AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science February 22, 2008, Vol.319


積み木のようにカルボキシソームを構成する(Carboxysome Building Blocks)

カルボキシソームは直径が約100ナノメートルの細菌性の微小区画であり、そこに隔離された酵素が炭素固定に関わっている。カルボキシソームの殻は数千個のタンパク質のサブユニットから構成され、その大きさは800〜1400オングストロームの径がある。タンパク質性の外殻は20面体で、ある種のウイルスカプシドに見られるような六量体と五量体のブロックを組み合わせた形状を持っている。2つの既知タイプのカルボキシソーム中に豊富に存在する4つのシェルタンパク質が、六量体を形成することが知られている。Tanaka たち(p. 1083)は、適切なサイズと形の五量体を形成するカルボキシソームタンパク質の構造を報告し、6角形の層が詰まった20面体の中に挿入され、20面体の頂点を形成するようになっていることを報告している。六量体と五量体を詰め合わせてカルボキシソーム殻を構築する方法には2つの尤もらしい方法が考えられる。(Ej,hE,nk)
Atomic-Level Models of the Bacterial Carboxysome Shell
p. 1083-1086.

セラミックコンポジットの延性(Ductility in ceramic composite)

生体高分子と炭酸カルシウムを取り込んで真珠層を創るように、自然界は弱かったり或いは脆い原材料から堅牢なコンポジットを創る方法を獲得した。科学者たちはより良い原材料を使うことはできるが、自然界ほどの巧みさ・洗練さは成し得ていない。Bondererたち(p.1060; OrtizとBoyceの展望記事参照)は、キトサン高分子母体にサブマイクロメータ厚のアルミナが埋め込こまれた高い伸張強度を有するコンポジットを創った。セラミックフィルムの厚さを制御することで、彼等は破断モードを究明し、延性が保たれることを確認した。(NK)
Bioinspired Design and Assembly of Platelet Reinforced Polymer Films
p. 1069-1073.
MATERIALS SCIENCE: Bioinspired Structural Materials
p. 1053-1054.

光子の回転ドア(Photon Turnstile)

高品質の光マイクロ共振器は、結合した光ファイバー中の光の伝播に影響を与えたり、あるいは、遅延させることができる。Dayan たち (p.1062) は、原子を共振器のエバネッセント光の場と結合させることにより、ファイバー中を伝播する光により劇的な効果を与えうることを示している。原子が結合すると、ランダムに入ってくるフォトンの流れが制御されたフォトンの列として出力可能となる。このような光学的な回転ドアは、量子情報処理に対する光源として有用となろう。(Wt,nk)
A Photon Turnstile Dynamically Regulated by One Atom
p. 1062-1065.

アメリカ西部の冬季気象(Whither Weather Out West)

現在のアメリカ西部は、以前に比べ、雪が減って冬の雨が増えた。その雪も以前より速く融けるようになった。この変化によって春の川の水量が増え、夏の水量が減った。Barnettたち(p. 1080, および、1月31日、オンライン出版参照) は多変量の気候変動の検出と、要因の研究を、1950年から1999年までのアメリカ西部のデータについて行い、記録値の変動は大きいが、川の流れの傾向と、冬季の気温、雪積の60%は人間活動による気候変動を反映しているとした。これらの結果は、晩春の雪解け水に農業が大きく依存しているアメリカ西部では、水の供給危機が生じうることを示している。(Ej,hE)
Human-Induced Changes in the Hydrology of the Western United States
p. 1080-1083.

ちょっと突っつく(A Little Nudge)

走査プローブ顕微鏡は個々の原子を操作したり原子レベルの構造を作ったりすることに使われてきた。しかし、この装置は広く使われたにもかかわらず、個々の原子を動かすに必要な力は決定されていなかった。Ternes たち(p. 1066; および、 Custance and Moritaによる展望記事参照) は、原子間力顕微鏡(AFM)を利用して、Co原子か、CO分子のいずれかを吸着させて、垂直方向にかけられた力と横方向にかけられた力の同時測定について報告した。彼らは、周期振動しているAFMチップと試料表面の間のトンネル効果電流を同時に検出した。この記録は、力の測定とともに、トンネル効果ギャップコンダクタンスの変動をを含んでいた。(Ej,hE)
MATERIALS SCIENCE: How to Move an Atom
p. 1051-1052.

地震にも社会性が見られる(Social Quakes)

地震は、常に地球のプレート境界に色を添えているが、連続地震はもちろんのこと、任意の2つの地震がどの程度、どのように関連しているかは分かってない。明瞭な余震の場合は主震とそれに続くいくつかの次第に弱くなる地震がはっきり分かるだけだ。全体として見れば、1つの地震が他の断層の応力にどの程度影響を与えるかの疑問は、部分的に統計的で、部分的に機構的でしか答えられない。Marsan たち(p. 1076) は、各断層における多数のパラメータを調整することなく、2つの単純な仮定に基づく誘発モデルを開発した。このモデルを南カリフォルニアの地震に適用した結果、誘発に対する小さな地震の影響はひどく大きく、そしてなだれ的な地震の誘発はごく普通に見られれるものであることが分かった。(Ej,hE,nk)
Extending Earthquakes' Reach Through Cascading
p. 1076-1079.
   

タウタンパク質と微小管モーター(τand Microtubule Motors)

微小管結合タンパク質であるτは、アルツハイマー病を含む神経変性疾患に関与しているが、その正常な役割や病理学的役割のいずれも良く分かっていない。細胞中における微小管は、τを含めた微小管結合タンパク質で密に覆われている。Dixitたち(p.1086)は、モータータンパク質が微小管の上をどのように動いているかを調べた。著者たちは無細胞アッセイで、τの幾つかのアイソフォームと切断物を取り込み、細胞環境を模しての複合体系を作った。微小管上での個々のモータータンパク質とτの出会いが直接観測され、二つの微小管に基づいたモーター、ダイニンとキネシンの運動性に関するτの影響の劇的な差異が明らかになった。ニューロンにおいて、τは微小管-依存性の軸索輸送のバランスを空間的に制御しているらしい。(KU,hE)
Differential Regulation of Dynein and Kinesin Motor Proteins by Tau
p. 1086-1089.

ウイルスが皮膚癌の犯人?(A Viral Culprit in Cancer ?)

ウイルスがヒト癌の病変形成に関与しているというこの発見は、子宮頸癌予防に関するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの開発によって示されたように、予防や処置に対する新たな選択肢を提供するものである。Fengたち(p.1096,1月17日のオンライン出版;Viscidi and Shahによる展望記事参照)は、以前不明だったヒトポリオーマウイルスがメルケル細胞癌(MCC; Merkel cell carcinoma)という、稀ではあるが極めて攻撃的な皮膚癌に関与している因子であるという証拠を提供している。著者たちは、最初に外来性の転写物を明らかにする実験方法、digital transcriptome subtractionを用いてMCCサンプル中のウイルスのDNA配列を調べ、その後メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)と名付けたこのウイルスの完全なゲノムの配列決定を行った。MCVの配列は対照組織にも僅かな割合で存在するが、この配列はMCCと強く関係しており、MCV感染が腫瘍細胞のクローン的増殖に先行しているということを示唆するようなパターンで腫瘍ゲノム内に取り込まれていた。(KU,hE)
Clonal Integration of a Polyomavirus in Human Merkel Cell Carcinoma
p. 1096-1100.
CANCER: A Skin Cancer Virus?
p. 1049-1050.

アフリカの境を越えて(Beyond Out of Africa)

DNA配列の変動を分析することは、ヒトにおける遺伝的多様性に関する理解を増すことになる。それによって、たとえば、ヒトはアフリカから移住して行き、地球全体に分散し、その過程で他の原人と置き換わっていったなどが明らかになった。より深い理解を得るために、Liたちは、ヒトゲノム多様性パネル(Human Genome Diversity Panel)から得られた、世界中の51の集団を代表するおよそ50万以上の一塩基多型を調べた(p.1100)。この解析の幅広い取り組みによって、スコットランドの北方にあるオークニー諸島やフランス、北イタリアの集団をベルガモやトスカーナのグループから区別する微細スケールの集団構造が明らかになり、また、非アフリカ集団がアフリカから離れ出て行くにつれて、経時的に連綿と続くコロニー鎖が形成されていく「連続的創始者モデル(serial foundermodel)」が支持されることとなった。(KF,nk)
Worldwide Human Relationships Inferred from Genome-Wide Patterns of Variation
p. 1100-1104.

タグ付け+補充=学習(Tagging + Recruitment = Learning)

長期記憶を安定化させるには、核に新しい遺伝子産物が発現して、ニューロンの樹状突起上のシナプスの小さなサブセットに物理的な変化、すなわちタグを生じることが必要である。AMPA受容体の合成が学習の際に増加するということは、この過程において可能なある役割が存在することを示唆している。Matsuoたちはトランスジェニックマウスを開発して、新たに合成されたAMPA受容体の輸送と代謝回転の状況を、恐怖条件付けパラダイムにおいてモニターした(p. 1104)。蛍光受容体の発現を神経活動に結び付けることで、彼らは新たに合成された受容体プールを特異的に検討した。新たな受容体は行動の訓練から数時間後に脊椎に運ばれたが、これは、新たに合成されたAMPA受容体を後の時点で捕獲するのを許すような変化が、学習時に脊椎のいくつかの場所で生じていることを示唆するものである。(KF)
Spine-Type-Specific Recruitment of Newly Synthesized AMPA Receptors with Learning
p. 1104-1107.

網膜におけるスパイクによるコード化(Spike Coding in the Retina)

網膜の仕事は、視覚的イメージを神経のシグナルに変え、それらシグナルを処理し、その結果を視神経経由で脳に伝達することである。他の感覚系と同様、一般的な考えでは、時間変化する視覚刺激は、網膜神経節細胞中で時間変化する発火頻度をもたらし、その発火頻度こそが、それに引き続く各視覚ステーションにおける処理を駆動するということになっている。しかしながらこの種の感覚性コード化が、視覚系が扱う急速なシグナル検出や画像処理を支えられるものかどうかは、はっきりしていない。GollischとMeisterは、代わりに、神経節細胞1つ当たりに1つ発火スパイクがあれば、新たな視覚的イメージを通信するのに十分であることを示している(p. 1108)。そうしたスパイクの意味は、それが生じる、他の神経節細胞からのスパイクに対する、正確な相対的時刻によって伝えられるのである。いくつかの判断基準によると、このメッセージは発火頻度によって伝達されるものよりも強力かつ頑健なものである。さらに重要なことに、それはイメージ情報を最短時間で伝達するものなのである。(KF)
Rapid Neural Coding in the Retina with Relative Spike Latencies
p. 1108-1111.

ヒトの行動の予測(Predicting Human Behavior)

神経回路網は、どれほどうまく、ヒトのインタラクティブな意思決定をモデル化できるだろうか? 最近、ヒトの意思決定において後悔のもつ重要な役割が実証された。MarchioriとWarglienはこのたび、21種のインタラクティブなゲームにおいて、神経回路網フィードバックを修正し、後悔の役割を取り込んだ(p.1111; またCohenによる展望記事参照のこと)。後悔をフィードバックに導入すると、神経回路網の有効性は劇的に改善し、ヒトの行動についての予測が、従来の経済学的学習理論よりも正確にできるようになったのである。(KF)
Predicting Human Interactive Learning by Regret-Driven Neural Networks
p. 1111-1113.
ECONOMICS: Learning with Regret
p. 1052-1053.

分子接合における非線形性の利点(Exploiting Nonlinearity in Molecular Junction)

エレクトロニクスにおけるスイッチング要素として分子を用いることは、その小さなサイズに起因するのではなく、分子接合が非線形的な応答を示すというその可能性であり、論理操作へのよりコンパクトな実現が可能となる。Gelperinたち(p.1056)は、分子接合における電子輸送がトンネル領域を越えてどのように動くかという理論に関して概観している。0.3ボルト程度までの高い電圧下で、分子振動により電子が散乱されて分光学的なサインを提供する。より高いバイアス下で、強いカップリングにより分子上により長時間の間電子をとどめ、そしてクーロン閉塞や負の微分抵抗、および動的なスイッチングといった非線形的な応答同様に、強い分極とチャージングに導く。(KU)
Nuclear Coupling and Polarization in Molecular Transport Junctions: Beyond Tunneling to Function
p. 1056-1060.

界面の混じり具合を調べる(Tracking Interfacial Mixing)

高分解能の電子顕微鏡により、今や結晶物質中の原子の並びや、更には個々の空格子点や粒界での欠陥構造をも同定できる。収差補正の走査トンネル透過型電子顕微鏡を用いて、Mullerたち(p.1073)は、La0.7Sr0.3MnO3/SrTiO3の多層構造における化学種と結合状況を調べた。彼らは、界面での非対称的な混ざり具合とチタン酸化物層中でのLaの取り込みを観測した。(KU)
Atomic-Scale Chemical Imaging of Composition and Bonding by Aberration-Corrected Microscopy
p. 1073-1076.

テロメアのタグ(Telomere Tag)

テロメア、つまりまっすぐな哺乳類染色体の末端部分は、タンパク質テロメア反復結合因子1および2(TRF1とTRF2)を含むshelterin複合体によって、長さが調節され、DNA損傷修復システムによる認識から保護されている。TRF1とTRF2というこれら2つのタンパク質は、shelterin複合体の他のメンバーおよび、それに付随する、テロメア長をネガティブに制御するテロメア因子を補充している。Chenたちは、構造的に非常に良く似たTRF1とTRF2が、それら因子と違ったやり方で相互作用していることを明らかにしている(p. 1092、1月17日のオンライン出版)。TIN2はそのN-末端TRF相同性(TRFH)領域を介してTRF1と結合しており、TRF2には、C-末端領域を介して結合しているが、Apolloは、TRF2にそのTRFH領域を介して、TRF1がTIN2に結合するのと同様に結合している。ただし、TRFH領域にある2つのループがこれら異なった結合特異性を決定しているのである。TIN2とApolloの結合領域は五量体配列を共有しており、他のテロメアアクセサリータンパク質の同定に役立つものである。(KF)
A Shared Docking Motif in TRF1 and TRF2 Used for Differential Recruitment of Telomeric Proteins
p. 1092-1096.

レギュロンの調節(Regulating the Regulon)

ガラクトース存在下では、出芽酵母は糖を細胞質に輸送するが、そこでガラクトースはGal3タンパク質に結合し、それが次にGal80リプレッサーを転写活性化因子Gal4から隔離し、その結果、ガラクトース代謝酵素の誘導に至るのである。この誘導は非常に急速なので、この「ガラクトース・レギュロン(galactose regulon)」には、未知の因子が何らかの形で関与しているに違いないと示唆されてきた。Kumarたちは、この因子をニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)とそのリン酸化物(NADP)として同定した(p. 1090)。Gal4:Gal80複合体では、NADはこの2つのタンパク質にサンドイッチされたような状態になっている。一方NADPは、Gal4とGal80の間の相互作用を抑制している。Gal80におけるNAD-結合部位に潜在的に影響を与えうる変異は、より急速な誘導をもたらし、これは、Gal80がNADとNADPのバランス、ひいては細胞の代謝状態を感知していることを示唆するものである。(KF)
NADP Regulates the Yeast GAL Induction System
p. 1090-1092.

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