AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science August 16 2013, Vol.341


金属と酸化物の界面の測定(Measure of Metal-Oxide Interfaces)

触媒反応の速度はときに、金属ナノ粒子を吸着させる支持体として異なる金属酸化物を用いることにより増大することがある。そのような増大は、多くの場合、金属と酸化物の界面上の活性点にに起因しているが、その効果を定量化することは困難である。Cargnello たちは(p. 771, 7月18日号電子版)、ニッケル、白金、パラジウムの単分散ナノ粒子を合成し、高表面積のセリアまたはアルミナの支持体上に分散させた。高分解能の透過型電子顕微鏡により、界面部分の構造の詳細な解析が可能となり、セリア上での CO 酸化の速度は実際に界面の作用点で大幅に増大することが示された。(Sk,ok)
Control of Metal Nanocrystal Size Reveals Metal-Support Interface Role for Ceria Catalysts

アレルギーの誘導(Allergy Induction)

菌類や他のアレルゲンに見出されるタンパク質分解酵素は、アレルギー性炎症を誘発するが、どのようにしてそれらがそのような炎症を起こすのかは明確ではない。また、侵入する微生物を検出するパターン認識受容体が、どのようにしてアレルギー性炎症を促進するかも明らかでない。Millienたち (p. 792)は、マウスにおいてアレルギー性炎症の誘導には凝固因子フィブリノーゲンのタンパク質分解酵素-依存性の切断を必要とし、このことがパターン認識受容体である Toll様受容体4(TLR4)を活性化するリガンドの生成へ導くことを示すことによって、このパズルを解き明かしている。切断されたフィブリノーゲンは、自然免疫系を活性化するTLR4を通じて信号を送り、そして免疫細胞を気道へ補充し、このことがアレルギー反応と抗真菌性免疫の双方を促進する。(hk,KU)
Cleavage of Fibrinogen by Proteinases Elicits Allergic Responses Through Toll-Like Receptor 4

報酬としての食べ物(Food as Reward)

アイスクリームは何故こんなに美味しいのだろうか? 高脂肪の食物により,快楽を司る神経伝達物質であるドーパミン系脳内報酬回路が活性化される。高脂肪の食物を過剰に摂取すると、ドーパミン誘導型の報酬感覚が鈍ると考えられており,それを補うため,もっと高脂肪の食物の摂取に至ってしまう。腸で消化されている食物の脂肪が、ドーパミン報酬回路に語りかけるというメカニズムは明確ではない。Tellezたちは(p. 800),オレオイルエタノールアミン(OEA)と呼ばれる腸内脂質メッセンジャーが,少なくともマウスでは役割を演じている可能性を示唆している。高脂肪餌を与えられたマウスの腸内 OEA量は異常に低いレベルにあり,高脂肪性脂質による腸内刺激に対して,ドーパミンへの反応応答は不活発であった。このようなマウスへOEAを投与すると,ドーパミンへの反応応答性が回復され,高脂肪性餌に馴染んでいたマウスはそれより低い脂肪の餌を食べ始めた。(MY)
A Gut Lipid Messenger Links Excess Dietary Fat to Dopamine Deficiency

氷の中を通って排水する(Draining Through Ice)

グリーンランドの氷床の表面が融けることにより作られる水は、急速にその下にある岩盤に運ばれるが、その後、その水がどのように分散していくのかは明らかになっていない。この疑問は重要である、というのは氷と岩盤との界面の滑りやすさにより、氷床がいかに速く移動するかに影響するからである。現存する概念モデルは山間部における氷河の観察に基づいているが、Meierbachtol たちは(p. 777; Luthi による展望記事参照)、今回それらのモデルはグリーンランドの氷床には適用できないことを示している。23個のボーリング孔の横断面の水の圧力を測定することにより、溶けた水の巨大な水路が形成される縁端部と、より分散された水路が見出される内陸部とで、排水の仕組みが異なることが明らかとなった。(Sk,KU,ok,kj)
Basal Drainage System Response to Increasing Surface Melt on the Greenland Ice Sheet

単一光子のゲート(A Single-Photon Gate)

光ビームの伝搬を単一光子で制御する全光トランジスタを実現することが、オプティクスの長年の目標である。Chen等(p. 768、7月4日号電子版;VolzとRauschenbeutelの展望記事参照)は、セシウム原子雲と光共振器が一体化した系において、「ゲート」レーザーパルスで同原子群を励起することによって、光共振器中の光伝搬を制御することに成功している。貯えられた単一ゲート光子でもって系を共振から外すことができ、共振器中のソース光子の伝搬をオン・オフできるという。(NK,KU,kj)
All-Optical Switch and Transistor Gated by One Stored Photon

アンデスを引き降ろす(Bringing Down the Andes)

南アメリカのアンデスのような山脈では、その高さを支配するような多くの力が働いている。降雨の割合が高いと、峡谷には急速に切れ目が入る可能性がある。しかし、山脈内の深部からの地殻変動による力は、浸食速度とバランスするか、あるいは、さらにそれを超えてしまう可能性もある。Lease と Ehlers (p.774) は、北東のアンデス高原の浸食履歴を調べた。1千万年より古い堆積層の浸食は、主に地殻変動によって支配されていた。しかしながら、もっと最近の堆積層は、300万年から 400万年前に、より寒冷な気温に移ると降雨が増加したことを示唆している。(Wt,ok)
Incision into the Eastern Andean Plateau During Pliocene Cooling

昆虫の周期発生(Insect Cycles)

昆虫の個体群サイズの急増により,作物の重大な被害がもたらされる可能性がある。季節の温度がそのような大発生を誘発していることが提案されている。昆虫個々については,気温がその成長を牽引しているという明確な証拠があるにもかかわらず,集団レベルに対する気温の影響についてはあまりよくわかっていない。 Nelsonたちは(8月1日発行電子版p. 796),日本茶の育ちに影響を与える茶ハマキガに関して50年以上にわたり集められたデータを分析し,周期的な大発生に対する気温の影響を明らかにした。(MY,ok)
Recurrent Insect Outbreaks Caused by Temperature-Driven Changes in System Stability

耐性は有効となるだろう(Resistance May Not Be Futile)

最近、特に小麦の壊滅的な被害をもたらす小麦の茎に発生する錆菌系統である、Ug99が発生し、食糧安全保障を脅かす可能性がある。今回、Ug99への耐性を与える二つの遺伝子がクローン化された。Saintenacたち (p. 783, 6月27日号電子版)は、それほど栽培されていない二倍体のコムギ種である、コムギの monococcumから Sr35をクローン化した。Periyannanたち (p. 786, 6月27日号電子版)は、現在の栽培小麦である六倍体ゲノムの祖先のひとつである二倍体の野生小麦、タルホコムギ  tauschiiから Sr33をクローン化した。この遺伝子は双方とも他の耐病性タンパク質に特有の特徴を示し、そしてUg99の進行速度を遅らせる可能性を与えるようなタンパク質をコードしている。(KU,kj,nk)
Identification of Wheat Gene Sr35 That Confers Resistance to Ug99 Stem Rust Race Group
The Gene Sr33, an Ortholog of Barley Mla Genes, Encodes Resistance to Wheat Stem Rust Race Ug99

Xistの存在の理解(Understanding Xist-ance)

大きな非翻訳 RNA(lncRNAs)は、細胞において重要な役割を果たしていることがますます認識されてきている。多くの lncRNAsは、染色質調節性複合体を自分たちの作用部位へと導くのに作用している。Engreitzたち (1237973,7月4日号電子版;Dimond and Fraserによる展望記事参照)は、X-染色体の不活性化を引き起こすマウスの Xist lncRNAが、その転写部位からX-染色体上の離れた部位に移動するのは、純粋にX-染色体の反応部位とXist遺伝子との三次元空間距離が近くなるためであることを示した。XistRNAは、最初はX染色体上の活発な遺伝子の周辺に局在化しているが、徐々にA-反復領域を用いて広がって、分化した雌性細胞の不活性な領域まで広く結合していく。(KU,ok,kj,nk)
The Xist lncRNA Exploits Three-Dimensional Genome Architecture to Spread Across the X Chromosome

初期の多咬頭類(Early Multi)

多咬頭類(multis)は、最初ジュラ紀に発生し、1億年以上にわたって続いて、漸新世に絶滅したが、これによって、既知の哺乳類の中でもっとも長く続いた目となっている。この高度に多様で大量に存在していたグループは、現在の同様に多様なげっ歯類によって占められている多くのニッチを満たしていた。多咬頭類は、その複雑な歯列と独特の歩行運動の順応によって知られているが、その順応がさまざまな生態系に彼らを分岐させるのを促進したのである。Yuanたちは、ほぼ完全な骨格から、新たな原始的多咬頭類を記述し、そうした順応の土台が多咬頭目の進化の初期に生じて、白亜紀と古第三紀の間に起こるグループの主要な多様化と拡がりへの舞台を設定したことを示した(p. 779)。(KF,ok,kj,nk)
【訳注】多咬頭類:多丘歯目とも。哺乳類の中でもとくに長期間続いた系統で、特徴としては、多くの歯尖が列をなしていて、犬歯はない。
Earliest Evolution of Multituberculate Mammals Revealed by a New Jurassic Fossil

自然免疫における新たなLinc(A New Linc in Innate Immunity)

長い非翻訳RNA (lncRNA)は最近、幅広い生物学的プロセスにおける遺伝子発現の重要な制御因子として浮上してきたが、免疫系におけるそれら分子の特異的役割は記述されてこなかった。Carpenterたちはこのたび、免疫系におけるこのような lncRNAのうちの1つ、lincRNA-Cox2の機能を定義している(p. 789, 8月1日号電子版)。トランスクリプトーム全体のプロファイリングによって、incRNA-Cox2が、微生物を検出して、免疫系に応答するよう警報を出す Toll様受容体分子の活性化へ応答して、マウスのマクロファージ中に誘発されることが明らかにされた。lincRNA-Cox2は、炎症性遺伝子の別々のグループの発現を、ポジティブまたはネガティブどちらにも制御していた。遺伝子発現のネガティブな制御は、ヘテロ核リボタンパク質A/BおよびA2/B1とlincRNA-Coxとの相互作用によって仲介されていた。(KF,KU)
A Long Noncoding RNA Mediates Both Activation and Repression of Immune Response Genes
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