄物を原料やエネルギーといった別のものに生まれ変わらせて活用するという点で、形を変えずに再使用するリユースとは異なります。
「5R」とは、上記の3️R(リデュース・リユース・リサイクル)に「Refuse(リフューズ)」と「Repair(リペア)」を加えたもので、環境への負荷をさらに低減させることにつなげる取り組みです。
リフューズは「断ること」を意味する言葉です。そもそも、ごみになるものの受け取りを断れば、廃棄物の削減に貢献することができます。
リペアとは、修理・補修のことです。故障したものや使えなくなりそうなものをすぐに捨ててしまうのではなく、修理・修繕しながら使えるうちはできるだけ長く使用するという取り組みも廃棄物の削減に有効です。
循環型社会形成推進基本法では、「処理の優先順位」が以下のように定められています。
[1]発生抑制 [2]再使用 [3]再生利用 [4]熱回収 [5]適正処分
出典:環境省「新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針」
まず最優先するべきは「発生抑制」(リデュース)です。そして、「再使用」(リユース)、「再生利用」(リサイクル)といった順に続きます。先に位置する取り組みを優先することで、循環型社会への貢献度は高くなるとされています。
今日から各家庭やオフィスでできるリデュース・リユース・リサイクル・リフューズ・リペアの取り組みには、以下のようなものがあります。できることから少しずつ実践してみましょう。また、各企業が5Rについてどのような取り組みをしているのか調べてみると、今まで知らなかったことが分かるかもしれません。
循環型社会の実現は、地球の限られた資源を守り、未来へのサステナビリティ(持続可能性)を高めるために不可欠です。「3R」および「5R」を実践することは小さな一歩に感じられるかもしれませんが、地球上に住む私たちが考え、実践することでしか未来は変えられません。循環型社会を実現するために、企業や個人ができることから取り組むことが重要です。
リコーは1994年に循環型社会実現のコンセプト「コメットサークル」を制定し、1998年には「環境経営」を提唱するなど、長きにわたって循環型社会の実現に向けた取り組みを行っています。中でも大きな社会問題であるプラスチックの使用や廃棄の削減に注目しており、主力機器であるA3複合機での再生材使用率50%の達成や、プラスチックの種類を特定してリサイクルの促進に貢献する樹脂判別ハンディセンサーの開発などを行っています。
リコーの取り組みが気になった方は、以下の記事をご覧ください。
プロフェッショナルの力を集結した「再生材使用率50%」のチャレンジ。 最先端環境性能を搭載したA3カラー複合機が生まれるまで
廃プラスチックの社会課題を解決する樹脂判別ハンディセンサー。リコーが描くサーキュラーエコノミーの未来像
監修者
木村 麻紀(きむら・まき)
ジャーナリスト、「Circular Economy Hub」編集パートナー、SDGs.tv公認ラーニングコーチ。通信社記者を経てフリーに。環境と健康を重視したライフスタイルを指す「LOHAS(ロハス)」について、2000年代前半にジャーナリストとして初めて日本の媒体で本格的に取り上げる。以来、地球環境の持続可能性を重視したビジネスやライフスタイルを分野横断的に取材し続けている。