Skip to main content Skip to first level navigation
Breadcrumbs

Share

Main content

ニュースリリース

リコー、皮膚へのアレルギー性を大幅に低減した
光硬化型(UV)インクジェットインクの開発に成功

2012年9月6日
株式会社リコー

 株式会社リコー(社長執行役員:近藤史朗)は、皮膚のかゆみやかぶれなどのアレルギー性皮膚炎を引き起こす皮膚感さ性(*1)を大幅に低減した光硬化型(UV)インクジェットインク(*2)の開発に成功しました。光を照射することで瞬時に硬化するという従来の光硬化型インクの特性はそのままに、印刷現場作業者への身体的影響を軽減できると期待されます。

 光硬化型インクジェットインクは光を照射すると瞬時に硬化することから、速乾性が求められる用途や染み込みにくい素材に印刷する用途などに有効で、プラスチックへの印刷など身近なところで利用されてます。また近年では、3Dプリンター用としても使用されています。しかし、光硬化型インクは光照射前の液体状態においては、必ずしも人体に対する影響について十分に配慮されたものばかりではなく、特に皮膚感さ性については改善が望まれています。

 今回リコーは、以下の3つの特徴を有する光硬化型インクジェットインクを新規開発しました。

  • 1.皮膚感さ性の原因となる材料を使用しない
    インクの原材料として、歯科治療にも用いられるメタクリル酸エステルを使用することで皮膚感さ性物質を排除しました。一般のメタクリル酸エステルは光照射時の硬化反応性に乏しいものが多い中、良好な硬化反応性を有する特定の分子構造を見いだし、また、加える添加剤を工夫することで従来と同程度のインク吐出特性と硬化反応性を実現しました。


  • 2.安価で汎用的な原材料が使用可能なラジカル重合方式を採用
    今回開発したインクは一般に利用されているラジカル重合方式(*3)を採用しているため、安価な原材料を使用できることからインクとしても低コスト化が図れます。また、原理的に酸やアルカリが発生しないため、インクヘッドやプリンター部品において耐酸性などの制約がなく、部材選定の自由度も高くなります。


  • 3.印刷対象素材に対する高い密着性を実現し、ポリプロピレンフィルムにも使用可能
    ラジカル重合方式の課題であった、印刷対象素材に対する密着性も添加剤の工夫で改善しており、代表的な難接着性材料であるポリプロピレンフィルムに対しても十分な密着性が得られることが確認できました。

  リコーは、本技術を9月9日~13日にカナダ・ケベックシティで開催される国際会議 "NIP28 (28th International Conference on Digital Printing Technologies)" で発表します。

 現在、光硬化型インクジェット技術は様々な用途で利用されていますが、リコーは従来の光硬化型インクジェットインクのコストや性能を維持しつつ、さらに人体への安全性を向上させることで、用途の拡大に繋がることを期待しています。リコーは、今後、プリンターベンダーへの本インクの提供を目指し、製品化に向けた改良を進めていきます。

  • *1腫れ・かぶれ・かゆみといった皮膚の炎症(アレルギー性接触皮膚炎)を発生させる性質のこと


  • *2家庭用プリンターに使用されている水性インクジェットインクは、主成分が水であることから安全性が高いものの、印刷には専用のコート紙が推奨される。プラスチックフィルムなど液体が染み込まない素材に対しては乾燥に時間がかかるため、強制的に加熱乾燥させる必要がある。光硬化型インクジェットインクは光を照射することで瞬時に硬化するため速乾性が得られる。照射する光にはUVと呼ばれる紫外線を使用するため、UVインクジェットインクと呼ぶこともある。


  • *3従来から印刷インク、塗料、接着剤など多くの分野で採用されている光重合方式。