AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science August 3 2012, Vol.337


国境無き粒子たち(Particles Without Borders)

エアロゾルは、大気の組成、品質、そして気候に関して重要かつ、しばしば有害な影響を与える。しかしながら、エアロゾルは地域的な規制の努力を超えて、長距離を移動する。Yuたちは(p.566)衛星のデータを分析し、北アメリカ上空の大気に含まれるエアロゾルのどの程度が海外起源であるかを見積もった。北アメリカの粉塵(dust)、汚染物質の約半分がアジア、ヨーロッパ、アフリカそして中東から飛来していた。アジアからの粉塵はこの全体量に対して最も比率が大きい。更に、気候変動によって引き起こされる粉塵の排出量の潜在的な増加量は、発展段階のアジアの経済活動に伴って発生する汚染物質を抑えて減少させたとしても、その量をはるかに凌駕するであろう。(Uc,KU,nk)
Aerosols from Overseas Rival Domestic Emissions over North America

一方向に成長する

2つの異なるポリマーを共有結合させたブロック共重合体は、溶液中でミセルを形成するように設計することができ、そして組織再生工学や傷修復用途を狙った自己組織化能をもつ注入型ゲルとして用いることができる。通常は、高分子鎖の両端で結合反応が発生するため、非対称構造の合成手順を見出すことは難しいとされている。Rupar等は(p.599;Pochanの展望記事参照)、キャップ形成法により3つの二元ブロック共重合体を結合させる方法を発明した。一方の鎖端を保護しながら反応を進めることで、非対称構造を創造できるという。(NK,KU)
Non-Centrosymmetric Cylindrical Micelles by Unidirectional Growth

ミトコンドリアの修復の開始(Initiating Mitochondorial Repaia)

ミトコンドリアにおける、折りたたまれていないタンパク質に対する応答(UPRmt)は、ミトコンドリアの機能不全への応答において、ミトコンドリア内で機能するシャペロンタンパクの遺伝子(この遺伝子は核にコードされてい る)の発現上昇という結果をもたらす。ミトコンドリアの機能不全がどのようにして核に伝えられるかは不明であるが、転写制御因子、ATF-1を必要としている。Nargundたち(p. 587,6月14日号電子版)は、UPRmtシグナル伝達におけるカギとなる制御ポイントが、ATFS-1が ミトコンドリアに移行する効率であることを見出した。核局在化配列(NLS)に加えて、ATFS-1はUPRmt抑制に必要なミトコンドリアターゲッティング配列(MTS)を持っている。ATFS-1は通常、ミトコンドリア中に効率良く移入され、そしてタンパク質分解酵素Lonにより分解される。しかしながら、ストレスの存在下で、いくつかのATFS-1はミトコンドリアに移入されず、核に運ばれる。転写活性化因子におけるN-末端MTSへのC-末端NLSの並置により、ミトコンドリアマトリックスにおける折りたたまれていないタンパク質の負荷を核内の修正転写応答に結びつけている。(KU,ogs)
Mitochondrial Import Efficiency of ATFS-1 Regulates Mitochondrial UPR Activation

冬は過ぎたの?(Is Winter Past?)

植物の中には、開花に関する遺伝子プログラムが開始するまで、冬をじっと待つよう適応したものがいる。しかしながら、冬の持続期間は場所で異なり、夏に極端に遅れて開花したり、あるいは花が霜に露出しないように、正に花が開くにふさわしい時まで開花を食い止めるような適応性が必要である。Cousthamたち(p. 584,7月12日号電子版)は、冬の持続時間をカウントしている定量的メカニズムをシロイヌナズナで同定した。開花の抑制因子であるFLCは、後成的事象を指令する配列多形性を持っている。これらの多形性のより少ない植物は短い冬に適応し、全4つの多形性を持った植物は長い冬に適応している。(KU,ok,nk,ogs)
Quantitative Modulation of Polycomb Silencing Underlies Natural Variation in Vernalization

そんなに近いのにそんなに違っている(So Close and So Different)

我々の太陽系では、岩石惑星(地球型惑星)は、ガス状惑星とはまるで違った軌道をもっている。Carterたちは、このパターンが当てはまらない惑星系について報告し、惑星形成の理論に対するチャレンジを提起している(p. 556,6月21日号電子版)。ケプラー宇宙望遠鏡からのデータは、極端に異なった密度の2つの惑星が、同じ恒星の周りを似たような軌道周期で回っていることを明らかにしている。1つの惑星は地球型の岩石からなる組成で、他方は海王星に似ているのである。(KF)
Kepler-36: A Pair of Planets with Neighboring Orbits and Dissimilar Densities

クランプの制御(Clamping Doun)

RNAポリメラーゼの結晶構造は、DNA結合部位を取り囲んでいる「クランプ」領域が閉じた状態から開いた状態に変化するような構造を持っていることを示している。Chakrabortyたち(p. 591)は単一分子の蛍光エネルギー移動実験を用いて、溶液中で転写サイクルにおけるクランプの構造変化を調べた。その結果は、クランプの開いた状態ではDNAがその活性中心の割れ目の中に置かれ、そして巻き戻されるというモデルを支持している。DNAとの直接的な相互作用により、クランプの閉じた状態が触媒能力のある転写開始複合体の形成をトリガーしているらしい。(KU)
Opening and Closing of the Bacterial RNA Polymerase Clamp

学習してカッコウを認識する(Learning to Recognize a Cuckoo)

カッコウの卵を托卵させられる鳥たちは、彼らの巣をハイジャックされないように幾つかの戦略を進化させたが、そのもっとも明白な戦略の一つがエリアに侵入するカッコウへの徹底的な攻撃、あるいは群れで襲うことである。しかしながら、カッコウも防御を進化させてきた。最もありふれたカッコウのメスは小さなタカに極めて良く似ており、この擬態により群れをおじけづかせる。Thorogood and Davies(p. 578,Mappes and Lindstromによる展望記事参照)は、托卵させられる鳥たちの社会的学習により、このカッコウの保護的擬態を見破る。巣を狙われた鳥(宿主)は群れで襲わられているカッコウの擬態を観察すると、やがて自分たちもこの擬態のカッコウを襲うようになる。しかしながら、宿主は群れで襲われているのを見たカッコウのその色形態のカッコウのみを襲う。この特異性が、一般的なカッコウのメスの二つの色形態の進化と維持を可能にしているのであろう。(KU,nk,ogs)
Cuckoos Combat Socially Transmitted Defenses of Reed Warbler Hosts with a Plumage Polymorphism

光学変換を変革する(Transforming Optical Transformations)

光学と材料における昨今の開発は、サブ波長での光と物質間の相互作用という領域へと進みつつある。Pendryたち(p. 549)は、変換光学が光を制御し操作するための一般的なプラットフォームを、光学の分野を文字通り「変換」するような形で、どのように提供したかをレビューしている。光の場の磁場と電場の成分が影響される("feel")座標系が、材料設計を通じて変換され、クローキング(遮蔽)、負の屈折及びエネルギー捕集のような新奇な光学的現象を引き起こす。(hk,KU,nk)
Transformation Optics and Subwavelength Control of Light

巨大ブラックホール(Big Black Holes)

ブラックホールの大きさは二種に分けられる。ちょうど太陽質量よりも少し重い恒星レベルの質量のブラックホールと、太陽質量の十億倍にもなる超大質量ブラックホールである。渦状銀河 ESO 243-49 中の超高輝度のX線源 HLX-1 は、中間的な質量のブラックホールの宿主として最も可能性の高いものである。Webb たち (p.554, 7月5日付電子版) は、この線源からの瞬間的な電波放射を検知したことを報告している。この放射は、ジェット放射が起きたことを示している。電波フレア観測からこのブラックホールは中間的質量とみなせる。ジェットは、超大質量のブラックホールおよび恒星質量のブラックホールの両方から放射することが知られている。このように、中間的質量のブラックホールは他のブラックホールと似た振る舞いをするらしい。(Wt,KU,nk)
Radio Detections During Two State Transitions of the Intermediate-Mass Black Hole HLX-1

リチウム電池の改良(Improving Lithium Batteries)

リチウム酸素電池はリチウムイオン電池と同じような体積エネルギー密度を持っているが、その電池の酸素は空気から取り込まれるために、重量当たりのエネルギー密度の点で大いに有利である。非水系のLi-O2電池の基本的問題の一つは、放電の際に形成されるLi2O2が、充電において完全に元に戻される必要があるが、殆どの系において、種々の副産物がLi2O2の代わりに生じることである。Pengたち(p. 563,7月19日号電子版)は電解質としてジメチルスルホキシド、かつ多孔性の金カソードを用いることで、彼らは充放電のサイクルでLi2O2の可逆的な生成と除去に成功した。さらに、この電解質-電極の系はカーボン電極よりもはるかに速い反応速度で作用している。(Ej&KU,nk)
A Reversible and Higher-Rate Li-O2 Battery

消えうせる氷の絵(A Picture of Disappearing Ice)

地球温暖化は、氷床の融解、昇華、氷床周辺部の浸食により氷床の質量損失を加速している。現在の損失量を理解するために事象の前後関係を得るには、この数十年過去のより長期間の記録が必要になる。記録された航空写真を数値標高モデルと結びつけ、かつその結果をごく最近のデータと比較するすることで、Kjarたち(p. 569)は、1980年代中頃まで遡ってのグリーンランド氷床の北西周辺部に沿った薄氷化の履歴を示している。グリーンランド北西部は、過去30年間に氷が損失するダイナミックな事象を2回経験している。局所的な氷損失は、 10年間の時間スケールで作用する予測可能な表面プロセスと、3年〜5年間に渡る地域差の激しい氷の急速な移動を含んだプロセスとの組み合わせによって引き起こされるようだ。(TO,KU,ok,nk)
Aerial Photographs Reveal Late?20th-Century Dynamic Ice Loss in Northwestern Greenland

二次的で内在性の小さな、そして干渉性の(Secondary Endogenous Small and Interfering)

多くの真核生物では、Piwiタンパク質が小さな非翻訳Piwi相互作用RNA(piRNA) と結合する。そのpiRNAは、生殖系列中のトランスポゾンをサイレンシングし、転位性要素によって駆動される組換えや変異から、生殖系列を守るように機能している。Bagijnたちは、線虫を用いて、piRNA標的配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)が、二次的内在性低分子干渉RNA、すなわちエンド(endo)siRNAとして知られる、第2の下流クラスのもとになっている、ということを示している(6月14日オンライン発行されたp. 574; またXiolとPillaiによる展望記事参照のこと)。これらエンドsiRNAは、mRNA標的中のpiRNA相補的配列の近傍に位置し、Piwiおよび、自身の起源に関連するRNA干渉経路に関与する因子、の双方に依存しているが、Piwiスライサー活性には依存していない。エンドsiRNAをマップすると、piRNAが不完全にマッチした標的を標的にすることができること、またpiRNAはトランスポゾンと内在性遺伝子の双方のサブセットをサイレンシングの標的にできることが、明らかになった。(KF,ogs)
Function, Targets, and Evolution of Caenorhabditis elegans piRNAs

成功する侵略者(Successful Invaders)

侵略種は、世界中の生態系に組み込まれてきており、多くのケースで、重大な生態学的かつ経済的な損失を引き起こす。しかし、すべての外来種が侵略種になれるわけではない。つまり、何が、外来種の「植民者」を侵略者に変えているのかを理解するために、沢山の努力がなされてきたのである。一般に、成功した侵略種は、非常に短期間に大量の子孫を産むものだと考えられやすいが、成功した侵略種では、このパターンではない場合も多い。Solたちは、世界中の鳥類による2700を越える侵略について調べ、急速に繁殖する種は、新たな環境がもとの環境と似ているときに有利ではあるにせよ、集団の増殖率と侵入の成功率との間には関係がないことを発見した(p. 580)。さらに、多くの場合、生きのびることに優先順位を置き、状況によっては繁殖を後回しにするこることのできる種が、環境条件にかかわらず子供を産まざるを得ない種よりもずっとうまくやっていたのである。(FK,KU,ok,nk,ogs)
Unraveling the Life History of Successful Invaders

象の歌(The Song of the Elephant)

哺乳類における発声は、2つの方法のどちらかでなされている。それは猫の鳴き声(筋肉のコントロールによる発声)か、もう一つは至極当たり前に人間がやるような、あるいは極端に高周波のコウモリの声(声帯を通る際の空気による発声)か、そのどちらかである。過去20年以上にわたって、象は、極端に低周波の、可聴閾下の音で情報交換できると認められてきた。動物園で自然死した象を使って、Herbstたちは、切除した象の喉頭における音生成の仕組みを研究した(p. 595)。声帯振動の自己持続が、神経制御の存在なしに、象の可聴閾下の音声を産生するのに用いられていて、それは人間における歌声やコウモリの反響定位に使われているのと同じ仕組みを使うものだった。(KF,ogs)
How Low Can You Go? Physical Production Mechanism of Elephant Infrasonic Vocalizations

概日時計の内部の仕掛け(The Inner Workings of a Clock)

真核生物の概日時計は、少なくとも部分的には、転写フィードバックループ上に構築されているのだが、概日性フィードバックの根底にある機構はよくわかっていない。Padmanabhanたちは、哺乳類の概日時計の心臓部である転写フィードバック機構について探求した(p. 599,7月5日号電子版)。タンパク質PERIOD (PER)とCRYPTOCHROMEは、それら自身の遺伝子の転写を抑制している。PER複合体は、部分的には、時計遺伝子のプロモータにヒストン脱アセチル化酵素を作用させることによって、転写の抑制を行っている。しかし、PERはまた、転写終結において機能するヘリカーゼ、Senataxinとの複合体中のDNAにも存在している。SenataxinはPER複合体中では抑制されているらしく、つまるところ、転写終結を抑制し、さらに転写の速度を減少させているのである。(KF,ok,ogs)
Feedback Regulation of Transcriptional Termination by the Mammalian Circadian Clock PERIOD Complex
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