AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science June 7, 1996


限界を突いて( Pushing the limits)

電界効果トランジスターは有機材料で作られたが、しかし、それらが 柔軟なディスプレイのような応用に用いることができる ようになるには一層の最適化が必要である。 Torsi et al. (p. 1462)は、絶対温度4度から350度の範囲以上に渡って、 [alpha]-sexithiopheneの電界効果による電子移動度を測定し、 Holsteinのモデルと非常によく一致するデータを得た。この モデルでは、比較的高い温度環境では、電子輸送を小さな ポーラロンのモデル、すなわち、ホッピング伝導モデルとして描い ている。これらの結果は、比較的低いポーラロンの結合エネルギー を持つ材料を探し求めるべきであることを示唆している。(Wt)

地殻を上に戴いて( With the crust on)

マントルから導かれたマグマは、それらが上昇する間に地殻と相 互作用する可能性がある。マグマの起源を追跡する上での鍵 となる問題は、地殻による汚染問題を解決することである。 Kersting et al. (p. 1464)は、薄いが、化学的には異なる日本 における大陸の断片にまたがって存在する一組の火山を調べた。 火山の間の化学的な変化は、地殻の境界を横切ると変化して いる。これは、薄い大陸の地殻ですらも、マントルのマグマ を変性させたことを示唆している。(Wt)

深発地震のメカニズム( A mechanism for deep earthquakes)

滑り込み領域において豊富な無機質の一つである蛇紋石の、 高圧高温下での構造変化は、滑り込み領域にそって記録されてい る、最深度地震(450 to 650 km)の主たる原因と考えられている。 入船 (p. 1468, (入船徹男愛媛大教授)) らは、マルチアン ビル超高圧発生装置により、蛇紋石の構造を研究した。14〜27 Gpaの圧力および比較的低温(200〜300℃)では、蛇紋石は非晶 質となり、脱水された。そしてより高い温度では再び急速に 結晶化するようになった。深発地震は、比較的高温で発生すると 仮定されているが、主に蛇紋石の脱水現象に起因する可能性がある。(Wt)

ウイルスタンパク質、vs、p53(Viral protein versus p53)

転写調節タンパク質p53は、細胞増殖を制御するタンパク質の発現をコントロールす るが、このp53の変異はヒトの癌にしばしば付随して起こる。Dobnerたち(p.1470)は、ア デ ノウイルスタンパク質、E4orf6、はp53の転写活性を抑止することを見つけた。E4orf 6はp53のカルボキシ末端に結合し、p53のアミノ末端が開始複合体のTFIID成分である TAFII31と相互作用をするのを妨げる。(Ej,Kj)

寄生虫と妊娠(Parasites and pregnancy)

マラリアにおける最大の神秘の一つは、妊娠前に免疫を持っている女性でも、妊娠す ると感染しやすくなり、発病することである。妊娠による免疫調節効果によって、従 来この現象の説明をしてきたが、FriedとDuffy(p.1502)は、これに替わる説を示唆し ている。彼らによると、マラリアに冒された胎盤の赤血球細胞はコンドロイチン硫酸 Aにくっつくが、妊娠した女性の末梢血の感染した赤血球は接着性が弱く、非妊娠女 性のそれは接着しない。従って、妊娠による特殊な環境で栄えることの出来る寄生虫 のサブグループが病気を起こしていると思われる。(Ej,Kj)

染色質コネクション(Chromatin connection)

染色質(クロマチン)中へのDNAのパッケージングは、転写制御を助けている。酵母( Saccharomyces cerevisiae)の必須遺伝子SPT6は、クロマチン構造のコントロールに 関係してきた。BortvinとWinston(p.1473)は、spt6の変異が生体内でクロマチン構造 の変化を起こすことを見つけた。Spt6p タンパク質はヒストンと直接相互作用をし、 in vitroで、ATP非依存的にヌクレオソームの組立の仲介をすることTP もできる。(Ej,Kj)

情報を伝えて(Passing information)

哺乳類の脳において、感覚器官からの情報は海馬に集結し、短期記憶、長期記憶に 便利なように会合され、大脳皮質の他の領域に伝達される。RisoldとSwanson(p.1484 )は、これら会合情報が視床下部でも受信されていることを示した。動機づけ行動( 例えば、摂食、社会的な振舞い)に関与する視床下部の3部分は、海馬の3つの独立 部分と連絡しており、このことから、海馬内部の情報処理は機能的に独立しているこ とが推察される。(Ej,Kj)

カルシウムを制御する(Controlling calcium)

細胞機能の協調的制御にはシグナル伝達経路間の相互作用が必要である。Jayaraman たち(p.1492)は、Srcファミリーのチロシンキナーゼによる細胞内カルシウム濃度制 御の証拠を提供している。 チロシンキナーゼFynが、T細胞受容体の活性化により、イノシトール 1,4,5-三リン 酸(IP3)受容体、 すなわち細胞内貯蔵カルシウムを放出するカルシウムチャンネル、と会合し、 そのIP3受容体のリン酸化によりカルシウムチャンネルを開き易くなることがわかった。 解明されたメカニ ズムによると、細胞表面の受容体刺激に応答して、非受容体チロシンキナーゼを活性 化することにより、細胞内カルシウム濃度の増加をもたらしうる。(Ej,Kj)

環境中のエストロゲン(Environmental estrogens)

環境中にある天然のエストロゲンと類似の作用をする化学物質は、これに曝された生 物の正常な分裂機能を阻害するものとして疑われてきた。しかし、これら化合物は天 然のエストロゲンに比べ、はるかに効力が小さい。Arnoldたち(p.1489,およびSimmon sによる「展望」p.1451,またKaiserによる解説p.1418)は、2つの環境由来のエスト ロゲンの組合せが、どの程度、エストロゲン受容体と結合し、活性化させるか、その効 果をテスト した。個々のエストロゲンに比べ、組み合わせたエストロゲンは、エストロゲン受容 体を介した転写を活性化するのに10-1600倍も強力であった。これらの化合物の生 物活性の相乗効果は、エストロゲン受容体への相乗効果を反映している。(Ej,Kj)

ディジタルライブラリー(Digital libraries)

例えば、航空技術者が使うlift(空輸)と海軍でのlift(射撃方向転換)は意味が異 なり、そのまま情報検索することは出来ない。現在、専門領域の異なるデータベースの 検 索は殆ど不可能であるが、アリゾナ大学のSchatsたち(p.1419)は「意味障壁にひびを 入れる」ことに成功した。ユーザーに、どの単語が良いかの選択を残したまま探索す るこの方法は、HP Convex Exemplarスーパーコンピュータで10日もかかるほどで実 用には程遠いが、すべての学問領域をカバー出来る能力を持っている。利用する技 術は、文章中の2つの語句の同時出現確率を計算するもので、専門分野ごとに100,000対 の語彙要素からなる巨大マトリックス(概念空間=Concept Space)を1000個、つまり1000 分野 作った。これを通常計算機で1日の計算時間に短縮するのが当面の目標と言う。(Ej)
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