Science April 14 2017, Vol.356

ウイルス駆動性がんにおける非ウイルス性抗原の標的化 (Targeting nonviral antigens in viral-driven cancer)

養子細胞移植は、患者自身のT細胞を利用してがんを破壊する。 この戦略は、ヒト・パピローマウイルス(HPV)によって引き起こされる上皮腫瘍をうまく治療することができるが、何故に一部の患者だけが応答するかは不明である。 Stevanoviたちは、 完全な退縮を示した HPV+子宮頸がんに関連する抗腫瘍T細胞応答を調べた。 予想外なことに、反応性T細胞はウイルス関連抗原に対処するようには指示されてなく、むしろ免疫系に以前は認識されていなかったがん生殖系列抗原または新抗原に対処するように指示されていた。 これらの知見は、ウイルス性抗原に対するT細胞応答が、HPV駆動性がんにおける治療効果の原因であるという広く信じられている考え方に反している。(KU,nk,kh)

Science, this issue p. 200

エンケラドスの熱水プロセス (Hydrothermal processes on Enceladus)

土星の月であるエンケラドスには、氷の層で覆われた地下の海がある。いくらかの液体は、その氷の亀裂を通して宇宙へ逃げており、結果として土星のリングの源のひとつとなっている。2015年10月、カッシーニ探査機は、漏れ出した物質のまさにそのプルーム中を飛行し、その化学組成のサンプル調査を行った。Waiteたちは、そのプルームが水素分子、H2を含んでいることを見出したが、これは、エンケラドス海の水が、熱水プロセスを介して岩石と反応しつつある徴候である(Seewaldによる展望記事参照)。このことは、地球の熱水噴出口の周りの水と同様に、その海洋を化学的非平衡状態から追い出すものであり、化学エネルギーの源泉となっている可能性がある。(Wt,KU,kh)

Science, this issue p. 155; see also p. 132

より高い安定性のための輸送体層(Transporter layers for greater stability)

ペロブスカイト太陽電池(PSC)は、20%を超える電力変換効率を持つことが可能であるが、紫外線照射下では効率を安定して維持することに限界がある。これは一つには、電荷輸送層として用いられているメソ多孔質のTiO2が、ペロブスカイト層に望ましくない反応を光触媒することがあるためである。Shinたちは、そのような紫外線起因の損傷を低減させるために、TiO2の代替品として、Laを添加したBaSnO3薄膜を堆積させるための低温コロイド法を報告している。太陽電池は、太陽と同じ強度の照射を1000時間続けた後も、初期性能の90%以上を維持した。(Sk,ok,kh)

【訳注】
  • メソ多孔質:細孔径2~50nmの多孔質、一般に ~2nm程度をミクロポア、 50nm~をマクロポア
Science, this issue p. 167

炭素環からベルトを縫う (Stitching a belt out of carbon rings)

もし分子メスがあれば,カーボン・ナノチューブを2度,長軸に対して薄く切り,フェニル環が融合された輪を切り取ることできるだろう。元となる炭素化合物から,稜共有する複数のベンゼン環で構成されるベルト状化合物を合成することは化学者の長年の目標だった。Povieたちは今回,ウィッティヒ反応をくり返し,ボトムアップ方式のやり方で分子構成要素を縫い合わせ,ベンゼン環6つが炭素-炭素二重結合(-CH=CH-)で結ばれたリングを作り,最終的に12個の稜共有環からなるベルトを作ることに成功した(Siegelによる展望記事参照)。この化合物は,可視領域まで続く光吸収と近赤外領域に及ぶ赤色蛍光を示した。12個の稜共有環からなるベルトは,伸びたナノチューブをボトムアップ方式でさらに精密制して合成できる究極的な第一段階であるかもしれない。(MY,ok,nk,kj,kh)

【訳注】
  • ウィッティヒ反応:ウィッティヒ試薬を用いて,カルボニルのケトンやアルデヒドのC=OをC=C結合へと変換する反応
Science, this issue p. 172; see also p. 135

1つの抗体は全ての抗体のために、全ての抗体は1つの抗体のために (One antibody for all and all antibodies for one)

デング・ウイルス(DENV)や西ナイル・ウイルス(WNV)のような同族のフラビ・ウイルスに対する抗体は、ジカ・ウイルス(ZIKV)と交差反応を起こして、それによりもしかすると疾患の重症度を増すかもしれない。 Bardinaらは、ヒト由来のDENVとWNV抗体はもちろん、黄熱病ワクチン接種もZIKV感染症を悪化させるかどうかを試験した。 マウスモデルでは、低力価のDENVとWNV抗体は、ZIKVウイルス血症を、特に脊髄と精巣で悪化させる一方、高力価では保護的なままであった。 総じて、WNV抗体はDENV抗体よりZIKVウイルス血症の悪化が少なく、マカクでは、黄熱病ワクチン接種はZIKVウイルス血症悪化に対する効果がほとんどなかった。(Sh,ok,kj,kh)

【訳注】
  • 交差(交叉)反応:本来抗体は抗原のみと選択的に結合するが、抗原と化学構造が類似する物質を抗原と誤って結合する反応
Science, this issue p. 175

接触するヌクレオソーム (Nucleosomes in contact)

真核細胞では、ゲノムDNAを核内に収まるように凝縮させなければならない。 DNA充填における重要な役割を果たすのはヌクレオソームであり、それはヒストン・タンパク質八量体に巻き付いているDNAセグメントから成る。 複製と転写の間、ヌクレオソームはDNA上で位置を変えなければならない。 このプロセスで、ヌクレオソームが衝突してジヌクレオソームを形成する可能性がある。 Katoらはジヌクレオソームの高分解能の結晶構造を報告している。八量体のうちの一つはヒストン二量体を失い、その結果ジヌクレオソームは八量体と六量体から成る。 この構造はクロマチン再構成の間での中間体を表しているかもしれない。(Sh,kh)

Science, this issue p. 205

狩猟起因の動物相の生存量減少および消滅を定量化する (Quantifying hunting-induced defaunation)

人口が増加し、残された野生生物の生息地への侵入がますます増大するにつれて、狩猟が多くの種を脅かしている。Benitez-Lopezたちは、熱帯全域での狩猟の動向と影響に関する大規模なメタ分析を行った(BrasharesとGaynorによる展望記事参照)。鳥類と哺乳類の数は、狩猟が行われている地域で他よりもかなり少なかった。商業的な狩猟と道路や都市中心部への近さが最も不利な因子であったが、すべての狩猟は保護区域においてさえ、気がかりな影響を与えている。もし、これ以上の、急速なデファウネーションを防ぐつもりならば、すぐに、持続的生存が可能な狩猟のための保護とそれに代わる方法を実施すべきである。(Sk,kj,kh)

【訳注】
  • 生存量減少および消滅(defaunation:デファウネーション):人的要因による、野生生物種の消滅や数の減少を意味し、extinction(絶滅)とは区別されている。de(低下)+fauna(動物相)+tion(結果)の造語であると思われる
Science, this issue p. 180; see also p. 136

腎臓損傷を防止する標的 (A target for preventing kidney damage)

尿にタンパク質が現れるタンパク尿は,腎臓の有足細胞が損傷を受けた際に生じる。Rinschenたちは,転写共役因子であるYAPの活性化と,YAPが標的とする遺伝子の発現が,化学的に誘発された腎臓症を持つラットにおいて,タンパク尿に先行することを見出した。YAPの活性は機械的応力で刺激可能で,培養有足細胞におけるYAPの活性化は培地の堅さに依存した。YAPの阻害剤は腎臓症のラットの腎臓中で,タンパク尿と,損傷が誘発する機械的シグナル伝達を改善した。(MY,nk,kh)

【訳注】
  • 有足細胞:腎臓中で糸球体の毛細血管壁に付着し,血液をろ過して尿をこしわける細胞。細胞質に突起をもつことから有足細胞と名付けられている。
  • 転写共役因子:転写因子が結合した遺伝子周辺のヒストンをアセチル化するタンパク質。これによりクロマチンの再構成が誘導され,遺伝子転写が促される。
  • YAP:yes-associated proteinのことで,細胞増殖などを制御し,器官における細胞数の制御を担うタンパク質
Sci. Signal. 10, eaaf8165 (2017).

EU拡大の負の影響 (The negative impact of EU enlargement)

国境と移民の制限は、国際的な科学研究を強く阻害するかもしれない。Arrietaたちは、2004年の欧州連合(EU)拡大前後の、科学的生産性、共同研究、および社会的流動性に関する詳細なデータを用いて、国境を越えた共同研究に関するEU統合の影響を見積もった。その結果によると、12の新たなEU加盟国では、統合がなければ、より高い割合で国境を越えた共同研究がなされていたであろうことが示唆されている。この負の効果は、 新たに移動可能となった科学者の国境を越える競争を通じて、西部 EU諸国への高度人材移住が生じることにより引き起こされる。(Sk,nk,kj,kh)

Sci. Adv. 10.1126.sciadv.1602232 (2017).

あるアルキル基を他のアルキル基に縫いつける(Stitching one alkyl group to another)

Hec・Suzukiカップリング反応のような化学反応は、莫大な範囲の比較的平坦な分子の利用を容易にする。この幾何学的な制約は、アリルとアルケニルの炭素原子の比較的容易な 数珠つなぎと関係している。ChoiとFUは、複雑な3次元構造を持つ多様な分子の基礎となる、より豊富なアルキル炭素中心間での結合形成における最近の発展について概説している。特に、ニッケル触媒作用は、個々の鏡像異性体を選択的に利用し、そしてそれによって、目的生成物の生物学的特性を調整する強力な方法として出現した。(NA,KU,kh)

Science, this issue p. eaaf7230

1ダースの断層による地震(An earthquake with a dozen faults)

2016年のモーメント・マグニチュー(Mw)7.8 のカイコウラ地震は、これまでにニュージーランドを襲った最大級の地震の一つであった。Hamling たちは新しい滑りモデルを用いて、それが信じられないほど複雑な事象であったことを示している。たいていの地震と異なり、複数の断層が破壊して、地盤振動を生じさせた。全体で12の顕著な断層面が破壊したが、その際には、互いに15km離れた断層間を破壊現象が跳び移っていた。このような異常で複雑な破壊様式を今の所は考慮していない現行の地震災害モデルに対し、この地震は再考を促すであろう。(Sk,nk)

【訳注】
  • モーメント・マグニチュード:岩盤のずれの規模(ずれ動いた部分の面積×ずれた量×岩石の硬さ)をもとにして計算したマグニチュード
Science, this issue p. eaam7194

試験管内での胚発生 (In vitro embryogenesis)

多能性胚性幹細胞(ESC)は、いかなる成人細胞型にも分化することができる。 しかし、これらの細胞の集合体は、培養で成長させた場合、胚性の構造体とは似ていない。 マウスのESCとその胚体外対応物である栄養膜幹細胞(TSC)が、正常な発達を再現できるかどうかを見るために、Harrisonたちは、 細胞外基質培養液中でESCとTSCを結びつけた(Peraによる展望記事参照)。 結果として生じる「ETS-胚」は、中胚葉の指定と胚区画と胚体外区画の境界にある始原生殖細胞においても、正常胚とかなりの類似構造を示した。これらのETS-胚は、哺乳動物の胚発生を研究するための遺伝的に扱いやすい手段である。(KU,ok,nk,kj,kh)

Science, this issue p. eaal1810; see also p. 137

宇宙から見た地殻の岩石強度 (Crustal rock strength from outer space)

地殻岩石の応力に対する応答の評価は、挑戦的な課題であり、地震のような事象の危険要因を見つけ出すために極めて重要である。Mooreらは、昨年日本で起きた Mw 7.1 の熊本地震を利用して、この地方の地殻岩石のレオロジー特性を決定している。観測された地殻歪み率の逆数は、ある地域には硬い岩石があり、他の地域(例えば、阿蘇火山岩体の下にある)でははるかに弱い岩石があることを示している。結果は予想と一致し、結果として、この方法が広範囲の強度と、空間と時間の広い範囲の尺度において岩石特性をうまく測定できることを意味している。(Wt,ok,nk,kj,kh)

Science, this issue p. 163

機械はヒトが暗黙のうちに知ることを学習する(Machines learn what people know implicitly)

アルファー碁は、ヒトが長年集中的に研究して学ぶ事を、機械はどうやるかを学習でき、しかも短時間でどんな人間よりも巧みに学習できることを実証した。Caliskanたちは今回、潜在連想テスト(Implicit Association Test:IAT)によって計測されるように、機械が記述されたテキストから単語連想を学習できること、そしてこの連想が人間によって学習されたそれを忠実に反映していることを示している。何故にこれが重要なのか?なぜなら、IATは、例えば心地よさと花、または心地の悪さと虫のような概念の間の連想を明らかにする予測値を有しているからである。それはまた、例えば女性名と家族あるいは男性名と職業との間の連想、といった態度と信念 (好悪と固定観念) を導き出すことができる。このような偏見は明示的には表現されないかもしれないが、行動に影響を与えていることを証明できる.(Uc,KU,ok,nk,kj,kh)

Science, this issue p. 183; see also p. 133

分裂準備帯に対する精緻化した理解(Refined understanding of the preprophase band)

植物細胞は移動しないため,植物組織は,組織を構成する細胞の分裂をどんなふうに配置するかにより組み立てられる。Schaeferたちはモデル植物であるシロイヌナズナにおいて,細胞分裂前に見える構造である分裂準備帯をなくした変異体を見つけた。分裂準備帯-分裂面の規定に不可欠と以前に思われていた-が存在しないにもかかわらず,これらの植物の根の細胞分裂面の全般的な向きは正常だった。しかしながら個々の分裂面の向きは,正常な細胞よりも大きなバラツキを示した。それ故,分裂準備帯は,新生細胞の分裂面の最終的な向きを収束させ,精緻化するよう働く。(MY,kj,kh)

【訳注】
  • 分裂準備帯:植物の細胞分裂において,分裂前に細胞表層に存在し,細胞分裂面を決定する構造のこと。
Science, this issue p. 186

偏りのないライブラリを作る (Making an unbiased library)

単一細胞ゲノム配列決定は,細胞間の不均一性やゲノムの不安定さのような課題に対して洞察を与える。単一細胞配列決定技術の鍵は全ゲノム増幅(WGA)法である。これは,次世代シーケンシングに対して十分なDNAを提供する方法である。現状のWGA法では,遺伝子コピー数の正確度と空間分解能の低さ,増幅の忠実性の低さに妨害されてきた。Chenたちは,改良単一細胞WGA法である「トランスポゾン挿入による線形増幅」(LIANTI)を報告している。T7プロモーターを含んだトランスポゾンのTn5の転位により,単一細胞のDNAが無作為に断片化され,そしてこのT7プロモーターが線形増幅を可能にする。著者たちはこの方法を用いて,紫外光照射後のヒト単一細胞における単一ヌクレオチドの変異範囲を決定した。(MY,kh)

【訳注】
  • T7プロモーター:T7 ファージと呼ばれるウィルスに由来するRNA合成酵素が特異的に結合し,RNAの合成を始めるDNA上の領域
  • ライブラリ: 分子生物学におけるライブラリは, 分子複製法によって微生物集団の中で貯蔵・増殖される DNA 断片の集積のこと
Science, this issue p. 189

転写と翻訳の連結(Coupling transcription and translation)

細菌では、RNAポリメラーゼによるDNAのmRNAへの転写が、そのmRNAのリボソームによるタンパク質への翻訳に連結される。 この連結がどのように達成されているかは不明である。 Kohlerたちは、大腸菌由来のRNAポリメラーゼとリボソームが、いわゆるイクスプレソーム(expressome)複合体を形成し得ることを示している。 機能性実験と共に電子顕微法構造解析は、この連結された複合体の詳細を明らかにした。 この連結により、翻訳が転写の休止、後戻り、および終了を防ぐことができるのかもしれない。(KU,nk,kh)

Science, this issue p. 194

どうやって鞭毛は停止する時を知るのか (How the flagellum knows when to stop)

細菌の鞭毛は細菌性発病と生物膜形成に重要である。細菌の鞭毛とは、細菌が液体中や液面上を自走することを可能にする旋回性ナノモーターである。ナノスケールのロボット工学に興味を持つ研究者たちは、ナノスケールで自己組織化する機械のモデルとして細菌の鞭毛を使っている。 Cohenらは、鞭毛が周辺質 の厚みに足りて, しかもその果てを越えないように, 鞭毛がどうやって軸の長さを正確に測定しているのかを厳密に調べた。成長する鞭毛は、それが外膜に当たったときを「感知」して成長を止める機構を使っている。特定の脂質の再構築によってペリプラズム空間の幅を変化させると、鞭毛軸の長さが変化した。(ST,kj,kh)

【訳注】
  • 周辺質: ペリプラズムとも言う、細胞膜と, グラム陰性菌では細胞外膜, グラム陽性菌では細胞壁の間の空間である。
Science, this issue p. 197

進展するエボラ・ウイルスの宿主応答 (The evolving Ebola virus host response)

エボラ・ウイルスはヒトにおいて散発的に流行を引き起こすが、患者における免疫応答の動態に関する情報が比較的に不足している。 最近の大流行では、重度のエボラ・ウイルス病の医療従事者が NIHクリニカル・センターに運ばれ、そこで彼は手厚い看護を受け、感染後ほぼ1年間にわたる長期間の採血がなされた。 Kashたちは、これらの血液試料に関するトランスクリプトーム分析を行った。 これは、患者の体が感染と回復のさまざまな段階を通じてウイルスにどのように応答するのかを明らかにし、そして解析結果を臨床症状及びウイルス負荷と比較できた。 これらの貴重なデータは、エボラの発病に関する洞察を提供し、将来の治療法を導くのに役立つだろう。(KU,nk,kj,kh)

【訳注】
  • トランスクリプトーム分析:細胞中の全ての転写物の分析
Sci. Transl. Med. 9, eaai9321 (2017).

ねじれを加えて性能を高める (Adding a twist for enhanced performance)

有機発光ダイオード(OLED)の発光効率は、基本的に物質内のスピン偏極した電子とホール電流で構成される発光可能な一重項励起子の非発光の三重項励起子への比率によって決定される。このために、一般的には, これがOLEDの内部的量子効率に25%の上限を課している.Diらは、プロセス化学を変えることによりスピン状態の比率を操作した。彼らは、分子構造にねじれを加えて、スピン状態のエネルギー性を反転させ、OLED性能を向上させた。(NK,nk,kh)

Science, this issue p. 159

FoxP3の無い調節性T細胞(Regulatory T cells sans FoxP3)

FoxP3の発現はマウスにおけるT調節性(Treg)細胞の特定とほぼ同義であるが、1型調節性T細胞(TR1)は例外である。 TR1細胞はインターロイキン10を産生するが、FoxP3陰性である。 FoxP3陽性Treg細胞と比較して、TR1細胞の発生と機能はほとんど理解されていない。 Zhangたちは、TR1細胞が、マウスにおける同種間骨髄移植(BMT)後に重要な調節の役割を果たしていると報告し、このモデルを用いてTR1系統へ特性化する分子回路を描写している。 ヒトにおけるBMT後のTR1細胞の存在を証明することにより、彼らは、TR1細胞の調節が、臨床におけるBMT成功率を増すための治療方法となるかも知れないと提案している。(KU,kj)

【訳注】
  • FoxP3:免疫応答を抑制的に制御する調節性T細胞に選択的に発現し、発生、分化、免疫抑制機能を制御する転写因子
Sci. Immunol. 2, eaah7152 (2017).