寄贈を予定していた10台のデジタル印刷機。8台は7月に設置し、順調に教材の印刷などに活用されているものの、現地の政治状況を巡ってのストライキやデモの影響で、メダック県教育局を含む2箇所への寄贈が延期となっていました。現地の状況がようやく落ち着き、10月29日に残り2箇所への設置を行い、同時にメダック県教育局職員や寄贈先の学校長、教職員組合やコミュニティの代表者が参加した寄贈式が行われました。
寄贈式では、セーブ・ザ・チルドレンから、このプログラムの意義やデジタル印刷機寄贈の目的をあらためて共有し、リコーインドのスタッフからは、教育支援に関われることの喜び、寄贈した印刷機の保守サービスの実施についてお伝えしました。
寄贈先の学校の先生からは、印刷機は、隣接した学校も含め、教材や試験用紙の印刷に活用していること、子どもたちの学習レベル向上のために、多様な教材を印刷し、配布することが大切であるとのお話がありました。また、印刷機のメンテナンスや管理は、教職員の役割であるとの発言もありました。
寄贈した直後から、教材の印刷などにフル活用いただいている印刷機。予定していた寄贈式が2度延期になったり、ねずみの被害にあい、対策のために機械をカバーする箱を設置したり、予想外のハプニングもありますが、これから本格的に始まる教育支援活動においても、印刷機を活用しながら情報共有を進めていくことで、教育環境の改善につなげていきたいと思います。
寄贈式の様子
セーブ・ザ・チルドレン・インド アンドラ・プラデーシュ州事務所長(左)、リコーインド社員(中央)から県教育局長(右)への寄贈証書の贈呈
寄贈式の様子を伝える地元新聞
デジタル印刷機を学校や教育局に寄贈し、教育環境の改善につなげていく本プログラム。そのキーとなるデジタル印刷機が、現場で動き始めました。
2011年7月以降、10箇所の寄贈先に、順次デジタル印刷機が設置されています。最初に寄贈が行われたのは、1年生から10年生まで約200人の子どもたちが通うバデパリ校。設置するだけではなく、きちんと活用してもらえるように、学校の先生を対象に、使い方研修も行いました。
研修を行ったのは、リコーインドのハイデラバード支社に勤務する2人のスタッフ。デジタル印刷機の仕組みや簡単なトラブル対応の方法など、学校ですぐに使ってもらえるように実践をしながら、丁寧に説明しました。印刷機を含め、機械に全く触ったことのない先生も多く、1時間半の研修では十分に活用するのは難しいため、2ヵ月後にも、リコーインドのスタッフによる研修を予定しています。
今後は、セーブ・ザ・チルドレンや現地NGOのスタッフが中心となり、地域コミュニティや子どもたちも含め、教育環境を改善するためには、印刷機を使ってどのような情報を共有するのが良いのかを考えるワークショップも行っていきます。
学校に到着した印刷機
印刷機を設置するリコーインドのスタッフ
印刷機の仕組みを解説中
実際に使ってみるバデパリ校の先生
2011年5月からのプログラムスタートを受け、インドと日本で、それぞれ関係者が集まり、プログラムの意義や目的、今後の進め方を確認するキックオフ会議を行いました。
インドでは、5月30日に、活動地であるアンドラプラデシュ州の州都ハイデラバードで、リコーインド(RID)、セーブ・ザ・チルドレン・インディア(SCI)、現地のパートナーNGOのメンバーが集まりました。
会議では、最初にSCIから、2009年にインド政府が制定した「子ども無償義務教育の権利法」の内容に沿って、6歳〜14歳の義務教育の普及に向けた取り組みの説明がありました。RIDからは、寄贈するデジタル印刷機の使い方のデモがあり、教育現場での使い方を共有しました。最後に、本プログラムの目的や概要の再確認、プロジェクトの本格始動に向けての方向性を確認しました。
日本では、6月6日に東京において、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)から6名、リコーからは、印刷機の事業部門、マーケティング部門、CSR室の関係者8名が参加して、キックオフミーティングが行われました。ちょうど来日していたSCIのCEO Thomas Chandy氏にもご参加いただき、プロジェクトの成功に向けて、詳細の活動計画や各関係者の想いを共有する場となりました。
リコー内だけでも、商品事業部とCSR室、そしてインドの販売会社が連携するこのプログラム。セーブ・ザ・チルドレンとの連携も含め、各関係者とのコミュニケーションを深めながら、より良い活動にしていきたいと思います。
ハイデラバードでのキックオフ会議
デジタル印刷機のデモ
東京でのキックオフ会議
15名の関係者が参加
SCJ 渋谷事務局長(左)
SCI CEO Chandy氏(中央)
リコーCSR室 吾妻室長(右)
2011年4月からのプログラム開始に向け、1月末にセーブ・ザ・チルドレンのスタッフとともに、現地調査に行きました。プロジェクト対象地は、アンドラ・プラデシュ州のメダック県。州都のハイデラバードから、車で2時間くらいの距離にあります。
私たちは、デジタル印刷機の寄贈先や教育支援プログラムの実施地となる学校や教育局を訪問し、子どもたちの学習環境や学校のインフラ設備を確認。子どもたちや先生やコミュニティの代表者、政府関係者などにお会いし、教育の課題についてヒアリングを行いました。
その結果、多くの学校にはコピー機や印刷機はなく、デジタル印刷機があれば、より多くの学習教材や資料の共有ができることがわかりました。また、政府の取り組みにより、就学率は上がってきているものの、農繁期には、子どもが学校に来なくなることも多く、継続的に保護者を含めた地域全体の啓発活動が重要であることも確認できました。
この調査結果を受け、より良い活動になるよう、プログラム開始までの準備を進めていきます。
教室が足りずに外で勉強する生徒たち
教室内の授業風景
学校の課題を話す子どもたち
地域の拠点としての役割も果たす
学校内の児童センター
学校近くの風景
行政機関へのヒアリング