AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science September 13 2013, Vol.341


気候と人間の争い(Climate and Conflic)

学問分野間で相互作用が失われていると、多くの学問分野にまたがる興味ある問いを探索しようとする試みの邪魔になる可能性がある。Hsiangたちは(p. 1235367, 8月1日号電子版)、考古学と心理学ほどにもかけ離れた学問分野からのデータのメタ解析を行い、気候と人間の争いの間の関係を調べた。全体として、より暖かな気温、或いは極端な降雨は、個人間の暴力行為や内戦における変化と因果的には関係している。(Ut,KU,ok,nk,kj)
Quantifying the Influence of Climate on Human Conflict

カチ、カチ、カチ...(Tick, Tick, Tick...)

通信から走行指示(ナビゲーション)までの日々の生活の多くの側面が、原子時計が刻む精密な時間に依存している。この原子時計では、原子のマイクロ波領域の遷移によって時間が精密に刻まれている。可視光領域の遷移は、もっとずっと高い周波数で起きるが、そのため、その刻みの目盛りを一層細かくできる可能性がある。Hinkley たち (p. 1215, 8月22日号電子版; Margolis による展望記事を参照) は、二つの可視光領域の時計の刻みを比較し、10-18 レベル近傍の不安定性について報告している。このようなレベルの性能により、一般相対論のテストが改善されるであろう。また、秒の再定義の道を開くこととなろう。(Wt)
An Atomic Clock with 10?18 Instability

DNAとの固着(Sticking with DNA)

ナノ粒子から超格子を作る1つの方法は,格子組立て制御に利用可能な粘着性の末端を持ったDNAらせんをナノ粒子をコートすることである。この方法ではバイナリ(2元)格子を形成することができるが,今回,Macfarlaneたちは(p. 1222, 8月22日発行電子版),相対的なDNA結合の相互作用の強さを調整することで,前もって作られたバイナリ格子の中に第3のタイプのナノ粒子を所定の場所に入れることに成功した。(MY,KU,ok,nk)
Topotactic Interconversion of Nanoparticle Superlattices

触媒作用のあるパラシュート飛膜(Catalytic Parachute)

遷移金属錯体と同様の能力を持つ触媒として有機低分子が登場してきた。しかしながら,そのような有機触媒を産業に適用しようとする技術的な挑戦は,成功しなかった。今回,Leeたちは (p. 1225),紫外光化学反応により,さまざまな高性能有機触媒をナイロン布に固定化することに成功した。これにより,有機触媒を容易に単離し,また,再使用できるようになった。(MY,KU,ok)
Organotextile Catalysis

ゆっくりしたスティック・スリップ(Slow Stick-Slip)

緩慢な地震の特徴は、これまでも推定されてきたが、辷り時間変化の正確な記録その根底にあるメカニズムは曖昧なままであった。KaprothとMarone (p. 1229; 8月15日号電子版)は、断層帯の材質を用いて、ゆっくりした辷りと固着が繰り返し起こるスティック・スリップ現象のラボ観察を行ない、そして地震に似た動的な辷りの核形成がどのようにして始まり、そして次に抑止されて、緩慢な辷りをつくることになるのかに関する力学的説明を展開した。地震前の辷りは破断への前兆であるので、弾性波の速度における時間的な変化は高い地震の危険のある地域でモニターされるべきである。(KU,ok,nk,kj)
Slow Earthquakes, Preseismic Velocity Changes, and the Origin of Slow Frictional Stick-Slip

関節の作用(Joint Action)

多くの小さな昆虫は感動を与えるようなジャンパーであるが、 大きな跳躍と小さな体は生体力学的な課題を提起する。BurrowsとSutton (p. 1254)は、幼虫のウンカ Issusがその後脚の転節(脚の第2関節)に連動ギアを持っており、そのギアが前方にジャンプを行う前に二本の脚を一緒にしてそり気味に協調して作用することを示している。幼虫から成虫への最後の脱皮の時期に、その連動ギアは高性能の摩擦に基づいたメカニズムへと変わるが、その理由は、成長によりギアを壊す危険が高くなり、そして脱皮の際にギアを修復するという選択肢が無くなり、更に、この成虫はより大きく、より強くなるからである。(KU)
Interacting Gears Synchronize Propulsive Leg Movements in a Jumping Insect

局所での先行的進行(Local Speeding)

気候変動に対する種の初期段階の応答から,極方向(あるいは,陸地の高さ方向や海洋の深さ方向)に進行する全体的な応答が予測されるものと思われていた。Pinskyたちは(p. 1239),気候変動の特性に対して,気温の変化よりさらに相関性の高いもう一つ別の仮説を評価している。350を越える海洋分類群に対して,ほぼ50年間にわたってなされた海洋調査データを用い,変化パターンに対しては,個々の種の特徴や生活史よりも気候速度(climate velocity)が,よりよい予測判断材料であることを見出した。この知見は,気候変動への応答が,主に地域の状況変化の後をたどっていることを示唆している。(MY,ok,nk)
【訳注】climate velocity:温暖化が地球の極方向に進行する速度
Marine Taxa Track Local Climate Velocities

とっとと行ってしまってよ、TLR4さん!(Move Over, TLR4)

自然免疫系は、Toll様受容体4 (TLR4)を介して細菌のリポ多糖 (LPS)を感知する(Kaganによる展望記事参照)。しかしながら、Kayagakiたち (p. 1246, 7月25日号電子版 )とHagarたち (p. 1250)は、グラム陰性菌のLPSのヘキサ-アシルリピド A成分が細胞質にアクセスし、カスパーゼ-11を活性化して、TLR4とは独立に免疫応答にシグナルを送っていることを報告している。カスパーゼ-11を欠くマウスは、LPSに対する自然免疫応答で誘発される致死性の炎症に対して、TLR4の存在下であっても抵抗できる。(KF,kj)
Noncanonical Inflammasome Activation by Intracellular LPS Independent of TLR4
Cytoplasmic LPS Activates Caspase-11: Implications in TLR4-Independent Endotoxic Shock

土壌から大気へ(From Soil to Sky)

土壌中の微生物コミュニティーの活動を介して、あるいは非生物的反応によって放出される微量ガスは、大気の化学組成に影響を与える。いくつかの土壌のタイプを用いた実験室でのカラム実験で、Oswaldたちは、乾燥地帯や農地からの土壌が、かなりの量の一酸化窒素 (NO)と亜硝酸 (HONO)を産生していることを明らかにした(p. 1233)。アンモニア酸化細菌が、NOに匹敵するレベルの HONOを産み出す主要な源であり、つまり、大気への反応性窒素の重要な源として働いているのである。(KF,ok)
HONO Emissions from Soil Bacteria as a Major Source of Atmospheric Reactive Nitrogen

高品質な超軽量材料(Quality Ultralight)

炭素繊維複合材料の軽量で高強度な特性を確保するにはコストがかかる。Cheung と Gershenfeld は(p. 1219, 8月15日号電子版; Schaedler による展望記事参照)、強くて超軽量な格子状の構造を作り上げることのできる十字断面の部品を量産した。炭素繊維複合材料を十字形の薄切片にすると、個々に検査して、強固で可逆的な立方八面格子を確実に作り上げることができる。(Sk,ok,kj)
Reversibly Assembled Cellular Composite Materials

活動的な氷(Active Ice)

温かな海洋水は、正確には、どのようにして棚氷を浸食するのであろうか?南極のパイン島にある棚氷の現地調査で、Stanton たちは(p.1236)、レーダー、地震調査、棚氷にあけた穴に挿入された海洋観測センサーからのデータを収集した。その結果は、棚氷の底面に形成される複雑なネットワーク状の目立たない流路中で、局所的で集中的な融解が生じていることを示している。この種の融解が、棚氷の質量減少の絶対速度を決めているのかもしれない。(Sk,KU)
【訳注】棚氷:陸上の氷が海に押し出され、陸上の氷と連結したまま洋上にあるもの
Channelized Ice Melting in the Ocean Boundary Layer Beneath Pine Island Glacier, Antarctica

小さな宇宙(Tinyverse)

超流動のような量子多体系は平衡状態での研究が困難であり、そのダイナミクスを把握することは大きな課題となっている。Hungらは(p, 1213, 8月1日号電子版;SchemiedmayerとBergersの展望記事参照)、セシウム原子の二次元ガスの相互作用の強さを瞬間的に変化させた際に、宇宙マイクロ波背景放射のスペクトルピークに類似した時間的および空間的領域における振動挙動を観測することに成功している。(NK,ok,nk,kj)
From Cosmology to Cold Atoms: Observation of Sakharov Oscillations in a Quenched Atomic Superfluid

羽を伸ばすとき(At a Stretch)

昆虫の飛行筋は、脊椎動物の骨格筋と、動作上、多くの点で類似している。しかしながら、飛行筋は、高速な、小さな振幅の周期的変動に特化していて、カルシウムの遊離と再取り込みによって活性化されるのではなく、伸展-活性化によっているのである。IwamotoとYagiは一対の超高速カメラを用いて、マルハナバチの飛行筋における羽拍動と回折パターンを記録し、伸展活性化がミオシンとアクチンの動力学の結果であることを発見した(p. 1243, 8月23日号電子版)。(KF,kj)
The Molecular Trigger for High-Speed Wing Beats in a Bee
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