AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science October 24 2014, Vol.346


新たな隣人との調整を行う(Making adjustments for a new neighborhood)

生物種間の競争によって、多様性の獲得が促進される。Stuartたちは、アノールと呼ばれるトカゲの一種を、自然実験を行うための島に持ち込んだ。それに対応して、在来種のトカゲは、この自分たちより大きな侵入者にとって不利な、木々のより高い場所に適応した。およそ3年(つまり20世代)のうちに、その変化は、在来種のトカゲに、足の指のふくらみの増大をはじめとする遺伝性の形態変化をもたらした。(Sk,ok)
Rapid evolution of a native species following invasion by a congener (Science, this issue p. 463)

T細胞受容体シグナルのデジタル的増幅(Digital amplification of T cell receptor signals)

キナーゼ PKD2は、ペプチド抗原が T細胞受容体(TCR)に結合し、それらを刺激する際に、免疫系のT細胞中で活性化される。Navarroたちは、ペプチド抗原の濃度が低い場合には、PKD2を活性化するT細胞の割合も低いことを見出した。ペプチド抗原の量の増加に応答して、T細胞のより大きな割合が最大のPKD2活性化を示した。このように、PKD2はTCRシグナルのデジタル的増幅器として作用し、そこでは T細胞は刺激の強さに見合った免疫応答を行っている。(KU,nk)
Protein kinase D2 is a digital amplifier of T cell receptor?stimulated diacylglycerol signaling in naive CD8+ T cells (Sci. Signal. 7, ra99 (2014))

更新世の高地居住者(Mountain dwellers of the Pleistocene)

人類は,少なくとも1万1千5百年前に,過酷な高地アンデスに入植した.Rademakerたちは,ペルーのほぼ4500mの高さの野外遺跡2箇所で,狩猟採集民の居住の証拠を発掘した.これらの2つの遺跡には,槍先や掻器(ヘラ)のような石器を含む750を超える遺物が埋まっていた.その付近の岩陰住居では,天井には煤がつき,床には有機物が堆積していて,野営地として使われていた可能性がある.これらの遺跡は,ビクーニャや,高地に棲息する他の獲物動物を捕獲するため,季節的に使用されていたのだろう.(MY,bb)
Paleoindian settlement of the high-altitude Peruvian Andes (Science, this issue p. 466)

インフルエンザは侵入の際に損傷したタンパク質を模倣する(Flu mimics damaged proteins during entry)

ウイルスは巧みなやり手(繰り手)である。インフルエンザウイルスが細胞にどのようにして侵入するかという初期ステージは、非常によく理解されているが、しかし Banerjeeたちはウイルスの新しく見つかった技に関して記述している(Rajsbaum and Garcia-Sastreによる展望記事参照)。ウイルスはユビキチン(分解のためにタンパク質をマーキングに関係する分子)を自分に付けて細胞内に持ち込んでいるようだ。このウイルスは、次に損傷したタンパク質を認識し、処理に関与する宿主細胞の機構を利用して、自分自身のRNAゲノムの被膜を脱がさせ、感染の成功に向けて進み続ける。(KU,ok,nk)
Influenza A virus uses the aggresome processing machinery for host cell entry (Science, this issue p. 473; see also p. 427)

グラフェンの谷を利用する(Making use of graphene's valleys)

グラフェンの電子構造には2つの特徴的な谷が存在することが知られており、谷の中に存在する電子は同じエネルギーを示すという。これら2つの谷に非対称性を与えると、グラフェンはValley Hall Effect (VHE)を示すことが理論的に予想されている。この効果において、グラフェンに沿って電流を流すと、2つの谷から流れる電子は反対方向に向かって進むと考えられている。Gorbachevらは、六方晶窒化ボロン上にグラフェンを配置することでその非対称性を実現した(LundebergとFolkの展望記事参照)。筆者らはその輸送特性を調べ、VHE理論予測と一致することを明らかにしている。今後グラフェンの谷を情報処理に活用することが期待される(NK,KU)
Detecting topological currents in graphene superlattices (Science, this issue p. 448; see also p. 422)

太陽電池の出力と安定性を両立する(Layering on solar cell power and stability)

炭素系ポリマーからなる太陽電池は、役にたつ方法で可撓性を有している。しかしながら、太陽光のエネルギーを電力に変換する際の太陽電池の安定性と効率との間には、もどかしいトレードオフの関係が存在していた。Pageたちは、陽極(回路の正極)ともう一方の極との間に極性有機化合物(フラーレン誘導体)の層を挿入することによって、このジレンマを部分的に解決する技術を提案している。アルミニュームは高効率な陽極物質であるが、酸化作用により劣化しやすい。この容易に適用可能な極性層によって、変換効率の減少傾向を抑制すると同時に、銀や銅等の更に安定的な金属を陽極に利用することが可能となる。(Uc,KU,ok,nk)
Fulleropyrrolidine interlayers: Tailoring electrodes to raise organic solar cell efficiency (Science, this issue p. 441)

α-ヘリックスのコイルドコイルを用いて構築する(Building with alphahelical coiled coils)

タンパク質がはっきり決まった三次元構造にどのようにして折り畳まれるかを理解することは、長年の課題であった。タンパク質の折り畳み機構の理解が深くなればなるほど、既存のタンパク質の折り畳みを模倣した新しいタンパク質を設計する際の成功率は向上する。このことは、自然界では見られない構造を有するタンパク質のカスタム設計の可能性を高める。Thomsonらはチャネルを含むα-へリックスバレルの設計について述べ、Huangらは超安定なヘリックス束を設計した。両方のグループは理論的かつコンピュータ計算による設計を用いて、α-ヘリックスコイルドコイルに基づく新しいタンパク質構造を作り上げたが、しかし異なる設計ルートををたどると、異なるターゲット構造に到達した。(hk,KU,ok,nk)
Computational design of water-soluble α-helical barrels (Science, this issue p. 485)
High thermodynamic stability of parametrically designed helical bundles (Science, this issue p. 481)

TOPKに関する抗癌剤が出現(Anticancer drug coming out on TOPK)

TOPKタンパク質は、広範囲のヒト癌で見出されており、腫瘍の増殖を促進すると信じられている。Matsuoたちは、TOPK抑制し、複数の経路で送達可能な薬剤を開発した。マウスでは、この薬剤の経口型は十分に受け入れられており、簡便な、かつ有効な処置であった。静脈内型はさらに効果的で、そして血液学的副作用のない、かつ腫瘍の完全な消滅を促進する、リポソーム処方として重要である。この阻害剤はクリニックで使用される前にヒトでの試行が必要ではあるが、この薬はいずれ実施可能な抗癌剤となるであろう。(KU)
TOPK inhibitor induces complete tumor regression in xenograft models of human cancer through inhibition of cytokinesis (Sci. Transl. Med. 6, 259ra145 (2014))

細菌が有機ハロゲン化物を分解する方法(How bacteria break down organohalides)

嫌気性菌は一連の有機ハロゲン化物の汚染物質を分解する。それを行うために、これらの菌は異常な還元性の脱ハロゲン酵素を用い、これにより分子からハロゲンイオンを取り除いて、汚染物質をより毒性の少ないものにしている。Bommerたちは、細菌の Sulfurospirillum multivorans由来のこのような酵素の一つの X-線結晶構造に関して記述している(Edwardsによる展望記事参照)。基質の結合部位近傍に存在する、ビタミンB12は二つの鉄-イオウクラスターと協力して、トリクロロエチレンの還元を触媒する。その構造は、他の汚染物質を認識するためにどのように酵素を遺伝子操作するかのメカニズム的手掛かりを与えるものである。(KU)
Structural basis for organohalide respiration (Science, this issue p. 455; see also p. 424)

細菌を研究するための実験プラットフォーム(Experimental platforms for probing bacteria)

細菌は、その環境から提示されるたくさんの変化の指標に対して応答している。HolとDekkerは、マイクロ(微小)流体装置やナノ加工装置が、どのようにして、多様な環境における様々な刺激信号を伝達できるかをレビューしている。このやり方によって研究可能な問題の中には、細菌によるクオラムセンシングと電子伝達とがある。(KF,ok,nk)
【訳注】
・クオラムセンシング:一部の真正細菌に見られる、自分と同種の菌の生息密度を感知して、それに応じて物質の産生をコントロールする機構のこと(Wikipediaによる)
Zooming in to see the bigger picture: Microfluidic and nanofabrication tools to study bacteria (Science, this issue 10.1126/science.1251821)

単一分子から胚までを生き生きした色彩で(From single molecules to embryos in living color)

アニメーションは生命の有り様を示すことができ、生きている検体中で起きている動的な生物学的過程を3次元(3D)画像で示すことは、生命を理解するために必須である。しかしながら、生体内でのイメージング、とりわけ3Dによるそれは、解像度や速度と光毒性についての避けられないトレードオフにさらされている。Chenたちは、こうした問題に対処できる顕微鏡を記述している。彼らは、2D光学格子として知られる非回折性ビームの1つのクラスを用いたが、これは励起エネルギーを視野全体の場に伝播する一方で、焦点を外れた励起を除去するものである。格子光シートはイメージ情報獲得の速度を向上させ、光毒性を減少させるので、調べることのできる生物学的問題の範囲は拡大することになる。著者たちは、単一分子の結合動態学から、細胞遊走や細胞分裂、免疫学、胚発生に至る、異なる20種もの生命系を用いて、自分たちのアプローチのその力を例示している。(KF)
Lattice light-sheet microscopy: Imaging molecules to embryos at high spatiotemporal resolution (Science, this issue 10.1126/science.1257998)

ゲノムのコピー後に止めるやり方(How to stop after copying the genome)

複製は高度に制御されている。ゲノムの一部なりともコピーに失敗すること、あるいは同じ部分を何度もコピーしてしまうことは、悲惨な結果をもたらすゲノム不安定性の原因となる。MaricたちとPriego Morenoたちは、複製プロセスの際にDNAを安定的に取り囲んでいるDNA複製機構が、複製が完了するや、能動的に解体されることを示している(Bellによる展望記事参照)。DNAを取り囲むタンパク質の環は共有結合的に修飾されていて、これにより環が開放され、特殊な解体複合体によって複製複合体全体がDNAから除去されることを可能にしているのである。(KF)
Cdc48 and a ubiquitin ligase drive disassembly of the CMG helicase at the end of DNA replication (Science, this issue 10.1126/science.1253596, p. 477; see also p. 418)

どのようにして二酸化バナジウムは金属になるか(How to make vanadium dioxide metallic)

二酸化バナジウム材料(VO2)は、約70℃で半導体状態から金属に切り替わる。その切り替わりは非常に急速に生じるので、電子デバイスに使えるかも知れないほどである。しかし、その切り替わりが、主に電子間の相互作用の増大によるものなのか、結晶構造の変化によるものなのかは明らかになっていない。Morrisonたちは、半導体状態にある VO2の試料にレーザー光を照射した。彼らは、電子回折を用いて材料の結晶構造の変化を観察し、それと同時に光学特性を測定することにより電子状態を観察した。ある特定のレーザー出力において、VO2は初期の結晶構造を保存しているにもかかわらず、長時間持続する金属状態に切り替わった。(Sk,nk)
A photoinduced metal-like phase of monoclinic VO2 revealed by ultrafast electron diffraction (Science, this issue p. 445)

鏡像異性を維持してC-H結合を切る(Ensuring handedness when breaking C-H bonds)

有機化合物の多くはキラリティーを有している.キラル化合物は,明瞭な鏡像関係にある2つの変異体である鏡像異性体を生じる.速度論的光学分割により,鏡像異性体の一方を所望の生成物に変換し,もう片方はそのままにしておくことが可能である。Chuたちはこの方法を,芳香族性炭素と水素の結合を芳香族性炭素とヨウ素の結合に交換する反応へ応用した.彼らは,種々のベンジルアミン誘導体の2つの鏡像異性体のうち,片方とだけに選択的に反応するキラルなパラジウム触媒を用いた.医薬品化学の分野では,そのような一方だけの鏡像異性体の選択合成は,タンパク質のようなキラルな生体分子との相互作用を調査する上で必須である.(MY,nk)
【訳注】 ・速度論的光学分割:鏡像異性体のそれぞれに対する反応速度の違いを利用して,反応性の低い鏡像異性体だけを未反応のままで残す方法
Room-temperature enantioselective C?H iodination via kinetic resolution (Science, this issue p. 451)

作業記憶の働き手を同定する(Identifying the workhorse of working memory)

作業記憶により、我々は、行動にとって重要な情報を心の中に短時間保持しておくことが可能となる。Liuたちは、マウスを訓練して、匂いを、それが除かれた後も、短期間覚えているようにした。この期間の間に、マウスの内側前頭前皮質中での神経細胞活性を操作すると、その後に嗅いだものが同じ匂いか別の匂いかに応じて、何をすべきかの課題を学習する際のマウスの学習成績が妨害されることになった。だが、マウスがこの課題について一たびよく訓練されると、同じ操作を施しても、成績に影響はなかった。(KF,nk)
Medial prefrontal activity during delay period contributes to learning of a working memory task (Science, this issue p. 458)

コミュニティーの協力による性決定(Sex determination driven by community cooperation)

性的繁殖集団における雄と雌の最適な比率は、変化しつつある世界に生きる種にとって有益な、遺伝的多様性を産み出す助けとなる。Tanakaたちは、個体のアイデンティティーだけでなく、個々の植物間のシグナル伝達によっても、性比を調整するシダを研究した(Sunによる展望記事参照)。早生の個体のシダは、植物ホルモン、ジベレリンの前駆物質を作るのに必要な生合成遺伝子のいくつかを発現し、それを環境中に分泌する。より若いシダは、ジベレリン合成を終わらせるのに必要な酵素を発現させるが、そのシグナルを取り上げて、それに応答し、雄性配偶子を産生する器官を発生させるのである。(KF)
Antheridiogen determines sex in ferns via a spatiotemporally split gibberellin synthesis pathway (Science, this issue p. 469; see also p. 423)

漁業による海洋生物への脅威に取り組む(Addressing fishing threats to ocean wildlife)

海洋生態系は圧迫を受けている。Vincentと Harrisは、展望記事のなかで、違法で、規制も受けなければ報告もされていない漁業が引き起こす特別の問題に注意を喚起した。世界中の沿岸領域では、数百万の人が規制も報告もなく漁業を行っている。これには、潮間帯域や浅海域にて海洋生物を採集する多くの女性たちも含まれる。深海の生息域、および、生物種もまた、底引き網による脅威にさらされている。この底引き網は、目的とする海洋種に対しては合法的な漁であるが、これと共にずっと多くの他の海洋生物をも捕獲する。海洋保護地域や共同管理、あるいは他の政策措置は、これら海洋生物の苦難の軽減に有用であろう。(Wt,ok,nk)
Boundless no more (Science, this issue p. 420)

恐竜の色覚と羽毛の進化(Dinosaur color vision and the evolution of feathers)

初期の恐竜類で進化した最初の羽毛は,単純な毛類似の構造を持ち,恐らく,体の保温に役立ったものと思われる.この単純な原始の羽毛がどのようにして,現在の鳥類に見られるようなはるかに複雑な羽毛へと進化したのであろうか? Koschowitzたちは,展望記事で,恐竜の色覚が羽毛の進化に重要な役割を果たしたことを議論している.恐竜の色覚は,鳥と同様,ヒトの色覚よりもはるかに優れていたらしい.複雑な羽毛への進化により,例えば,性選択の際,色によるシグナル伝達が可能となったのであろう.(MY,nk)
Beyond the rainbow (Science, this issue p. 416)
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