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光硬化型(UV)インクジェットインク

皮膚のかゆみやかぶれなどのアレルギー性皮膚炎を引き起こす性質である皮膚感さ性を大幅に低減した光硬化型(UV)インクジェットインクを開発しました。

光硬化型インクジェットインクの用途と取り扱い上の課題

光硬化型インクジェットインクは、光を照射すると瞬時に硬化することから、速乾性が求められる場合や染み込みにくい基材を使用する場合などに有効であり、明細書やプラスチックカードなどの商業印刷物、看板や電車・バスのラッピング広告などの屋外広告物、家電製品やIT機器などのプラスチック筐体への印刷など、われわれの生活に身近なものから、最近ではコンピュータ内の3次元データをそのまま造形して機械部品などのサンプルを作成する3Dプリンター用途にも使用されています。これらに使用されているインクは光照射前の液体状態においては、人体に対する毒性について必ずしも十分に配慮されたものばかりではなく、ほとんどのものが皮膚のかゆみやかぶれなどのアレルギー性皮膚炎を引き起こす性質である皮膚感さ性(*1)を有しており、印刷現場作業者への身体的負担について懸念されています。

新規開発した光硬化型インクジェットインクの3つの特徴

1. 皮膚感さ性の原因となる材料を使用しない

従来の光硬化型インクジェットインクは、微小なノズルからインクを吐出しやすくすることと光照射時の硬化反応を素早く行うことを目的として、皮膚感さ性の原因となる低粘度アクリル酸エステル(*2)を使用しています。今回リコーが開発したインクではこの材料を使用せず、代わりに歯科治療にも用いられるメタクリル酸エステル(*3)を使用することで皮膚感さ性物質を排除しました。一般のメタクリル酸エステルは光照射時の硬化反応性に乏しいものが多い中、良好な硬化反応性を有する特定の分子構造を見いだし、また加える添加剤を工夫することで従来と同程度のインク吐出特性と硬化反応性を発現させることに成功しました。

さらに今回開発したインクは、急性経口毒性(誤って飲み込んでしまった際の危険性を示す)において十分に軽微であり、皮膚刺激性(化学やけどを引き起こす)においても刺激性がなく、変異原性(生体細胞を突然変異させてしまい発がん性リスクとされる)も問題なしを意味する陰性、という材料で構成されるため、印刷現場において長時間労働する作業者に対して身体的影響を軽減できると期待されます。
(アレルギー反応については個人差が大きく、皮膚感さ性を有する既存のインクを使用していたとしても不具合が発生しない場合もありますが、作業者に皮膚のかゆみやかぶれなどのアレルギー反応が発生しているケースでは今回開発したインクを使用するシステムへの切り替えによって改善する可能性があります。)

2. 安価で汎用的な原材料が使用可能なラジカル重合方式を採用

光硬化型インクジェットインクの硬化反応にはカチオン重合方式とラジカル重合方式(*4)があります。カチオン重合方式では照射された光に反応して重合反応を開始させる重合開始剤が非常に高価であることや、原理的に強酸が発生してしまうためインクジェットシステム内におけるインクが接するすべての部分に耐酸性が必要となり、インクヘッドやプリンターの部材選定に制約が大きいことなどが課題でした。今回開発したインクはラジカル重合方式を採用しており、安価な原材料を使用できることからインクとしても低コスト化が図りやすく、原理的に酸やアルカリが発生しないため部材選定の自由度も高くなります。

3. 基材に対する高密着性の実現

ラジカル重合方式の課題であった、ベースとなる基材に対する密着性(基材に対して形成した絵柄などが剥がれてこないという性質)も添加剤の工夫で改善しており、基材として代表的な難接着性材料であるポリプロピレンフィルムに対しても十分な密着性が得られることが確認できました(図1)。

今回リコーが開発した光硬化型インクジェットインクは、従来インク同様に商業印刷物、屋外広告物、プラスチック筐体などへの印刷、また3次元造形(3Dプリンター)などへの応用が可能であるだけでなく、低コストで、かつ、これらの印刷現場の作業者に対する身体的影響を軽減することが可能です。


補足説明

(*1) 皮膚感さ性: 腫れ・かぶれ・かゆみといった皮膚の炎症(アレルギー性接触皮膚炎)を発生させる性質のこと。

(*2) (*3) アクリル酸エステルとメタクリル酸エステル: アルコールとアクリル酸、アルコールとメタクリル酸とがそれぞれ化学結合して生成した物質がアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルであり、これらはいずれも分子量の小さいモノマーと呼ばれる材料の一種であり、光や熱に応答して相互に結合して分子量の大きいポリマーに変化する性質を持っている。インクジェットインクとしては微小なノズルから吐出する際の安定性が重要であることから十分に低粘度であることが求められるため、低粘度なアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを使用する必要があるが、低粘度なアクリル酸エステルはほとんどの場合高い皮膚感さ性を有している。一方、メタクリル酸エステルは一部のものでは歯科治療にも用いられるなど、アクリル酸エステルに比べて皮膚感さ性を含め高い安全性を有している。しかし、アクリル酸エステルに比べて重合反応性に乏しい、という特性を持っていた。

(*4) カチオン重合方式とラジカル重合方式: モノマーに光を直接照射して重合反応を開始させるためには、重合開始剤を混合しておく必要がある。ラジカル重合開始剤は照射された光によってラジカル、カチオン重合開始剤はカチオンと呼ばれる高エネルギーな状態になり、ここからエネルギーがモノマーに移行することによって重合反応が始まる。ラジカル重合方式は旧来より印刷インク、塗料、接着剤など多くの分野で採用されているため、ラジカル重合開始剤には多くの安価な市販品が存在する。一方、カチオン重合方式はラジカル重合方式ほど普及していないことから原材料となるカチオン重合開始剤も高価であり、専用のモノマーを使用する必要がある。また、光照射しない状態でもわずかに発生するカチオンが強酸であるため、インクヘッドやプリンター部品でインクと接触する部分の部材には耐酸性が求められる。