AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約

Science January 5 2018, Vol.359

カッシーニは土星の電離層の中に入る (Cassini enters Saturn's ionosphere)

大部分の惑星大気の上層域には、入射する太陽輻射によって電離された層(電離層)が含まれている。 Cassini 宇宙船は、土星の周りの最後の軌道を通り抜けるとき、電離層を直接通り抜ける程、惑星に十分に接近した。 Wahlund たちは、その場で収集されたプラズマのデータを調べ、土星の電離層は非常に大きく変動し、惑星の内輪と相互作用することを見出した。 彼らは、また、リングによって太陽から遮光された領域内では、電離度が低下することを観測した。(Wt,nk,kh)

Science, this issue p. 66

液体がその強さを示す (Liquids show their strength)

誘電性高分子弾性体駆動装置は、電動の筋肉模倣体であり、大きな駆動力と高い効率を提供するが、高電界が原因の絶縁破壊と経年劣化という問題で制限を受けている。 Acome たちは、弾性重合体ではなく、液状誘電体を用いて、誘電性高分子弾性体駆動装置における致命的機能障害の問題を解決した。 この誘電体の液体性は、固体状誘電体ではできないような自己修復を可能にした。 この方法により、著者らは、静電力と油圧力を利用して、強力ではあるが繊細な把持装置において筋肉様の収縮を実現することができた。(Sk,MY,ok,nk,kh)

Science, this issue p. 61

量子スピン・ホール効果を熱する (Heating up the quantum spin Hall effect)

トポロジカル絶縁体(TI)におけるトポロジカルに保護された伝導エッジ状態を実用につなげるのは困難だと分かってきた。 二次元的 TI として確認されてきた半導体系の場合、そのトポロジカル特性を引き出すには液体ヘリウム温度近傍に冷却する必要がある。 Wu たちは、2つの層の六方晶窒化ホウ素間に配置された WTe2 単層からなるヘテロ構造を作製し、100 K と比較的高温においてもトポロジカル特性が持続することを明らかにした。 ファンデアワールス・ヘテロ構造中で、このいわゆる量子スピン・ホール効果を作ることは、多くの確立された実験道具と機能に応用を可能にする。(NK,MY)

Science, this issue p. 76

善玉菌がガンとの闘いを助ける (Good bacteria help fight cancer)

常在性腸内細菌は、ガン免疫療法への患者応答に影響することがある(Jobin による展望記事参照)。 Routy たちは、抗生物質の体内摂取が、PD-1 遮断免疫療法への応答不良に伴うことを示している。 彼らは、肺ガンと腎臓ガンの患者からの検体の特徴解析を行い、その結果、療法への非応答患者では、細菌である Akkermansia muciniphila の水準が低いことを見つけた。 この細菌を抗生物質を処方したマウスへ経口補給すると、免疫療法への応答が回復した。 Matson たちと Gopalakrishnan たちは、PD-1 遮断療法を受けている黒色腫患者を調べ、療法に応答する患者の腸で善玉菌がより多いことを見つけた。 非応答者は、腸内細菌叢組成が偏っていて、これは、免疫細胞の活性の弱まりと相関していた。 このように、健康な腸内細菌叢の維持は、ガンとの戦いで患者を助ける。(MY,nk,kh)

【訳注】
  • PD-1 遮断免疫療法:ガン細胞は、免疫を担う T 細胞の表面に発現する PD-1 受容体へ結合して T 細胞の働きを抑制し免疫から逃れる。 PD-1 遮断免疫療法は、この結合を薬剤で阻害することで、T 細胞の攻撃性を保つ療法。
  • Akkermansia muciniphila:成人の腸内細菌の総数の 1~4 % を占め、腸内に大量に棲息する菌。 胃や腸など粘膜表面を構成する物質であるムチンを栄養源とする。
Science, this issue p. 91, p. 104, p. 97; see also p. 32

有糸分裂に特異的な ATR の役割 (Mitosis-specific role of ATR)

ATR (ataxia telangiectasia mutated and Rad3-related)キナーゼは、S 期およびゲノムの完全性を保護するための DNA 損傷応答の時期に重要な役割を果たしている。 Kabeche たちは、有糸分裂において、ゲノム不安定性の抑制にも重要な、めったにない ATR 活性化経路を同定した(Saldivar と Cimprich による展望記事参照)。 ATR は、有糸分裂染色体の動原体においてオーロラA によって動員され、R ループによって活性化される。これが、正確な染色体分配に必要なオーロラB の活性化をもたらす。 この有糸分裂での R ループ駆動 ATR シグナル伝達経路は、がん治療の探索において利用できる可能性がある。(KU,kh)

【訳注】
  • R ループ:DNA 2本鎖の一部に相補性の RNA が結合してできる輪状構造。
  • オーロラA(キナーゼ)、オーロラB(キナーゼ):がん細胞で過剰発現しており、これががん細胞の無制限の増殖を可能にしていると考えられている。
Science, this issue p. 108; see also p. 30

回復には時間が足りない (Not enough time for recovery)

サンゴの白化は、ストレスの多い条件によって、共生藻類がサンゴから追い出されてしまった場合に生じる。 人為的活動に起因する気候温暖化以前は、そのような事象は比較的にまれであり、事象の合間でのサンゴ礁の回復が可能であった。 Hughes たちは、世界中で 100か所のサンゴ礁を観察し、白化事象発生の平均間隔が、今では以前の半分以下になっていることを見出した。 そのようなわずかな回復期間では、完全な回復はできない。 そのうえ、エル・ニーニョのような温暖化現象は、一般的な海洋の条件と同様に、以前よりさらに高温化している。 そのような変化は、サンゴ礁がストレスの多い事象の間に回復するのを、ますます困難にしているようだ。(Sk,kj,kh)

Science, this issue p. 80

地球規模の互恵主義が協力を促進する (Global reciprocity drives cooperation)

国家間の協力が、国際的な貿易、法律、平和そして環境保護を促進する。 しかしどのように、自由で自己本位、かつしばしば競争関係にある国家の間で協力関係が始まり、そして持続するのだろうか? Frank たちは強力な因果推論技術を、世界中の 1995 年から 2015 年の国家間相互依存の詳細なデータセットに適用し、国際協力、影響そして相互依存について地図化した。 進化ゲーム理論からの予測と合致して、強国を含む国家間の互恵主義には広域性があり、小さい違反に直面したとしても、普及力があり、安定した協力関係を導き出す。(Uc,ok,kj,kh)

Sci. Adv. 10.1126/sciadv.aao5348 (2018).

沈黙の音 (The sound of silence)

耳鳴りは、世界中で何百万人もの患者の生活の質を低下させている。 騒音による神経性外傷で耳鳴りを誘発させたモルモットをモデル動物として用いて、 Marks たちは、正確に計時された音と体性感覚の交互刺激を与え、蝸牛神経核における長期抑圧(LTD)を誘発した。 一日当たり 20 分の治療は、この動物の耳鳴りの生理的および行動的な徴候を減少させた。 同様な交互刺激による治療方法は、二重盲検偽制御の交差試験による臨床研究で、人間被験者の耳鳴りの大きさを減少させた。 単一種刺激は、動物や人間の耳鳴りを低減しなかった。 このように、この手法により、患者の慢性耳鳴りの抑制が期待できる。(Sk,nk,kj,kh)

【訳注】
  • 長期抑圧(LTD):シナプスにおける神経細胞間の情報伝達効率が長期に渡って低下する現象。
  • 二重盲検:試験者、被試験者双方に試験内容を不明にして行う試験。
  • 偽制御:治療法の試験のために, 疑似治療(無治療)と対照すること。
Sci. Transl. Med. 10, eaal3175 (2018).

海面下で酸素が消える (Beneath the waves, oxygen disappears)

プラスチック廃棄物が海を汚染し、魚類資源が減少するにつれて、目に見えない海面下のもう1つの問題が大きくなる。 脱酸素である。 Breitburg たちは、外洋水と沿岸水の広がりつつある範囲で、酸素濃度が減少の一途をたどる証拠について総説している。 気候変動と相まった栄養物負荷の上昇(それぞれ、人間活動に起因する)は、海洋の生物地球化学的性質を変えつつあり、その結果、酸素消費を増大しつつある。 これは、堆積物の不安定化と、重要栄養素の供給度に対する構造的な転換をもたらす。 短期的には、代償的効果の中には、海面と上昇した酸素極小帯の間に資源が押し込められる場合のように、特定地方の漁業の改善をもたらすものもあるかもしれない。 より長期的には、これらの状態は持続できず、生態系の崩壊という結果になり、最終的に、社会的および経済的損害を生じるだろう。(MY,nk,kh)

Science, this issue p. eaam7240

ストレスに対するタンパク質の生物物理的応答 (Biophysical responses of proteins to stress)

最近の多くの研究が、物理化学的な条件の変化に対する細胞応答としての液-液相分離に向けられてきた。 相分離は、pH、温度、塩のような条件の僅かな変化にとてもよく応答するため、それは原理的には、細胞が周囲の状況の変化を測って対応する理想的な方法である。 例えば、僅かな pH 変化は、タンパク質を貯蔵、保護、あるいは不活性化する区画を作る相分離を誘発する。 Franzmann たちは、相分離で誘発されるストレス応答のモデルとして、酵母の翻訳終結因子 Sup35 を用いた。 pH の低下は Sup35 の液-液相分離を誘発した。生じた液区画はその後ゲルへと固まり、この終結因子を隔離した。 pH の上昇はゲルの溶解を引き起こし、同時に翻訳が再始動した。 ゲル中での Sup35 の保護は、ストレスが解放された後に翻訳機構を再始動する必要のある酵母細胞の回復に対して、進化的適応上の利点を与えるかもしれない。(MY,kj,kh)

【訳注】
  • Sup35:出芽酵母でタンパク質を合成する翻訳過程に用いられ、翻訳終結段階で合成されたポリペプチド鎖(タンパク質)を翻訳複合体から解離する役割を果たすタンパク質。
Science, this issue p. eaao5654

三日熱マラリアの宿主受容体 (Vivax malaria host receptor)

ヒト・マラリアは、各々生態が異なる半ダースのプラスモジウム属の寄生原虫によって引き起こされる。 三日熱マラリア原虫は、再発性マラリアの原因となり、とりわけ、網状赤血球と呼ばれる未成熟赤血球に寄生する。 Gruszczyk たちは、三日熱マラリア原虫の代替受容体として、TfR1(宿主のトランスフェリン受容体 1)を特定した。 TfR1 は三日熱マラリア原虫の特定表面タンパク質と結合する。しかしながら、脳マラリアを引き起こす原虫である熱帯熱マラリア原虫は、受容体として TfR1 を共有しない。 熱帯熱マラリア原虫は、TfR1 の発現が抑制された細胞に依然感染できたが、三日熱マラリア原虫はできなかった。 三日熱マラリア原虫の特定表面タンパク質に対するモノクロナール抗体は、赤血球に対する三日熱マラリア原虫の感染をうまく妨げた。(MY,kj)

【訳注】
  • 代替受容体:結果として、本来の相手と違う物質の受容体として働いている場合の受容体を言う。
  • トランスフェリン受容体1:トランスフェリン(血漿に含まれ、鉄イオンと結合するタンパク質)と結合する細胞表面の受容体。 トランスフェリンと結合した鉄イオンは、この受容体と結合した後、原形質膜陥入により細胞内へと輸送される。
  • モノクロナール抗体:抗原の複数部位に作用する性質を持つ通常の抗体に対して,抗原のある部位にのみに作用する抗体。 単一の抗体を産生する細胞のクローンから作られる。
Science, this issue p. 48

自己受精の成り行きを調べる (Examining the consequences of selfing)

線形動物に属する Caenorhabditis属は、近縁の異系交配種と自己受精種の混在を含む。 ゲノムの大きさはこれらのさまざまな種で大きく異なる。 Yin たちは異系交配性線形動物である C. nigoni のゲノムの構成を行い、それをその近接種である自己受精性の C. briggsae のゲノム構成と比較した。 この2つの種の最新の分岐以来、C. briggsae はゲノムの大きさの大幅な減少を経てきた。 この大きさの相違の根底をなす原因は、タンパク質をコードする遺伝子の減少と、C. nigoni のオスで主として発現する RNA と相同性を持つ他の型の配列の変化と関係するらしい。 該当する遺伝子ファミリー群の1つである mss ファミリーは、精子の競争力を減じている。 このように、線形動物における自己受精は、オスの生殖機能を弱める淘汰のため、ゲノムの大きさの減少をもたらすらしい。(MY,nk,kj,kh)

【訳注】
  • mss:精子表面の糖タンパク質をコードする遺伝子。
Science, this issue p. 55

大質量星の観測が増えている (Observing more massive stars)

各質量で形成される星の数は、初期質量関数(initial mass function IMF)として知られている。 ほとんどの質量範囲で、IMF はべき乗則分布に従っている。 このことは、1955 年に Edwin Salpeter によって初めて決定された。 Schneider たちは、銀河系に近い星形成領域である 30 Doradus(タランチュラ星雲としても知られている)の観測を用い、これを星のモデルと組み合わせて IMF を決定した。 彼らは、30 太陽質量以上では Salpeter 分布の予測よりも多くの星を発見した。 最も大質量の星は、たとえば、紫外線放射や恒星風、超新星の爆発、重元素の生成などを通して、周囲に最大の関わりを持つ。 このため、この過剰は広範囲にわたる意味を持つことになろう。(Wt,nk,kj,kh)

Science, this issue p. 69

修復する圧縮 (A healing squeeze)

合成ポリマー中に見られる非常に長い分子、そしてそれらのもつれ合いと部分的な結晶化の傾向は、ポリマーの有用な特性の多くを付与する。 しかしながら、これらの同じ特性がまた、鎖の挙動を遅くさせ、可能な自己修復を妨げる。 Yanagisawa たちは、水素結合ネットワークを形成し、無定形のままに留まることができる一連のエーテル・チオ尿素の線状重合体を開発した。 このポリマーは水素結合の強さを示して剛いが、しかしながら、この結合は容易に再編成出来るために、ポリマーは押しつけられると自己修復することもできる。(KU,nk,kh)

Science, this issue p. 72

エイズではナチュラル・キラー細胞が抑えられる (Inhibiting natural killer cells in AIDS)

ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子複合体は、個体間で非常に異なり、感染への免疫個体差を説明するのに役立つ。 Ramsuran たちは、ほぼ 10,000 の HIV 感染症からのデータを調べた。 HLA-A-B の対立遺伝子の発現は、より高いウイルス量、CD4 陽性 T 細胞数の減少、およびエイズへの進行の加速と関連していた。 より高濃度の HLA-A 発現は HLA-E の発現を増加させたが、これは、通常ウイルス感染細胞を除去するナチュラル・キラー細胞上の特定の受容体(NKG2A)を遮断する。 従って、NKG2A を標的とすることは、HIV 治療のための治療手段を提供するかもしれない。(KU,kj,kh)

Science, this issue p. 86

すでに減少中のキイロアメリカムシクイ (Yellow warblers already in decline)

気候が変化するにつれて、変化する状況に適応する種の能力は、彼らの今後の存続に直接関係するかもしれない。 しかしながら、これが起こるのかと何時起こるかを決めることは困難である。 なぜなら、減少或いは維持の原因を切り分けることが難しいからである。 Bay たちは、キイロアメリカムシクイの北アメリカ集団におけるゲノム変異と環境との関係を調べた(Fitzpatrick と Edelsparre による展望記事参照)。 探索行動と移動行動に関連する遺伝子は、気候適応を成功させるために重要であった。 さらに、気候関連のゲノム変異が十分でないために「遺伝的に脆弱」として判定された集団は、すでに減少しつつあった。(KU,MY,kh)

【訳注】
  • キイロアメリカムシクイ(Yellow warbler):北アメリカ産の黄色の鳴き鳥。
Science, this issue p. 83; see also p. 29

炎症性の ILC2 は巡回する見張り役である (Inflammatory ILC2s are itinerant sentinels)

2 型自然リンパ球(ILC2)は、組織恒常性と腸内寄生虫に対する防壁免疫において重要な役割を果たす免疫細胞の集団である。 最近の研究は、ILC2 が主に、組織の長期常在細胞であり、容易に再循環しないことを示唆している。 しかしながら今回、Huang たちは、この知見が、インターロイキン 25(IL-25)応答性である(細胞型)KLRG1hiの「炎症性」ILC2(iILC2)サブセットには必ずしも当てはまらないことを実証している(Mjösberg と Rao による展望記事参照)。 外因性の IL-25 または腸内寄生虫感染に応答して、小腸固有層における iILC2 前駆体が増殖し、スフィンゴシン 1-リン酸(S1P)受容体の発現を変化させる。 その後、それは、部分的に S1P 依存的様式でリンパ系と非リンパ系双方の器官に移動し、重要な抗腸内寄生虫と組織修復反応に参加する。(KU,kh)

Science, this issue p. 114; see also p. 36

採掘すべきか、せざるべきか (To mine or not to mine)

海底は、大量の貴重な鉱物を含有しており、ますます成功しそうな採掘対象とみなされている。 展望記事において、Boetius と Haeckel は、そのような採掘が、例えば深海のあまり知られていない生態学的共同体に対して、大きな環境リスクをもたらすかもしれないことを論じている。 そのような環境への採掘の影響は、回復困難でまた費用がかかる。 さらに、小規模実験から得られる調査の知識を、商業規模に外挿するのは困難である。 著者らは、統合的な研究と、海底を保護する規制の枠組みを呼び掛けている。(Sk,MY,kh)

Science, this issue p. 34

制御性 T 細胞に狙いをつける (Taking aim at regulatory T cells)

がん免疫療法は、腫瘍に対抗する患者の免疫系を刺激しようと試みるが、患者自身の制御性 T 細胞(Treg)の抑制効果によって制限されることがある。 Nie たちは、免疫療法と同時に TNF(腫瘍壊死因子)受容体を阻害すると、Treg 細胞の活性と増殖を減少させ、抗腫瘍免疫記憶を刺激し、一般的な単一薬剤免疫療法に反応しなかったマウスの結腸と乳房腫瘍を縮小さえすることを示した。 したがって、抗 TNF 治療を加えることは、がん患者のための免疫療法の効力を増加させ広げる助けとなり得る。(Sh,nk,kh)

Sci. Signal. 10, eaan0790 (2018).

脂質監視に目を向ける (Taking a look at lipid surveillance)

ヒト2型自然リンパ球(ILC2)は、恒常性を維持し病原体から防御する役割を果たすが、調節不全のILC2応答は喘息とアレルギー反応に関連している。 Hardman たちは、生体内 ヒト皮膚接種モデル系を用いて、ILC2 が CD1a を発現し、それがサイトカイン TSLP によって調節されることを示した。 CD1a 陽性 ILC2 は、内在性脂質抗原を CD1a 反応性 T 細胞に提示し、炎症応答を誘導し得る。 CD1a 陽性 ILC2s は、リン脂質加水分解酵素 PLA2G4A を発現し、CD1a 介在下でT細胞の活性化に寄与した。 この経路は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に関連する皮膚炎症の検出に関与していた。 したがって、皮膚に常在する ILC2 による脂質検知は、アトピー性皮膚炎と病原体の監視に寄与し得る。(Sh,kj,kh)

【訳注】
  • サイトカイン:抗原が感作リンパ球に結合した時、このリンパ球から分泌されるたんぱく質。
  • TSLP(thymic stromal lymphopoietin):粘膜上皮から分泌され、樹状細胞に対し成熟とT細胞分化誘導能をもたらすサイトカイン。
  • CD1a:抗原提示細胞の表面に発現する細菌の膜脂質由来の抗原を提示する糖タンパク質。
Sci. Immunol. 2, eaan5918 (2017).