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SPECIAL【座談会】 ドライ洗浄

SPECIAL【座談会】環境・人・効率:3拍子揃えて達成してこそ意味がある。

リコーは廃液を出さすに短時間でフローパレットに固着した半田フラックスを除去するドライ洗浄装置を開発し、2009年10月、中国の本格的な量産工場に導入した。これは、リサイクル時のカートリッジなどに付着しているトナーを洗浄するために2006年に開発し、実用化されているトナー洗浄装置の原理を応用したものだ。環境負荷と作業負荷を軽減し、大幅なコスト削減を実現したこの装置の開発は、研究開発部門と生産部門との密接な連携プレイで実現したものだ。当事者たちが集まり、開発時の思いや意義などについて語り合った。

PROFILE

画像:坂木泰三

坂木泰三
グループ技術開発本部 環境技術開発室 開発2グループ リーダー

工学部金属材料工学科卒、1980年入社。生産事業部での生産技術開発を経て、研究開発部門で生産技術開発、研究開発企画、環境技術開発に従事

画像:岡本洋一

岡本洋一
グループ技術開発本部環境技術開発室 開発2グループ 研究主担

工学部機械工学科卒、1995年入社。研究開発部門で自動化設備の研究開発やリサイクル関連技術開発等を経て、現在は環境技術開発を担当

画像:渕上明弘

渕上明弘
グループ技術開発本部環境技術開発室 開発2グループ 研究主担

工学部電気電子工学科卒、1997年入社。研究開発部門にて自動組み立てロボットの研究開発やリサイクルに関する生産技術の探査・研究、環境技術開発等に従事

画像:飯田隆広

飯田隆広
電装ユニットカンパニー技術統括センター電装技術室 PCB生産グループ グループリーダー

1990年入社。PCB、操作部、システムユニット等電装系部品の生産及び製造分野における品質管理業務等を担当

画像:守屋保浩

守屋保浩
電装ユニットカンパニー技術統括センター電装技術室 PCB生産グループ スペシャリスト

1991年入社。ノートPC、ディスクドライブ、PCBの組立及び生産業務を担当


01.ダメ元で持ちかけた相談

坂木:

生産現場の飯田さんや守屋さんが研究所にドライ洗浄の問い合わせをしてきたのは確か2006年でしたね。

守屋:

そうです。リサイクル用のカートリッジが洗浄できるならば、プリント基板も洗浄できるのでは、と思ったんです。ところが実際にドライ洗浄装置で試したところ、フィルム片が実装部品の隙間に潜り込んでしまったり、静電気の影響が懸念されたりで、うまくいきませんでした。

渕上:

それで諦めて終わりかと思ったら「こっちは無理ですかね」と、フラックス(*1)が固着したパレットを出してきたんですよね。

守屋:

内心ダメ元で持っていったんです。そしたら、予想に反して良い結果が得られたので、これはいけそうだ、と。瓢箪から駒という感じでしたね。

岡本:

私のほうは「これは難しいな、落とせないのでは」と思ったんですけどね。

守屋:

少し長めに洗浄してみたところフラックスがだいぶ薄くなってきたので、これはいろいろ工夫すれば落とせると確信できました。

画像:01.ダメ元で持ちかけた相談

プラスチック段ボール・アルミ材と
アルミテープで組み立てられた実験初号機

渕上:

その「落とせる」というのは研究所の私たちに対して?(笑)

飯田:

守屋くんは日頃現場での洗浄作業を目にしていて、何とかしてあげたいという気持ちが強かった。だから少しでも可能性があればやって欲しいと思ったんでしょうね。

守屋:

私自身も洗浄作業をしたことがあるんですが、粘つく溶剤での洗浄作業は本当にきついものでした。その上、廃液で環境にも負荷があり、時間やコストもかかっていました。フローパレット(*2)が導入されて自動化が進む中、パレットの洗浄は原始的な手作業が続いていたんです。

渕上:

「現場を楽にしてあげたいんです」って熱心に語ってくれて、こちらも気持ちが動かされました。でも、今だから自白しますが、その後忙しさにかまけて放りっぱなしにしていたんです。数ヶ月後、守屋さんから「あれどうなりました」と電話がかかってきた時には焦りましたよ。すぐに実験機を組み立てました。

岡本:

そのへんに転がっていた材料とかを大慌てで集めていたよね(一同爆笑)

*1 フラックス:半田付け促進用の有機材料。表面洗浄、粘性付与、金属酸化抑制効果を有する。

*2 フローパレット:半田付け装置(半田槽)に実装基板を自動搬送するマスキング治具。


02.追い込む現場、応える研究所

画像:坂木泰三

坂木:

今回は3年前のトナー洗浄装置で試行錯誤した経験もあって、基本的にどのような洗浄メカニズムが必要か、おおよその方向性は見えていたと思います。つまり、容積を小さくしてエネルギー密度を高めればいい、と。手当たり次第、闇雲にトライしてその現象から突破口を見出していくというやり方ではなかったよね。

渕上:

トナー洗浄の時に比べれば最短距離を進むことができました。

坂木:

トナーの時は胃が痛かった(笑)。初めてだったこともありますが、メカニズム的にも複雑なものを作ろうとしていた。設計の基本は”Simple is Best”だというのが私の信念なんですが、試作機(プロトタイプ)を見たら真逆の方向に進んでいたんです。このままで大丈夫かと頭を抱えたくなりました。

渕上:

今思えば、坂木さんは辛抱強く見ていてくれましたよね。お陰で、もっと簡潔なものにしなければと、最後には自ら方向転換することができました。単に指示されるままに動いていたら気がつかなかったかも知れません。導入後もしばらく現場に張り付くなど、最後の最後まで相当手こずりましたが。

坂木:

そうした苦しい経験が今回みごとに生かされたと言えるよね。しかし、トナーとパレットでは洗浄条件がまったく異なるので別の苦労があったと思うけど。

渕上:

広い面積のパレットに対して、洗浄用の材料(フィルム片)を飛ばす空間の容積を、どうデザインすれば小さくできるのか?ということから始めました。アイデア発想会を招集してメンバー達と随分議論しました。その結果、パレットを洗浄槽の中に入れず、半円筒形の洗浄槽の上をパレットが平行移動する方式が生まれたんです。

岡本:

一方で、フィルム材の探査・研究も始めました。トナー洗浄に比べ肉厚のものが必要だということはわかっていましたが、硬すぎて対象物を傷つけてもいけない。さらに、初期性能は良くても使用中に性能が劣化してしまう素材ではダメだということも実験で明らかになりました。それらの特性を兼ね備えた材料がなかなか見つからなかったんです。全部で100種類以上試したんじゃなかったかな。

渕上:

高価なものは使えないので尚更たいへんだったよね。廃棄物処理場にも足を運んで探し回ったり。

岡本:

その過程でちょうど同じ研究室でポリ乳酸(PLA)を研究している人から、ポリ乳酸フィルムが良さそうだとの情報が入って、それを分けてもらったんです。バイオマスで環境にも良い材料だから、と。

画像:渕上明弘

渕上:

そうそう。で、実験機(モックアップ)で試したら期待通りの結果が得られた。よし、これでいこうと材料メーカーに追加注文したところ、今度はまったく使いものにならない。おかしいなぁ、と思って問い合わせたら、「硬く脆かった素材が、技術開発で柔軟で割れにくくになりました!」と嬉しそうに言われてしまって…前のが良かったのに変えるなよと(笑)。 しかし、そこで、一般的なフィルムとしては悪いとされる特性が、我々の使い方ではむしろ重要だという事を発見できたのです。

岡本:

でも、そうした試行錯誤と言うか右往左往があったので、そこから先はとんとん拍子に進みました。

坂木:

技術は“土地勘”をつかむまでが勝負で、つかんだらその先は早い。

岡本:

その次に取り組んだのは、洗浄ムラでした。いかに高速気流を制御するか、気流中のフィルム片の振る舞いが読めないんです。気流シミュレーションするにしても、高速の循環気流なので結構難しいんです。

画像:02.追い込む現場、応える研究所

渕上:

シミュレーションの方法を検討している内に、これはプロトタイプを作ってしまったほうが早いんじゃないかという話になったんです。目的はシミュレーションすることではなく制御方法を見つけることなのだから。守屋さんたちからもガンガン催促されていましたしね、「まだかまだか」と(笑)

守屋:

様子を見にいくたびに結構順調に進んでいるのがわかりましたからね。こうなったらもう逃がすものか、と(笑)。何しろ、こっちは毎日現場の苦労を目の当たりにしているので、もう藁をもすがる思いでしたよ。

飯田:

それは私も同じ気持ちでした。事業部で開発状況を報告してもらって、周知の事実にしてしまいました。

岡本:

もう引っ込みがつかなくさせられたというか(笑)。でもそれが好結果につながった。


03.原動力は、人の喜ぶ顔

飯田:

研究所の人たちは本当に頑張ってくれました。特に、最後の洗浄時間を短縮していく局面での奮闘には頭の下がる思いがしました。

岡本:

最初のモックアップでは10数分かかっていたものが、PLA実験の時には5~6分になり、プロトタイプ完成後は3~4分、そこから気流や噴射ノズルの工夫を重ねギリギリ2分台。最後は気流速度を高めてようやく2分にまで持っていきました。現場の人たちは終始、2分にこだわり続けていましたよね。

飯田:

作業効率(リードタイム)を考えると、どうしても2分を達成したかったんです。パレットを半田槽に流して戻ってくるまでの時間が2分半ですから。その間に洗浄できれば作業の循環性が高まるだけでなく、使用するパレットの枚数も抑えることもでき、イニシャルコストが下げられます。なので、5分、3分と短縮されても「まだまだ」と(笑)

画像:03.原動力は、人の喜ぶ顔

坂木:

徹底した効率性重視の姿勢はまさに生産系ならではのこだわりですよね。環境や作業負荷の低減だけではなく、コスト効果も出さないと許してくれない。

画像:飯田隆広

飯田:

私たちの職場では3大負荷の克服という課題があって、一つは作業負荷、二つめは環境負荷、三つめはコスト負荷です。この中でたとえば作業負荷の軽減だけに着目するなら、市販の超音波洗浄装置を導入するという方法もあったかも知れませんが、それでは環境やコストの問題は残ったままになってしまう。そして、作業負荷や環境負荷低減が達成されたら、やぱりコスト負荷も減らそうと、どんどん欲が出てくる。

岡本:

現場にプロトタイプを導入したのは2008年初頭。ようやく原型ができたという段階でしたが、早く現場に見せたい、現場で使わせたいという守屋さんたちの声に抵抗できず(笑)

守屋:

実際に洗浄作業をしているスタッフに使ってもらったところ「これは助かる」と大評判でした。まだ評価中ということもあって、岡本さんたちが調整のため一旦研究所へ持ち帰りたいと言った時には、「絶対困る、ここで調整してください」と(笑)。一度使ったらもう手放せませんでした。

岡本:

その喜んでいる姿を見て、こちらまで嬉しくなってしまいました。まさに技術者冥利に尽きるという感じです。

坂木:

現場と研究所が一体になって取り組んだことが今回の成果につながったと言えますよね。

飯田:

それは大いにあります。自分たちの思いを直接反映させることができるので、良いものに仕上げたいという思いも募り、自ずと熱が入りました。先ほどの洗浄時間での最後の追い込みなどはまさにその表れ。導入時の喜びもひとしおでした。

画像:岡本洋一

岡本:

新技術の開発は常に成功するわけではありません。むしろうまくいかないケースの方が多いという中で、今回のテーマはみごとに成果を出すことができました。それはやはり、現場の人たちの何が何でも実現させたいという強い思いに背中を押されたからだと思います。プロトタイプを見て欠点をあげつらうのではなく、どうすれば良くなるか、私たち研究者と気持ちを一つにして取り組んでくれました。

渕上:

環境や作業、コスト低減がテーマでしたが、結局、私は守屋さんたち現場を喜ばせたくて仕事をしたような気がします。私たちが相手にしているのは、モノではなく人なんですよね。それが原動力になっています。


04.世界で通用する環境技術

坂木:

研究所と生産現場とが連携して取り組むことが随分増えましたが、そのキーワードになっているのが環境ですよね。環境技術開発室の前身は生産技術研究所で、ロボットや自動化といった大量生産技術の効率化に取り組む部署でした。ところが、1990年代後半になると、大量生産拠点が中国や東南アジアへと移っていきました。私たちはこれからの研究開発の方向性について随分悩み、議論もしました。そうした中で、リコーグループ全体が地球環境の負荷軽減、環境にやさしい技術開発へと舵を切ることになり、私は、「これだ、今後はこれしかない」と確信したんです。

飯田:

それは現場のほうでも同じです。廃棄量削減から始まって、リユース、リサイクル、さらに環境にやさしいモノづくりへとどんどん対応レベルを向上させていきました。それがコストの削減もたらし、今日の「環境経営」へとつながっていったのです。環境については、単に現場での環境負荷低減だけでなく、廃棄物処理に伴って排出されるCO2削減など、その先のことも考えなければなりませんよね。その意味でも廃液を出さない今回の洗浄装置は、波及効果が大きいと考えています。

画像:守屋保浩

守屋:

今回の装置は2009年10月、海外生産拠点であるSRO(Shanghai Ricoh Office Equipment Co., Ltd.)にも導入されました。さらに今後、他の生産拠点へのへの展開も決定しています。いずれも量産工場で、パレット使用数も秦野事業所の比ではなく、導入効果も極めて大きいと思います。国内だけではなくグローバルに環境負荷低減にも寄与できるというのは私にとって望外の喜びです。

岡本:

ここ数年、中国でも環境に対する関心が高まっているので良いタイミングだったと思います。装置の新規導入では投資対効果が問われますが、溶剤購入や廃液処理費、さらに作業時間コストなどを勘案すると早期回収が可能です。

守屋:

フローパレットを使用しているところでは大歓迎されるはずです。治具洗浄にも使えるし、今後さらにメタルマスク(*3)のクリーム半田ペースト洗浄などにも応用できる。

坂木:

世界のモノづくり拠点となった中国、アジア地域で使われるというのは波及効果が大きいですよね。さらに今、社外への展開も視野に入りつつあります。今回開発した洗浄技術は汎用性が高いのが特長です。フラックスに限らず、固着物の洗浄という観点で他の領域への応用展開も可能だと考えています。事実、本装置について発表した直後から問い合わせが相次いでいます。環境にやさしい技術へのニーズの高さを今、改めて痛感しています。

画像:04.世界で通用する環境技術

渕上:

お陰で新しい研究テーマもどっさり増えましたが、それが社会貢献へとつながっていくなら、こんなに嬉しいことはありません。

坂木:

先ほども言ったように、もはや大量生産の分野では日本の出番はなくなりつつあります。そうした中で日本が存在感を示せるとしたら、環境にやさしい技術を開発することではないでしょうか。環境技術開発室はこれまで、主に社内に目を向けていましたが、今後は広く、社外へも目を向けていこうと考えています。そのためにも、もっともっと技術レベルを向上させる必要があります。社内は少々のことは許してくれますが、社外となるとそうはいきませんからね。技術は、社外で評価されてこそホンモノと言えます。今回の洗浄装置を第一歩にして、これからも現場と研究部門が力を合わせ、社内から社外へ、日本から世界へという動きを加速させていきたいですね(一同大きく頷く)

*3 メタルマスク:クリーム状の半田を基板に印刷する際に用いられる金属板。


世の中の期待に応える環境技術へ

梅澤 信彦
社会環境本部 環境コミュニケーション推進室 シニアスペシャリスト

ドライ洗浄技術は、単に部品の製造において環境負荷が少なくコストメリットが得られるということ以上に、一度使った部品や材料を当然のように繰り返し使う循環型社会の構築において、必要不可欠な技術になると考えています。

また、この技術は複写機部品や半導体の治具の再生・洗浄にとどまらず、いろいろな分野への適応可能性を秘めています。私たちの事業領域の中だけしか使えない技術は、その効果に限界があります。しかしながら、フィルムの材料や形状、吹きつけ条件等のカスタマイズにより、異業種においても利用できるこの技術の環境負荷削減効果は、はかりしれません。

今後、ドライ洗浄技術が、接続可能な社会構築の一翼を担っていく、この技術を核として、世の中に新たな技術が生まれていくことに期待しています。

画像:梅澤 信彦 社会環境本部 環境コミュニケーション推進室 シニアスペシャリスト

メンバーのコメント

画像:坂木泰三

坂木泰三

「リコー社員としてというだけでなく、技術者の良心に照らして胸を張れるものを作っていきたい。すべての技術者は今後、環境に対して優しいものを作っていかないと許されないと思うから」

画像:岡本洋一

岡本洋一

「環境問題はエネルギー問題でもあるので省エネや新たなエネルギー源の創出にも挑んでいきたい。将来の世代から『あなたたちのせいで地球がこんなになってしまった』と言われないためにも」

画像:渕上明弘

渕上明弘

「汎用的に使える洗浄機の開発を目指していきたい。それによって、将来、たとえば家庭の食器洗浄というレベルにまで持っていければ、環境負荷低減の裾野をさらに広げられる」

画像:飯田隆広

飯田隆広

「新しい技術を目にした時、それを現場の困り事の解決に役立てられないかと、自らの仕事に置き換えて考えたことが、今回の成果につながった。今後も研究部門との連携を一層密にして現場発想の環境技術を形にしていきたい」

画像:守屋保浩

守屋保浩

「今回の開発を契機にして仕事のステージが海外へと広がっていくことになった。今後も、これまで同様、現場視点で困り事の解決に挑んでいきたい。それが会社だけでなく地域・社会への貢献につながれば嬉しい」