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日本 - リコーグループ企業・IRサイト Change
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Project Story 02:壁紙印刷
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八木 雅広Masahiro Yagi
RICOH UK PRODUCTS LTD.
(海外赴任中)

おもしろい。その一言が、歴史の扉を開けた。

その日、世界が言葉を失った。2017年1月、プロジェクトリーダーである八木雅広はドイツに渡る。「満を持してのHeimtextil展示会への出展。世界のトッププロからどんな評価をいただけるのかひたすらワクワクしていました」。八木が手掛けたのはデジタル時代の新たな壁紙印刷システム。3つの特許を取得し、歴史を塗り替えるほどの革新的なソリューションを示したのだ。普及すれば、やがては全世界の壁紙印刷の80%にリコーの技術が採用されることになる。八木の期待通り、ブースには大勢のグローバル壁紙メーカーが集まった。なかには4回、5回と足を運び、何度も何度も八木を質問攻めにする経営者もいたと言う。「『この技術があれば10年、20年はX社(壁紙装置メーカーでリコーのパートナー)は安泰だね』『これほど信頼できるデジタルシステムは他には存在しない』そんな声もたくさん浴びましたし、驚きのあまり目を見開いたまま黙り込むお客さまもいました」。従来の常識をひっくり返すデジタルシステムの登場。その衝撃は、世界中の業界関係者から言葉を奪った。プロジェクトの発端は、展示会の1年前。偶然か必然か。ある職人が、リコーの扉をたたいたところから物語は始まる。『私にはアイデアがある』。職人はまっすぐに八木の目を見据えて話し始めた。職人は日系壁紙メーカーでキャリアを積んだ老練なプロフェッショナル。壁紙印刷を知り尽くし、同時に弱点についても知り尽くしていた。「ものづくりのプロセスすべてをデジタル化する。彼のアイデアを聞いたとき、『おもしろい!』と膝を打ちました。壁紙印刷は職人の世界。当時は伝統的な手法が一般的で、いまだにほとんどが手作業で行われていたんです」。

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限界を突き破った、好奇心という名のエンジニアリング。

八木はさっそく現場に足を運んだ。あるメーカーでは常時4万デザインを所有。しかし、そのうち5%のデザインが80%の売上を占めていたため、毎年、約16万本ものストックを廃棄する必要があった。「デジタルであれば小ロットでも安価に生産できる。ボタンを押せばたとえ1枚からでも印刷することができるんです。立体駐車場のような巨大な倉庫にアナログローラを抱え、巨大な在庫を抱える必要はない。廃棄が減れば企業経営に大きなインパクトをもたらすことができますし、なによりも現場の職人たちの負荷を大幅に削減することができます」。八木はリコーの技術力を結集。特殊なインクの開発にも成功した。しかし、ここで思わぬ挫折を味わうことになる。「ドイツのメーカーと共同開発をしていたときに“相性”の問題にぶつかったんです。日本基準のインクと、ドイツ基準の基材が組み合わさると、壁紙の絵が崩れるという現象が起きてしまった。調べてみると、各国の基準どころか各社で基準が異なることがわかりました」。一社一社に合わせてカスタマイズするのは不可能。プロジェクトはまさに崖っぷちの状況だった。そんな八木の窮地を救ったのは技術者たちの好奇心。「試行錯誤を繰り返して、問題解決の糸口を探ってくれたんです。もう打つ手はない。そんな状況に追い込まれたとき、私は“仮焼成”という工程を省くことを思いつきました。理由などありません。技術者たちも『そんなことは経験したことがない』と言っていました。しかし、もう打つ手がないなら、誰もやってないことを試すしかない。ほんの遊び心のつもりでしたが、このバカげた提案に開発者が乗ってくれたんです。おもしろいじゃないか、と」。

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インダストリアル市場参入。新しいリコーの始まり。

1度目の実験は失敗に終わる。しかし、開発者はあきらめなかった。ある日、興奮した様子で八木のもとに電話が入る。『成功だ。これは凄いぞ。品質が高いうえに、基材との相性も検討する必要がない』。八木はすぐに特許を取ることを決定し、その結果を手にドイツのX社(壁紙装置メーカーのパートナー)を訪問した。空気は一変。暗礁に乗り上げたはずのプロジェクトはまたたくまに息を吹き返した。「まさに印刷業界がひっくり変えるほどの事件でした。この技術革新が生まれた最大の要因は、エンジニアたちの好奇心。アイデアそのものが持つ“おもしろさ”が彼らに火をつけたんです」。これだけでは終わらない。エンジニアたちの遊び心は、かつて誰も実現したことがない3次元表面形状のデジタル化にも成功。より繊細な立体デザインを可能にしたうえに、変色という弱点をも克服したのだ。そして、2017年1月。八木は展示会の日を迎える。それはオフィスプリンターで知られたリコーが、インダストリアルプリンティング市場を切り開いた瞬間でもあった。「リコーのインクジェットヘッドの技術は、確かな競争力を持っています。多様なインクを使用できるということは、さまざまな産業のニーズに応えることができるということ。現在でも年間300社からオファーがありますが、我々は産業市場でも大きな存在感を示すことができると確信しています」。今、産業用印刷技術の最前線はヨーロッパだ。3Dプリンターもセラミックプリンタも、欧州から世界に羽ばたいていった。「最先端の地で、もう一度私たちは生まれ変わります。新しいリコー。この響きだけで、心が躍るようです」。八木の目は、すでに次の“おもしろい”を捉えていた。

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