AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science February 9, 1996


氷解 (Icy breakup)

最近、北極の大きな氷床(ice shelf)が分解したりその大きさが縮小したりしている。 これらの氷床の周辺はシート状の氷で囲まれている。Rottたち(p.788)は ERS-1衛星のレーダー画像を解析して、その中で、4200平方キロメートルの大きさの Larsen 氷床が数日のうちに壊れ、バラバラになったことを示した。 「展望」において、Fahnestock(p.775)は、巨大な氷床の起源と力学 を理解するため、可能な説のいくつかを強調している。(Ej)

DNAを強く引っ張って (Pulling hard on DNA)

レーザーピンセット(laser tweezer)は、溶液中の巨大分子を操作することを 可能にする装置である。この装置(レーザー光を通したファイバーグラスに 付着した物質をピエゾ素子で引っ張りながらファイバーの曲げ応力をレーザー 光で計測する装置)を使って、DNA鎖の末端にラテックスビーズを付着させ、 この装置でDNA鎖を引っ張ることで、張力を与え、力学的な(力と伸びの関係) 性質を測定できるようになる。Cluzelたち(p.792)と、Smithたち(p.795)の 2つの報告は、比較的大きな力(70ピコニュートン)を与えた場合、DNAが突然70 %も伸びるトランジション(転位)が見られることを示している。Smithたちは 、加えた力の増加が止まる、いわゆるプラトーの力が、1本鎖DNAのプラトーの 力に合致していることを示し、(DNAの)2本鎖に沿って起きる多数のニック によって塩基対が解ける(その結果1本鎖になる)と推察している。これらの 結果は組換えに関係しており 、このようなトランジションによって、RecA(DNAの組換えに関与する タンパク質)などのタンパク質がDNAを伸長するのに必要なエネルギーを減らすであ ろう。

酸性触媒表面の水 (Water on acid catalysts)

アルミノケイ酸塩やケイ素アルミノリン酸塩のような固体酸性触媒は工業や 石油化学の担い手であるが、これらの表面で生じる酸の種類を実験的に同定 することは困難である。水はしばしば酸性の探測子として用いられている、 しかし、H3O+陽イオンを作っているのであろうかそれとも単に水素結合した 水があるだけなのだろうか? Smithたち(p.799)は、メタノールを軽アルケン に変化させる微細孔性合成触媒HSAPO-34に結合する水を調べるために、粉末 中性子回折法と赤外スペクトル分析法を利用した。触媒の整列した構造によって 、H3O+と水素結合水の両方が2つの異なったサイトに同定された。「展望」で、 Sauer(p.774)は、最近の量子化学の計算と比較してこれらの結果を議論している。

死神の下に (Under the reaper)

ショウジョウバエでは、リーパー遺伝子(rpr)がアポトーシスを仲介する主要な 役目をしているように見える。そして、配列のデータによれば、哺乳類の アポトーシス経路との類似性が推察される。2つの報告がリーパー発現について、 決定論的な面に焦点を当てている。Whiteたち(p.805)は、rpr遺伝子の発現が 制御できるトランスジェニック蝿を作った。ハエの網膜中のrpr過剰発現は、 その投与量に応じて複眼の除去を伴う結果をもたらした。Pronkたち(p.808)は、 ショウジョウバエのSchneider細胞中にRPRタンパク質の発現を誘起させ、 セラミド生成の増加を示した。どちらの報告からも、アポトーシスの効果はプロテア ーゼインヒビターによって阻止されうる。この結果は、インターロイキン-1β 変換酵素(ICE)-様のタンパク質が、アポトーシスを活性化させる役目をすることを 示唆している。

肥満細胞を作る (Making mast cells)

アレルギーや炎症反応の中心的役割を果たすマスト(肥満)細胞の起源と発達を 理解することは、基礎と臨床科学の両方に関係している。Rodewald たち(p.818) は、これに関係するマスト細胞前駆体の同定について報告している。これは、 細胞質顆粒の存在によって形態的にも、かつ、細胞表面の表現型によっても 区別できる。これは個体発生の初期、即ち、マウスの妊娠15.5日の胎児血液中に 見られる;したがってマスト細胞系統への決定付けは組織の遊出(emigration)に先立つ 。

インシュリンの分泌 (Insulin secretion)

糖尿病はsulfonylureaと言う名前で知られている1群の薬剤によって通常 治療されている。これらの化合物は、あるカルシウムチャンネルを阻害 することによって膵臓のβ細胞からのインシュリンの分泌を刺激する。Eliasson たち(p.813)は、形質膜チャンネルに対するこれら既知の間接的効果に加えて、 これらの薬剤が細胞の分泌機構と直接相互作用をすることを示した。

冷たい安らぎ (Cold comfort)

寒さに適応するために変温動物は、膜のリン脂質の不飽和を強化することで 冷硬化した膜に流動性を回復している。Tikuたち(p.815)は、飽和脂肪酸の中に 第1次(first degree)の不飽和を導入する、鯉からの酵素であるδ9-デサチュラーゼ (不飽和酵素)をクローン化した。かれらはまた、寒さに曝した鯉の 酵素による代謝調節を調べた。寒さに誘発されて、転写増加と潜伏デサチュラーゼ の活性化を促し、その結果としてδ9-デサチュラーゼが増加した。

細胞活性化 (B cell activation)

ヒトx(染色体)に関連した無γグロブリン血症は、B細胞のBrutonチロシンキナーゼ (BTK)を含むシグナル経路の欠陥によって起きるが、その結果、大幅なγグロブリン と抗体生成低下が生じる。いくつかの研究が示唆するところによれば、BTKはSRC ファミリーのキナーゼと相互作用する。Rawlingsたち(p.822)は、SRCキナーゼは 第1のサイトでBTKをリン酸基転移すること、ならびに第2のサイトでのBTKの 自己リン酸化が活性化をもたらすことを示す。これら同じサイトは、B細胞が イミュノグロブリンMによって刺激を受けたとき、リン酸化される。患者から同定 された、BTKの突然変異体を用いて、BTKの活性化ループ(経路)を描くことができる。

流れを追跡して (Following the flow)

地上における水の蒸発や降水と言った水圏のサイクルは、人間やその他の生物の 生命を支える真水のほぼ全量を支えている。Postelたち(p.785)は、これら再利用 可能な人間に利用される真水の収支決算を報告した。これには、農業、航行、飲料 、その他の必要活動が含まれている。彼らの結論によれば、地球全体で蒸発降雨水 の24%、一般的に利用可能(例えば、洪水の水は除外されている)な流水の54%を利 用している。
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