AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約

Science October 20 2017, Vol.358

野生の鳥における最近の自然選択 (Recent natural selection in a wild bird)

たくさんの研究が、環境変化に応答する急速な進化の証拠を見いだした。ほとんどの場合、どの形質がもっとも早めに応答するのかの示唆が見出されてきた。Bosseたちは、変化しつつある形質を識別するために選択の徴候を示すゲノム領域を用いて、この研究方法をひっくり返した。英国のシジュウカラにおいて、選択を示すゲノム領域は、必ず嘴の増大と関連した遺伝子を含んでいた。実際、英国の鳥類はより長い嘴を有するだけではなく、このような長い嘴はより高い適応性と相関している。これらの変化は、多分、過去何十年に亘り(強い嘴が必要な) 家庭用鳥餌箱の増加を反映しているのであろう。(Uc,KU,ok,nk,kh)

Science, this issue p. 365

酸が分子糸を通された環状分子の動きをあおる(Acid fuels the motion of a threaded ring)

分子規模の機械を組み立てる中心的目標は、効率的な一方向移動の達成である。Erbas-Cakmakたちは、pHの変化を、直線或いは環状の軸を貫通する環状分子の移動・停止という二段階の誘導運動に変換する一群の分子機械を開発した。この設計は、貫通軸に沿って酸性と塩基性に応答して能動・受動状態を切り替える、一時的な移動妨害化学基と着陸部位に依存している。トリクロロ酢酸が第一段階の動きを引き起こし、酸が溶液中の塩基で分解されて第二段階を駆り立てる。(MY,ok,kh.KU)

Science, this issue p. 340

結合を強めるためにカオスを利用する(Harnessing chaos for enhanced coupling)

機能的光学素子は通常、異なる帯域間の光の結合を必要とする。しかしながら、運動量保存則が、結合可能な帯域幅を、しばしば近共鳴効果の範囲内に制限する。Jiangらは、わずかに歪められたマイクロ・リング共振器がそれらの制限を緩和できるかも知れないことを示している。歪められた構造内での光のカオス散乱は、数ピコ秒内で異なる角運動量の光モードを変換することができ、これは、新しいナノ光回路と素子を開発するための有望な道を提供するかもしれない。(NK,KU,nk,kh)

Science, this issue p. 344

歯磨きするよう腸はあなたを説き伏せる (Gut reasons to brush your teeth)

炎症性腸疾患(IBD)や潰瘍性大腸炎、そしてクローン病(CD)などのいくつかの腸の疾患は、腸内微生物群の平衡異常と関連している。これらの難治性疾患の原因は確認しづらかった。Atarashiらは、IBDとCDの患者の口から試料を採取し、抽出した細菌を無菌マウスに播種した(Caoによる展望記事参照)。播種したマウスのいくつかは、経口クレブシエラ( Klebsiella 属の結腸内への定着に伴うTヘルパー1細胞の強い増殖を示した。 クレブシエラ属は複数の抗生物質に耐性を持つことがあり、抗生物質治療後に正常な結腸微生物を置き換えることができる。 今や我々は、それらがおそらく口腔起源であり、腸疾患に寄与する可能性があることが分かった。(Sh,ok,nk,kj,kh)

【訳注】
  • ・クレブシエラ属:ヒトの鼻腔や口腔、腸管の正常細菌叢に常在しているグラム陰性桿菌で、まれに感染症の原因となる。
Science, this issue p. 359; see also p. 308

長期貯蔵のための記憶転送 (Memory transfer for long-term storage)

顕在記憶の形成には、海馬から連合皮質中の長期貯蔵部位への、高速コード化情報の伝達が関与している。Khodagholyたちは、ラットの新皮質における複数部位の大規模・同時の電気生理学的観察を行うための微小電極システムを開発した。彼らは、連合皮質中のみにリップルと呼ばれる断続的な新皮質高周波振動を観察した。これらの皮質のリップルは、海馬のリップルと多くの特性を共有していた。海馬のリップルは、進路立案と繋がっている皮質連合野である、後頭頂皮質の皮質リップルと結びついていた。この結合は、長期の海馬依存的空間記憶の誘導後、睡眠中に増加した。(Wt,KU,nk,kj,kh)

Science, this issue p. 369

B型インフルエンザと戦う抗体 (An antibody to battle flu B)

B型インフルエンザは、世界中に広まっており、季節性インフルエンザ・ワクチンの確定対象に含まれて当然と思われるほどに流行しているけれども、そのいとこであるA型インフルエンザほど十分に研究されておらず、治療法が欠如している。Shenらは、B型インフルエンザ・ウイルスの多様な株を抑制する強力な抗体を作った。この抗体は、ウイルス侵入に重要な領域である、赤血球凝集素における受容体結合部位を認識し、マウスおよびフェレットにおいて治療的に有効であることが示された。この抗体は、世界中のB型インフルエンザ感染を治療または予防するのに広範囲に展開されるかもしれない。(ST,KU,ok,nk,kj)

Sci. Transl. Med. 9, eaam5752 (2017).

腫瘍の血管新生は神経質になる(Tumor angiogenesis gets nervous)

固形腫瘍の微小環境は、腫瘍増殖を増強するか阻害することができる多くの細胞間会話の場を提供する。興味深いことに、腫瘍細胞はこれらの会話に直接参加する必要はない。Zahalkaらは、前立腺がんの微小環境における自律神経からのアドレナリン作動信号が、血管内皮細胞の代謝を変化させることによって腫瘍成長を促進することを見出した(HayakawaとWangによる展望記事参照)。これらの神経由来の信号は、内皮細胞での酸化的リン酸化を抑制し、急速な腫瘍増殖を促進する血管新生スイッチを活性化した。神経と内皮細胞との間のこの巧みな応答は、潜在的にがん治療の標的を提供するかもしれない。(Sh,KU,ok,kj,kh)

【訳注】
  • 酸化的リン酸化:ミトコンドリア内膜や細菌形質膜で電子伝達系の酸化還元反応と共役して行われる一連のATP合成反応。
Science, this issue p. 321; see also p. 305

海洋生物多様性の勾配(Gradients in marine biodiversity)

海洋動物の生物多様性は熱帯地方に向かって数倍に増加するが、これを説明する一般的な理論が不足している。Edgarたちは広範な地球的規模の調査報告書を用いて、緯度範囲が100度以上にわたる岩礁に住む魚と移動性無脊椎動物に対してこの問題に取り組んだ。地域的多様性は赤道付近で最も高かったが、局所的多様性は、熱帯でピークとなる魚と、より高緯度でピークになる無脊椎動物との間での異なる存在量を、反映していた。これらのパターンは、魚に対しては温度勾配、そして無脊椎動物に対しては栄養素と相関していた。このように、魚は、熱帯地方の無脊椎動物の局所的存在量と多様性を制限しているように見える。しかしながら、地域的には、多様性は適切なサンゴの生育地の面積に強く依存しており、熱帯サンゴの減少に伴う生物多様性の喪失を警告している。(Wt,KU,ok,nk,kj,kh)

Sci. Adv. 10.1126/sciadv.1700419 (2017).

ナノ規模における遅い光(Slow light on the nanoscale)

光が光学材料を通過する場合、その速度はその材料の屈折率に従って低下する。特別な状況下では、光を歩く速度まで遅くしたり、あるいは瞬間的に停止させることさえできる。実用的応用への取り組みを探索しつつ、Tsakmakidisたちは、設計された材料や作り出された構造を用いて、どのように光の速度を制御できるかを概説している。彼らは、信号処理や光電子通信において、遅い光とナノ技術の組み合わせが、どのようにして多くの興味深い影響を引き起こすかを示している。(Sk,kh)

Science, this issue p. eaan5196

酵素に燃料を補給する(Refueling an enzyme)

リポ酸は、8炭素の脂肪酸であり、硫黄基がリポイル合成酵素(LipA)によって2つの炭素原子に付加される。 LipAは、補助的[4Fe-4S]クラスターからその硫黄を提供する。McCarthyとBookerは、大腸菌において、補助的LipAクラスターが、鉄-硫黄クラスター・キャリア・タンパク質 NfuAによって再構成されることを示している(Rosenzweigによる展望記事参照)。これは、LipAがリポ酸生合成の最終段階において触媒のように作用することができるほど十分に速く起こる。(KU,kh)

Science, this issue p. 373; see also p. 307

プログラムされた細菌叢の認識(Programmed recognition of microbiota)

私たちは益々、腸が栄養機能と共に細菌共生の維持に特化した器官であることを認識する。腸は大量の免疫グロブリンA(IgA)を作り出し、IgAは腸内細菌の表面に付着する。Bunkerたちは、小腸のナイーブ形質細胞の産生する抗体が、外来性抗原とT細胞の助けとは関わりなく、パイエル板内部で再循環され、その結果、濃度が高まることを発見した。それにより生じた多反応性IgAは腸管内腔へと放出され、細菌表面の糖鎖に結合し、このようにして、腸内細菌を自然に認識する。多反応性IgAは、相利共生の恒常性維持のための、宿主と細菌叢の共進化の産物らしい。(MY,ok,kh)

【訳注】
  • 形質細胞:リンパ球の1つであるB細胞が分化した細胞で、免疫グロブリンを産生する。
  • 免疫グロブリン:形質細胞が産生するタンパク質で、体内に侵入した抗原を認識して結合する抗体の働きをもつ。IgAを含む5種類が知られている。
Science, this issue p. eaan6619

MOFがアミンを作る舞台装置を整える (A MOF sets the stage to make amines)

還元的アミノ化は、炭素-窒素結合を作るのに化学者が使う一般的方法である。この反応は、しばしば貴金属触媒を必要とし、アンモニアや他のアミンを、カルボニル化合物と結合させ、その後水素と結合させる。Jagadeeshたちは、医薬品で関心をもたれる複雑な分子を含む、非常に幅広い基質にわたってこの反応を触媒する、非貴金属コバルト・ナノ粒子類を報告している(ChenとXuによる展望記事参照)。コバルトは最初に金属有機構造体(MOF)に埋め込まれ、加熱するとMOFがグラファイト状のシェルへと変化した。この触媒は好都合にも、生成物から分離でき、6回も再利用できた。(MY,kj,kh)

【訳注】
  • 還元的アミノ化:アミンと、アルデヒドあるいはケトンを脱水縮合させたのちに還元し、2級、もしくは3級アミンを得る化学反応。
Science, this issue p. 326; see also p. 304

水素跳躍に関する量子力学(The quantum mechanics of a hydrogen hop)

隣接する炭素間での水素移動は、有機化学の反応機構において広く知られている。DeVineたちは光電子分光法を用いて、典型的な例であるビニリデン(H2CC)からアセチレン(HCCH)への転換における、この 1,2 転位の量子力学的裏付けを見極めた。この技術で、陰イオン前駆物質から様々なエネルギーを持った電子を放出することにより、ビニリデンの特定の状態が調べられた。実験データとそれに併行した理論的シミュレーションにより、その移動を促進する、横ゆれ振動モードが特定された。水素をより重たい重水素同位体で置き換えると、この経路は断たれた。(Sk,KU)

Science, this issue p. 336

電場により多孔性を調整する(Tuning porosity with electric fields)

多くの金属有機構造体(MOF)化合物は、柔軟な多孔性を示す。すなわち、それらの格子はかなりの変形に耐えることが可能である。KnebelたちはMOF ZIF-8の膜層を形成し、それが印加した電場に応じて、より硬い格子を有する極性多形に変換されることを見出した(Gasconによる展望記事参照)。この変化は気体の輸送を減少させたが、プロパンとプロペンのようなある種の混合気体に対しては、またその分離係数をも改善した。(Sk,KU,kj,kh)

【訳注】
  • ZIF:zeolitic imidazolate framework
Science, this issue p. 347; see also p. 303

成長を一歩、一歩見守る(Watching growth, step by step)

ポリマーは、活性な末端部位へのモノマーの段階的付加反応により成長することができる。これは連続的な線形過程で起こるだろうと思う人もいるかもしれない。Grubbs触媒によって触媒されるノルボルネンの開環メタセシス重合に焦点を当てて、Liuたちは単一ポリマー鎖の成長を記述している。成長するポリマーの一端をビーズに取り付け、ビーズに一定の力を加えることで、彼らはポリマーの成長中に生じるその伸長を測定した。 奇妙なことに、成長するポリマーの伸長は連続的に増加しなかった。その代わりに、ポリマーの伸長は新たに取り込まれたモノマーによって形成される立体構造のもつれにより、連続的な待機と跳躍の段階を示した。(KU,ok,nk,kj,kh)

【訳注】
  • Grubbs触媒:R.Grubbsによって見出されたルテニウム・カルベン錯体(1992年)。オレフィン・メタセシス反応の触媒として使用される。
  • ノルボルネン:脂環式化合物の一つ(C7H10)。
Science, this issue p. 352

一本の分子線だけで衝突を追跡する(Tracking collisions in just one beam)

量子力学がどのように化学動力学を支配しているかについて我々が知っていることの多くは、半世紀にわたる、交差した一対の分子線間での制御された衝突の研究からきている。Perreaultたちは、今回、さらに細かな詳細が、単一の分子線中での水素-重水素(HD)のD2との衝突の研究で明らかになることを示している。この実験の構成は衝突温度を 1K 以下に低下させ、回転エネルギーの正確な制御と衝突相手との相対的整列を可能にする。もしHDが分子線伝搬方向に対して平行ではなく垂直に整列されると、HDが回転エネルギーを失う散乱事象が三倍も容易に生じた。(Sk,nk,kj,kh)

Science, this issue p. 356

2D材料の世界を広げる(Expanding the world of 2D materials)

二次元(2D)材料は、電子産業の分野で幅広い応用可能性を有している。しかしながら、ある組成の2D材料は、バルク結晶から薄いシートを剥離する困難さのため、得るのが難しい。Zavabetiたちは液体金属を利用して、二次元状のGa2O3, HfO2, Gd2O3, と Al2O3を合成した。この2Dシートはガリウム系液体合金の表面層として、Hf、GdそれにAlがガリウム系のバルク合金中に溶解された後に出現する。表面に出現するこの2D酸化物は、最も低いエネルギーを持つ酸化物であり、このことは、これと同じ工程を用いることで、他の2D酸化物を作ることができるはずであることを示唆する。(MY,nk,kj,kh)

Science, this issue p. 332

羽根がアメンボの適応を可能にする(Fans enable water strider adaptation)

非常に近縁の生物のゲノムは似通っているが、異なる表現型や生活様式を可能にする差異を含んでいる。複雑な形質の新規出現は自然選択では簡単に説明できないため、昆虫の羽や鳥の翼のような進化上の革新の起源は、進化生物学に課題を提起している。水上歩行するアメンボは、早い流れでの生活に関連する、真ん中の足の推進羽根を進化させた。Santosたちは、ゲイシャおよびゲイシャの母遺伝子が推進羽根の発生と進化の基礎であり、この進化上の革新がアメンボがその環境に適応するのに必須であることを発見した。このように、分類群限定の遺伝子の進化は、未開拓の環境適所の利用を可能にする分類群限定の新奇性に、直接的に寄与することができる。(Sk,kj,kh)

【訳注】
  • ゲイシャおよびゲイシャの母遺伝子:アメンボの足に推進翼を進化させた遺伝子(ゲイシャの持つ扇子から発想を得て著者らが命名)
Science, this issue p. 386

新薬発見の戦略(A strategy for drug discovery)

ドーパミン受容体は、多くの神経障害に関与する Gタンパク質共役受容体である。ドーパミン受容体の異なる族は異なるシグナル伝達経路に関与しているので、特異性は薬物療法の重要な目標である。Wangたちは、抗精神病薬nemonaprideに結合する DRD4ドーパミン受容体の高分解能結晶構造を提示している。その構造の高解像性がリガンドの結合を容易にし、結果としてDRD4-選択的アゴニストが、大きなライブラリーのコンピューター・スクリーニング、最良の結合得点を得た化合物の実験室レベルの試験、およびこれらの化合物類似体の結合と試験の反復サイクルによって同定された。同定されたアゴニストは、DRD4に対して高い親和性を有し、DRD2またはDRD3に対して何等の測定可能な親和性を持っていなかった。(KU,kj,kh)

Science, this issue p. 381

ヒトmTORC1成分の構造(Structure of human mTORC1 components)

mTORC1(ラパマイシンの機構的標的複合体1)複合体は、増殖因子受容体からの入力と代謝と細胞の成長および増殖による栄養利用可能性とを調整するシグナル伝達のハブとして注目を集めている。de Araujoたちは、活性化のためにリソソーム膜に mTORC1を組み立てるのを助ける LAMTOR(または「Ragulator」)複合体の結晶構造を報告している。その構造と機能の研究は、 LAMTOR1が、LAMTOR複合体の他のサブユニットをどのように包み込んでそれらを保持しているかを、そして複合体中のRagグアノシン・トリホスファターゼとどのように相互作用しているかを明らかにしている。(KU,kj,kh)

【訳注】
  • mTOR:mammalia target of rapamycinの略で、mTORは複数のタンパク質と複合体を形成する(mTORC)
  • ラパマイシン:微生物により作られるマクロライド化合物の一つで、強力な免疫抑制作用や抗増殖作用を持つ
Science, this issue p. 377

危ないにおいを学ぶ(Learning the smell of danger)

感染が避けられない場合、病原体誘発性の細胞損傷を防ぐよう備えることが次善の策となる。OoiとPrahladは、線虫Caenorhabditis elegansにおける病原菌のにおいの過去の経験が、熱ショック因子(HSF-1)の標的遺伝子の発現を高め、その結果、その後の病原体との遭遇の際に生存を高めることを見つけた。病原体のにおい単独へ暴露すると、RNAポリメラーゼⅡ濃度の高いゲノム座位にHSF-1が蓄積した。このように、シャペロンHSF-1の活性化は、単にタンパク質損傷に対する細胞の自律的な反応であるだけでなく、 タンパク質毒性のストレスを予知して開始されることもある。(MY,kj,kh)

【訳注】
  • 熱ショック因子:熱ショック・タンパク質(細胞が熱等のストレス条件下に曝された際に発現が上昇して細胞を保護するタンパク質)の発現を調節する転写因子のこと。熱ショック・タンパク質は、他のタンパク質分子の正しい折りたたみを助けるシャペロンとして機能する。
Sci. Signal. 10, eaan4893 (2017).

メモリーT細胞を選別する(Selecting memory T cells)

感染組織への免疫細胞の動員は、免疫細胞上の受容体と、E-およびP-セレクチンを含む血管内皮細胞によって発現される接着分子との間の相互作用に依存する。Osbornたちはエフェクター・メモリーT細胞とセントラル・メモリーT(TCM)細胞の輸送を比較し、組織に入ることができるのは概ね TCM細胞に限られることを見出した。TCM細胞のインターロイキン-15駆動の転写プログラミングが、セレクチン・リガンドのグリコシル化を促進し、これらの細胞がE-およびP-セレクチンに結合し、炎症を起こした組織に入ることを可能にした。したがって、メモリーT細胞の異なったサブセットが免疫学的リコール応答に寄与する。(KU,kj,kh)

【訳注】
  • セレクチン:白血球と血管内皮細胞の接着に関与するレクチン・タンパク質の1群で、血管内皮細胞に発現するのをE-セレクチン、血小板と内皮細胞に発現するのをP-セレクチンという。
Sci. Immunol. 2, eaan6049 (2017).