AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science June 14, 1996


癌へのつぎはぎ経路(A patched path to cancer)

ヒトの最も一般的な癌である基底細胞癌(BCC)の病因に関与している遺伝子について は殆ど知られていない。多くのBCCは、中年に散発的に発生するが、基底細胞母斑症 候群(BCNS)と呼ばれている遺伝性障害患者は、高い頻度でより早期の年齢で発生する 。Johnsonたち(p.1668;およびPennisiによるニュース解説p.1583)は、 BCNSの原因遺伝子が〜〜この場合、散発性BCCのあるサブセットの原因遺伝子である 可能性が高いが〜〜パッチ形成遺伝子のヒトのホモログであることをつきとめた。 この遺伝子は、パッチ形成された遺伝子のヒトの相同体 である散発性BCCのサブセットの原因でもある可能性が高い。ショウジョウバエにおいて は、パッチ形成遺伝子は、ある種の成長因子遺伝子の発現を抑制的に制御するひとつの 膜 貫通タンパク質をコードしており、この膜蛋白質が、発生中の正常なパターン形成に必 須 になっている。BCNS患者は、その他様々な発生異状を患うことから、 パッチ形成遺伝子の役割は進化の面から見れば保存性であることが示唆される。(Ej,Kj)

独自の道を進んで( Went their own way )

気候変動がある生態系に影響を及ぼす時、共同体内の生物学的な 繋がりはそのシステムへの外的な圧力を克服するもの であろうか。 Graham たち(p. 1601)は、アメリカ合衆国から の巨大なデータベースを用いてこの問題に対して応える ため、最近の氷河期からの温暖化に対する哺乳類の応答を 検証した。数千年の期間、種の分布領域は異なる方向に異な る割合で移動した。従って、哺乳類の統一性のある生態系は 維持されなかったのである。(Wt)

丁寧にたたまれて(Neatly folded)

ストレスストレス下の細胞では、タンパク質は不適切に畳込まれたり、のばされたり している。70kDのヒートショックタンパク質(hsp70)ファミリーの分子 シャペロンは、凝集性タンパク質の不安定に表面に晒されるセグメントに結合する ことによって畳込みを助けている。Zhuたち (p.1606)は、バクテリアのhsp70である DnaKタンパクの基質結合ユニットの、あるペプチド基質との複合体の中における 結晶構造について述べている。このペプチドはDnakを貫通するチャネルに 包み込まれており、アデノシン三リン酸駆動のコンフォメーション変化によって、正常 な 畳み込みのコントロールができるようにその基質タンパク質を交換しているように見え る 。(Ej,Kj)

Aリスト(The A list)

ショウジョウバエにおいて、その付属器官は、前側(A)および後側(P)区画として知ら れている2つの独立した細胞集団で構成されている成虫原基から発生する。P区画の 細胞は、P細胞であることを示すぎざぎざの縁どり(en)を発現する。Dominguezたち(p .1621)は、このぎざぎざが無いことだけでA細胞であるとは言えず、Znフィンガータ ンパク質 Cubitus interruptus(Ci)の発現が必要であることを見つけた。 ci機能不全の変異は胚致死性であることから、彼らはモザイ ク体において、Ci の役割を研究した。A細胞でCiが発現することは、シ グナル分子Hedgehog(Hh)の発現がP区画の細胞に限定するために必要なことであり、 ci 遺伝子は、Hhに応答してdecapentaplegic発現を活性化する機能を与えている。 このようにciはAP境界を確定するための役割を演じている。(Ej,Kj)

冷え冷え分子( Cool molecules)

複雑な分子の振動および回転スペクトルは、おびただしい励起 状態の分布をもっているため、はるかに 複雑なものとなる。分子の冷却は、基底状態の近くの準位 となるため、スペクトルを単純なものにすることができる 。Hartmann たち (p. 1631)は、分子および小さな分子の クラスターを、非常に冷たい液体ヘリウムの液滴中に単離し 、それらの振動及び回転のスペクトル構造を分析した。液滴 内部の非球状のクラスターの擬似自由回転により、ヘリウ ム液滴の超流動性が示された。(Wt)

超臨界のpH( Supercritical pH )

超臨界液体の特性を測定することは、地質学的にも工学的 にも困難なことであった。 Ding and Seyfried (p. 1634)は 、超臨界液体のその場測定用のpHセンサーを実験的に示して おり、また実際に適用している。彼らの電気化学的セル、 はイットリウムをドープしたジルコニアの膜と、銀/塩化銀 の参照電極を含んでいる。400℃および4Mpaにおける塩化ナ トリウム−塩酸からなる水を主成分とする含有流体のpH測定は、理論的予測 とよい一致を示した。(Wt)

修理する価値(Worth repairing)

もし細胞のDNAが破局的なダメージを受けたときの最良の応答はたぶんアポトーシス 、すなわちその細胞の死であろう。では、DNAのダメージが破局的ほどひどくないが 、修復も不可能であろうと言うときはどうであろうか?Odaたち(p.1644)は、 真核生物の細胞ではダメージが最小であってもDNA分子の複製は阻止されることが あることを見つけた。この阻止は、ある種の原核生物の変異原性タンパク質によって 迂回が可能である。真核生物細胞のなかには、修復不可能の DNA損傷の数がかぎられているなら、それを迂回する、類似 のシステムを持っているような細胞型があるかも知れない。(Ej,Kj)

阻害作用をなくする(Losing inhibitions)

酵母のGa14pタンパク質は、ガラクトーズ代謝の鍵となる制御装置である。Ga14pの活性 は Ga180p によって阻害される。この阻害はガラクトースが存在すると解除されるが 、そのメカニズムは良く解っていなかった。Zenkaたち(p.1662)によれば、ガラクトーズ 代 謝の最初の酵素であるガラクトキナーゼは、ガラクトーズの存在下で阻害剤Ga180pと 相互作用してGa180p-Ga11p複合体を形成し、これがGa180pがGa14pを阻害することを 防いでいる。(Ej,Kj)

顔の認識(About face)

視覚系は視覚世界から様々な特徴を抽出し、次にこれらの特徴から形や対象や色を再 構成して知覚するに至る。似たような応答特性を有するニューロンは通常、大脳皮質 の表面に垂直な柱状にグループ化されている。Wangたち(p.1665)は、広い範囲の状況 を観察するために光学的な像と、狭い部分を観察するために電極によるユニット記録 装置を利用し、対象物認識に特殊化した視覚経路の終わりの方の段階の1つであるサ ルの下側頭皮質中の類似細胞組織を見つけた。ヒトの顔を左側から順次右側へと回転 しながら、色々な角度で見せたところ、活性ニューロン部位は、この皮質領域内を系 統的にシフトして行った。(Ej,Kj)

濃縮系での非平衡構造(Nonequilibrium structures in condensed system)

熱平衡状態では、濃縮分子系は整列構造を取り、温度が更に下がれば、より整列度合 が強まる。しかし、強い外部刺激によって、新たな非平衡構造が現れることがあると 、MikhailovとErtl(p.1596)は、TabeとYokoyamaの論文を引用して紹介している。そ れによると、固体表面の薄膜液体層であるLangmuir-Blodgettフィルムを単分子で形 成したとき、トランス=シス異性化を起こすのに適した波長の偏光光で、液体層上の 進行波を照射すると、平衡ストライプパターンが顕著に変化する。そして、十分強い 光強度では、約10ミクロンの非平衡でランダムな粒状パターンへと規則構造が壊れ る。光照射を止めると元のパターンが再現する。この発見の重要性は、類似の現象が 有機物薄膜でも可能であること、そして、これが生物の脂質膜でも起き、重要な役割 を担っているかも知れないと言うことである。(Ej)
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