AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science September 27 2013, Vol.341


過食回路(The Overeating Connection)

肥満は健康に対する世界的な主要問題となってきた。マウスの研究から,Jenningsたちは(p. 1517),視床下部外側野内に食物摂取を調節する重要な脳の回路があることを確認した。この発見は,エネルギーの必要性が満たされている状態でも,美味の食べ物を摂取しようとする神経結合が存在していることを示している。この回路を働かなくすると,摂食が抑制された。(MY,nk)
The Inhibitory Circuit Architecture of the Lateral Hypothalamus Orchestrates Feeding

地球の磁気圏尾部を観る(Observing Earth's Magnetotail)

磁力線再結合は、磁気エネルギーを運動エネルギー、熱エネルギー、粒子加速に変換するプロセスである。このプロセスは地球磁気圏尾部、すなわち地球磁気圏から太陽と反対方向へ細長く伸びる磁気圏領域で発生し、オーロラやその他の宇宙物理現象を引き起こしていると考えられている。Angelopoulosらは (p. 1478)、地磁気サブストーム(geomagnetic substorm)の際の磁気圏尾部におけるエネルギー変換およびそれに付随する磁束輸送の観測的研究について報告している。(NK,KU,nk)
Electromagnetic Energy Conversion at Reconnection Fronts

形状記憶セラミックス(Shape Memory Ceramics)

形状記憶材料は、熱を変形(歪)へ変換したり、あるいはその逆を行う。これらの材料は、しばしば金属合金から作られ、小さな形状変化で大きな応力を発生する。セラミックスは、形状記憶変態を生じさせる幾つかの特性を持っているが、通常は変形させるとクラックが生じる。Laiたち (p.1505:Faberによる展望参照)は、結晶粒子をわずかに添加してセラミック構造を変化させたが、これにより形状記憶金属に匹敵する繰り返しの変形に耐えることができる。(hk,KU,ok,kj,nk)
Shape Memory and Superelastic Ceramics at Small Scales

日周性の免疫学(Diurnal Immunology)

体内のほとんどの器官系と同様に、免疫系の幾つかの成分は日周性の様式によって調節されているらしい。しかし、その影響される細胞集団やこれらのプロセスを制御する分子機構、およびこうした調節の機能的な結果は十分に理解されていない。Nguyenたち(p. 1483, 8月22日号電子版; DruzdとScheiermannによる展望記事参照)は、炎症部位への単球(monocytes)の輸送がマウスの日周性の様式で制御されていることを発見した。生物時計を調節するタンパク質 BMAL1における骨髄系細胞特有の欠損を抱えたマウスは、急性炎症と慢性炎症の双方への応答において適応性が低いことをを示した。(TO,KU)
Circadian Gene Bmal1 Regulates Diurnal Oscillations of Ly6Chi Inflammatory Monocytes

半分が質量ゼロ(Half-Massless)

トポロジカル結晶絶縁体(TCIs)のようなある種の物質には、質量ゼロのキャリアを伴うディラック(グラフェン様の)分散関係を示す、頑健な表面状態が存在する。そのような物質中で保護された対称性の破れが生じると、キャリアが質量を獲得することになるであろう。Okadaたちは(p. 1496, 8月29日号電子版)、走査型トンネル顕微鏡を用いて、TCIである Pb1-xSnxSeの電子準位エネルギーを、外部磁場の強度の関数として詳細にマップ化した。質量ゼロのディラックフェルミオンが質量のあるフェルミオンと共存しており、それはおそらく結晶構造の歪が2つある鏡像対称性のうちの一方だけに影響した結果であろう。(Sk,kj,nk)
Observation of Dirac Node Formation and Mass Acquisition in a Topological Crystalline Insulator

結晶粒を作る(Making the Grain)

ほとんどの金属は、無秩序な粒界により隔てられた多数の規則正しい結晶領域を含んでいる。もし物質が高温でアニールされると、大きな結晶粒が小さな結晶粒を取り込んで一様な領域が広がるように成長する。このプロセスは時間とともに遅くなるため、非常に大きな結晶粒を作るのは困難になる。物質に対して、引き伸ばし処理に伴う試料の歪みを伴うような複雑なアニール処理を行うと、結晶領域のいくつかが他の部分よりも速く、大きく成長するような異常な結晶粒の成長が生じることがある。Omoriたちは(p. 1500; Taleff と Pedrazas による展望記事参照)、もっと簡単で短時間のアニール処理により銅系の形状記憶合金において、この異常な結晶粒の成長を引き起こすことができることを見出した。高温単相領域と低温二相領域間の温度サイクルは、低温での転位と加熱時の結晶粒成長を生じさせる。この方法は外部から試料に張力を与える必要がないため、薄いシートやワイヤーに限定されることがない。(Sk,nk)
Abnormal Grain Growth Induced by Cyclic Heat Treatment

無意味な森の断片域(Futile Forest Fragments)

この地球上の生物多様性の殆どは熱帯森林で見られるが、この極めて重要な生息地の殆どは近年、農地によって周囲を囲まれた細分化された断片として存続している。広大な、もしくは切れ目なく連続している断片と比べると、より面積の小さい森林区画では、より少ない種しか維持することができない。しかしながら、森林区画から将来消滅する種の数、そして種が喪失する速度に関しては、未だ殆ど理解できていない状態である。Gibsonたちは (p, 1508)、タイのChiew Larn Reservoirにある島々を調査し、小さい森林区画からの小型哺乳類の喪失の速度を観測した。16の森林区画から完全なる固有種集団の絶滅(12種に及ぶ1)が、分断化が起こってから25年後に観測された。このように、小さく断片化された森林では、哺乳類の生物多様性の維持には殆ど効果がない。その代わりとして、大きく広がった森林に焦点を当てて、そこでの種保存に努力すべきである。(Uc,KU,ok,kj,nk)
Near-Complete Extinction of Native Small Mammal Fauna 25 Years After Forest Fragmentation

抗生物質耐性の源(Sourcing Antibiotic Resistance)

家畜における抗生物質耐性が、ヒトの抗生物質耐性に対して、大きな一因になっている、と広く想定されている。Matherたちは、スコットランドで1990年から2004年にかけて家畜と患者から収集された、サルモネラ属の分離菌の何百ものゲノム配列を分析した(p. 1514, 9月12日号電子版; WoolhouseとWardの展望記事参照)。動物由来とヒト由来の感染源の相対的寄与が定量化され、耐性遺伝子の多様性の系統が細菌の系統とよく合った。その結果が示唆するのは、ヒトの感染のほとんどは、家畜からよりも他の人間からのものであって、人間の方が、抗生物質耐性の多様性をより多く保っているということだった。(KF,ok,kj)
Distinguishable Epidemics of Multidrug-Resistant Salmonella Typhimurium DT104 in Different Hosts

とうとう出ていった(Finally Out)

昨年夏時点では、宇宙探査機ボイジャー1号が太陽圏と星間空間との境界である、ヘリオポーズ(Heliopause)を最終的に越えていたかどうかは未確認であった。Gurnettたち(p. 1489, 9月12日号電子版)は、ボイジャー1号に搭載されたプラズマ波検出器の測定結果から、2012年10月〜11月と2013年4月〜5月の2つの期間において、ボイジャー1号が星間プラズマ中にいたという証拠を示している。ほぼ確かと考えられる解釈は、2012年7月〜8月に起こった一連の境界越え以降は一貫して星間プラズマ中にいたというものである。(TO,KU,nk)
In Situ Observations of Interstellar Plasma with Voyager 1

褐色矮星を査定する(Assessing Brown Dwarfs)

過去二年間に、数十個の非常に冷たい褐色矮星が見出された。300〜500K前後の温度の褐色矮星は、巨大ガス惑星の質量と同等の質量を有していると思われている。しかし、それらの距離が判らないため、質量の推定はできなかった。Dupuy と Kraus (p.1492, 9月5日付け電子版) は、Spitzer Space Telescope からのデータを用いて、非常に冷たい褐色矮星までの正確な距離を測定した。これにより、その矮星の光度や温度、質量を決定することができた。その結果によると、最も冷たい褐色矮星と太陽系外巨大ガス惑星との関連がより強まった。(Wt)
Distances, Luminosities, and Temperatures of the Coldest Known Substellar Objects

細胞同士の協調を維持する(Keeping Cells Cooperating)

多細胞生物は単細胞生物に比べて有利な点をいくつかもっている。しかし、進化するには、多細胞生物は宿存する課題を乗り越えていかなければならない。たとえば、構成要素である細胞同士が、資源をめぐって、お互いに、「偽って相手を打ち負かせたり」、張り合うのではなく協調していくことを確保するなど。 Dejosezたちは、誘発された多能性幹細胞におけるゲノム全体にわたるスクリーニングを行い、細胞の協調を促進する遺伝子を探索した(p. 1511, 9月12日号電子版)。その遺伝子をノックダウンすると競合的な行動が支配的になる、いくつかの遺伝子が同定された。それら遺伝子は、p53、トポイソメラーゼ 1と嗅覚受容体に中心をもつネットワークを形成していた。つまり、発生中の胚において、ある遺伝的機構が協調を促進している可能性があるわけだ。(KF,ok,kj)
Safeguards for Cell Cooperation in Mouse Embryogenesis Shown by Genome-Wide Cheater Screen

薬とドパミンと脱抑制(Drugs, Dopamine, and Disinhibition)

薬物はしばしば、脳におけるニューロン回路網を変化させ、それによって行動における持続的な変化をもたらすことがある。マウスにおいて、生体内および試験管内での広範囲な技法を用いて、Bocklischたちは、コカインがドパミンニューロン機能を大きく変化させること、またその薬物によって誘起された、特異的なニューロン集合におけるシナプス可塑性が、回路再構築の重要なステップであることをを観察した(p. 1521) 。(KF,nk)
Cocaine Disinhibits Dopamine Neurons by Potentiation of GABA Transmission in the Ventral Tegmental Area

チタンカーバイド電池に向けて(Toward Titanium Carbide Batteries)

電池やキャパシタの多くは,電荷の貯蔵や輸送の手段として,リチウムのインターカレーションを利用している。リチウム使用が一般的であるのは,エネルギー密度が最高となるばかりでなく,ホスト結晶の構造を保ったまま,より大きなカチオンを収納することが困難であることによる。Lukatskayaたちは(p.1500),MXからなる一連の化合物を開発した。ここで,Mは遷移金属を,Xは炭素か窒素を表す。これに属する化合物Ti3C2は二次元層状構造を形成し,自然にあるいは電気化学的に,多価カチオンを含む幅広いカチオンを収容することができる。(MY)
Cation Intercalation and High Volumetric Capacitance of Two-Dimensional Titanium Carbide
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