特別対談
2022.09.30
目次
リコーグループは、世界シェアNo.1(※1)を誇る業務用イメージスキャナーや国内トップのシェア(※2)の組み込みコンピューター、ICT分野でのマルチベンダーサポートを強みとするインフラカスタマーサービスを有する、PFUの株式を取得し連結子会社化した。
デジタルサービスカンパニーとして進化を続けるリコーグループにPFUが加わることで、今後、働く人にどのような未来を実現するのだろうか。株式取得に伴う作業や、リコー×PFUの事業シナジー検討の事務局を担う、株式会社PFU 社長室・石原眞也シニアディレクター、そして株式会社リコー リコーデジタルプロダクツBU 経営戦略室・戦略統括グループの三上亨リーダーに、両社のタッグが叶えるリコーグループの未来について聞いた。
2022年4月28日、株式会社リコーは、株式会社PFUの株式を取得し連結子会社化することを発表。9月1日から新たな株主構成となり、PFUがリコーグループに加わった。
PFUのグループ化によって、リコーグループが目指す“はたらく”に寄り添うデジタルサービスの可能性が、新たな広がりを見せていく。ドキュメントイメージングの領域においては、PFUのスキャナーがラインナップに加わることで、クラウドプラットフォーム「RICOH Smart Integration」へと繋がるエッジデバイスが拡充し、ワークフローのデジタル化が加速。インフラカスタマーサービス事業や、エンベデッドコンピュータ(組み込みコンピューター)事業における連携も新たなシナジーを生む。リコーグループが今後、デジタル化によるさらなるワークプレイス変革へと舵を切るための大きな統合だ。
PFUの石原眞也シニアディレクター(以下、SD)が主に担う業務は、全社の方針および中長期的な成長戦略立案や推進などを担う経営戦略。リコーの三上亨リーダーが所属するのも、複合機やコミュニケーション機器の経営戦略室だ。
「もともと業務用スキャナーや保守サービスの分野などでリコーとPFUは協業していて、現場社員の間でも、すでに繫がりがありました」と石原SD。
「具体的な製品など、個別の協業のお話から案件がスタートし、今回のプロジェクトに育っていきましたね」と三上リーダーは振り返る。
株式会社リコー リコーデジタルプロダクツBU 経営戦略室・戦略統括グループ 三上亨リーダー
株式取得という案件の性質上、秘密を守りつつプロジェクトを進めるのに苦戦したと二人は口を揃える。一方で、2社が一緒になった時に生まれるシナジーをイメージすることは楽しかったと語る。
「僕は商品企画出身ということもあって、大変ながらも、すごくワクワクしていましたね。たとえばスキャナーひとつをとっても、PFUの製品は本当にすごいんですよ。違うサイズの紙が、ばんばん読み込まれていくのを見ると感動します。お互いの技術を持ち寄ることでこれから何ができるのだろうと、夢が広がりましたね」(三上リーダー)
4月、リコーグループは、株式取得の発表と同時に記者会見を実施。その中で特に意識したのは、市場の受け取り方だったという。
「PFUは世界No.1シェアのスキャナーメーカーですから、このプロジェクトで、単に『リコーがものづくりを強化する』と受け取られかねないと危惧しました。我々が本プロジェクトで目指したのは、デジタルサービスの加速です。会見では、PFUと一緒になることでデジタルサービスの最大の入り口を強化できること、そしてPFUのITサービスやソリューションとの融合で、デジタルビジネスを拡大できることをしっかり伝えられたと思っています」(三上リーダー)
PFUとリコーが共に歩むことが、両社に具体的にどのようなメリットをもたらすのだろうか。PFUにとっては、リコーグループの一員となることでPFUの変革や成長することに繋がると、石原SDは語る。
株式会社PFU 社長室・石原眞也シニアディレクター
「PFUが展開する、スキャナー、組み込みコンピューター、インフラカスタマーサービスの3つの事業の足りない部分を、リコーのノウハウや技術で補えると考えています。たとえば、オフィス全体のドキュメント管理環境をご提案するとき、PFUのデバイスと併せてリコーの複合機をご提供できれば、展開作業や保守サービスを含めてビジネスの幅が広がります。PFUの特殊用途向けの組み込み技術とリコーの技術を合わせて新たなエッジデバイスを開発したり、お互いのドキュメントソリューションの融合で新しいデジタルサービスを提供したりと、グループ全体のイノベーションに寄与できると考えています」(石原SD)
リコーとPFUは、同じイメージングソリューションや組み込みコンピューターの分野で事業を行ってきたものの、得意とする領域が異なる。だからこそお互いの弱点を補い、お客様に提供できるサービスの幅が広がると同時に、販売チャネルの増加も実現すると二人は見込んでいる。
デジタルサービスカンパニーへと加速するリコーにとっても、専門業務に特化したPFUのスキャナーが、デジタル化を進める大きな鍵となる。
「スキャナーは、アナログとデジタルを繋ぐ最大の入り口。リコーの複合機は誰でも簡単に使えるのが特徴ですが、現在はテレワークも進み紙の使用が減っています。今後残っていくのは、専門業務で作業が定型化されたドキュメント。それらのドキュメントを取り込めるPFUのエッジデバイスは、デジタルサービスを加速する上での大きな強みになります。文書のデジタル活用が進む一方で、必要に応じてリコーの複合機で出力ができる。ドキュメントイメージングに関するアナログとデジタルの業務がダイレクトに繋がり、お客様の利便性が向上します」(三上リーダー)
そんなリコーとPFUのタッグは、“はたらく”に寄り添ってきたリコーグループが目指すワークプレイス変革も実現する。
「搬送・給紙などのPFUの業務用スキャナーの強い、特長のある技術と、リコーの複合機に実装されているタッチパネルの技術などを組み合わせて、より操作性の高いエッジデバイスを開発することで、お客様の業務効率化にさらに貢献できると思っています。また、保守サービスの面でもお互いの強みを生かしてサービスレベルを向上できますし、それはそのままお客様の満足度に繋がる。考えれば考えるほどワクワクします」(石原SD)
「アナログとデジタルがシームレスに繋がる世界を作ることで、ワークプレイス改革に貢献できると思っています。具体的には、転記や加筆などドキュメントに関するストレスが減り、ワークフローが非常に簡素化します。業務のデジタル化が進み、働く場所や働き方などの自由度を高めるドキュメントワークフローの実現や、業務の簡素化によって働く人がより創造性の高い仕事に集中できることを期待しています」(三上リーダー)
以前から協業していたリコーとPFUの社員には、ものづくりへの強いこだわりや顧客ファーストの姿勢など、共通点が多いという。三上リーダーは、そんな人材の交流にも期待を寄せる。
「両社は技術へのこだわりや、お客様ファーストという点で非常に似ています。また、新卒で入社し長く務めている社員が多いという共通点もあると感じますが、これは時に新しい発想の妨げとなると考えています。同じ思想を持ち、別の会社で違う経験をしてきた社員が混ざり合う今回の活動は、新たなイノベーションのきっかけとなると期待しています。現場のニーズをくみ取り、それを製品に反映するプロセスなど、PFUから学ぶべきことはたくさんあると思います」(三上リーダー)
石原SDも、新しい風を入れることで良い変化が生まれると見込んでいる。「新たな視点から、これまでのやり方や仕組みなど、当たり前になっていたことを見直せると思っています。社内のメンバーだけではできなかった、大きな変革のチャンスともとらえています」
9月1日の正式手続きを終えた今、リコー×PFUチームによるシナジーを最大化させるためにも、これからやるべきことは多いと二人は語る。
「統合による事業シナジーは、現場で生まれていくと思っています。そのためにも、PFUとリコーのDNAをお互いの社内に浸透させる機会やコミュニケーションの場を作っていくことが、私が率先してやるべきことだと考えています。そして、PFUがお客様に届ける価値を高めていき、人を愛し、国を愛し、勤めを愛すというリコーグループの『三愛精神』に基づいて、リコーグループの一員として貢献していきたいと思っています」(石原SD)
「現場では、お互いをもっと知りたい、シナジーを生みたいという熱が高まっていますね。とはいえ、別々の会社だった2社がすぐに融合するのは難しい。僕はPFUのことをもっとも知っているリコーの社員5人には入ると思うので(笑)、2社を繋ぐ架け橋になりたいと思っています。繋いだ結果、シナジーが現場で生まれるというのが、一番美しい形だと思うんですね。繋がったらまた別の場所を繋ぎに行くということを、この先1年はやっていきたいです」(三上リーダー)
大きな夢を抱く中でも、二人が今、最優先するのは「両社のビジネスやお客様へのサービスが滞りなく進むよう、PFUのリコーグループへの仲間入りを成功させ、基盤を整えること」。社員たちが安心して力を発揮し、アイディアを形にしていける土台作りのため奮闘している。
石原SDと三上リーダーが率いるチームによる仕事は正式なグループ会社化が完了した後も続き、二人は現在も、密にコミュニケーションをとっている。「リコーグループの方々は、グループ会社化検討を進める際も、営業や開発現場だけでなく、人事やIT、経理などの経営基盤を担う部門のことも第一に考えてくださって、安心感がありました。今後も事業シナジーの創出に向けて動きを止めないように、三上さんをはじめとするリコーの皆さんとしっかり連携していきたいですね」(石原SD)
グループ会社化のプロジェクトを共に進めてきた二人の信頼は厚い。「三上さんは物腰柔らかで丁寧ですが、仕事に対してストイック。気が引き締まります」と石原SDが言うと、「石原さんはPFU社内のことを本当によくご存じ。頼りがいがあります」と三上リーダーも笑う。二人を中心としたリコー×PFUのプロジェクト、そして、お客様の“はたらく”に寄り添うデジタルサービスカンパニーとしてのリコーグループの挑戦は、これからも続いていく。
※1 ドキュメントスキャナーを対象とする。日本・北米はKEYPOINT INTELLIGENCE社(InfoTrends)により集計(2020年度実績)。ドキュメントスキャナー集計よりMobile/Microを除く6セグメントの合計マーケットシェア(主に8ppm以上のドキュメントスキャナー全体)。欧州はinfoSource社(2020年度実績)の集計に基づき、西欧地区(トルコとギリシャを含む)におけるシェア。
※2 2019年実績 (株式会社 富士経済の調査による)。
※3 所属部署・役職は撮影当時のものです。