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レーザー援用技術によるPZT薄膜の結晶化

リコーは、現在最も汎用性が高いPZTの薄膜をレーザー照射による熱作用により結晶化し、かつPZTに求められる変位特性を得ることに成功しました。

新開発技術の位置付け

レーザー援用技術(*1)とは、レーザー光のもつ性質を利用して必要な場所にのみ、必要な時間だけ加熱処理をする技術をさします。リコーはCSD(Chemical Solution Deposition)法(*2)で作製したPZT(ジルコン酸チタン酸鉛) (*3)をレーザー援用技術で結晶化させることに成功し、得られた薄膜がPZTの特性である変位特性を示すことを実証しました。レーザー援用技術の中でも半導体レーザーを使って独自の照射技術で変位特性を有するPZT薄膜を得たのはリコーが初めてです(2013年5月現在)。

本技術は、2012年5月にリコーが発表したIJP法(インクジェットによる印刷技術)によるピエゾ(圧電)素子(*4)の形成技術と組み合わせることで、シリコン基板上に3D造形パターンとしてピエゾ材料を描画しながらレーザー援用技術で結晶化させ、微小サイズ(数~数百ミクロン大)のアクチュエータ(*5)を作製できます。これら技術の応用製品としは、微小エリアで変位機能が必要される画像機器、ハードディスクドライブ、ディスプレイ等のMEMS分野のみならず、微小な圧力や加速度を測定できるセンサー分野にも展開が可能です。

レーザー援用技術による加熱処理のメリット

PZTはセンサーやアクチュエータなどの多くのピエゾ素子に用いられている材料ですが、CSD法における結晶化工程には従来、電気炉による750℃程度の加熱処理が必要でした。この方法では基板および電気炉自体の温度の上げ下げにほとんどの熱量が使用されてしまい、多くの熱量と時間が無駄になっていました。本来ならば基板上のPZT薄膜のみを加熱できればいいはずです。レーザー援用技術であれば、レーザービームを照射した部分のみを局所的に加熱することができ、エネルギーの無駄が発生しないのです。

CSD法でPZT薄膜を作製する場合には、結晶化の他に乾燥、熱分解の工程でも加熱が必要です。今回はPZT膜の特性を決定付けるのに最も重要な結晶化工程にレーザー援用を適用しましたが、将来的には乾燥、熱分解工程にも展開可能です。すべての加熱工程に適用した場合、CO2の排出量で比較すれば電気炉に対して約1/10にできる試算です。また、工程時間の面で比較すれば約1/2にできる試算です。

クラックと膜剥れの克服

レーザー援用による結晶化の問題点は、膜にクラック・剥離を生じさせずに、いかに均一に結晶性を向上させるかということでした。このためにはレーザー光でありながら、いかに照射時の温度を均一にするかという技術課題がありました。リコーはこれを①レーザービームのスポット形状をデバイス形状に合わせて長方形(通常は円形)にでき(図1参照)、かつ②レーザー光の強度分布(ビームプロファイル)を矩形(通常はガウス分布)にできる独自な光学系を開発し実現しました。さらに、クラック・剥離に対してはレーザーパワーと照射時間を適正化することで克服しました(図2参照)。

画像:レーザーユニットとスポット形状

図1:レーザーユニットとスポット形状

画像レーザー照射条件とPZT膜表面状態

図2:レーザー照射条件とPZT膜表面状態

得られたPZT膜の特性

レーザー援用により結晶化したPZT膜のX線回折パターンと電気特性及び変位特性を以下に示します。図3に示すように処理前に比べ(111)面の結晶ピークが観測され、適正に結晶化していることが確認できます。また、図4に示すように、a)分極量-電圧特性は比較的きれいなヒステリヒス曲線を描き、良好な強誘電特性であることを示しています。さらに、b)変位-電圧特性(バタフライ曲線)から、膜は機械的に変位する能力を持っており、変位係数として約100pm/Vであることが実証できました。

画像:PZT膜のX線回折パターン

図3:PZT膜のX線回折パターン

画像:分極量-電圧及び変位-電圧特性

図4:分極量-電圧及び変位-電圧特性

レーザー援用技術で変位特性を有するPZT薄膜を得たのは世界的に見ても数例しかありません。他の例はエキシマレーザーを使用しているため、装置が大型かつ高価なうえ、パルスレーザー光なので処理に時間がかかります。これに対して、リコーの方法は半導体レーザーを使うため、装置が小型かつ安価で、さらに連続光なので短時間に処理できるメリットがあります。

なお、この技術はドイツのFraunhofer Institute for Laser Technology (通称:ILT)およびアーヘン工科大学との共同研究で開発されたものです。


  • *1レーザー援用技術: レーザー照射による熱作用で金属や半導体の結晶格子の転移を起こさせる技術。この技術には必要な部分だけを局所的にアニール処理(内部歪みを加熱することにより取り除く熱処理)でき、また短時間で処理できるなどの特長がある。
  • *2CSD法: Chemical Solution Deposition法の略でゾル-ゲル法とも呼ばれ、溶液から出発し、ゾルを経て溶液をゲルに変えることによって材料を合成する方法である。低温合成法であり、さまざまな微細構造、形態、機能をもった材料の合成に応用することができる。
  • *3PZT(ジルコン酸チタン酸鉛): ジルコン酸鉛とチタン酸鉛の固溶体セラミックスで、家庭用ガス器具の圧電着荷素子、超音波振動子、圧電ブザーなどに使用される。現在最も汎用性が高い圧電材料である。
  • *4ピエゾ(圧電)素子: 電圧をかけることによって伸縮する素子を指し、圧電素子とも呼ばれる。電圧をかけると変形し、外力を加えると帯電する現象をピエゾ効果や圧電効果と呼ぶこともある。
  • *5アクチュエータ: 入力されたエネルギーを物理的な運動へと変換する機構のこと。一般的にアクチュエータといえば、電気エネルギーを運動に変換する装置を指す。家電や航空機産業、人工筋肉の研究などに広く用いられる。
本技術の分類:分野別「基盤技術」「環境」