コピーの不思議Q&A|Ricoh Japan


コピーの不思議Q&A


「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。


コピー機の部品に関する質問コピー機の部品に関する質問

和泉恭佑くん、山下大空くんからの質問:

「トナーはインクではなく、なぜ粉なのですか?」

カラーコピー機で画像をつくる基本の工程は、青いテキストの25ページから28ページに書かれています。
この画像をつくる工程(基本プロセス)は、帯電、露光、現像、転写、定着ですね。 感光体に一様に静電気を帯びさせるのが帯電であり、感光体上に静電気の像をつくるのが露光ですね。 この静電気の像は目で見ることは出来ませんが、この出来た静電気の像に電気的な力でトナーといわれる、静電気を帯びた粉をつけていくのが現像です。 これによって目にみえる像が感光体上にできます。 このトナーの像を、静電気的な力で紙に移すのが転写であり、紙にしっかり溶かしてくっつけるのが定着です。 このような静電気の像を作って画像を作る方法を「電子写真方式」と呼んでいます。

実際のところ、この方法を用いたコピー画像の作り方には、粉を使うやり方と、液体のインクを使うやり方があります(どちらでも良いのです)。 粉を使って現像する方法を「乾式現像」、液体インクを使って現像する方法を「湿式現像」と呼んでいます。
かつては、湿式現像の方が「きれいな画像」を簡単に作ることができたので、湿式現像が主流でした。 しかし、湿式現像は乾式現像に比べて装置が複雑で大きくなり、また大量の溶剤を使いますので、溶剤の臭いを防ぐ仕組みが必要になることや、使用済み溶剤の処理が難しいといった欠点がありました。 技術が進歩して粉を使う乾式現像でも「きれいな画像」が作れるようになると、乾式現像方式が主流になり、湿式現像がだんだん姿を消してしまったのです。

質問に対する回答は以上ですが、今でも「インクジェット方式」と呼ばれる技術のように、液体インクでないと画像を作れないものもあります。 一般の家庭にあるプリンターのほとんどが、インクジェット方式です。 参考までに液体インクでなければならないインクジェット方式について説明してみましょう。 内容的に難しいところがありますので、大まかなところを知っていただければ充分だと思います。 気楽に読んでみてください。

『インクジェット方式について』
ところで、水鉄砲等で遊んだことはありますか? 水鉄砲は引き金を指で引くと水に圧力がかかり、その圧力によって小さな穴から水が押し出される(飛び出す)仕組みになっています。 指で引き金を小刻みに引くと、それにあわせて水が断続的に飛び出します。 インクジェットは、まさにこの原理を応用しています。
インクジェット方式のプリンターやコピー機には、水鉄砲の代わりに、液体インクの入った「記録ヘッド」という装置が備わっています。 記録ヘッドには小さな穴(これをノズルといいます)が開いていて、インクに何らかの方法で圧力をかけると、インクが小さな穴から飛び出す仕組みになっています (粉=トナーではうまく圧力が加わりませんが、液体インクなら、一部に加えた圧力が全体に均一に伝わります)。

この記録ヘッドを用紙に近づけて、記録ヘッドを用紙の端から端まで移動させながら、ノズル(インクが飛び出す小さな穴)からインクを噴き出させて用紙に記録する技術が、インクジェット方式です。 以下この技術について、もう少し詳しくご紹介します。

最初に、記録ヘッドからインクを噴き出させる二つの代表的な技術をご説明します。

これはインクに圧力をかける、圧力のかけ方が違うということで、以下の二方式があります。

  • ピエゾ素子の物理的な変形によってインクに圧力をかける。
  • ヒーターでインクを瞬時に加熱し、発生した気泡(あわ)で圧力をかける。

以下、それぞれについて説明します。

● ピエゾ素子の物理的な変形によって、インクに圧力をかける方式。

聞きなれない言葉が出てきましたが、下の図を見てください。 この図は記録ヘッドの断面を表わした図で、内部にインクが入っています。 そして、小さなインクの噴き出し口があります。 インクに圧力がかかると、この吐き出し口からインクが粒子となって、下の絵のように飛び出す仕組みになっています。 どうしてインクが飛び出すかを説明しましょう。


ピエゾジェット方式インクに圧力をかけるのがピエゾ素子というものです。 水鉄砲の引き金に相当するものと思ってください。 このピエゾ素子は、電圧をかけると変形する性質があります。 左図は電圧がかかっていない状態を表わしています。 電圧をかけると右図のように、ピエゾ素子がインクに圧力をかける方向に変形します。 これが水鉄砲の引き金を引いた状態に相当します。 そこで水鉄砲の引き金を短い時間に少しだけ引くように、このピエゾ素子に短い時間だけ電圧をかけます。 すると、ピエゾ素子は電圧がかかった短い時間だけ変形し、電圧がかからなくなるとすぐもとに戻ります。 これによってインクは短い時間のあいだ圧力を受け、また直ぐに圧力を受けなくなります。 この動作によって、インクが噴き出し口から小さな粒子となって飛び出します。 この電圧をかける状態をONするといい、電圧をかけない状態をOFFすると言いますが、このON、OFFを連続的に繰り返すと、インクの粒子が連続的に飛び出して、文字や絵を描いていくことになります。

次に、もう一つ別な方式を説明します。

● ヒーターでインクを瞬時に加熱し、発生した気泡で圧力をかける方式。

お湯を沸かすとき、「やかん」や「なべ」や「ビーカー」の側面に気泡ができるのを見たことがあると思います。 液体は温度が高くなると、気体に変化していきますね。 熱を受けて膨張する変化は、液体よりも気体のほうが大きいですね。 もし、「やかん」や「なべ」や「ビーカー」に蓋をして熱していくと出来た気泡の体積がどんどん大きくなろうとして、内部の圧力が非常に高くなり、内部に残っている液体にも大きな圧力が加わっていきます。
ここで説明する方式はまさにこの気泡(バブル)の力を応用しているのです。 別名「バブルジェット方式」と呼ばれています。


バブルジェット方式右図は、記録ヘッドの構成です。 記録ヘッドにはインクが詰まっています。 そして、小さな穴とヒーターがついています。 バブルジェット方式では、このヒーターが水鉄砲の引き金に相当します。 ヒーターに電流を流して暖めると、ヒーターに接しているインクが暖められて小さな気泡ができ、その気泡がさらに大きくなってインクに強い圧力を加え始めると、圧力を受けたインクが穴から飛び出します。 また、ヒーターの電流が切れると、ヒーターの温度が下がり、気泡も小さくなってインクへの圧力が小さくなります。 すると穴から飛び出そうとするインクの勢いが弱まりますので、飛び出したインクは途中でちぎれて、インクは粒子状になって飛び出していくことになります。 このヒーターに電流を短い時間だけ流す(ON)、切る(OFF)という動作を連続して行えば、インクの粒子が連続的に飛び出して、文字や絵を描いていくことになるわけです。

このように、カラーコピー機に使われている「電子写真方式」と「インクジェット方式」には、技術的に大きな違いがあります。 インクジェット方式ではインク粒子をピエゾ素子の物理的な変形や、ヒーターによる液体の熱的変化(液体から気体に)によって、一つ一つ形成しなければならないので、電子写真方式に比べて記録スピードが遅くなります。 この欠点をカバーするため、記録ヘッドの数を増やして記録スピードをあげることも検討していますが、記録スピードをあげるためには、記録ヘッドの数だけでなく解決しなければならない課題がまだまだ多くあるのが現状です。