AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science May 11 2012, Vol.336


地震モデルの徹底調査(Earthquake Model Shakedown)

カリフォルニアにあるサンアンドレアス断層のパークフィールドセグメントでは、ほぼ22年毎の驚くべき規則正しい間隔でマグニチュード6.0の地震が発生する。この地域は世界中で最も良く調査研究された断層セグメントの1つであるが、いまだに計算モデルによって、豊富な観測データと理論的な予測とを統合することにしばしば四苦八苦している。Barbotたち(p. 707; Segallによる展望記事参照)は、断層セグメントの動的なモデルを構築した。このモデルは、過去の観測と統合した時、過去の地震サイクルの全体に渡ってパークフィールドセグメントの挙動を再現している。このモデルは、断層の現実的な物理量に基づいているため、小さな地震の分布だけでなく、大規模な地震の再発間隔、そして地震後に蓄積される測地学的歪(geodetic strain)の量についても説明している。また、そのモデルはどのように、より小さな地震がこの地域の準周期的(semiregular)地震サイクルに影響を与えられるかも明らかにしている。(TO,KU,nk)
Under the Hood of the Earthquake Machine: Toward Predictive Modeling of the Seismic Cycle

新たなる夜明け(A New Dawn)

2011年7月17日より、NASA のドーン( Dawn(夜明け)探査機は、ベスタ(Vesta)小惑星の周りの軌道を周っている。このベスタは太陽系の中で2番目に重く、3番目に大きい小惑星である(表紙を参照のこと)。Russellたち (p.684)はド―ンの観測結果を用いて、ベスタが内部コアを有し、分化した小さな惑星状天体であり、太陽系形成の初期から生き残った原始惑星を現していることを確認している。ベスタは、またホワルダイト-ユークライト-ダイオジェナイト(hawardite-eucrite-diogenite) HED隕石 の源であることも確かめられている。Jaumann たち (p.687)は全球表面のマッピングに基づいて、小惑星の全体的な幾何形状や地形学について報告している。Vesta の表面は、無数の衝突クレーターと赤道地方の周りの大きな谷が支配的特徴である。Marchi たち(p.690)は、ベスタの複雑なクレーター形成の歴史について報告し、クレーターの計測に基づいて、その主要な地域の形成年代の範囲を推定した。Schenk たち (p.694) は、その小惑星の南極に位置する二つの巨大衝突盆地について述べている。両方の盆地とも若く、ベストイド(Vestoids)--ベスタの物質に似た組成を持つ小惑星--とHED隕石を形成するのに十分な量の物質が放出されている。De Sanctis たち (p.697)は、ドーン の可視および赤外の分光計測により得られたデータに基づいて、ベスタの鉱物学的な特徴を与えている。その特徴は、この隕石が分化した地殻とマントルに繋がる複雑なマグマの進化を経たことを明らかにした。Reddy たち (p.700) により詳細に調べられた全球的な色の変化は、これまで観測された他のいずれの小惑星のそれとは異なるものであり、そして、それは分化した原始惑星が保存されていることを暗示している。(Wt,KU,ok,tk,nk)
Dawn at Vesta: Testing the Protoplanetary Paradigm
Vesta’s Shape and Morphology
The Violent Collisional History of Asteroid 4 Vesta
The Geologically Recent Giant Impact Basins at Vesta’s South Pole
Spectroscopic Characterization of Mineralogy and Its Diversity Across Vesta
Color and Albedo Heterogeneity of Vesta from Dawn

光の手で通り抜ける(Tunneling Through with a Light Touch)

量子トンネル効果は、走査型トンネル顕微鏡、量子カスケードレーザー、化学反応など基盤技術を支えている。通常トンネル現象を示す粒子は電子であり、トンネルプロセスの制御は電場を用いて行われてきた。Cristofolini等は(p.704, 4月5日オンライン版、Szymaskaの展望記事参照)、トンネル電子と半導体からなる微小共振器内にトラップされた光子を相互作用させることにより、光学的にトンネルプロセスを制御できる混合状態を造りだした。トンネルプロセスを操作・制御できるこの光学的手法は、量子情報科学分野においておおいに活用されていくであろう。(NK)
Coupling Quantum Tunneling with Cavity Photons

歩調揃えて(By the Nummbers)

大気、海洋と大陸の生物圏との間では二酸化炭素をやり取りしており、その炭素同位体の組成は、異なる貯蔵所(reservoir)間での二酸化炭素の移動に係わるさまざまなプロセスによって変化する。アイスコアの中に取り込まれた空気の泡に含まれる二酸化炭素の炭素同位体組成は、過去の大気の組成を調整していたプロセスの記録を提供する。3つの南極のアイスコアから得たデータを用いて、Schmittたち(p. 711, 3月29日号電子版; Brookによる展望記事参照)は、過去24,000年の大気のCO2の炭素同位体の構成(makeup)の記録を示す。その調査結果から、退氷期の初期段階の期間では海洋の役割が大きく、後の氷河後退遷移(deglacial transition)中では、大陸の生物圏の再増大の影響が大きいことが示された。退氷期の以前の最終氷期最盛期の期間では、炭素サイクルは基本的に平衡状態であった。(TO,ao)
Carbon Isotope Constraints on the Deglacial CO2 Rise from Ice Cores

マヤの天文学(Mayan Astronomy)

マヤのコーデックスは、コロンブス上陸の数世紀前に樹皮上に書かれた本である。そのいくつかには、月や惑星の動き、および、それらとマヤ暦の関係についての詳細な象形文字の計算が記されている。しかし、その前にあったものは不明なままであった。今回、Saturno たちは(p. 714)、コーデックスの作成より数世紀前に建造された、グアテマラのマヤ・コンプレックス(建造物群)中の一つの部屋について説明しており、その壁のうち2つの面には、同様な計算が記されていると思われる。東の壁には月に関する計算が記されており、北の壁の計算はさらに不可解なものであるが、火星、水星、および/または金星に関連しているかもしれない。(Sk,ok)
Ancient Maya Astronomical Tables from Xultun, Guatemala

骨関節炎と低分子のカルトゲニン(Osteoarthritis and Kartogenin)

関節軟骨の進行性破壊によって特徴付けられる骨関節炎は、合衆国においては2500万人を越える人々に影響を与えている。関節に存在する間葉系幹細胞(MSCs)は、多分化能の成体幹細胞であり、様々な細胞型に分化することが出来る。Johnsonたち(p. 717,4月5日号電子版)は、低分子のカルトゲニンを同定したが、in vitroの実験においてこの分子によって誘導されたMSCsは選択的に軟骨細胞へと分化した。局所的に投与すると、カルトゲニンは骨関節炎の二つの動物モデルにおいて効果があった。(KU,ogs)
A Stem Cell?Based Approach to Cartilage Repair

正しい動き(The Right Move)

発生の過程において、上皮組織は分化して機能的な組織や器官となる。組織の変形を促進するために、遺伝子の発現が局所的な細胞の機械的性質をどのように制御しているかはあまりよく理解されていない。Bosveldたち(p. 724,4月12日号電子版)は、シュウジョウバエの上皮組織における全体的な組織の収縮を行なうために、保存されたFat/Dachsous/Four-jointedシグナル伝達経路により、局所的な細胞の機械的性質がどのように制御されているかを明らかにした。(KU,ogs,nk)
Mechanical Control of Morphogenesis by Fat/Dachsous/Four-Jointed Planar Cell Polarity Pathway

DNA修復を調べる(Dissecting DNA Repair)

タンパク質の共有結合性(翻訳後)修飾は、そのタンパク質の機能調節において重要である。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ 1 (PARP-1)はポリ(ADP-リボース)を合成し、これがDNA修復に関与するタンパク質に付着し、そしてそのタンパク質を制御する。Langelierたち(p. 728;Ganneたちによる展望記事参照)はx線結晶解析と生化学的解析を用いて、PARP-1がどのようにしてDNA損傷を検知し、そしてDNAとの相互作用がポリ(ADP-リボシル化)の活性化とどのように結びついているかを実証した。(KU,ogs)
Structural Basis for DNA Damage?Dependent Poly(ADP-ribosyl)ation by Human PARP-1

あなたのパートナーを探せ(Find Your Partner)

配偶子は通常、一倍体のゲノムを有しており、受精して融合すると、二倍体の生物体を再構成する。一倍体の配偶子を作るには減数分裂が必要であり、これには二つの相同染色体が最初に対を形成し、次にお互いに分かれて分離するような減数分裂を含んでいる。分裂酵母における研究から、Dingたち(p. 732;Dernburgによる展望記事参照)は、相同染色体がどのようにしてお互いを認識しているかを調べ、そして非翻訳RNA座位、sme2が相同染色体の対形成を促進させていることを見出した。(KU)
Meiosis-Specific Noncoding RNA Mediates Robust Pairing of Homologous Chromosomes in Meiosis

反応-拡散のパターン形成(Reaction-Diffusion Patterning)

60年前に、アラン・チューリング(Alan Turing)は、形態形成の際に複雑なパターンがどのように出現するかを説明する反応-拡散モデルを提唱した。このモデルにおいては、活性化因子は自分自身と抑制因子の双方を活性化し(「反応」)、同時に活性化因子は抑制因子よりも移動度が低い(「拡散」)。多くの活性化因子/抑制因子のペアが研究されてきたが、しかしながら、活性化因子と抑制因子における、分散速度と排除速度の大小関係の役割は不明なことが多い。Mullerたち(p. 721,4月12日号電子版)は、ゼブラフィッシュの胚形成の際に、活性化因子Nodalが抑制因子Leftyより低い拡散率を有し、一方双方の分子は同じような速度で除去されていることを示しており、このことは、NodalとLeftyが古典的な反応-拡散系を形成していると言う考えを支持している。(KU,ogs)
Differential Diffusivity of Nodal and Lefty Underlies a Reaction-Diffusion Patterning System

大腸がんのしるし(Colorectal Cancer Signature)

がんの進行を直接的あるいは間接的に駆動するのは、がん細胞で特徴的にみられる劇的な遺伝子変異とそこからもたらされる異常なたんぱく質の発現によるものである。ヒト大腸がんの初代培養細胞において、Akhtar-Zaidiたちは、遺伝子発現の制御において決定的であることが知られている「エンハンサー」配列に見出される後成的に修飾された染色質のパターンを分析した(p.736、4月12日号電子版)。ある後成的エンハンサーのしるしが、大腸がん細胞に特異的に付随していることが明らかにされたのである。(KF,ogs)
Epigenomic Enhancer Profiling Defines a Signature of Colon Cancer

指数関数的増加の影響(Exponential Growth Effects)

人類は、およそ70億人という巨大な集団サイズで測られるほどに、異常なほど成功した種であり、しかもその多くは最近の爆発的増加によるものである。ヒトのゲノムデータを活用して、KeinanとClarkは、病気に関わっていると仮定されている稀な遺伝的変異体を検出する能力に対する、人口増加の影響を検証した(p. 740)。最近の急激な人口増加は、稀な変異体による負荷を増加させており、複合的な病気のリスクについての個々人の遺伝的重荷に重要な役割を果たしている、ということらしい。(KF,nk)
Recent Explosive Human Population Growth Has Resulted in an Excess of Rare Genetic Variants

どうぞお静かに(Silence, Please)

ポリコーム群(PcG)タンパク質は、後成的遺伝子制御や発生、疾患において中心的な役割を果たしている。このタンパク質は細胞周期も制御しているがその仕組みはよくわかっていない。PcGタンパク質は、クロマチン構造を変化させることを介して、標的遺伝子の転写をサイレンシングしていると考えられている。Mohd-Saripたちは、細胞周期調節において基準となるPcGタンパク質「Posterior sex combs」の、直接的なサイクリンB破壊を介しての予期しない転写非依存の機能を明らかにした(p.744,4月5日号電子版)。(FK,ogs)
Transcription-Independent Function of Polycomb Group Protein PSC in Cell Cycle Control
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