AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science January 23 2015, Vol.347


慢性マラリアはテロメアを短くする(Chronic malaria shortens telomeres)

慢性感染症は、宿主にほとんど被害を及ぼさないと考えれているが,これは本当だろうか? 渡り鳥は,熱帯で冬を越す間に,寄生虫である色々な種類のマラリア原虫に感染する可能性がある.繁殖地がスウェーデンで,アフリカで冬を越す渡り鳥のオオヨシキリは,罹り始めの急性マラリア症候を経ると,死ぬまで無症候状となる.Asgharたちは,潜在感染したこれらのオオヨシキリは,非感染のオオヨシキリと比べ,産卵数が少なく,元気なヒナを育てる確率が低いことを見出した.さらに,感染した鳥は,テロメア(染色体末端の保護キャップ)の長さが著しく短くなり(【訳注】参照),テロメア長の短いヒナが産まれた.(MY,kh)
【訳注】
・テロメアの長さは細胞分裂(DNAの複製)の度に短くなる.ある長さになると分裂ができなくなり,細胞が分裂寿命を迎える.
Hidden costs of infection: Chronic malaria accelerates telomere degradation and senescence in wild birds (Science, this issue p. 436)

母指対向把握の発達(Getting a grip)

手---特に他の指と向き合う親指---の進化は,初期人類の成功にとって極めて重要であった.親指が他の指としっかり向き合う母指対向把握ができなければ,道具の作製使用技術は出現しえなかった.Skinnerたちは,320万年前の鮮新世のアウストラロピテクス属の手の骨の内部構造を分析した.骨の内部骨構造から,手に作用する力のパターンや方向が明らかになり,どのような動作をしたかが突き止められる.常習的に道具を使う現代人と同じような手の母指対向把握機能は, 石器が示す最古の考古学的な証拠よりもおよそ50万年前に出現していた.(MY,bb)
【訳者コメント】
・これは、石器製作使用より前に棍棒のような道具を使用していた可能性を示すものである。。また、内部の骨ではなく、化石骨の内部構造、つまり、緻密質の厚さの分布や海綿質骨稜の発達具合です。これは、レントゲンやCTで明らかになります。それが力の加わる方向にそって発達する。
Human-like hand use in Australopithecus africanus (Science, this issue p. 395)

T細胞にとって、多様性は人生のワサビである(For T cells, variety is the spice of life)

CD4+ヘルパーT 細胞は、多様な香りを生じる。これにより、T細胞が遭遇する病原体に適合するよう自ら応答することができる。Becattiniたちは、ヒト CD4+T細胞の複数の「特徴(flavors)」が特定の刺激に応答するのかどうか、或いは一つのみの特徴に支配されているのかどうかを疑問視した。これを知るために、彼らは、菌類や細菌、或いはワクチン抗原を用いてヒト記憶 CD4+T細胞を刺激した。複数のヘルパー細胞サブユニットが個々の応答に関与していた。T細胞受容体の配列決定から、幾つかのケースで、同じ特異性を持った T細胞が異なるヘルパー細胞の運命を獲得していたことが明らかになった。このように、以前認識された以上に、ヒト T細胞の応答には不均一性が存在している。(KU,kh)
Functional heterogeneity of human memory CD4+ T cell clones primed by pathogens or vaccines (Science, this issue p. 400)

宇宙線の発生源に光をあてる(A light on the origin of cosmic rays)

我々のお隣の銀河である大マゼラン雲が、宇宙線の発生源を研究するための新しい研究室となった。宇宙線がガスや低エネルギー光子と相互作用する際に生成されるγ線を分析することによって、天文学者らは現在このテーマに進展を見出している。HESS望遠鏡の共同研究プロジェクトによって、銀河系の隣にある伴銀河、大マゼラン雲、で様々な形態にある3つのγ線発生源が観測されている。この発生源は、パルサー風星雲 N 157B、超新星残骸 N 132D、そしてスーパーバブル 30 Dor Cである。不思議なことに、最近爆発したばかりの超新星 1987A からはガンマ線が検出されなかった。(Uc,kh,nk)
【訳注】
・スーパーバブル:複数の超新星や恒星風によって星間空間に吹き寄せられた直径数百光年に及ぶ空洞
The exceptionally powerful TeV γ-ray emitters in the Large Magellanic Cloud (Science, this issue p. 406)

巨大な惑星における溶融二酸化ケイ素(Melting silica in massive planets)

大きな惑星内部の極端な条件をシミュレートするには、極端な条件での実験が必要である。Millotたちは地球中心の2倍に相当する高圧の衝撃波を用いて、惑星内部の主要成分の一つである 二酸化ケイ素を溶融させた。これは、スティショバイトと呼ばれる非常に高密度な形態の二酸化ケイ素に、衝撃を与えることによってのみ可能であった。二酸化ケイ素の融点を決定することは、地球の質量の数倍もある惑星内部の、より良い計算モデルを開発するために極めて重要である。この高圧の液体は導電性であり、それは非常に大きな地球型系外惑星における磁気ダイナモに関係するであろう特性である。(Sk,KU,kh) 【訳注】・スティショバイト(stishovite):SiO2変態のうち最も高圧下で存在する安定な相。隕石と石英を含む岩石の衝突で生成されたりする。
Shock compression of stishovite and melting of silica at planetary interior condition (Science, this issue p. 418)

半導体ナノ粒子をはんだ付けする(Soldering semiconductor nanoparticles)

サイズや組成を変化させることで、半導体ナノ粒子の光学特性や電気特性を制御することができる。しかし、界面接合が脆弱なため、デバイスに組み込んだ際に性能が低下するという問題をかかえていた。Dolzhnikovらは、セレン化カドミウムやテルル化鉛のようなカルコゲン化金属ナノ粒子に対して、これらの物質の分子ワイアーを架橋結合することで、ゲル状“はんだ”の合成について報告している。(NK,KU)
Composition-matched molecular“solder”for semiconductors (Science, this issue p. 425)

ナノスターを見る(Seeing nanostars)

顕微鏡的サイズの腫瘍は裸眼では見えないかもしれないが,癌組織に浸透して,疾患の存在を示すナノサイズの造影剤には かなわない.Harmsenたちは「ナノスター」と呼ばれ,シリカ中に包含された星形の金の芯とラマンレポーター分子【訳注】からなり,ラマン散乱法で可視化できる新世代のがん造影剤を作った.ナノスターを近赤外域で共鳴させる新機能により,以前のどんなナノ粒子よりも強い発光が生じる.著者たちは,この表面増強共鳴ラマン散乱ナノスターを用いて,動物モデルで脾臓癌,乳癌,前立腺癌,さらに,肉腫の顕微鏡的サイズの病変を可視化した.(MY,kh)
【訳注】
・ラマンレポーター分子:ラマン活性があり,ラマン散乱を与える分子.ここでは,金のナノ粒子上に配置され,金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴による電場増強効果で,増強されたラマン散乱する役割を果たす
Surface-enhanced resonance Raman scattering nanostars for high-precision cancer imaging (Sci. Transl. Med. 7, 271ra7 (2015))

in situでプロテアソームを詳細に観察する(A detailed look at proteasomes in situ)

26Sプロテアソームは、サイトゾル中の細胞内タンパク質を分解するタンパク質マシーンである。このプロテアソームは、真核細胞におけるタンパク質の品質管理、及び無数の細胞プロセスの制御に対して極めて重要である。単離されたプロテアソームの構造は十分に解明されているが、しかし無傷のプロテアソームが細胞内でどのように見えるかは明瞭ではない。Asanoたちは電子低温トモグラフィーの改良アプローチ法を用いて、無傷の海馬神経細胞におけるプロテアソームを調べた。彼らの解析では、これらの細胞は、無ストレス状態で自分たちのプロテアソームの僅か20%しか利用しておらず、このことはタンパク質毒性のストレスを処理するための予備能力を残していることを示唆している。(KU,kh,nk)
【訳注】
・プロテアソーム:真核生物に普遍的に見られ、細胞内の特定のタンパク質を分解する巨大プロテアーゼの一つ。分子量の異なる20Sと26Sの2種類がある。
・サイトゾル(cytosol):細胞質ゾル。細胞質からすべての小器官を除いた液相部分
A molecular census of 26S proteasomes in intact neurons (Science, this issue p. 439)

孤児受容体の結合パートナー(A binding partner for an orphan receptor)

未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)は、神経系発生の際に重要な受容体型チロシンキナーゼである。ALKはまた、神経芽細胞腫や肺腺癌などのあるタイプの癌において異常に活性化されることがある。これまで、ALKは、そのリガンドが未知だったため、「孤児」のような受容体だった。このたび、Murrayたちは、ヘパリンが直接ALKに結合し、その活性を刺激することを示している(Lemkeによるフォーカス記事参照のこと)。その結合をブロックする抗体は、ヘパリンがこの受容体型チロシンキナーゼを活性化することを妨げ、治療介入のための潜在的な道筋を提供してくれることになった。(KF)
Heparin is an activating ligand of the orphan receptor tyrosine kinase ALK (Sci. Signal. 8, ra6; see also fs2 (2015))

さまざまな人体組織でのタンパク質の発現(Protein expression across human tissues)

ヒトゲノムの配列決定は、ヒトについての生物学や病気について、新たな洞察をもたらした。しかしながら、究極のゴールは、約2000もあるタンパク質コード遺伝子の動的発現と、それぞれのタンパク質の機能とを理解することである。Uhlenたちはこのたび、32種のヒト組織にわたってのタンパク質発現マップを提示している。彼らは、RNAレベルでの発現を測定しただけではなく、抗体プロファイリングを用いて、対応するタンパク質の場所をも正確に局限した。インタラクティブなウェブサイトによって、人体全体にわたる発現パターンの探索を可能にしている。(KF,kh)
Tissue-based map of the human proteome (Science, this issue 10.1126/science.1260419)

容積と形状を結びつけて、海面を見つける(Volume and shape combine to find a level)

我々は、海面変化の地質学的記録をどうすれば理解できるのだろうか? 海面は、何十年から何百万年に至る時間スケールで変化する。これらの変化は、局所的な、地域的なそして地球規模での要素を持っており、そして広範囲の多様な地球プロセスにより引き起こされる。CloetinghとHaqは、層位学者たち(彼らは海底堆積層の記録を解釈する)と地球力学者たち(彼らはリソスフェアとマントルのプロセスでもたらされる地球の形状の変化を考察する)の見解が、お互いどのように補完しはじめたのか、そして海面の歴史に関するより筋道の通った解釈に向けてどのように動きつつあるかをレビューしている。彼らは、ほぼ1億4千5百万年から6千5百万年前の白亜紀の時代に起こった、持続時間50万年〜3百万年の周期的海面変化に焦点を当てている。(KU,kh)
Inherited landscapes and sea level change (Science, this issue 10.1126/science.1258375)

薬剤耐性を推進する仕組み(Mechanisms propelling drug resistancs)

もし拡大していたとすると、アルテミシニンという薬剤への耐性は、世界的マラリア制御プログラムに関する最近の成果に深刻な打撃を与えたことであろう(Sibleyの展望記事参照)。K13-プロペラと呼ばれる領域での変異が、東南アジアにおけるアルテミシニン耐性に対する前兆である。Mokたちは、アフリカとバングラデシュ、そしてメコン川流域で集められた1000人以上の患者から単離された寄生虫における遺伝子発現パターンを調べた。タンパク質修復経路と寄生虫の発生サイクルのタイミングとを変える一連の変異は、メコン川流域からの寄生虫にしか見つからなかった。Straimerたちは、最近の臨床分離株から得られた寄生虫の K13領域を遺伝的に操作した。この領域における変異が、実際に耐性のある表現型の原因だった。(KF,KU,kh,nk)
Population transcriptomics of human malaria parasites reveals the mechanism of artemisinin resistance (Science, this issue p. 431; see also p. 373)
K13-propeller mutations confer artemisinin resistance in Plasmodium falciparum clinical isolates (Science, this issue p. 428; see also p. 373)

火星の水とメタンについて(Of water and methane on Mars)

火星に到達して以降、過去二年間にわたって Curiosity roverはデータを集めてきた(Zahnle による展望記事を参照のこと)。多くの研究から、大昔、火星は現在より暖かく湿潤であったことが示唆されている。しかし、これらの条件は、すでに失われてしまったらしい大気を必要とした。Mahaffyたちは Curiosity roverを用いて、30億年から37億年前に形成された粘土中の重水素/水素の比率を測定した。水素は、重水素より容易に漏れ出るため、この比率は、太古の大気に関する断片的メジャーを与え、いつ、いかにして大気が消失したかについての制限を課すことに利用できる。地球上のメタンの殆んどは生物学的な起源を有しているため、惑星研究者たちは火星大気中でもその検出を熱心に追求してきた。Websterたちは、Galeクレーターに着陸した Curiosity roverに搭載された計測器を用いて、火星大気中にメタンが存在することを厳密に確認した。(Wt,KU,kh)
The imprint of atmospheric evolution in the D/H of Hesperian clay minerals on Mars (Science, this issue p. 412; see also p. 370)
Mars methane detection and variability at Gale crater (Science, this issue p. 415; see also p. 370)

二つの特性を追いかける(Tilting toward two properties)

電子的と対称性の相反する制約は、単結晶物質における材料物性のいくつかのペアの結合を困難にすることがある。磁化と電気分極はそのようなペアの一つあるが、それらの結合は電磁気的な情報記憶装置のような応用分野に有用となるであろう。Pitcherたちは、今回、層状のペロブスカイトに対して慎重に化学的置換を行うことで、330Kまでの温度で、電気分極と弱い強磁性の両者が生じることを示している。(Sk,KU,kh)
Tilt engineering of spontaneous polarization and magnetization above 300 K in a bulk layered perovskite (Science, this issue p. 420)
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