AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science October 20, 1995


地下の水素生態系 (Hydrogen ecology deep underground)

地表深く生存するものも含め、地球上のほとんどすべての生態系は何らかの 形で結局はエネルギー源を光合成に依存している。StevensとMcKinley(p.450) および、Kaiserによるニュース解説(p.377)は、米国北西部のコロンビア川玄 武岩帯(Columbia River Basalt Group)の深部透水層のバクテリア共同体について 報告している。彼らのエネルギー源は玄武岩中の水と岩の反応で生産された 水素らしいと言う。

扇と地震 (Fans and earthquakes)

主要な扇状地は米国西部の多くの山脈の断層帯前線に沿って形成されている。 これら扇状地表面の転石に生成した宇宙線起源の同位体を分析することによって Biermanたち(p.447)は、カリフォルニア州シエラネバダの東側前淵部の扇状地 の年代を測定したが、その内のいくつかの扇状地は1872年のローンパイン大地 震によってずれていた。データによれば、扇状地の表面は過去少なくとも8000 年前には安定化しており、断層に沿った大地震の間隔は5800年から8000年の間 であると言う。

空高く (Above the plane)

太陽フレアーやその他のエネルギープロセスは電子やイオンを宇宙に放出し、 そこでは太陽磁場に捕らえられる。電子とプラズマの相互作用で電磁波放射 (II型バースト放射)がなされるが、その周波数は太陽からの距離が遠ざかるに 従って減少する。このような放射は太陽系平面に沿ってなされるから、黄道の 上下で最も良い状態で観測される。Reinerたち(p.461)は、太陽の両極を通る軌 道に投入された宇宙船Ulyssesから得られた放射の測定について報告している。 その計測から、太陽から遠ざかるに従ってコロナの外乱がどの程度であ るかを追跡することが可能となり、また、理論が以前予測していた、太陽コロナ 磁場はアルキメデスの螺旋構造を持つことを確認した。

太古の温暖化 (An old warm-up)

氷の掘削コアの酸素同位体測定によって完新世(holocene)の高緯度地方の古気温の 詳細なデータが得られる。しかし、地表温度以外の要因が酸素同位体比に影響を及 ぼしている可能性がある。地表からの熱拡散によって、ボーリング井戸の温度履歴 の逆転現象は地表温度の経時変化について独立した見方を与えてくれ、酸素同位体によ る 温度の補正に使える。Cuffeyたち(p.455)及びMcAyealによる解説(p.444)はグリーン ランドの掘削アイスコアGISP2のボーリング井戸から得られた温度記録を解析した。 その温度変化によれば、氷河期から完新世にかけて約15度も気温上昇が見積れるが、 この値は熱帯地方での温度上昇の数倍(several)に当たる。

搬出用に処理されて (Processed for export)

いくつかのインターロイキンや数種の繊維芽細胞成長因子を含むある種のタンパク 質は通常の分泌による輸送なしに、原形質膜を通過して細胞から直接に分泌される。こ れら 重要分子の生産、プロセシング、輸送に関わるこの非古典的な分泌経路は、ほ乳動物シ ステムの 中でどのように特徴付けするかが難しい。特に、前駆体をプロセシングして成熟した 輸送適合性タンパク質にする過程は (transport-competent protein)はよく理解されてない。Adamesたち(p.464)は、 非古典的分泌経路をとる酵母フェロモン"a"因子の搬出とプロセシングを調べた。Axl1p と呼ばれ る酵母プロテアーゼはほ乳動物インシュリン分解酵素に関係しているが、"a"因子前駆 体のプロセシングに決定的な役割を果している。このプロテアーゼはまた出芽部位の選 択に関与 しているが、この機能の為にはプロテアーゼの活性は必要でない。この発見は古典的な 分泌経路に挑むものであるが、さらに1個のタンパク質が異なるシグナル経路(出芽部 位の選択や交配反応)を制御していることを示している。

数値による遺伝子の発現 (Gene expression by the numbers)

正常と病原状態の間、あるいは異なる組織の間のような発生の色々な時期に発現され る遺伝子のタイプや量の変化は遺伝子の発現に関する鍵を与えてくれる。2つの報告 が遺伝子の機能に関する高速定量評価法についてなされている(Nowak,p.368)。Schenaた ち (p.467)は高速に高密度の相補的DNAクローン列(この場合、Arabidopsis thalianaか らの45の遺伝子)を自動的に作るシステムを開発した。試料を異なる染料で標識付 けすることで、mRNA中の発現の違いが(例えば、葉と根のような)定量化される。他方 、 Velculescuたちは(p.484)は、彼らが「遺伝子発現の順次解析」(SAGE)と名付けた別の 手法を用いた。彼らは、連鎖状の短い診断用配列タグを作るシステムを開発し、3時間 で1000以上の転写物 が解析出来た。既知の遺伝子に対応するタグの発現レベルは、既知のmRNA発現と整合し ており、新たにすい臓の転写物が同定された。

SCIDにおける遺伝子治療 (Gene therapy in SCID)

重度複合免疫不全(Severe combined immune deficiency=SCID)の形態はアデノシン デアミナーゼ(ADA)を作る遺伝子の欠陥によって生じる;つまりデオキシアデノシンが次 第に 集積し、T細胞にとって毒性を有する。骨髄移植によってこのこの病気を 治療することは出来るが、組織の提供者は通常見つからない。しかし、症状を和らげ ることは、ポリエチレングリコールに結合させたADA(PEG-ADA)のような酵素の置き換え 療法に よって得ることは出来る。SCID患者である2人の子供の2年間にわたる治療の間に、 ADA遺伝子がレトロウイルスベクターと一緒に移植された2つの異なる治療の試みに ついて議論している。Blaeseたち(p.475)はT細胞を標的とし、ベクター取込みとADA 発現は、遺伝子治療が終了した後2年間継続した。Bordignon たち(p.470)は2つの 異なるベクターを使って末梢血液リンパ球と骨髄細胞を標的にした。骨髄からのT細 胞は、治療が終了した後、次第にその数を増やし占有していった。どちらの試行でも PEG-ADAもまた与えられたが、遺伝子治療はどちらの場合にもSCIDの症状の好転に寄 与したと結論づけている。
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