AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science July 14, 2000, Vol.289


気候変化への簡易な(Parsimonious)取り組み( A Parsimonious Approach to Climate Change)

ここ1000年間における北半球の気候変化は、中世温暖期と小氷河期の期間のように寒と暖 が大きな間隔で生じ、そしてこの100年間では気温がかつてないほど高温域に上がってい る。なぜこのような変化が起きていたのであろうか?ここ1000年間の地球温暖化に太陽放 射とその火山現象のどのくらいの変化が影響を及ぼしているかを、 Crowley (p. 270;MannによるPerspective参照)は計算した。産業革命前のたいていの変化は、この二つ の大きな要因で説明できることを、かれは見つけた。しかしながら、ここ50年間における 北半球の大きな気温上昇は、人為的な温室ガス効果を考慮することなしに説明はできない 。(hk)

超伝導の強度あるいは干渉性?(Superconducting Strength or Coherence?)

従来の超伝導材料では、クーパー対の位相干渉性およびクーパー対の強度は必須のもので ある。しかし、それらは、さまざまな手法で検出可能な凝縮物質の異なる特性である。た とえば、光電子測定は超伝導のエネルギーギャップを決定するのに用いられる; すなわ ち、クーパー対を形成する電子間の結合の強度を測定している。Fengたち (p.277) は 、高温酸化物超伝導体のひとつである Bi2Sr2CaCu2O8+δ のデータを与えてい る。そして、ドーピングと温度に対する光電子のピーク強度の依存性は超流動流体の密度 の依存性と似ており、これは位相干渉性の尺度である。さらには、そのピーク強度は、よ り高温の擬ギャップ温度ではなく、遷移温度近傍で急激な挙動を示す。この擬ギャップ温 度においては、干渉性がなくとも電子の対形成が発生すると考えられている。これらの結 果は、これらの超伝導体がフェルミ流体であるという描像の反論となる強力な証拠を与え ている。(Wt)

情報容量を引き上げる(Boosting Information Capacity)

最近の理論的研究によれば、あるシステムへ散乱を導入することは、無線通信ネットワ ークの情報容量を減らすのではなく、高める可能性があることを示している。 Stuart (p.281) は、実際の通信ネットワークにこの考えを持ち込んだ。そして、多モードファイ バー(mulitmode fiber MMF)の空間的自由度とモード間の分散性散乱を用いて、ファイバ ーの情報容量を増加させた。原理の確認として、単一のMMFを通して結合された二つのレ ーザー入力と二つの検知器は、そのMMFのキャリア容量を増加させた。このような技術は 、コンピュータネットワークへの直接的な光リンクに対してその有用性が示されるであろ う。(Wt)

甲虫類の歯型(Leaving Bite Marks)

甲虫類は昆虫の中で最も豊富な種があり、多くの甲虫種は特定の植物種と関連しているに も関わらず、その進化の記録は不確かである。例えば、特定の植物を餌にする主要な種で あるハムシの化石は被子植物が現れてからかなりの年代がたった(新生代前半の)第三紀に なって始めて発見されている。Wilfたちは(p. 291、表紙とPennisiのニュース解説も参 照)、ハムシの特徴的な摂取パターンと葉の化石の特徴を比較して、この種の出現を白亜 紀まで遡った。(Na)

関節に対する自然な歯垢コントロール? (Natural Tartar Control for Joints?)

関節炎の病因は、ほとんど知られていない。Hoたち(p.265;Hagmannによるニュース記事参 照)は、この病気の原因となる遺伝子的要因を明らかにする研究を行ない、ヒトの関節炎 のある病的特徴を示す自然発生の変異系統(mutant strain)が現れる進行性強直症 (ank:ankylosis)を持つマウスの欠損遺伝子をクローン化した。そのank遺伝子 (ank gene)は、無機ピロリン酸(PPi:inorganic pyrophosphate)が細胞から出入りする移動を調 節する、複数回膜貫通タンパク質をコードする。ミネラルの析出を抑制する PPiの能力は、歯垢コントロールする歯磨き粉の調剤で、活用されてきた。う まく働けば、ANKたん白質は、関節の軟骨や他の組織におけるミネラル析出を抑制するこ とによって、関節炎を防ぐことができるかもしれない。(TO)

大陸斜面へ圧力(Pressurizing Continental Slopes)

大陸斜面には、斜面から涌き出る流体からその形状を作られた鋭く深い峡谷や、同じ湧出 流からエネルギーを得ている斜面の生態系が存在している。観測により、堆積岩の負荷に よる岩石定圧(lithostatic pressure)に近い高圧でこれらの流体が噴出することが示され てきた。DuganとFlemings(p. 288)は、観測と一致する流体過圧を再現する、流体の流れ の2次元モデルを開発した。彼らの結果は、過圧された側方流体流(lateral fluidflow)が 傾斜の崩壊に対して、そしておそらく傾斜生態系の保全に、重要であることを強調してい る。(TO)

水の将来(Water Futures)

将来の気候変化に関する一つの共通の関心は、気候変化が降水パターンに重大な変化を引 き起こし、結果として水の需要に変化が起きる、というものである。おそらく、この変化 に加えて人口の増加(すなわち、淡水の需要が増加する)も、特に現時点でも淡水源が限ら れている数多くの地域で重大な影響をもたらすだろう。気候と人口モデルを用いて 、Vorosmartyたちは(p. 284)、これらの影響が地球規模の水資源をどのように変化させる かを研究した。多くの地域で、人口増加による水資源への影響が他の (良いものも悪いも のも含め)気候による全ての影響を抑えて圧倒的な影響を与える可能性がある。(Na)

時間調節の遺伝的認識(An Inherited Sense of Timing)

ゼブラフィッシュの研究によると、概日性時計が世代間で継承されていることを示してい る。Delaunayたち(p. 297)は、ゼブラフィッシュ版の時計遺伝子Per3を単離し、そして調 べた。その結果は、概日周期に関するいくつかの事実により母性継承している可能性を示 している。概日性のPer3遺伝子発現は、受精の時期や発生の速度(この変温種においては 温度で調節できる)には影響されなかった。発生のある段階が時計を充分に組み立てるた めには必要である。その理由は、より下流の遺伝子は発生が更に進展するまで概日性パタ ーンの発現を開始しなかった。(KU)

防御する(Bring on the Defenses)

植物がストレスを被ると、化学的二次代謝物の貯蔵をもたらす。これらは医薬品、香料 、染料や殺虫剤をいった付随的価値のためしばしば収穫されている。このような生合成の 応答は部分的には(メチル)ジャスモン酸という、ストレス応答でつくられる植物ホルモン により媒介される。Van der FitsとMemelink(p. 295)は転写制御因子、ORCA3を同定 したが、この因子は(メチル)ジャスモン酸により制御され、そして一次、二次の両方の代 謝経路における幾つかの遺伝子を次から次へと制御している。この遺伝子の解析により 、試験管内での二次代謝物をつくる方法と同じく植物が一次代謝経路の破滅的阻害もなし に化学的防御応答オンラインをもたらす方法に関する洞察へ導くものである。(KU)

p73のもっとやさしい切断(A Kinder Cut of p73)

非常に若い哺乳類の脳において、ニューロンの相互接続がますます精密になっていくにつ れて、過剰なニューロンは取り除かれていく。この剪定過程は、p53促進アポトーシスに よるものである。Pozniakたち(p 304;MorrisonとKinoshitaによる展望記事参照)は 、p53の作用は、トランス活性化領域を欠乏したp73の切断型の作用によって平衡にされて いることを見いだした。全長型のp73は、アポトーシスも促進するが、切断型はアポト ーシスを遮断する。切断型か全長型のp73を生成するかという判断が転写時に決定される ので、変換中の細胞死か細胞生存の要求に応じる極めて急速な応答の機構を示唆する。切 断型p73の充分な供給とそれに伴う細胞生存は、神経成長因子(NGF)の存在によって促進さ れる。このように、生成した特定のイソ型に依存する機能をもつp73は、NGF細胞生存信号 の仲介物である。(An)

平らな分割を保証(Ensuring an Even Split)

紡錘チェックポイントは、細胞が後期に入る前に染色体が紡錐体に正常に結合することを 保証する機構を用意する。姉妹動原体が付着したままになり、相同的染色体が各娘細胞に ひとつずつ分離される減数分裂の第1分裂時、染色体の整列と付着がどのようにモニタ ーされるのであろうか。Shonnたち(p 300;SluderとMcCollumによる展望記事参照)は、発 芽酵母のチェックポイント変異体を分析し、有糸分裂のチェックポイントの成分が減数分 裂の第1分裂において重要な役割をはたすことを発見した。正常な有糸分裂を行うために は、チェックポイントがなくてもよいのであるが、減数分裂の第1分裂において、チェッ クポイント変異体細胞の半数以下が正常な染色体分離を起こした。チェックポイントは 、染色体にかける張力がないため、後期の開始を遅延させるようである。この過程は、後 期開始前の再配向のための時間を与えるようである。この結果は、紡錘チェックポイント の異常性がダウン症候群に関与することを示唆している。ダウン症候群は、減数分裂の第 1分裂時のヒト染色体21の異常な分離によって引き起こされる生まれつきの障害である 。(An)

カンジダの性(Mating in Candida)

カンジダ白色体は、どんなヒトにもつきものであって、いささかやっかいな存在という程 度で済んでいたのだが、このところますます重大な問題を引き起こす病原体になってきて いる。カンジダ白色体がいかなるものかは80年来知られていたのだが、ごく最近になって 、それは、それに似た酵母のような生命体の性のあり方とは異なり、有性ではないか、と いうことになってきたのである。このたび、2つのグループが、それぞれ異なったやり方 で、カンジダ白色体における交配(接合)を発見した(Gowたちによる展望記事参照のこ と)。HullとJohnsonは、接合型様の座位(MTL:mating type-like locus)の要素を除い た一連の血統を作り出し、マウスに感染している間に接合(交配)した作り出された血統 のさまざまな組み合わせによる子孫を同定することで、交配(接合)座位に関する最新の 観察結果を整理して示している(p. 307)。彼らは、適切な遺伝子型、この場合はそれぞれ MTLaとMTLaをもつ血統のペアから生じた、DNA含有量の増えた子孫を発見しただけである 。これに対して、MageeとMageeは、代謝性選択(自然界においても容易に生じ得る現象 )によって、ヘミ接合染色体を有する血統をソルボース-寒天プレート上に作り出した(p. 310)。このグループはまた、その結果生じたMTLaおよびMTLa血統間の接合(交配)を行な い、その子孫が四倍体であることを確認した。双方のグループが今後なすべきは、減数分 裂後の胞子を確認することである。(KF)

コリン作動性ニューロンを作り出す(Creating Cholinergic Neurons)

中枢神経系におけるカテコールアミン作動性特性の発生と、末梢性自律神経系のコリン作 動性ニューロンの誘導とについて、最近は多くの取り組みがなされている。しかし、脳に おけるコリン作動性機能を誘発・維持する要因が何かについては、その大部分が明らかに なっていなかった。Lopez-Coviellaたちは、成長および分化の因子群のうちのトランスフ ォーミング成長因子-βスーパーファミリのメンバーの1つである形成因子タンパク質- 9(BMP-9)が、中隔および脊髄索ニューロンにおけるコリン作動性特性にかかわる分化因子 であることを示している(p. 313)。(KF)
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