AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science June 20 2014, Vol.344


マイクロラティスはすばらしい材料を作る(Microlattices make marvelous materials)

構造体、あいるは、格子構造は非常に低密度であるにもかかわらず、著しく高強度のものとなりうる。Zheng たちは、投射マイクロ光造形法という非常に精密な技術を用いて、高分子や金属、セラミックスからなる8つのユニット一組のマイクロラティスを作成した。そのラティス構造の設計は、その材料を構成する個々の支柱が、圧力下で屈曲しない様に意図された。それゆえ、その材料は、並外れて、剛直、強靭、かつ、軽量であった。(Wt,KU,ok)
Ultralight, ultrastiff mechanical metamaterials (Science, this issue p. 1373)

更新世スペインから発掘されたネアンデルタール人の祖先(Neandertal ancestors from Pleistocene Spain)

スペイン北部アタプエルカ(Atapuerca)のシマ・デ・ロス・ウエソス(Sima de los Huesos)遺跡は,古人類化石を多く含む遺跡である。今回,さらに,この遺跡で,数十万年前のヨーロッパにおける人類進化に新たな光を当てる頭蓋化石が発掘された。Arsuagaたちは,7つの新化石資料と,今までより完全な6つの化石資料を含む,17の頭蓋化石を研究した(Hublinによる展望記事参照)。これらの化石資料により,アタプエルカの人類の脳頭蓋や顔面、及び歯の特徴が明らかになり,これらの人類がいつ,どのように,ネアンデルタール人に進化していったかを詳しく解明することができる。(MY,bb)
Neandertal roots: Cranial and chronological evidence from Sima de los Huesos (Science, this issue p. 1358; see also p. 1338)

カラスは友を呼ぶ(Crows of a feather flock together)

近縁関係にあり生息域が重なっている種は,通常は,遺伝的非寛容性を進化させ,異種交配を防いでいる。Poelstraたちは,2種の中央ヨーロッパカラス,灰色のズキンガラス(hooded crow)と黒色のハシボソカラス(carrion crow)の遺伝子配列を決定した(Knijffによる展望記事参照)。この2つの種の間で,ゲノムのほとんどは,共通の遺伝子から成り立っていたが,羽毛の色と色覚に影響する1つの領域は異なっていた。筆者たちは,黒色および灰色のカラスは,自身と同じ色のカラスと交配するほうを好むと示唆している。(MY,nk)
The genomic landscape underlying phenotypic integrity in the face of gene flow in crows (Science, this issue p. 1410; see also p. 1345)

ノイズの多い遺伝子がHIVを潜伏先から追い出す(Noisy genes flush HIV out of hiding)

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は体内に潜伏することが可能で,そのため,薬で死滅させることを難しくさせている。ウイルスの遺伝子発現における変異,或いは"ノイズ"の増大させることは、潜伏中の HIVを再活性化させる効果的な戦略であることが判明している。ウイルスは,ひとたび再覚醒されると,抗ウイルス薬に対する感受性がさらに高まる。Darたちは,HIVの遺伝子発現の変異を増大させる薬剤をスクリーニングした。HIVに感染したヒト細胞モデル系で,ノイズ増進剤は潜伏中のHIVを再活性させる既存の化合物と一緒になって機能し,ウイルスの根絶を促進した。(MY,KU,ok)
Mapping the Origins and Expansion of the Indo-European Language Family (Science, this issue p. 1392)

量子情報を創り、消去する(Creating and erasing quantum knowledge)

量子力学において、粒子は波の性質も併せ持つと考えられている。研究においては、粒子と波の二面性を実証するために主に光子を用いるが、相互作用性を有する電子を用いた方が良いかもしれない。Weiszらは電子を用いて量子消しゴムを実現している(Feldmanの展望記事参照)。電子の相互作用を利用して、最初に電子の軌道に関する情報を得たが、この過程において電子の波動性が破壊される。次に、軌道に関する情報を故意に消去して、電子の波動性を回復させることにも成功している。(NK,KU,ok)
An electronic quantum eraser (Science, this issue p. 1363; see also p. 1344)

プラズモンの発生を制御する(A controlled launch for plasmons)

ナノフォトニクス装置を作成するために、技術者は大きな光学素子と小さなナノエレクトロニクスを結合しなければならない。金属表面における電子の集団的光励起現象であるプラズモンにより、そのような寸法的な差異を埋めることができる。Alonso-Gonzalezたちは、グラフェン表面に構造化した金のアンテナを設けることにより、グラフェン中にプラズモン励起を発生させ、伝播させた。アンテナを慎重に設計することにより、研究者たちはプラズモンの波面を操作し、伝播方向を制御することができた。この取り組みは、ナノフォトニクス開発における幅広い取り組みにつながるものである。(Sk)
Controlling graphene plasmons with resonant metal antennas and spatial conductivity patterns (Science, this issue p. 1369)

上皮性関門を突破する(Breaking through the epithelial barrier)

ボツリヌス神経毒 (BoNT)は、腸の上皮性関門を越えると、宿主を毒殺する。この障壁を越えるのを助けるために、その毒素は赤血球凝集素 (HAs)という3っの細菌タンパク質と大きな複合体を形成する。この複合体が、E-カドヘリンという細胞接着タンパク質に結合すると何が起こるのかを調べるために、Leeたちは結合した複合体とタンパク質を結晶化した。毒素の結合は、E-カドヘリンが上皮性関門を維持している方法を破壊した。毒素複合体がE-カドヘリンへ結合するのを研究者たちが妨げると、マウスは毒素の死の影響から守られた。(KU)
Molecular basis for disruption of E-cadherin adhesion by botulinum neurotoxin A complex (Science, this issue p. 1405)

硬い環境における細胞増殖(Cell proliferation in hard environments)

組織や器官において細胞を囲んでいる細胞外基質は、より硬くなったり、より柔らかくなったりする。損傷した血管において、細胞外基質は損傷部位の周辺でより固くなる。血管を囲んでいる平滑筋細胞は、その後増殖して損傷を修復する。Baeたちは、固い表面が、酵素Racを含むシグナル伝達経路により細胞増殖を刺激することを見出した。平滑筋細胞においてRacを欠いたマウスは、損傷した血管を効率的に修復することができなかった。(KU)
A FAK-Cas-Rac-Lamellipodin Signaling Module Transduces Extracellular Matrix Stiffness into Mechanosensitive Cell Cycling (Sci. Signal. 7, ra57 (2014))

意外な犯人が脳を攻撃する(A surprising culprit attacks the brain)

多発性硬化症 (MS)-様病を持つたマウスの脳の悪化は、インターロイキン17 (IL-17)というシグナル分子にによってさらに進行する。このことは MS患者にとってこのサイトカインを標的にする薬剤を用いて処置出来ればという希望を抱かせるものである。しかしながら、予想外のことであるが、Nosterたちは、ヒトにおいてこの犯人が別のサイトカインであるGM-CSFという、多くの自己免疫疾患において炎症を促進する低分子であることを見出している。更に、ヒト患者において、IL-17は GM-CSFの産生を阻害し、マウスにおけるその影響と比べて大きく異なる。これらのデータは、MS患者ににおける治療法、即ち GM-CSFを減らすという方法に新たな理論的根拠を示唆している。(KU,nk)
IL-17 and GM-CSF Expression Are Antagonistically Regulated by Human T Helper Cells (Sci. Transl. Med. 6, 241ra80 (2014))

ナノ粒子の格子と表面(Nanoparticle lattices and surfaces)

コロイド半導体ナノ粒子の表面や集合体の細部の解明への取り組みは、いろいろな特性評価法を用いることにより打開できるかもしれない(Boles と Talapin による展望記事参照)。Boneschanscherたちは、結晶面の接合により形成したセレン化鉛ナノ結晶のハニカム状超格子を、高分解能電子顕微鏡や断層撮影装置等のいろいろな方法を用いて調べた。その構造は、くびれ(ナノ結晶間の接点が拡大したもの)により歪を生じたナノ結晶でできた八面体対称構造を有していた。Zherebetskyyたちは理論計算と分光的方法を組み合わせて、水中で合成された硫化鉛ナノ結晶の表層を調べた。ナノ結晶をキャッピングしたオレイン酸基に加え、ヒドロキシル基も存在していた。(Sk)
Long-range orientation and atomic attachment of nanocrystals in 2D honeycomb superlattices (Science, this issue p. 1377; see also p. 1340)
Hydroxylation of the surface of PbS nanocrystals passivated with oleic acid (Science, this issue p. 1380; see also p. 1340)

心を読むことの学習は早期に始まっている(Learning to read minds starts early)

親たちにとっては、子供たちが意外な多面的な能力を持って生まれくることは思い出すまでもない。しかし、子供たちは、まだまだ長時間に渡る指導や指示を必要とする。HeyesとFrithは、特殊な社会的認知スキルの一つ、他人の心を読むこと(あるいは、少なくても他の人が何を考え、どう感じているかに思いを巡らすこと)に関してレビューしている。「読心術」に関するいまだ洗練されてない能力は幼児期に存在し、しかし成人において見られる成熟しきった能力を発揮するには、教えが必要である。著者たちは、読書を学ぶことと、読心術を学ぶことを比較、対比した。(KU.ok,nk)
The cultural evolution of mind readin (Science, this issue p. 10.1126/science.1243091)

磁壁のジャンピングを観察する(Observing jumping domain walls)

強磁性体中で逆の磁化領域を隔てる磁壁は強いダイナミクスを有しており、小さなサンプル中では特性評価が困難である。Tetienneたちは、細い強磁性体のワイヤー磁化を可視化し、ワイヤーに沿った異なる位置間の磁壁のジャンピングを観察した。彼らは、ダイアモンドの欠陥に基づく走査磁気力顕微鏡を用いた。顕微鏡の操作に必要なレーザー光はまた、局所加熱を生じさせることにより磁壁の動きを制御することを可能にした。それにより、照射位置が磁壁を含む可能性が高くなった。(Sk)
Nanoscale imaging and control of domain-wall hopping with a nitrogen-vacancy center microscope (Science, this issue p. 1366)

酵母のメタカスパーゼ:怖ろしい死神か、救済者か?(Yeast metacaspase: Grim Reaper or savior?)

酵母のメタカスパーゼは、より高次の生物において、プログラムされた細胞死であるアポトーシスを実行するカスパーゼの構造的相同体であり、おそらく機能的な相同体でもある。Malmgren Hillたちは、酵母のメタカスパーゼ Mca1が、酵母の複製的加齢(母細胞が生涯にわたって生み出す娘細胞の数を複製的寿命といい、その複製寿命の加齢)の際に、処刑者となるのか、それとも利益をもたらすタンパク質として振舞うのかを検証した (Kampingaによる展望記事参照)。メタカスパーゼのレベルを高めると、寿命をかなりの程度、確実に伸ばすことになった。この寿命の伸長は、Mca1のカスパーゼ活性に部分的にしか依存していなかったが、タンパク質脱凝集因子である Hsp104の存在を必要としていた。タンパク質恒常性における役割と矛盾することなく、Mca1は、加齢の際に、シャペロンの豊富な凝集物に補充された。Mca1は、酵母の細胞質分裂の際に凝集体の非対称性を増加させ、加齢に関わる包含物の蓄積に対抗していたのである。(KF,KU,nk)
【訳注】
・メタカスパーゼ:細胞にアポトーシスを起こさせるシグナル伝達経路を構成する、一群のシステインプロテアーゼのこと。
・シャペロン:タンパク質の折り畳みや複合体形成に関与するたんぱく質。熱ショックタンパク質 Hsp(heat shock protein)はその代表で、生理的温度より5〜10度高い温度に曝されると合成されるストレスタンパク質の一つで、ストレスにより、タンパク質が変性し凝集するとこの熱ショックタンパク質がこの凝集物を取り除き細胞死を抑える。
Life-span extension by a metacaspase in the yeast Saccharomyces cerevisiae (Science, this issue p. 1389; see also p. 1341)

単細胞の分解能でみる癌(Cancer at single-cell resolution)

単細胞の配列決定は、脳癌の遺伝的特性を解明し、腫瘍内の不均一性を明らかにすることができる。Patelたちは、脳神経膠芽腫から単離された単細胞のゲノム配列を検討した。その知見は、共有された染色体変化とシグナル伝達に関連する遺伝子を含む広範な転写変異をも明らかにしたが、これらは潜在的な治療標的である。著者たちは、腫瘍細胞における変異が神経発生を反映していること、また癌細胞中のそうした変異が臨床的意義をもつであろうと示唆している。(KF,KU)
Single-cell RNA-seq highlights intratumoral heterogeneity in primary glioblastoma (Science, this issue p. 1396)

サルにも感染するためのHIV-1の順応(Adapting HIV-1 to infect monkeys, too)

ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)は、ヒトではうまく複製されるが、サルやマウスではそうではない。良い点は、これによって異種間伝染のリスクが減少することであるが、これによって、HIV-1とエイズの研究がより難しくなっている。Hatziioannouたちは、マカクザルにおいて HIV-1を連続的に代を重ねさせることによって、このハードルを乗り越えた。時が経つにつれ、HIV-1はそのサルへの順応を可能にする変異を獲得した。急性感染症の際に CD8+ T細胞を枯渇させると、第4世代目で、サルの一部はエイズ様の病気を発生した。HIV-1エンベロープタンパク質の遺伝子選択とHIV-1タンパク質 Vpu中の変異の獲得(これにより、マカクのタンパク質 tetherinによる HIV-1の宿主制約に打ち勝つことが可能になる)とが、ウイルスのサルへの順応に伴っていた。(KF,KU)
HIV-1-induced AIDS in monkeys (Science, this issue p. 1401)

細胞運命の制御は、計算によるゲームか(Cell fate control---a numbers game)

哺乳類の成体組織の前駆細胞は、非常に低い率で分化する。たとえば、一年あたり、脂肪細胞の10%だけが置換される。すべての前駆細胞が、同じ刺激閾値に応答するのであれば、こうした低い率は可能なはずがない。系におけるノイズ(細胞によって、鍵となるタンパク質の量に違いがあること)によって、少数の細胞だけが分化をすることになるが、しかしそうしたノイズは、脱分化をも可能にするはずであるが、それは観察されてはいない。Ahrendsたちは、単細胞における計算モデルとタンパク質測定を用いて、調節性回路における複数のフィードバックループが、ノイズと一緒になって、安定と稀に生じる分化との双方を可能にしていることを明らかにした。(KF)
Controlling low rates of cell differentiation through noise and ultrahigh feedback (Science, this issue p. 1384)
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