AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science May 31, 1996


百武彗星の中の豊富なエタン( Abundant ethane in comet Hyakutake)

C/1996 B2 百武彗星が地球へ最接近するアプローチを取って いる最中、Mumma et al.(p.1310, Peterson の解説記事p.1263も参照のこと)は、NASA の赤外線望遠鏡を用いて、彗星の核から昇華する揮発性物質 を測定した。高分 解能赤外線分光器は、水、一酸化炭素およびメタンのバンド に焦点をあてたが、驚くべきことに、メタンの量の半 分を上回る量のエタンが検出された。これほどの豊富な エタンの量が検出されることはまれであるが、これは、百 武彗星はより複雑な星間空間に氷形成の過程を通して 進化した可能性のあることを示唆している。(Wt)

粒子に抗して( Against the grains)

炭素質のコンドライトは、カルシウム−アルミニウムの 豊富な含有物の非揮発性の凝集体を含んでいる 。これらは、太陽系の星雲から生じた初期のある凝集生成物 を表していると考えられている。Greshake(p.1316)は、これらの 非揮発性の凝集体の粒子の中、あるいは、粒子同士の間 に、MgO, TiO2,CaO およびAl2O3のナノメーターサイズの 酸化領域を発見した。これらの酸化物は、最初に凝集 したものかもしれない。すなわち、これらのカルシウム− アルミニウム含有物生成に向け、複雑な初期段階の進化 が必要と思われるが、この酸化物は、ひとつの進化の起源 を表している可能性がある。(Wt)

er tunneling barrier. クーロンの階段( Coulomb steps)

ナノメーターの大きさの金属粒子は、バルクの結晶のバンド よりも、原子の離散的な状態に類似した、 電子エネルギーレベルを持ちうる。原理的には、これらの レベルを利用して、障壁を通過するときの電子のトンネル電流を制 御することができ、これによりあるスイッチング方式を提供 しうるよう、デバイスを構成することができる。この 目的に向けての一歩として、Andres et al(p.1323) は、 室温において「クーロン階段」を示すナノメーターサイ ズの構造を作成した。金のナノメーターサイズの粒子を、 アルカンジオチールの自己配列する単分子層により、金 の表面に保持した。この単分子層は、トンネル障壁を形成 する。走査型トンネル顕微鏡の先端は、電流源であると 同時に、単分子層の障壁とは別のもう一つトンネル障壁 を与えることとなる。(Wt)

喜ばしい減少(Welcome decline)

成層圏のオゾン破壊の主犯人であるハロカーボン(ハロゲン化炭素)の生産はモント リオール協定、および、その調停書や修正書によって制限されてきたが、この有効性を 不確かにするような多くの要因が取り巻いている。Montzkaたち(p.1318)は1995年中 ごろまでに、人間活動によるハロカーボンに起因する対流圏のハロゲン量が全体とし て減少して いる証拠を示した。その中で、塩素は1994年以来減少しているが、臭素は依然増加し ている。これらのデータから推察できることは、もし今の傾向が続けば、成層圏の 反応性ハロゲンの量は1997年から1999年の間にピークに達し、その後は減少に転ずる であろう。その結果、オゾン層は、世紀の変わり目の頃に回復し始めるであろう。(E j,Kj)

より旺盛な花粉(More potent pollen)

植物における細胞質の雄性不稔は、ミトコンドリアによってコードされた広範囲に発 現された遺伝子の突然変異が原因となっている。花粉は特別影響を受け易い。稔性は 、2つの核コード遺伝子の組合せによって回復される。Cuiたち(p.1334,およびLevin gsによる「展望」p.1279)の示すところによれば、トーモロコシ由来のこれらの遺伝子 の一つであるrf2のクローニングによって、これがアルデヒド脱水素酵素に似ている ことを示した。この提案された機能から、発生中の花粉の代謝についての ある程度の洞察が可能である。(Ej,Kj)

ほどける結び付き(Ties that unbind)

ヘリックス-ループ-ヘリックス(HLH)タンパク質や核ホルモン受容体スーパーファミ リーのような転写制御因子の 多重ファミリーは、ホモダイマーやヘテロダイマーと して機能する。HLHファミリーの1つであるIdタンパク質は、HLHファミリーの別の メンバーとヘテロダイマー化 するとき、HLHタンパク質の1グループの転写因子機能を阻害するが、その理由は DNA結合に必要な領域を欠いているためである。Soelたち(p.1336)は、核ホルモン受容体 スーパー ファミリーのいくつかのメンバーに対し、これとやや類似の阻害剤を見つけた。SHP(Sma ll Heterodime r Partner)は、DNA結合領域を欠如しており、これがレチノイド受容体や甲状腺ホル モン受容体とヘテロダイマー化するとき、それらの活性を阻害する。(Ej,Kj)

腎臓病遺伝子(Kidney disease genes)

常染色体優性多嚢胞腎臓疾病(ADPKD=autosomal dominant polycystic kdney disease )は1000人中1人に発症する。腎臓嚢胞の発生は慢性腎不全に至らしめる。ADPKD 症例の85%の原因となるPKD1遺伝子は、4304-アミノ酸残基のタンパク質をコ ードし、この蛋白質は細胞-細胞間のシグナル伝達に携わっていることを示唆する 大きな細胞外領域や他のモチーフを有する。Mochizukiたち(p.1339)は、ADPKDの その他のケース(15%)に対応する第2 の遺伝子PKD2を同定した。このPKD2は、PKD1に似た配列を持つ内在性膜タンパ ク質であるが、それよりずっと小さく(968アミノ酸)、細胞-細胞シグナル伝達領域 を欠き、電圧によって活性化するカルシウムとナトリウムチャネルに類似している。 PKD1とPKD2は、同じシグナル伝達経路中で機能しているのであろう。(Ej,Kj)

すべてをくるんで(All wrapped up)

In vitro選択法は、アミノ酸のような小分子を認識するRNA分子、すなわちアプタマ ー( aptamer)を得る手法として用いられてきた。Yangたち(p.1343)は、核磁気共鳴を用い て、44のポジションの内、3つだけ異なる、2つのRNAアプタマーで、2つの類似した アミノ酸、シトルリン(citruline)とアルギニン、を区別することが出来るRNAアプタマ ー の3次元構造を決定した。そこではこれらのアミノ酸は、RNA表面に結 合しているのではなく、インテグラル パートを構成しており、水素結合と無極性相 互作用によって深部の結合部位に保持されている。(Ej,Kj)

ストレスの刺激(Stress stimulation)

細胞に加えられる沢山の代謝性ストレスは、シグナル伝達経路の活性化を促し、その 結果、「p38」と呼ばれている、分裂促進因子で活性化されるタンパク質(MAP)キナー ゼファミリーのメンバーを活性化する。WangとRon(p.1347)は、ストレスに誘発され たp38MAPキナーゼの活性化がどのように、細胞成長と分化に影響を及ぼすか、 そのメカニズムを述 べている。p38MAPキナーゼは、転写制御因子CHOPをリン酸化し、その活性を増加させ る。反対にCHOPは転写制御因子のC/EBPファミリーのメンバーの活性に影響を及ぼす。こ の 因子は、ある種の細胞型の成長と分化に影響を及ぼす遺伝子の発現を調節する。(Ej,Kj)

熱電流は熱くなったり、冷たくなったり(Thermoelectrics Run Hot and Cold)

Seebeck効果として知られている熱起電力は、通常熱電対として温度測定に使われる が、この原理は発熱や、吸熱にも使われる。ここ数年注目を集めているのは、より高 効率の吸熱材料の要求が高まり、IrSb3やCoSb3を含む、方コバルト鉱(skutterudite) の有望物質が見つかった為である。熱起電力物質の効率(figure of merit)を表すに は Z=α^2×σ/λが使われる。ここに、λは熱伝導率、α=ΔV/ΔT,(Vは電圧、 Tは温度)、σは電気伝導度である。そして効率を表す係数は(1 + ZT)^(1/2) に比 例すると考えられている。今までの経験から、ZTの上限値は1であろうと思われてい たが、理論的な裏付けがあったわけではない。ここに来て、方コバルト鉱が、この値 を越える可能性を示したのは、その結晶構造中に大きな空洞があり、熱伝導率を大き く下げる可能性が出てきたからだ。 T. Trittによる解説(p.1276)参照。(Ej)
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