AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science August 8, 1997, Vol.277


海山の日付(Seamount dates)

海洋底での火山活動により海山が形成されるが、海山のほんの僅かな いくつかだけがこれまで年代が特定されている。このため、マグマの歴史に ついて推測することは困難であった。Wessel (p.802) は、重力のデータ、 海山の形、海山が形成された大洋の地殻の年代などを用いることにより、 太平洋プレートの海山に対する仮の年代を定める方法を与えている。 このデータによると、小さな海山ほど、相対的に若い地殻上に形成される 傾向があり、また、多くの海山は最近のジュラ紀最晩期と白亜紀の間に形成された ことを示唆している。(Wt,Nk,Og)

死の囮(Death decoy)

細胞の内因性死の経路を活性化する1つの方法は、外部シグナルを細胞表面の 死受容体が受け取ることである。TRAILタンパク質のようなリガンドファミリーは、 関連する受容体ファミリーに結合する。Panたち(p.815)、Sheridanたち (p.818;およびGuraによるニュースストーリp.768)は、TRAILリガンドに結合する、 更に2つの受容体を同定した。その内の1つは、TRAILに結合する既知の 受容体に似ており、これは死のシグナルの効果的なメディエータになっている らしい。しかし、もう一つ別の受容体はトランスメンブラン(膜貫通)領域を 欠失しており、これは脂質と結合することによって膜に挿入され、細胞死を 阻止するらしい。標準的な死の信号を送ることなくTARILに結合するによって、 この受容体は、まるで囮のように、リガンドのシンク(陥没孔)として 働いているらしい。(Ej,hE,Kj)

なぜ練習により完全になれるのか(Why practice makes perfect)

運動性の作業を練習するにつれて、動きは自動的になり記憶の中に固定される ようになる。Shadmehr と Holcomb (p.821) は、作業を実行している時の 脳の中の活発な領域は、前頭葉前部の皮質から、プレモーター(premotor) と 頭頂の皮質、および小脳に移動することを見出した。この前者の前頭葉前部の 皮質は短期間あるいは作業記憶を司っている一方、後者の皮質及び小脳は、 両者協力して、学習された動きの流れの準備と実行とを支援する。(Wt)

順位と再生産(Rank and reproduction)

Puseyたち(p.828;およびWrangham,p.774による展望記事参照)による 長期間の研究によると、紋切り型に言えば、下位のチンパンジーの雌は、 見捨てられてしまう。タンザニアのゴンベ国立公園における30年以上の チンパンジーの個体観察によると、雌の生殖の成功率には大きな差異があり、 その多くは、雌の優性順位に依存している。順位が高ければ乳児の生存率が 高くなり、娘サルの成熟も早くなるし、若いサルの生産が早くなる。 この効果は、雌の間の直接的な襲撃によるものではなく、むしろ、食物の 取りやすさによるものであろう。(Ej,hE)

歳をとるアッセイ(Aging assay)

体細胞の有限寿命についての分子的基礎, すなわち老化により起こる生理学的効果の奥に潜む特徴的なことは,今なおよく 分かってはいない。Brownたち(p.831)は、従来の困難を克服し、培養した正常な (不死化したのではない)ヒトの線維芽細胞中において、標的化相同組み替えを 2回連続して行なうことにより、サイクリン-依存性 キナーゼ(cdk)阻害剤であるp21をコードする遺伝子を不活性化した。 2つの複製の双方から p21を取り除いた細胞(これは通常では、Cdkを抑制することで細胞分裂を 抑制する機能をもつ)は、細胞寿命が伸びた。(Ej,hE,Kj,KF)

飛行計画(Flight plans)

ある種の果物ハエ(ショウジョウバエ)は、食物を求めて長距離の旅をし (漂泊バエ)、別のハエは、住まいの近くの食べ物を探す方を好む(家守 りバエ)。Osborneたち(p.834)は、この行動が、壊れやすい遺伝子の 2つの対立遺伝子によって制御され、この遺伝子が環状おグアノシン一リン酸 (cGMP)-依存性タンパク質キナーゼ(PKG)をコードしていると報告している。 家守りバエは、漂泊バエに比べてPKGメッセンジャーRNAが少なく、 酵素活性も少ない。これは、たった1つの遺伝子が行動に関与している 稀な例である。ヒトにおける類似の例は、セロトニン輸送体の多型性 (ポリモルフィズム,polymorphism)で、不安状態の差異を説明するもの として提案されている。(Ej,hE,Kj)

伝達されたストレス(Transmitted stress)

プレートの縁で起きる大陸の衝突のような造山運動は、どの程度内部に 影響を及ぼすのであろうか? Van der Pluijmたちは、北米中央部の 方解石の双晶を調べ、アパラチアやロッキー山脈の遠くの異なった 造山運動の影響を見積った。そのデータによると、北米プレートの 縁で生じた歪みは、その歪みの原因や様式にかかわらず、 プレート内部へと何千キロメートルも伝達される。(Ej,Og)

より良いフィッティング(A better fit)

分光学は、分子中の振動の力学状態、そしてそれから得られる結合や電子状態に 対する探査プローブを与えてくれる。しかしながら、解釈において必要である 大きな分子や高分子のスペクトルを適切な理論モデルに関係付けることは これまで困難なことであった。記事の中で、Mukamel たち は、 この課題に対して、集団電子振動表現(collective-electronic oscillator representation)として知られている最近のアプローチ方法の一つを 概観している。この表現は、多くの電子と分子の励起状態のダイナミクスを 考慮した完全な計算ではなく、光学スペクトルを電荷や結合のオーダーについての ダイナミクスに関連させるものである。(Wt)

運命を照らす光(Light shed on fate)

多細胞生物中の1つの細胞の運命はどのようなものであろうか?Chamb ridgeたちは、発生過程中の細胞の空間位置、形態、そして増殖による違い を調べる技術を考案した。この方法によると、細胞の運命を追跡調査する ために、ショウジョウバエの初期の胚の、異なる有糸分裂領域の個々の細 胞にマーク付けをするが、そのために光で活性化された遺伝子発現が利用 された。この研究によって、有糸分裂領域が細胞の運命の表示器であると 言う仮説が確認された。光誘発による遺伝子活性化は、アフリカツメガエ ルの単一細胞にも利用された。この技術は、他の無脊椎動物や脊椎動物系 にも応用出来ると期待されている。(Ej,hE,Kj)

高められた効果(Heightened effects)

ある条件下では、習慣性麻薬の投与を繰り返すと、動物やヒトの感受性を より高くすることがある。この感受性の高揚(感作)に伴って、麻薬の 習慣性を仲介する脳の一部分でGluR1が増加する。Carlezonたちは、 ラットの脳のこの領域に、GluR1配列を含むベクターを注入し、 人為的にGluR1の発現を増加させた。その結果、モルヒネに対する動物の 反応は、より鋭敏になったことから、感受性の増加をもたらすGluR1は、 感作が起きる必要十分条件であることを示唆している。(Ej,hE,Kj)

ポリメラーゼの配達(Polymerase delivery)

ミトコンドリアや葉緑体の小さなゲノムは、遺伝子を転写するするために RNAポリメラーゼを利用するが、そのために、これらポリメラーゼの 遺伝子が、そのゲノム中でコードされている必要性はない。Hedtkeたちは、 バクテリオファージに見つかったポリメラーゼに類似のRNAポリメラ ーゼをコードしている、シロイヌナズナ(Arabidopsis)の核 ゲノムから2つの遺伝子を同定した。特殊化した移動ペプチドが1つの酵素をミトコンドリア に向かわせ、ここでこの酵素は単独でミトコンドリアのゲノムを転写し、また、もう1つの酵素を 葉緑体に向かわせ、その葉緑体では、このもう1つの酵素が葉緑体でコードされた他のRNA ポリメラーゼといっしょになって色素体ゲノムを転写する。比較的最近の核内遺伝子の 複製が、引き続く1つの遺伝子の方向を再設定し、この複数RNA ポリメラーゼの系を作ったのかも知れない。(Ej,hE,Kj)

炭素とメタンの年代の混合(Mixed dates for carbon and methane)

放射性炭素による有機的炭素の年代測定法は、異なった化合物(生体マーカー) の年代をそれぞれ別々に同定する目的には精度が粗過ぎるため、測定される年代 は、 幾つもの資料に由来する炭素の混合を反映するものになっていた。この難しさは、 Freemanが展望記事(p. 777)に記しているように、炭素がどのように蓄積されて いくか、また大気に出て行くかという課題を考えていく際に重要となる有機物の 堆積時期を評価する際には決定的な問題である。 Eglintonたちは、黒海の層をなした海盆(水塊が成層していて,上 >下の混合がない海盆)と、上昇する湧き出し流が重要な役割を 果たしているアラビア海とから得られた有機的炭素の個別の生体マーカーを分析 することができた(p. 796 )。その結果、それぞれの生体マーカーは、10万年も 離れた年代のものでありうることがわかった。 また、Zimovたちも放射性炭素による年代同定を行ない、高緯度のシベリアの湖 から放出されるメタンは、主として、最後の氷河期の間に堆積された炭素を原料 としていることを明らかにしている。(p. 800)(FK,Og)

塊茎硬化症遺伝子(Tuberous sclerosis gene)

塊茎硬化合併症(TSC)は常染色体優性病の一種で、複数の腫瘍様の成長が 神経系や他の器官に生じる。家族性TSCの約半分はTSC2の突然変異によって 生じるが、このTSC2遺伝子は、GTP加水分解酵素活性化タンパク質をコード する染色体16p13上にある。Van Slegtenhorstたち(p.805)は、 その他の家族性症例のほとんどの原因である染色体9q34上のTSC1遺伝子を同定した。 このTSC1遺伝子は潜在的にコイルドコイル(coiled-coil)領域を持つ、 130-キロダルトンの親水性タンパク質をコードするが、既知の機能を持った タンパク質で強い相同性を示すものはない。(Ej,hE,Kj)

小さくても安定(Small but stable)

サイズが小さくなると、金属酸化物はしばしば、熱力学的に安定なバルク相とは 異なる相を形成する。シミュレーションによれば、そのような小さなサイズに おいては、熱力学的安定性に関する切り替えが実際に存在することになっていたが、 その証拠は、実験によっては見い出されていなかった。McHaleたちは、アルミナの 種々の相の熱力学的安定性に関する実験による研究を行ない、安定なバルク相である コランダムが、小さなサイズではγ-アルミナよりも熱力学的に安定でなくなること を示している(p. 788)。(KF)

圧力下での交換(Pressured exchange)

アイソトープの分画は、一般に圧力ではなく、温度に依存するものと考えられて きた。しかし、Driesnerは、水-無機質反応における水素と酸素のアイソトープの 分別過程が圧力に依存すること、また水素アイソトープの分画について、特に水の 臨界領域に近い条件では、圧力の影響が大きいことを示した(p. 791、また Sheppardによる展望記事参照のこと p. 775)。その効果を計算すると、 無機質-水反応における水素アイソトープの分画曲線の、見掛けの上では大きく 異なっている複数の実験結果が正しく調整されることになる。(KF)
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