AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science March 20 2015, Vol.347


連結した磁場が引き起こす黒点サイクル(Sunspot cycle driven by linked fields)

黒点は、太陽の表面に現れる磁束を示している。黒点は、11年の所要時間で変化しているが、それは、太陽の内部にあるおそらく磁気ダイナモの振舞に依存している。Cameron たちは、黒点の活動で表面に現れた磁束の、方向の向きで足し引きした実質的な総量は太陽の両極の磁場の強度から導かれることを示唆した。彼らの数学的な推論は、なぜ極の磁場活動が黒点のサイクルを予測できるかを説明している。(Wt,kh,nk)
The crucial role of surface magnetic fields for the solar dynamo (Science, this issue p. 1333)

円柱状重合体ミセルは3次元的に詰まり集まる(Cylindrical polymer micelles pack in 3D)

物質の化学的性質,溶媒,温度,濃度を制御することで,界面活性剤やブロック共重合体は、容易にミセル,棒状,その他の構造へと集合する.Qiuたちは,結晶化の過程で自己組織化するより長い重合体ブロックを精密に選択することで,これをこれまでに存在しなかった長さにした(Leeによる展望記事参照).彼らは,疎水性もしくは極性である重合体ブロックを選び,1つのブロックだけと理想的に混和する溶媒を用いた.それら3元ブロック共ミセルは,並置的な重なり合いや,末端同士のミセル間会合を通して,多種多様な安定した3次元超構造を生成した.(MY,ok,kh)
Multidimensional hierarchical self-assembly of amphiphilic cylindrical block comicelles (Science, this issue p. 1329; see also p. 1310)

幹細胞を最高の条件に維持する(Keeping stem cells in tip top condition)

幹細胞は、組織の維持と増殖に重要である。全体としての生物の健康にとって、健全な幹細胞のみが用いられることが重要である。Mohrinたちは、幹細胞における細胞のエネルギー代謝と増殖に関係する、ミトコンドリアの折り畳まれていない タンパク質応答の調節性分岐を解明した(Ocampo and Belmonteによる展望記事参照)。ミトコンドリアタンパク質の折り畳みの応力が、細胞周期を制御する代謝のチェックポイントの引き金を引く。この経路の制御解除が、幹細胞の静止状態を妨害し、修復機能を損なった。(KU,kh)
A mitochondrial UPR-mediated metabolic checkpoint regulates hematopoietic stem cell aging (Science, this issue p. 1374; see also p. 1319)

代謝を標的として発作に立ち向かう(Targeting metabolism to tackle seizures)

私たちの約1%はてんかんに苦しんでいる.残念なことに,現在入手可能な薬はてんかんの患者の1/3には効き目がない.Sadaたちは,薬物抵抗性てんかんを治療する化合物の開発を行った.彼らは,脳の代謝経路であるアストロサイト-ニューロン乳酸シャトルに着目した.彼らは,神経細胞の代謝で重要な役割を果たしている分子である乳酸脱水素酵素が、脳の興奮性を制御していることを見出した.彼らは,この分子を選択的に標的とする物質を探索し,動物モデルにおいて,薬剤抵抗性てんかんを強く抑制する有望な抗てんかん薬を見出した.(MY)
Targeting LDH enzymes with a stiripentol analog to treat epilepsy (Science, this issue p. 1362; see also p. 1312)

鉄クラスターから鉄鉱物へ(From iron clusters to iron mineral)

ラボであれ自然界であれ、溶液から鉱物が成長するには、原子、或いはイオンクラスターの組み立てを必要とする。いくつかのありふれた鉄酸化物の構造は、小さな鉄-酸素クラスターが鉱物構築要素として役立つ可能性を暗示しているが、しかしこれらの不安定なクラスターを単離することが大きな課題である。Sadeghiたちは、単離だけでなく、鉄-酸素クラスターの成長と溶解を制御することができた。このクラスターは最もありふれた含水性酸化鉄であるフェリハイドライトの有望な前駆物質である。(KU,kh,nk)
Aqueous formation and manipulation of the iron-oxo Keggin ion (Science, this issue p. 1359)

生息地の断片化は生物多様性を低下させる(Habitat fragmentation reduces biodiversity)

人間の活動がもたらす生物行動パターンの破壊や生息域への浸食は,生物多様性の喪失や生態系の断片化を招く.しかしながら,生態学者たちは長らく,生物多様性の喪失に及ぼす断片化の影響度合いについて論争してきた.Haddadたちは,5大陸とほぼ40年間に渡っての多様な生態群系を扱う,生息地の断片化の影響に対する幅広い一連の研究を統合した.実際,生息地の断片化は,数十年しないうちに幅広い種の生物多様性をおよそ50%低下させた.さらに,世界の森林面積の70%は人間の活動域に十分近いところにあり,断片化により生物多様性が脅かされている.(MY)
Habitat fragmentation and its lasting impact on Earth’s ecosystems (Sci. Adv. 10.1126/sciadv.1500052 (2015))

300万年前ごろのホモ属人類を発見(Finding Homo nearly 3 million years ago)

人類の化石記録は、極めてつぎはぎだらけで不完全である。たとえそうだとしても、ここ二、三十年間にアフリカで発掘された骨格化石や石器によって、人類の進化に光が当てられてきている。ただし、ホモ属の起源はよく分かっていなかった。 Villmoareたちは下顎や歯の化石をエチオピアのアファール地域で発見した。この発見によって、確かにホモ属だとわかる化石記録の年代は、少なくとも50万年は伸び、約280万年前までさかのぼることになった。これらの化石の形態学的な特徴は、他のどの属の人類と比べてもホモ属に似ている。DiMaggiたちは発掘地点の年代を確認し、これらの初期人類は今までに考えられてきた以上に、開けて乾燥した環境で生活していた、と主張している。(Uc,bb,ok,nk)
Early Homo at 2.8 Ma from Ledi-Geraru, Afar, Ethiopia (Science, this issue p. 1352, p. 1355)

B細胞を用いてアレルギー応答を抑える(Limiting allergic responses with B cells)

殆どの免疫 B細胞は免疫応答を促進するが、いくつかの B細胞は抗炎症性サイトカインインターロイキン10 (IL-10)を分泌し、そして免疫抑制的性質を持つている。Kimたちは、これらの B細胞がマスト細胞(アレルギー反応の極めて重要な制御因子である免疫細胞)の活性化を抑制していることを見出した。これらの特殊な B細胞を欠如しているマウスは、より激しいアナフィラキシー症状を示した。マスト細胞の抑制には B細胞との物理的接触が必要であるが、これが B細胞が更にIL-10を作るように刺激する。このように、IL-10-産生の B細胞は、アレルギー疾患の処置に関する治療標的を与える可能性がある。(KU,nk)
Interleukin-10-producing CD5+ B cells inhibit mast cells during immunoglobulin E-mediated allergic responses (Sci. Signal. 8, ra28 (2015))

色補正プレーナー光学系(Color correcting planar optics)

現在、多くのバルク光学素子の持つ機能は、特別に設計された薄膜構造で置き換えることができる。しかしながら、このプレーナー光学系によるアプローチ方法は、一般に狭帯域の波長のみに適用されていた。Aietaらは、波長分散(色分散)あるいは色依存性が、プレーナー光学系の表面を工夫して設計することによって補償できることを示している。この結果は、平面的な薄膜に設計可能な広帯域で軽量な光学素子を作製する一般的な方法を示している。(hk,kh)
Multiwavelength achromatic metasurfaces by dispersive phase compensation (Science, this issue p. 1342)

材料科学に自律性を付加する(Adding autonomy to materials science)

形状記憶合金は、温度変化に応じてその形状を変化する。作成時に完全にプログラムされる応答特性であるにせよ、これは簡単な自律応答とみなすことができる。現在は、簡単な計算や通信も含めたやり方で、その場の環境を感知し応答するような材料または材料の組み合わせを作ることが可能である。McEvoy と Correll は、自律応答材料の作成における最近の開発状況を概説している。彼らは、どの程度、個々の特性が材料に付加されているか、および「ロボティック材料」のさらなる開発における現時点での制約について考察している。(Sk,ok,nk)
Materials that couple sensing, actuation, computation, and communication (Science, this issue 10.1126/science.1261689)

時空における翻訳の測定(Measuring translation in space and time)

リボソームは、メッセンジャーRNA(mRNA)内に含まれている情報をタンパク質へと翻訳する。いつどこでリボソームが mRNAに遭遇するかによって、遺伝子発現が制御されることになる。Halsteadたちは、翻訳されたことのない mRNAの単一分子を、生細胞中のリボソームによって翻訳を経たものから区別できるようにするRNAバイオセンサーを開発した(PoppとMaquatによる展望記事参照)。著者たちは、自分たちの技法の有用性を、単細胞内および発生中のショウジョウバエの卵母細胞における翻訳制御の空間的・時間的な進展を示すことで実証した。(KF,kh,nk)
An RNA biosensor for imaging the first round of translation from single cells to living animals (Science, this issue p. 1367; see also p. 1316)

高速、連続、3D印刷(Fast, continuous, 3D printing)

3次元(3D)プリントは現在、比較的小型で低コストな機器を利用することが可能となっているが、いまだに印刷速度はかなり遅い。これは3Dプリンターが、一層分を追加するたび毎に、硬化し、補充し、位置調整するための一連のステップを必要とするためである。Tumblestonたちは、液容器から固体構造を効率的に成長させるプロセスを開発した。このプロセスの鍵は、固体部分と液体の前駆体との間で、固化が起きないような酸素含有の「デッドゾーン」を設けることである。この液体の前駆体は次に、成長する固体部分の上向きの移動によって更新される。このアプローチによって解像度100ミクロン以下の特性を有する数十cmの構造物を作成することができた。(Uc,KU,ok,nk)
Continuous liquid interface production of 3D objects (Science, this issue p. 1349)

RNAの反応速度によって、制御の階層が決まる(RNA kinetics may define regulatory hierarchy)

DNAの二重らせん構造は、核酸重合体がいかにして相同配列を認識し、それに結合することができるかを直ちに示唆する。RNAによる標的認識は、多くの生物学的過程において重要である。Feiたちは、標識付けした RNAの超分解能顕微法とコンピューターによるモデル化とを用いて、RNA-RNAの塩基対形成反応が、いかにして生体内で生じているかを理解した。彼らは、細菌において、分解のためにメッセンジャーRNA(mRNA)を標的とする小さなRNA(sRNA)を研究した。彼らが観察したのは、sRNAがその標的である mRNAを探す際の会合のゆっくりした速度とその後の解離の素早い速度だった。これが、mRNAの分解を引き起こすには、高濃度の sRNAの必要性を説明する。sRNAは、異なる標的 mRNAをそれぞれ違う速度で発見しており、制御階層の形成が可能となる。(KF,KU,ok,kh)
Determination of in vivo target search kinetics of regulatory noncoding RNA (Science, this issue p. 1371)

心臓の治癒を発生に学ぶ(Healing heart borrows from development)

傷ついた後で自分自身を修復する能力は限られているので、成熟した心臓が何かを学ぶには、自身の発生に頼る必要がある。哺乳類の発生の際に用いた経路を再活性化することによって、心臓の再生を助長することは可能かもしれない。Tianたちはマウスにおいて、マイクロRNAクラスターmir302-367が、Hippoシグナル経路を抑制することによって初期の心臓発生の際の心筋細胞増殖を刺激していることを発見した。miR302-367の類似体による一過性処置によって、心筋梗塞後のマウスにおける心臓再生は促進されたが、これはそのような小さなRNAが成体心臓の修復のために治療的に利用可能であることを示唆するものである。(KF,ok,kh)
A microRNA-Hippo pathway that promotes cardiomyocyte proliferation and cardiac regeneration in mice (Sci. Transl. Med. 7, 279ra38 (2015))

隠れた秩序が持つ対称性を暴く(Uncovering the symmetry of a hidden order)

物質を冷却していくと、規則性が増し、時に劇的な転移が生じる。水を冷やして氷にするのがよい例である。規則性の増加に伴って、対称性が失われていく。水が液体状態の場合、どの向きに回しても同じに見えるが、氷の場合はそうはならない。Kungらは、URu2Si2が、17.5 Kで示す不可解な規則相を有する対称性について研究した。彼らは結晶にレーザー光を照射しその周波数シフトを調べた。ウランの電子軌道が原子層にキラリティーをもたらし、それが原子層間で交互に変化した。(NK,KU,kh,nk)
Chirality density wave of the “hidden order” phase in URu2Si2 (Science, this issue p. 1339)

とらえどころのない縞を明らかにする(Picking out the elusive stripes)

銅酸化物の超伝導体は、電荷密度の周期的変化を生じる。一般的には、この変化は結晶全体に対して同じではなく、小さなナノサイズの領域に分解される。バルクでの実験では、密度が銅酸化物の結晶面の両方の軸に沿って変化していることを示しているが、それが結晶全体のスケールでのみ当てはまるのか、それぞれの領域に対して局所的に当てはまるのかについては明らかでない。Cominたちは、化合物 YBa2Cu3O6+y における電荷秩序を共鳴X線散乱法を用いて解析し、それが局所的な一方向性の秩序、いわゆるストライプ秩序、と一致することを見出した。(Sk,ok)
Broken translational and rotational symmetry via charge stripe order in underdoped YBa2Cu3O6+y (Science, this issue p. 1335)

あなたはデータに正しい質問をしていますか?(Are you asking the right questions of your data?)

データ解析は、科学的質問への基本的事項である。しかし、全てのデータ解析は同じというわけでもなく、一つの種類の解析を別の種類の解析とごちゃ混ぜにすると、間違った解釈に導く。展望記事で、LeekとPengは、データ解析が6つのタイプ(即ち、比較的単純な記述的解析から遥かに困難な予測的、因果関係的、そしてメカニズム的な解析に至る範疇)に分類できると主張している。異なるタイプの複数の解析を含む研究において、個々の段階でその解析のタイプに気付くことが重要である。(KU,ok,kh,nk)
What is the question? (Science, this issue p. 1314)

CH5+のスペクトルへの手掛かりをつかむ(Getting a handle on the CH5+ spectrum)

プロトン化したメタンであるCH5+は、ルールに合わないように見えるので、化学者を魅了している。5番目の水素が結合する明らかな場所はないので、生じているのは、音楽が終わらない椅子取りゲームの参加者のように、5つの水素すべてがぐるぐる動き回っていることである。それでいて、その分子は、より緊密な何か秩序らしきものを示唆する振動スペクトルをもっている。Asvanyたちはこのたび、2つの低い温度(10および4 K)で高分解能の振動スペクトルを測定した(Okaの展望記事参照)。彼らの付随した分析は、ピークを割り当て、そしてその分子の動的構造の理解を高める点で進歩となる。(KF,KU,kh,nk)
Experimental ground-state combination differences of CH5+ (Science, this issue p. 1346; see also p. 1313)
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