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定着ユニットでの用紙搬送挙動の可視化技術

プリンター内部で搬送される用紙の挙動を可視化して、数値で表現できるようにする技術です。紙しわに対して信頼性の高い機械設計を実現します。

紙しわ発生のメカニズム可視化の意義

電子写真方式の複写機やプリンターは、用紙と用紙に乗せられたトナーを、熱と圧力で定着させて印刷をします。この定着プロセスではプリントされる用紙の仕上がり品質を保つために、用紙が安定して搬送されるよう制御することが非常に重要です。定着ユニットでの用紙搬送が不安定になると、用紙に「紙しわ」が発生してしまうためです。

従来、定着ユニットを新しく開発する場合、さまざまな条件や環境の下で繰り返し通紙試験等を行い、安定して用紙搬送が実現できているかを確認していました。しかし、この方法は紙しわが発生するかどうかは評価できるものの、用紙搬送に関わるどの部品がどの程度影響して挙動が不安定になり、結果として紙しわを発生させているか、ということまでは明確にはわかりませんでした。

そこでリコーは、まず紙しわ自体がどのようなメカニズムで発生するのかを明らかにするため「用紙搬送挙動可視化技術」を開発しました。また、定着ユニットを構成する部品の形や、用紙の種類や性質の違いが、用紙挙動にどのくらい影響するかを計測し量的関係を明らかにしました。「この部品の構成をこれだけ変えると、用紙挙動がこれだけ変わる」「このような用紙挙動であれば、紙しわに対してこの程度の不安定さまで許容できる」ということが分かれば、信頼性の高い定着ユニットが設計できます。

速度分布における可視化の例

しわ発生に影響を与える用紙挙動のひとつに、搬送される用紙の「速度分布」があります。 1枚の用紙でも端部に比べて中央部の方が速く進んだり、逆に中央部と比べて端部の方が早く進んだりする場合があります。用紙の速度分布は、定着ユニットの部品の形によって決まります。

図1に用紙に発生する速度分布の例を示しました。この図のような速度分布になると、定着ユニットを通過しようとする用紙には内側へ移動しようとする力が加わり、波をうつような変形が起きやすくなります。
図1:機器内部で搬送される用紙の挙動の概略図(用紙の端部より中央部で速度が速くなる場合)

図1:機器内部で搬送される用紙の挙動の概略図
(用紙の端部より中央部で速度が速くなる場合)
図2は用紙に発生する波うち形状を計測して、波うちの斜面の傾きの大きさに応じて色を変えて表示したものです。用紙の中央付近で複数の波うちが発生していることがわかります。用紙が大きく変形した状態で定着ユニットを通過すると紙しわが発生してしまいます。
図2:不安定な搬送で用紙に発生する波うちの例(波うちの斜面の傾きを色で表示)

図2:不安定な搬送で用紙に発生する波うちの例
(波うちの斜面の傾きを色で表示)
紙しわが発生しないようにするためには、そのような変形が小さくなるような速度分布で用紙が搬送される必要があります。また、そのような速度分布で搬送できる部品の構成が必要になります。これら「部品の形」「用紙の速度分布」「用紙の変形形状」の量的関係を、用紙の種類や周囲環境等の影響を含めて把握しておくことで、用紙を安定に搬送するための部品構成の設計が可能となります。

信頼性の高い定着ユニットの設計を効率的に

これまで発生メカニズムが不明瞭であった定着ユニットでの紙しわ発生現象が、可視化技術の開発により明らかになってきました。また、紙しわを定量的に取り扱うための代わりの指標として、用紙の搬送速度分布や変形形状の評価が有効であることがわかりました。この指標を使用することで、紙しわの発生しない定着ユニットの構成を効率よく決めることができます。

本技術は、実際に起きている現象を可視化するものですが、これはシミュレーションによる設計の評価にも活用することができます。電子写真方式のプリンターの定着ユニットの開発設計に利用され、新機種の開発期間の短縮に貢献しています。さらに、紙しわに対して余裕度の高い設計が可能となり、信頼性の高いプリンターの提供につながっています。