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2024.3.29
セブナグループの一戸亜土社長(左)とリコージャパン山梨支社の田中伊代氏(右)
当PDFは日経BPの許可により「日経ビジネス」2024年3月18日号から一部抜粋しています。禁無断転載
リコーグループは「ESGと事業成長の同軸化」を方針に掲げる。ESGの取り組みは数年後の財務に繋がる将来財務に繋がる活動と位置付け、事業を通じて持続可能な社会の実現に寄与することで、持続的な成長を目指している。この経営戦略を体現するのが日本国内の販売統括会社であるリコージャパンだ。地域のお客様のESGやSDGsの取り組みをサポートし、デジタルサービスの提供によるお客様の生産性向上や創造性の発揮の支援、環境に配慮した製品・サービスの提供などを通じて、持続可能な社会の構築とリコーグループの事業成長に繋げている。
リコーは「グローバルなESG潮流への対応」と全社戦略である「デジタルサービスの会社への変革」の2つの視点において、7つのマテリアリティ(重要社会課題)と16の全社の将来財務目標(ESG目標)を設定した。具体的には、気候変動や人権問題、デジタルサービス関連特許や情報セキュリティ、デジタル人材育成などの目標だ。さらに、各部門の目標にブレークダウンして個々人の仕事を紐づけ、社員一人ひとりが自分ごととしてSDGsやESGに取り組むことで、「持続可能な企業価値向上を通じたESGグローバルトップ企業」の実現を全社一丸で目指している。
*ワークスタイル変革へのチャレンジをお客様に体感していただく[LiveOffice]ViCreA(ヴィクレア):Value innovation Creative Area
SDGsキーパーソンを講師とした社内研修(長野支社)
リコーグループの方針を踏まえ、リコージャパンは事業とSDGsの同軸化の実践を進めている。全国364の拠点、約1万8500人の従業員を擁し、国内100万事業所のお客様に対して、販売、サービス、業種業務の専門性を融合してワンストップでソリューションを提供できることが強みだ。
その中で、同社の取り組みで特徴的なのが2018年にスタートしたSDGsキーパーソン制度だ。現在、全国の支社・部門にいる約730人のSDGsキーパーソンが、社内への浸透・啓発・活動推進やお客様のSDGsやESGの取り組み支援を進めている。
脱炭素社会の実現や労働人口の減少を受けた生産性の向上は社会共通の課題であり、ESGやSDGsへの対応は大企業だけの問題ではない。サプライチェーン上の取引先から対応を要請されても、どこから取り組めばよいかわからないという中堅中小企業は多い。そうした企業に対して、これまでリコーグループが実践してきた取り組みを紹介し、SDGsキーパーソンを中心に各社の取り組みを後押ししている。
リコーは多種多様の業種や業務内容、企業規模、事業領域までデジタルサービスを提供して、企業のDXを後押ししてきた。ESGの取り組みについても、CO2削減や働き方改革、情報セキュリティなどお客様が抱える課題を解決する製品・サービスを提供することで、サステナビリティへの対応を支援している。さらに2023年からは、リコージャパンが独自で作成した「RICOHサステナ見える化ツール」を活用してお客様の取り組みや目指す姿をESGの観点からヒアリングして見える化し、優先順位を付ける活動を始めている。
工業製品の金属焼付塗装や板金加工業を手がけるセブナグループは、リコーのSDGsの取り組みに共感して協働する企業のひとつだ。
山梨県はSDGsに積極的な企業や団体などを見える化し、県内のSDGsの取り組みの輪を広げる「やまなしSDGs登録制度」を2022年に創設した。セブナグループも登録しないかという話が来た当初は、一戸亜土社長は迷ったという。約50人の社員は40代、50代の職人や技術者が中心で、SDGsの感度が高い若手社員は少ない。SDGsにどう取り組めばいいか、一戸社長には良いアイデアがなかった。
そんな時に紹介されたのがリコージャパン山梨支社のSDGsキーパーソンである田中伊代氏だった。セブナグループとしては、リコーのコピー機を使っていたことがあった程度だったが、リコーグループが地域の中堅中小企業のSDGsの取り組みを支援していると聞いて相談してみたのだ。
田中氏からの提案は社内でのワークショップ開催だった。企業がなぜSDGsに取り組むのか、セブナグループをどんな企業にしたいのか、自分の仕事にどんな価値があり、どのように社会に貢献していくのかを、社員が考え・共有してもらうというものだった。
セブナグループワークショップ風景
全社員へのワークショップの開催を決めたが、一戸社長は田中氏に「寡黙な職人が多いので会話が弾まないかもしれませんよ」と不安を漏らした。
だが、その心配は杞憂に終わり、社員が次々と自らの仕事の価値を語ったという。自分たちの塗装が商品を長持ちさせることにより、持続可能な社会に貢献していると知った社員たちはSDGsへの取り組みに前向きになった。ワークショップをきっかけにSDGsの勉強会を何度か開催し、自分の仕事の価値を見直すことにもつながった。
社内でSDGsを推進するチーム「TSUNAGU」も結成。年齢など多様なメンバー6人がSDGsにどう取り組むか検討を重ねている。リコーグループが進める森林活動にも参加するようになり、地域活動への参画も増えている。リコージャパンを介して同じような悩みを抱える地域の企業を紹介してもらい、協業する機会も増えてきた。
「リコーは会社を未来に連れていく力を貸してくれる企業。何かひらめいたり、分からないことがあった時は、まずリコーに相談してみる、そんなパートナーになった」と一戸社長は言う。
顧客に寄り添い、具体的なソリューションの提案まで含めて、企業の課題解決に伴走することで、地域や社会の発展に寄与してSDGsに貢献し、自社としての事業も発展させていく。リコーが目指すESGと事業成長の同軸化が着実に進んでいる。
既に行ってきた取り組みをESG視 点で整理。企業の在りたい姿に向けて、目指すESGの取り組みを具体化し、行動へ繋げる。
お客様の取り組みをヒアリングし、現状と目指す姿をシートにまとめて可視化することで、取り組みの優先順位の検討などを支援する