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ニュースリリース

リコー、レーザー援用技術によるPZT薄膜の結晶化に成功

2013年5月21日
株式会社リコー

  株式会社リコー(社長執行役員:三浦善司)は、独自技術でインク化(CSD法(*1))して作製したPZT(ジルコン酸チタン酸鉛) (*2)を、半導体レーザーを用いて結晶化させ、得られた薄膜がPZTの特長である変位特性を示すことを実証しました。これは、レーザー照射による熱作用で結晶化させるレーザー援用技術(*3)を半導体レーザーで実現したもので、独自の照射技術で変位特性を有するPZT薄膜を生成したのはリコーが世界で初めてです(2013年5月現在)。

  本技術は、2012年5月にリコーが発表したIJP法(インクジェットによる印刷技術)によるピエゾ(圧電)素子(*4)の形成技術と組み合わせることで、シリコン基板上に3D造形パターンとしてピエゾ材料を描画しながらレーザー援用技術で結晶化させ、微小サイズ(数~数百ミクロン大)のアクチュエータ(*5)を作製できます。これら技術の応用製品としては、微小エリアで変位機能が必要とされる画像機器、ハードディスクドライブ、ディスプレイ等のMEMS分野のみならず、微小な圧力や加速度を測定できるセンサー分野にも展開が可能です。

  PZT材料はセンサーやアクチュエータなど多くのピエゾ素子に用いられている材料ですが、今回リコーが開発したのはCSD法でPZT薄膜を作製する過程で行う結晶化に、レーザー援用技術を適用したものです。従来、この結晶化工程は電気炉で750℃程度に加熱することで行っていましたが、基板および炉自体の温度の上げ下げにほとんどの熱量が使用されてしまい、多くの熱量と時間が無駄になっていました。レーザー援用技術ではレーザービームを照射した部分のみを局所的に加熱することができるため、基板上のPZT薄膜のみを加熱することでエネルギーの無駄が発生しません。

  レーザー援用による結晶化の問題点は、膜にクラック・剥離を生じさせずに、いかに均一に結晶性を向上させるかということでした。この点を解決するためには、レーザー光でありながらいかに照射時の温度を均一にするかという技術課題がありました。リコーはこれを、[1]レーザービームのスポット形状をデバイス形状に合わせて長方形(通常は円形)にでき、かつ[2]レーザー光の強度分布(ビームプロファイル)を矩形(通常はガウス分布)にできる独自の光学系を開発することで実現しました。さらに、クラック・剥離に対してはレーザーパワーと照射時間を適正化することで克服しました。

レーザーユニットとスポット形状 レーザー照射条件とPZT膜表面状態
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  レーザー援用技術で変位特性を有するPZT薄膜を得たのは世界的に見ても数例しかありません。他の例はエキシマレーザーを使用しているため、装置が大型かつ高価なうえ、パルスレーザー光なので処理に時間がかかります。これに対して、リコーの方法は半導体レーザーを使うため、装置が小型かつ安価で、さらに連続光なので短時間に処理できるメリットがあります。

CSD法でPZT薄膜を作製する場合には、結晶化の他に乾燥、熱分解の工程でも加熱が必要です。今回は膜特性を決定付けるのに最も重要な結晶化工程にレーザー援用を適用しましたが、乾燥、熱分解工程にも適用可能です。すべての加熱工程をレーザー援用にした場合、CO2の排出量で比較すれば電気炉に対して約1/10にでき、さらに工程時間の面では約1/2にできる試算です。

なお、この技術はドイツのFraunhofer Institute for Laser Technology (通称:ILT)およびアーヘン工科大学との共同研究で開発されたものです。

  リコーは本技術を2013年5月22日~25日に京都で開催される「第30回強誘電体応用会議(FMA30)」で発表します。

  • *1CSD法: Chemical Solution Deposition法の略でゾル-ゲル法とも呼ばれ、溶液から出発し、ゾルを経て溶液をゲルに変えることによって材料を合成する方法である。低温合成法であり、さまざまな微細構造、形態、機能をもった材料の合成に応用することができる。
  • *2PZT(ジルコン酸チタン酸鉛): ジルコン酸鉛とチタン酸鉛の固溶体セラミックスで、家庭用ガス器具の圧電着荷素子、超音波振動子、圧電ブザーなどに使用される。現在最も汎用性が高い圧電材料である。
  • *3レーザー援用技術: レーザー照射による熱作用で金属や半導体の結晶格子の転移を起こさせる技術。この技術には必要な部分だけを局所的にアニール処理(内部歪みを加熱することにより取り除く熱処理)でき、また短時間で処理できるなどの特長がある。
  • *4ピエゾ(圧電)素子: 電圧をかけることによって伸縮する素子を指し、圧電素子とも呼ばれる。電圧をかけると変形し、外力を加えると帯電する現象をピエゾ効果や圧電効果と呼ぶこともある。
  • *5アクチュエータ: 入力されたエネルギーを物理的な運動へと変換する機構のこと。一般的にアクチュエータといえば、電気エネルギーを運動に変換する装置を指す。家電や航空機産業、人工筋肉の研究などに広く用いられる。

  • | リコーグループについて |

    リコーグループは、オフィス向け画像機器、プロダクションプリントソリューションズ、ドキュメントマネジメントシステム、ITサービスなどを世界約200の国と地域で提供するグローバル企業です(2013年3月期リコーグループ連結売上は1兆9,244億円)。
    人と情報のかかわりの中で新しい価値を生む製品、ソリューション、サービスを中心に、デジタルカメラや産業用の製品など、幅広い分野で事業を展開しています。高い技術力に加え、際立った顧客サービスや持続可能社会の実現への積極的な取り組みが、お客様から高い評価をいただいています。 想像力の結集で、変革を生み出す。リコーグループは、これからも「imagine. change.」でお客様に新しい価値を提供していきます。

    より詳しい情報は、下記をご覧ください。
    http://jp.ricoh.com/

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